パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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二年に進級できてすこしだらけている春休みの久。学校がはじまれば過酷な日々が待っているのに…?
勉強会の男の子キラーの続きなんですが、北山家パーティーまで前置きがちょっと長いです。
冗長で読みにくいかもです…


二年生~九校戦。
春休み


一高も春休みに入った。僕は二年生に進級できた…よかった。

僕の成績は入学当時の残念ぶりから多少持ち直して、理論科目は中の中、実技科目は中の上。魔法力だけはダントツ一位…はっきり言って一科の中でも全然大したことがない。

僕も努力しているけれど、一科の生徒は全員努力していて、というか成績が上昇しないような生徒は自主退学している。

他のSSのオリ主は達也くんに匹敵する頭脳の持ち主が多いのに、どうしてこうなった…

 

でも、春休みだ。春休みは良いよね、なんといっても宿題がない。一日中引きこもっていられる。

この春、澪さんも大学院を卒業した。株主配当と国からの慰労金で普通の会社員より高収入な澪さんは晴れて専業引きこもりだ。

戦略魔法師にとって一番重要なのは健康、行動範囲が狭く警護しやすいことだ。澪さんが引きこもりになったのも、虚弱のせいと、国の方針のためだ、と思う。

春休み中は澪さんと二人で夢のようなアニメ&コミック三昧だ。一人、まともな(?)社会人の響子さんの雷が毎日のように落ちるのである。

 

春休み、毎日引きこもり…というわけには、残念ながらいかなかった。

まず、アメリカ留学から雫さんが帰ってきた。

その日は空港まで、僕は護衛の二人の運転するセダンで向かった。

『パラサイト』に襲撃された護衛の二人は、幸い完全復帰できて、僕の護衛を引き続き勤めてくれている。

入院中はお見舞いに行って、「僕のせいで襲われてごめんなさい」って謝ったんだけれど、「きちんと守れずもうしわけない」って逆に謝られてしまった。

空港に行くだけなのに護衛なんて大仰だけれど、遠慮すると逆に多方面に迷惑をかけてしまうから。

 

僕自身に護衛をつけるような価値はあまりないと思う。けれども世間はそうは見ない。

雫さんを空港にお迎えにいった後も、京都のホテルに烈くん、光宣くん、響子さん、澪さんと食事に行ったり、澪さんの大学院卒業のパーティーにも付き添いで参加したりしている。

日本魔法師界の長老と、日本にただ一人の公認戦略級魔法師の庇護下と言う肩書きは、黄門さまの印籠だ。僕に価値が無くても七光りにみんな目がくらむ。

だからといって、僕はいばったり偉ぶったりしない。だって僕の周りは本人の実力で凄い人ばかりなんだから。

 

澪さんの卒業パーティー会場では、久しぶりに車椅子に座る澪さんの隣に立っていた。

以前のように、ただにこにこ笑っていれば良いと思っていたんだけれど…

七草家で行われた戦勝パーティーの時と違って僕に話しかけてくる人が多い。政界や財界の立派な大人たちが、自分の娘や息子をいちいち紹介してくるようになった。

そして決まり文句で、「次は家の主宰の会に出席して欲しい」って言って来る。

にこやかに、言質をとられないように曖昧に適当に返事をする…を繰り返す。

澪さんのパーティーだから、雰囲気を壊さないように、とにかくにこにこ、深雪さんの鉄壁の笑顔には及ばないけれど、とにかくにこにこ。

頬の筋肉が硬直してしまったかと思っていた頃、二人の男性が僕の前に立った。

一人は慎重そうな大人、一人はどこか自信に満ちた高校生くらいの男子。

 

「このたびは大学院卒業おめでとうございます。澪さん。七宝の拓巳と息子の琢磨です」

 

「ありがとうございます、七宝殿、それに琢磨さんも一高入学おめでとうございます」

 

「ありがとうございます、澪さん。努力のおかげで主席で入学することができました」

 

七宝琢磨くんはそう言うと、胸をはって僕を見た。どこか「ふふっんどうだ」みたいな態度が全身から溢れている。澪さんが少し顔をしかめる。

 

「主席なんて凄いや…きっと寝る間も惜しんで勉強したんだよね、尊敬しちゃうなぁ」

 

僕は素直に驚いている。だって去年は深雪さんが主席だったんだ。その前はあーちゃん先輩で、その前が真由美さん。

どう考えても、物凄い優秀な人物だよ!

僕は七宝琢磨くんを尊敬のキラキラした目で見る。琢磨くんは少し戸惑っている。糠に釘?みたいな顔だ。

 

「多治見先輩ですね、4月からは後輩になる七宝琢磨です。至らぬ点も多いと思いますのでよろしくご指導ください」

 

琢磨くんは小さな僕を見下ろしながら、丁寧に挨拶してくれた。インギンブレイ…って言葉が頭をよぎるけれど、うぅん、立派な態度だよ。

 

 

パーティーのお誘いはたくさんあったけれど、僕の自宅は公表されてはいないので、僕個人に公式に招待が来ることはない。

澪さんや烈くん経由では来るみたいなんだけれど、丁寧にお断りしてもらっている。

でも、僕の自宅を知っていて自宅に招待状を送ってくる人も当然いる。特に数週間前までは毎日のようにお世話になっていた先輩たちのお家は有力一族なんだよな。

 

四ヶ月ぶりに訪れた七草家は相変わらずの豪邸だ。むしろ居城といった感じで建物にも圧迫される。これは庶民の感覚なんだろうな。

奇妙なことに、僕個人にきちんと招待状が七草弘一さんの名前で届けられていた。

今回は洋史さんが五輪家の代表代理として出席。澪さんはお留守番。洋史さんは真由美さんと両家公認のお付き合いをしている。澪さんが気を使って代理の立場を洋史さんに譲ったんだけれど、七草家に来ることにどうも乗り気じゃないみたいだ。

あまり順調じゃないのかな。まぁ真由美さんの相手は、達也くん並みにふてぶてしくないと難しいだろうな。

 

パーティーは真由美さんの一高主席卒業&魔法大学入学、香澄さんと泉美さんの一高入学、三人の記念の会だった。主役が真由美さんと言う事もあって、市原先輩や渡辺委員長…この言い方はもう変だな、渡辺先輩の姿もあった。卒業した先輩たちにお会いできるのは嬉しい。市原先輩と渡辺先輩のドレス姿も綺麗だったし。

当然、エリカさんも参加させられている。戦勝パーティーのときより不機嫌を笑顔で隠してお兄さんの隣に立っている。渡辺先輩がお兄さんと談笑している横で、噴火寸前だ。

 

洋史さんは真由美さんとご当主との挨拶もそこそこに、あちこちのグループに顔を出している。どこか腰が落ち着かない人なんだよな…おっと、十文字先輩のいるグループに入り込んでしまって圧倒されているなぁ…目線をあげていれば、離れていても十文字先輩の居場所はすぐわかるのに。

 

僕はと言うと、真由美さんと香澄さん泉美さんにご挨拶した後、壁のすみに追い込まれていた。僕の周りに政界だか財界の背は低いけれど態度は大きな人たちが取り囲んでいる。

九島烈さまにはお世話になっているとか、九校戦での活躍を拝見しましたとか、五輪澪さんのご健康はいかがですかって同じ質問を何人にもされる。

烈くんにお礼を言うなら本人に言えば良いし、九校戦は僕は負けているから褒められてもうれしくない。澪さんが健康になっているのは嬉しいけれど、同じことを何人にも聞かれても…

僕に、おもねったりへつらったりしても…明日には忘れているよ。

かといって邪険にもできなくてこまった。

 

ふとエリカさんと目が会う。その目が「あんたも大変ね」って言ってる。僕も「早く帰りたい…」って目でかえす。

 

中年のおじさんたちの態度は、ねちっこくて、僕を見る目が、値踏みするような目が多いナンバーズの大人と違って、物凄くいやらしい。

僕はこの目が一番苦手だ。誘拐事件のときのことを思い出す。

性的な目で見る濁った瞳…怖い…あのときみたいにとりあえず殺すわけにもいかないし。そうすれば政界が一時綺麗になりそうだ。

 

 

「うぅ…あ」

 

こういう人は僕がおびえると、ますますかさにかかってくる。すきあらば身体のあちこちに触ってこようとする…うぅ、やだよぅ。

視界の墨でエリカさんがこちらに向かってくるのが見える。あっエリカさんを巻き込んじゃう…自分でなんとかしなきゃ。ばれないように、この人たちのベルトを切っちゃおうか。そうすれば恥ずかしくてどっかに行く…

 

「ちょっとよろしいでしょうか」

 

ぬっと、大きな身体が、中年男性の壁を割って入ってきた。高校を卒業したばかりなのに、ここにいる政治家の何十倍も迫力がある。

 

「十文字先輩!」

 

思わず小さく声をあげてしまった。

 

「皆さん、久はまだ高校生です。政財界の重鎮である皆様に囲まれては萎縮してしまいます」

 

十文字先輩の迫力に政財界の重鎮である皆様は萎縮している。よくわからない挨拶をしながら離れて行った。

エリカさんが立ち止まってこっちを見ている。僕は目で「有難う、心配してくれてありがとう」ってお礼を言った。

エリカさんはこういうとき察しが物凄くいいから、OKって指で合図をだすと、そのまま会場を後にした。あのまま帰る気だ。帰るタイミングをうかがっていたな。

十文字先輩はエリカさんには気がつかなかったみたいだけれど、

 

「久はこのような会は苦手そうだな。明後日、わが十文字家でも同じように会があるが、どうする。欠席しても構わんぞ」

 

十文字家からも僕個人宛に招待状が届いていた。もちろん参加するって返事をしている。

 

「十文字先輩の高校卒業と大学入学の記念の会だよ!絶対行くよ!」

 

「そうか?それほどめでたいわけでもないが?」

 

「ああいう大人は苦手だから、当日は十文字先輩のすぐ近くにくっついています」

 

「俺は番犬か?」

 

えへへ、これほど頼りになる番犬もないよね。

十文字先輩のお家のパーティーは七草家よりも規模は小さかったけれど、それでも政財界の人が多く来ていた。

澪さんと出席して、終日、十文字先輩の横にいたから何の問題も起きなかった。

澪さんは十文字先輩の圧力に押しつぶされそうな感じだったけれど…ごめんなさい。

会場では十文字現当主や二人の弟さんと妹さんを紹介されて、妹さんに妙になつかれたりもした。

先輩はお父さん似だな。ご兄弟は線が細くてお母さん似なのかな。

帰り際、妹さんに「どうして久様は男の人の格好をしていらっしゃるの?」と聞かれて、ああ天然なところは似ているなぁて思ったけれど。

 

その後はパーティーはすべてお断りをしておいた。

4月1日。年度が替わって、今日から僕も二年生だ。そして、

 

「「誕生日おめでとう」」

 

って、澪さんと響子さんが、自宅で僕の誕生日をお祝いしてくれた。

 

「あれ?僕の誕生日知っていたの?」

 

「『電子の魔女』の情報収集力を舐めないでよ!」

 

「学生IDに記載されていましたけれどね」

 

僕の誕生日は4月1日と、戸籍上はなっている。本当の誕生日は、そもそもあるのかも不明だけれど、烈くんが戸籍を偽造するときに4月1日にしたんだ。

どうして4月1日なのかな。一番年上だからだろうか。

 

「今日は私たちが腕によりをかけて、ご馳走をつくるから楽しみにしていてね」

 

二人とも一緒に料理をしていたからすぐ上手になった。手先が不器用な僕より上手だ。ただ僕は…

 

「有難う、でも僕も一緒につくるよ、そのほうが楽しいし、二人にも喜んで欲しいから」

 

僕は『ピクシー』と同じで誰かに尽くしたいと本能的に思ってしまう。それが『家族』だったらなおさらだ。

僕の新学期は楽しい一日からはじまった。

 

 

その夜、雫さんから北山家でホームパーティーが3日後に行われるってメールが来た。

雫さんの帰国&進級お祝いのパーティーだって。

春休み中、パーティーの類は全部断ることにしていたけれど、雫さん個人のパーティーだから、もちろん参加する。

 

当日は警護の人の運転で北山家に向かった。

ホームパーティーって言うから、恥ずかしくない程度の普通の格好で行ったんだけれど…

 

「ええぇっ?こんなに規模がおおきいの!?」

 

雫さんのお父さんは十師族のパーティーでも見かけたことが無かったから忘れていたけれども、この国でも有数の経営者で資産家だった。

僕はてっきり家族だけで行うホームパーティーだと思っていたから、この格好はみんなに恥をかかせてしまう。どうしよう。

 

受付の前で戸惑っていたら、

 

「どうした久」

 

落ち着いた男性の声が背中からかけられた。振り向かなくても声の主はわかる。

 

「達也くん!深雪さん!っえぇとあれ?どこかで会ったことがある?」

 

びしっと決まった達也くん、黒を基調にした優雅なドレスの深雪さんに、もう一人両肩を出した可憐なドレス姿の女の子がいた。

僕はその女の子をじーっと見る。僕より背が大きい…女の子は僕を前に物凄く緊張している。過度なほどに緊張。

その顔が四葉家のサンルームのメイド服の女の子と重なった。

 

「あっ、あのときのメイ…」

 

達也くんの手のひらが僕の口の前にすっと出された。

 

「その話は後だ…それよりどうした、その服装は」

 

「うっうん、ホームパーティーって言うから、家族の小さな食事会だと思って」

 

「そうだな北山家のパーティーともなると食事会ではすまないからな」

 

「僕…帰った方がいいかな」

 

「久、いま雫にメールで知らせたから、衣装は貸していただけるわ、一緒に来て。水波ちゃんも」

 

僕は深雪さんの後ろについていく。水波ちゃんは僕の後ろを歩く。

達也くんの顔は、すこし呆れているけれど、どうしたんだろう。僕がウカツだから失望しちゃったのかな…しょんぼり。

 

こういう心理状態の僕が、深雪さんを疑うなんて事は100パーセント、ない。

雫さんが選んでくれた衣装を、深雪さんと先に来ていたほのかさんが着させてくれる。

ここは女性用の控え室じゃないかな…化粧や香水の甘い香りが満ちまくっているけれど。

 

「ほら久、正面を向いて、ルージュがひけないでしょ」

 

ん?ルージュ?僕は男の子なんだけれど、深雪さんが真剣な表情をしている。

みんなも僕の下着姿をみてもなんとも言わず、肌触りのいいキャミソールを着させてくれて、雫さんも間違いないっていうから、渡された服を着せてもらって、ほのかさんが髪を整えてくれて。

 

数十分後、鏡の中にいたのは、それはもう可憐な、美少女がいた。深雪さんと並ぶと、姉妹にしか見えない。むき出しの両肩に細い腕、首筋が儚げなお人形のような顔の美少女。

 

「深雪さんにそっくりな女の子?」

 

誰だろう…ん?あれ?僕?

 

「深雪さん、これって女の子のドレスじゃ…」

 

「何を言っているの久、これは男の娘の戦闘服よ。お兄様も気に入ってくださるわ」

 

「似合いすぎてる」

 

「かっかわいい…」

 

達也くんがそう思ってくれるなら、戦闘服もいいな。と、簡単に騙される…騙されていないはず。

鏡の後ろのほうに水波ちゃんが立っている。その目は…「ばか?」と言っているような気がするけれど、気のせいだ、と思う。

 

パーティー会場はとにかく人だらけだ。これまで参加したパーティーと比べると全体的に和やかだ。雫さんのお父さんは兄弟が沢山いて、今日のお客さんはみんな親戚なんだそうだ。

って事は、雫さんの友人って肩書きの僕は、ものすごく居場所がない…

こういうときはスキル発動、『壁の花』!僕は壁の花になって風景の一部と化そうとしたんだけれど、がしっと深雪さんが僕の腕を掴んで会場の中央に引っ張っていく。

何かストレスの溜まることがあったのかな、3日後にはもう学校だよ…四葉家か生徒会で何かあったのかな?

達也くんが雫さんのお母さんに延々と話しかけられている。達也くんは大人の女性にももてるんだな…あっ達也くんをとられて深雪さんは機嫌が悪い。表情は笑顔だけれど、僕は深雪さんの隠れ感情には敏感なんだ。

 

「こここここっこんにちわっ!」

 

深雪さんに、雫さん、ほのかさん、水波ちゃん、僕という美少女5人の輪に、男の子が混ざった。

…?あれ僕が美少女にカウントされて違和感がないのはなんで。男の子は絶世の美女・深雪さんを見ないで、顔を真っ赤にして僕に挨拶をしてきた。

あれ?この男の子は…

 

「こんにちは、あの時は道案内ありがとうございました」

 

僕は、丁寧に、かつ上品に男の子にお辞儀をしてお礼を言う。

 

「うっうぅん、僕のほうこそ、名前も言わずに、逃げるみたいに…その」

 

「航?久と知り合いだったの?」

 

雫さんが男の子の後ろに立った。凄く似ている。

 

「去年、お勉強会のとき、お手洗いお借りしたら迷っちゃって…雫さんのお部屋まで連れて行ってくれたの…」

 

「12月の試験前の勉強会のときの…久、あなたの方向音痴は筋金入りね」

 

「あはは、でもわかるな雫のお屋敷大きいもの、私も子供の頃迷ったことあるよ」

 

「航、お姉ちゃんにご挨拶なさい」

 

ん?お姉ちゃん?誰のこと…深雪さんのことだよね。

 

「北山航です。今年小学六年生になります」

 

男の子は僕の肉体年齢11歳と同い年だ。背はすこしだけ大きい。ハーフパンツのスーツが凄く似合っている。

 

「多治見久。魔法科高校二年です。4月1日に17歳になりました(戸籍上は)」

 

「えっ!?年上!?」

 

航くんは僕の年齢を聞いて驚いている。

水波ちゃんも一緒に驚いている。水波ちゃんの顔をふっと見ると、物凄く恐縮して頭を下げた。

何だか怖がられている?どうしてかな。四葉家で真夜お母様とお食事をしたときに僕の係りを担当してくれたけれど、嫌われるようなことしちゃったかな。

僕は少しションボリしてしまう。僕は人の感情に物凄く左右されてしまうから…

 

「あっごめんなさい、お気を悪くさせてしまって」

 

勘違いした航くんが謝ってきたので、

 

「違うんです、それよりも航くん、僕とお友達になってよ。僕は男の子の友達が少なくて…」

 

僕は、男子の友人が少ない。達也くん、レオくん、幹比古くん、光宣くん、森崎くん。この5人だけ。女の子の友人は多いんだけれど、料理部に男の子入ってこないかなぁ。

達也くんが深雪さんの隣に戻って来て、航くんが憧れ交じりの目で達也くんに質問している。

あっ僕と同じ目をしている。航くんとは仲良くなれそうだな。

 

パーティー会場に、女優の小和村真紀さんがいて驚いた。

澪さんと響子さんがよく見ているドラマに主演していた女優さんだ。

ほのかさんが興奮して、僕もドラマを見たことがありますって言ったら、当然ねっと言わんばかりに喜んでいる。小和村真紀さんは艶やかな女性だ。見られることに慣れている。自分の美貌を知っていて、それを利用する都会的な人だ。女優だから、日常から少し演技がかっている。

演技しながら、目だけは僕を値踏みしている。十師族のパーティーでも沢山いたタイプ。小和村真紀さんはそれよりも巧みだけれど、僕はそういう人が苦手だ。つい航くんの後ろに隠れるように移動する。

 

「どっどうかしたの?」

 

「その…初めての人とか苦手なんだ…僕は人見知りで、あんまり人の多いところとか苦手で」

 

と航くんを、うるうると黒曜石の瞳を濡らして見つめる。航くんが瞬きもしないで見つめ返してくる。

 

「うっうん、久さんは僕が護るよ!」

 

握りこぶしを作って、凄く頼もしいことを言ってくれた。僕はにっこり笑って、

 

「有難う」

 

って、航くんの両腕を握って、僕の薄い胸に重ねた。

「ひゃひぃ!」って航くんが変な声を上げて、お顔はもう真っ赤だ。僕の胸に触れてた手をしばらく見つめていたけれど、汗かいているな…お熱があるのかな。

 

その後、パーティーの間、僕は航くんの手をずっと握っていた。色々な思惑がある大人たちも子供には近づいてこないみたいだ。と言うか、ドレス姿の僕を多治見久だって気がついた人が雫さんのご両親と小和村真紀さん以外にいなかったんだけれど。

 

それにしても、手をずっと握っているなんて、一高の入学式を思い出すな。あの日も達也くんの制服の裾をずっと握っていた。

初めて達也くんと深雪さんに会ったあの日からもう一年も経つのか…

 

パーティーが終わって、私服に着替える。航くんの手を離すとき、すごく切なそうな顔をしたけれど、女性用の控え室に男の子は入れないもんね…ん?

ほのかさんが化粧を落としてくれて、いつものユニセックスな私服に着替える。でもどうして僕が女性用の控え室にいても誰も疑問に思わないんだろう。

鏡の中の水波ちゃんがジト目でこちらをみている。

 

北山家のご家族がお見送りしてくれる中、帰りの送迎車を順番に待つ。達也くんたちがお車で先に帰り、次は僕の番。

航くんが凄く寂しそうだ。

僕はお迎えの車に乗る前に、航くんに御礼をしようと、ついついいつもの癖で(澪さんや響子さん、真夜お母様にするみたいに)、「有難う、護ってくれて」って、ぎゅって抱きしめながらお礼を言ってしまった。

僕は好意には、凄く敏感だから、ついつい…

澪さんたちと違って、航くんは僕と身長がほとんど同じだから、僕の口唇は航くんの耳元に軽く触れてしまった。耳たぶが凄く熱いよっ!?

 

車に乗って、遠ざかる北山邸を、ドアウィンドウから振り返ったら、その場に崩れ落ちる航くんが見えた。

雫さんがゆっくりと介抱しているのが見える。航くん、やっぱりお熱があったのかな。無理させてしまったな。

今度お詫びに手作りのお菓子を持ってお見舞いに来よう。

僕の『女子力』は、一年前より、遥かに高まっているのだ。

 




第三章開始です。
一年生は42話を毎日アップできましたが、二年生はちょっと不定期になると思います。
原作の二年生のエピソードは達也個人が暗躍する話が多いので、オリジナルを挟みつつ、久もからめるようにいろいろと考えていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
お読みいただき有難うございました。
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