パープルアイズ・人が作りし神   作:Q弥

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オリ主久が、このSS開始からほとんど初めてまともに『魔法』で戦います(笑)。
エイドスや演算領域など細かい部分は冗長なのでカットしていますが、
『魔法』はあまり突っ込まないでください。


周公瑾

「いえ、出前ではないのですけれど…」

 

周公瑾さんの中華料理屋さんは出前はやっていないそうだ。

 

それにしても、おかしいな。どうして警護の人が来ないんだろう。僕の自宅はもう目と鼻の先だ。

周公謹さんは見た目にも涼しげな人物で、一見危険人物じゃない。立ち振る舞いも穏やかで、僕と話すときも妙な挙動はない。

でも、なにか違和感がある。僕と、自宅と、周公謹さんの立ち位置が、不確かだ。たそがれどきのせいだけではない気がする…

 

「ひょっとして、なにか『魔法』を使っていますか?」

 

周さんは、ほうっと感心した表情をした。

 

「驚きましたね。私の『術』に気がつかれましたか。貴方と二人きりでお話したかったので少々、警護の方たちにはよそを向いていただいています」

 

「危険はないですよね?」

 

「ええ、少し方角が狂う程度の些細な『術』ですよ。貴方の大事な方々を傷つける気は毛頭ありません」

 

この人は、僕と『パラサイト』マルテとした会話を知っているみたいだ。

 

「正直、この場所で貴方に接触するのはリスクが高いのですが、貴方はあまり遠出をされないので、少々無理をいたしました」

 

僕に関わろうとすると、行動範囲の狭さと、自宅周辺の護衛の厳しさに誰もが困ってしまう。

SS的にも引きこもりという設定は面倒だ。事件は現場で起きているのであって、自室では何も起きないのだ。

 

「僕に、何か御用ですか?」

 

「ええ、先ほども申し上げたとおり、私は仙術を極めようとする道士です」

 

「仙術…仙人?」

 

「はい」

 

「仙術って言うと…外部から集めた自然エネルギーを自分の魔法力に混ぜて『魔法』にする?」

 

「お詳しいですね。その通りです。その知識はどこから?」

 

「『NARUTO』に詳しく説明されていたよ。ひょっとして『超大玉螺旋丸』とか使えるんですか!?リアルナルト!?」

 

「…残念ながら派手な攻撃の術はありません。仙術は人間の限界を超えた『仙人』になることが最終目的です。

『仙人』は古代中国では『神』と同等、厳しい修行の末に肉体を保ったまま永遠の存在になること…です」

 

「永遠…不老不死?」

 

「ええ、『パラサイト』のマルテの話では、あなたがそうであると…私は駆け出しの道士で『仙人』どころか、肉体を放棄して永遠になる『尸解仙』にあと少しと言ったところです」

 

「肉体を放棄して永遠になる…精神の存在…マルテさんが言っていた『高位次元体』のことですか?」

 

「そうです。『仙人』にいたるには己の『氣功』を研ぎ澄まし高めなくてはなりません。『氣功』を高めるには、自己鍛錬と強者との命がけの戦いが必要です」

 

「僕と…戦うんですか?」

 

「出来ればそうしたいのですが、現状貴方と戦っても私に勝ち目はないでしょう。ですから少々、胸をお借り…ああ魔法科高校で言うところの模擬戦をお願いしたいのですよ」

 

「…模擬戦?こんな住宅街で?」

 

特定の場所以外での魔法は厳しく規制されている。はずだけれど、原作ではあちこちで使っているなぁ…それだけ『魔法師』の数が多いって事なんだろうけれど。

 

「センサーのたぐいは私の術で妨害していますので、無茶な依頼ではあるのですが、一術者としてお願いできますでしょうか」

 

そしてセンサー類は簡単に操作できるんだよな…僕の周りに妙なスキルを持った人が集中しているのかもしれない。僕の周りじゃなくて達也くんの周りかな。

 

丁寧に頭を下げる周さん。

ふと、僕は右手の薬指にはめられた指輪を見る。真夜お母様がプレゼントしてくれたこのCADを使ってみたいって欲求がある。

 

「相手を傷つけない威力でいいなら…」

 

せっかく澪さんたちがプレゼントしてくれた制服を初日から汚したくはない。

 

「ありがとうございます。それではその条件でよろしくお願いします」

 

周さんが腰を少し落として、攻撃態勢に入った。

 

「行きます!」

 

どこから取り出したのか手にダーツの矢みたいなものが握られていた。

周さんが銀の矢を鋭く放る。速度はそれほど速くない。

胸の水滴型デバイスに使用魔法と規模をイメージしてサイオンとともに送り込む。指輪型CADがタイムラグなく反応した。

僕は『自己加速魔法』で攻撃をかわした。アスファルトに落ちた銀の矢は、やじりの部分が丸まっていて刺さらないようになっていた。僕を傷つける意思はないみたいだ。今のところは…

二本、三本と矢を投げる。『自己加速魔法』でステップを踏むように避ける。一高の靴がアスファルトの表面をこする。

数回『自己加速魔法』を使ってみて、この『魔法』は僕には向いていないことがわかった。

なにしろ僕の身体は貧弱だ。下手に加速しても足がついていかないし、数回しただけで身体が痛い。

『自己加速魔法』の得意なエリカさんは、物凄く鍛えているんだな…

『念力』で身体を動かすことも可能だけれど、今の僕は『魔法師』なんだ。『魔法』だけで試したい。

 

周さんは今度は『魔法』を銀の矢に込めて、左右一本ずつ続々と放つ。

矢は『自己加速魔法』でかわす僕を追ってくる。身体が持たないので、後方に下がると、『圧縮空気弾』を撃つ。矢が失速する。『圧縮砲』は軽い砂埃を上げて、地面に当たる前に消える。

周さんは指をぱちんと鳴らした。矢よりも小さく速い飛翔体が何十発も同時に空気を裂いて飛んでくる。変幻自在な動き。魔法が込められている。

『ベクトル変換魔法』で術がこめられた金属の玉を周さんに返す。

ベクトル変換した金属の玉は周さんの身体にかすりもしない。周さんの立っている周りの空間に奇妙なもどかしい違和感がある。これが方位を狂わすって事なのかな?

 

「魔法の発動速度が過去最高ですか…流石にやりますね」

 

周さんは背広の内ポケットからお札のようなものを取り出し、指で撫ぜた。

僕の周りに炎が上がる。でも熱は感じない。『幻術』。威力は落としているように見えるけれど、わからない。触れたとたん爆発的に燃え移るかもしれない。油断はできない。

僕は『加重魔法』、空気の濃度を変化させて幻術の効果を打ち消そうとするけれど、消えない。光系の幻術?

『屈折魔法』。幻術は揺らいだけれど消えない、精神系のようだ。精神系を対処できる魔法はないので、

 

「だったら!攻撃は最大の防御!」

 

『電撃魔法』が周さんを襲う。当たらなかった。方角を狂わされている。さっきの周さんの言葉を思い出した。

でも周さんも、電撃が自分の近くに落ちるのをみて、すこし慌てたみたいだ。幻術が消える。

これは『パラサイト』事件のときの赤い仮面の魔法師に攻撃が当たらなかったときに似ている。

目に見えているものに固執しては攻撃は当たらない。でも探知系が弱い僕には難しい。

3月リーナさんが演習室でみせたプラズマの嵐を思い出す。同じように『電撃』を面で攻撃する。数十本の稲妻が隙間なく周さんに降り注ぐ。

 

「くっ」

 

ばりばりって物凄い音がしたけれど威力は落としてある。

『電撃』が周さんの放った札に吸い寄せられる。避雷針みたいだ。札は一瞬で燃え尽きる。

燃え尽きた灰が地面に落ちるより早く、周さんは全ての札をアスファルトにたたきつけた。

にょきっと四本足の獣が、湧き出てきた。横浜で見た『化成体』と似ている。5体いる。

『電撃』や『火炎』で攻撃するけれど獣には通用しなかった。

獣は牙と爪で四方と頭の上から同時に襲い掛かってくる。

 

「じゃぁこれなら」

 

物理的な攻撃では効果がないとわかるとマルチキャストで『加重』『減速』『移動妨害』で獣を攻撃する。

ひとつの『魔法』では無効化だったけれど、複数の『魔法』を組み合わせて獣を消滅させた。

 

周さんは終始距離をおいていたけれど、僕は接近しようか悩む。

貧弱な僕のパンチやキックはたぶん通用しない。周さんは体術も得意そうだし、たとえパンチが当たっても、痛いのは僕の手の方なのは、入学したての時の十文字先輩との模擬戦で経験済みだ。

 

周さんが攻撃をやめて、戸惑った表情をみせた。

 

「貴方は…『魔法』を使ってらっしゃる?『サイキック』ではなかったのですか…?マルテの情報は間違っていたようですね」

 

「僕は魔法科高校に通う『魔法師の卵』ですよ」

 

今の僕の瞳は薄紫の光をほんの少しだけ放っているけれど、『魔法』の規模は怪我をしないようにかなり抑えているから、夕日の赤に負けてほとんどわからないくらいだと思う。

僕は真夜お母様にいただいた思考型CADで『魔法師』になっている自分に少し酔っていた。今の僕は『サイキック』は使っていない。一高に入学して初めて、『魔法』で戦っている!この思考型CADは物凄く使いやすい。

膨大なサイオン量と魔法力をきちんと制御して、苦手だったマルチキャストを使って、複数の『魔法』を連続して使っていた。僕の胸元の水滴型デバイスのある辺りが淡く輝いていた。

その輝きに周さんが気がついた。

 

「思考型CAD…ですか?なるほど、それを使用していたので、マルテにはわからなかった…ということですか。これは誤りましたね…」

 

少し誤解があるみたいだけれど、周さんは僕の『サイキック』と戦いたかったみたいだ。

マルテの時は思考型CADは当然持っていなかったけれど、周さんは僕が十師族のツテで、市販化される前に手に入れていたと思ったみたいだ。

 

お互い、威力を抑えた攻撃は、まさに『模擬戦』だった。スポーツ感覚に近い。

僕も周さんも汗ひとつかかず、最初に向かい合ったときの位置に戻った。

 

「ここまでにいたしましょうか」

 

「…ええと、ごめんなさいご期待に添えなかったですよね?」

 

「いいえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。どうやら情報不足だったようです」

 

手に扇状に広げた残りの札を器用に束ねると、背広の内ポケットにしまう。その手つきはマジシャンみたいで、ちょっとかっこいい。不器用な僕には無理だなぁ…

周さんはきりっと背筋を伸ばして、襟元を正すと、きちんと腰を曲げて頭を下げてきた。

あわてて僕もお辞儀を返す。

位置情報は狂わされているけれど、周さんの姿自体は幻術じゃないようだ。本人が頭を下げている。

その間も決して視界からはずさないように注意する。今回は正面から向かってきたから対処できたけれど、『魔法師』の僕が本気の周さんに勝つのは難しそうだ。まだ全然手の内を隠しているだろうし。

僕は古式魔法師の隠密性とは相性が悪いみたいだ。

 

「ご迷惑ついでですが、今後もお付き合いいただけますと幸いです。十師族の庇護下にある貴方ではなく、多治見久様本人とです」

 

「それは…どこが違うんですか?」

 

「私は術者なので、権力には興味がないのです。もちろん身を守るために権力者の方と共闘することはありますが、私自身は仙道を極めたい、ただの道士です。『高位』である貴方にご指導をたまわりたいと考えているだけです」

 

ウソではないと…思う。本来の周さんはもっと裏がありそうだけれど、僕に対する態度は真摯と敬意に溢れている。それが演技なのかもしれないけれど…正直このあたりの判断は僕には難しい。周さんは笑みを終始たたえて本心がわからないからだ。

 

「僕が『高位』かどうかはわかりませんよ。マルテさんの証言だけで証明のしようがないですから…」

 

「…そうですね。とりあえずは今回のお詫びに、私の店にご招待させてくださいませんか?」

 

「中華料理店ですか?えぇとどこにあるんですか?本格的な中華って食べたことがないから凄く気になります」

 

僕は美味しいものさえ食べていられれば大概幸せなんだ。そういえば昔、お菓子を呉れるからってほいほい知らない大人に着いていくなって達也くんに言われたけれど、食べ物で釣られるのは、ひょっとしたら僕の一番の弱点かも…

 

「横浜の中華街です。中華街でもそれなりの店ですから、ご満足いただけると。もちろんお友達もご一緒でかまいませんよ」

 

「横浜は…ちょっと遠いな…僕は引きこもりだから遠出はしないし」

 

横浜…いろいろと因縁がある街だな。魔法協会の本部があるからなんだろうか。

とはいえ、僕は基本、一高と自宅の往復だけの毎日。日曜日は引きこもっているし…

 

「では機会がありましたらいつでもお尋ねください」

 

「お店の名前はなんですか?」

 

「いえ、中華街におこしいただければ、こちらからご案内させていただきます。ではあわただしくて恐縮ですが、私はこれで…」

 

周さんがまぶたを伏せて、軽く頭をさげて優雅なお辞儀をした…

 

はっと気づくと周さんはいなかった。使用した武具のたぐいもいっさいなくなっている。

夢でも見ていたのかと思うくらい、唐突に視界から消えていた。急に住宅街の生活音が聞こえてくる。僕と周さんが対峙していたのは数分だった。

数分のわりには中身が濃かったな。でもなんだか、狐につままれた…そんな言葉がよぎる。

何となくだけれど、周公謹さんとは長い付き合いになるような気がする。

肉体を捨てて精神の存在になる…精神は何かに憑いていないとやがて消滅してしまう。

『仙人』は精神を失わないで永遠になる方法を知っているのかな。他人の身体に憑いて生きながらえる『パラサイト』は『尸解仙』と同じモノなのかな?

よくわからないや。僕は頭はあんまりよくないんだから…

 

きょろきょろ周りを見回しながら、今頃になって、僕は片手に手提げかばんを持ったままなことに気がついた。キャンパスノートや空のお弁当箱、お土産の桜餅が入っている。

これを片手にもったまま『模擬戦』をしていたのか…周さんはどう思っただろう、余裕や手抜き?わからないな。

『自己加速魔法』のせいか普段使わない筋肉と関節が少し痛い。『回復』で治るけれど…

 

自宅に帰ると、警護の人が玄関の死角になる箇所に立っていた。『模擬戦』でアレだけの音がしたのに気がつかないなんて…これはちょっとまずいのではないだろうか。

もし周さんが澪さんを害しようとしたら、この人たちでは防げない…そう考えたら、僕は震えがとまらなくなった。僕がいれば空間を『遮断』して、一切の攻撃は防げるけれど、もし澪さんや響子さんが敵の手に落ちたら…女性の身になにかあったらと思うと、とにかく恐ろしい…

周さんとは友好的な関係を築かないといけない。

 

僕は玄関に靴を脱ぎ散らかしたまま、照明のついているキッチンに駆け出す。

達也くんの家に寄る前にメールで帰宅時間を知らせているので、いつもなら台所で夕食の準備をしていてくれているはずだ。

ばたんと扉を開けると、エプロン姿がお似合いな黒髪の美女が、驚いて振り向いた。

きょとんとしているけれど、相変わらず可愛い。

僕はとてとて近づくと、いきなり澪さんを抱きしめる。

 

「ひゅあぁ?久君?どうしたの?」

 

嬉しさや驚きが混じった奇妙な声を澪さんがあげた。身長差から僕の顔は澪さんの胸に埋ま…らない…相変わらずのぺたん…こ…げほんげほん。

さて、いきなり抱きついて、澪さんの無事を確認したのは良いけれど、どうしよう。

周さんの事は心配させるから言えないし、ロマンティックな文句のひとつも思い浮かばない。

 

「あっあのね、制服…そう、新しい制服で今日から学校に通えて嬉しかったんだ。澪さんありがとう」

 

「そっそこまで喜んでくれると私も嬉しいけれど、あら?胸のところに何か硬いもの…ペンダント?」

 

澪さんは流石に感覚が鋭い。僕の胸にかけられたデバイスにすぐ気がついた。僕はデバイスと右手の指輪を澪さんに見せる。

 

「これ、完全思考型のCAD。FLT社のモニターを兼ねて、達也くんがプレゼントしてくれたんだ。トーラス・シルバーの新作なんだって」

 

僕は最高の笑顔でCADを澪さんに見せる。

他の人には『真夜お母様』のことは話さないようにって言われているから、達也くんが呉れた事になっている。『真夜お母様』は恥ずかしがり屋さんなんだなぁ。

 

「それは凄いことですね。でもどうしてお友達の司波達也くんがそんな貴重な…ああ司波くんは物凄いエンジニアでしたものね、FLTが司波くんに関心を持つのは当然ですね。それに久君の魔法力はモニターとしては最適ですもの、よかったですね」

 

澪さんは自分で自分の疑問を解決してしまった。頭の良い人は凄いな。

 

「私もFLT社のCADを使っているんですよ」

 

「え?そうだったんだ」

 

澪さんが携帯電話型のCADを見せてくれた。一見普通のCADだけれど、表にトーラス・シルバーのロゴが刻印されていた。いつもは失念してしまうけれど、澪さんは戦略級魔法師である以前に優秀な『魔法師』なんだ。僕なんかより遥かに、達也くんや深雪さんと同じ高みにいる人なんだ。

周さんの『術』は心配だけれど、過度な心配は不要かもしれない。もちろん用心に越したことはないけれど。

 

「久君、少し髪が乱れていますね、それに埃っぽい…?」

 

『模擬戦』で動き回ったから、少し砂埃で汚れているかも。制服もやっぱり埃っぽいかな。

 

「今日は春の暖かい風が結構吹いていたから…」

 

僕と周さんの髪が、風にそよいでいたのを思い出す。でも、周さんは少しも埃がついていないような気がするな…

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

澪さんが『魔法』で制服の埃を取ってくれた。埃が床に落ちる…澪さんがCADを操作すると、埃は一塊になってゴミ箱に入った。

 

「すごい!」

 

こんな緻密な『魔法』を簡単に使いこなせるなんて、やっぱり澪さんはこの国最高の『魔法師』なんだ…でも、

 

「…でも、制服だけ?髪も一緒に綺麗にすれば…」

 

僕の指摘に急にもじもじし始める澪さん。いきなり挙動不審だ。

 

「髪は…その私がお風呂で洗ってあげ…ま…うぅぅうううう」

 

照れまくって言葉を続けられなかったようだ。響子さんの真似をしようとしたみたい。小悪魔は澪さんには無理っぽい。

 

「そうだね、じゃぁ澪さんに洗ってもらおうかな…」

 

いつもなら慌てて断るところだけれど、僕の不安はこころに淀みを作っている。今は離れたくない。僕の依存性は高まる一方だ。

 

「じゃっじゃぁ、そのままお風呂に一緒に入っちゃおう…かな」

 

「…うっうん」

 

『家族』だもん、僕は子供だし、問題はない!ないはず。

僕が先にお風呂に入ってシャワーで室温をあげていたら、絶妙のタイミングで響子さんが帰宅してきた。

 

「うひゃぁい響子さん!?」

 

お風呂の外から、澪さんのスットンキョウな声が聞こえてくる。

 

「あら?澪さんお風呂?久君は?あら一高の制服に下着が脱衣所のかごに綺麗にたたんで置いてあるわねぇ」

 

たぶん響子さんの表情は獲物を見つけた小悪魔になっている。たぶん。

逃げ場が…ない!

 

「じゃぁ私もお風呂に入ろうかな」

 

「ちょっ響子さん!?じゃっじゃあ私が先に!」

 

「ふひぇ!?」

 

逃げ場は無いんだって!

二人とも弟(響子さんには光宣くんは弟同然だ)がいるから子供の僕の裸は全然平気なんだ。

僕は二人の裸は…僕は平気じゃないよ、手で隠して見ない。目を瞑ってるから見えない。あぁ、そこわぁ!ああぁん!

その後、僕は便乗した小悪魔と、遠慮がちなのにちっとも遠慮していない澪さんに全身を洗われまくった。

ふぇぇ、もうお婿にいけない。

 

でも、『家族』って幸せだな。僕の力で護りたい。

 

 




原作では「たとえ死すとも私は在り続ける!」と言って周公瑾は燃え尽きますが、
基地内で裏切り大尉との会話で『尸解仙』にすらいたらないと言っていますので、
最後、みずから肉体をすてて『仙人』、肉体を捨てた永遠『尸解仙(このSSにおける精神の存在)』になったのでは、と思うのです。
原作で、いずれ周公謹は復活するかもしれませんね。

お読みいただき有難うございました。

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