キャラ崩壊のギャグです。
でもドラマCDの達也はかなり崩壊していましたよね。にやり。
学校の特別授業で俺、司波達也はプシオンを利用した心理テスト、要するにバーチャルデートをした。
正直、トラップとしか思えないが…
モニターである俺の協力者は、親しい先輩、小悪魔な生徒会長、同級生、俺に好意を寄せる女子、友人男子Lだった。
全員を攻略…実験は無事に終了した。いや、テスト用の腕輪型端末が電子音を出し、もう一人協力者を用意したと言う。
協力者は…
男の娘だとぅ!!?
心当たりが、いや該当者は一人しかいない。
リアルすぎる学校のシミュレーションルームが、海の見える公園にかわった。ここで待ち合わせ、なのだろう。
「達也くーん」
遠くから俺を呼ぶ声がする。俺ガイルの戸塚…てさぷるんの陽菜…オバロのルプーの声と同じ声だな。
何故こんなに詳しいのかって?深雪が稽古事をしている時の時間つぶしに過去のアーカイブを…
「達也くん、お待たせ…」
「俺も今来たところ…なっ!?」
久の声に振り向いた俺は、過去になくした感情が復活したのかと思うほど、胸の鼓動が高まった。
なんだこの可愛い生き物はっ!
久は白いキャミソールワンピースを着ていた。適度なフリルとレースがあしらわれたスカート…これはどう見ても女の子の服装だ。
折れそうなほど華奢な鎖骨、筋肉など殆どついていない腕。ヒールサンダルからは綺麗にそろった爪が覗いている。
肩から背中までまっすぐ伸びた黒髪、まるで5年前の深雪を見ているようだ。
考えてみれば、俺はぶかぶかの制服を着た久の姿しか知らない。こんな儚げな姿をしていたのか…
「達也くん、今日はよろしくね」
まて、前かがみになるな!見えるピンクの何かが見えるっ!
「僕、すっごく楽しみで全然寝られなくて、いやいつも寝られないんだけれど、あっこの服、深雪さんが選んでくれたんだ。男の子はデートでこう言う勝負服を着るんだって」
騙されているぞ、それは女の子の服装だ。通りで深雪好み、つまり俺の好みの服だったわけだ。
久は基本的に他人を疑わない。お菓子を上げるというと誘拐犯でもついていくタイプだ。
端末のディスプレイに選択肢が三つ表示された。
『普通のデート』『危険なデート』『過激なデート』
ここは…『普通のデート』だ。まずは公園の散策、か。
「うん、僕は普通がいいな。ねっねえ達也くん、手を繋いでいい?」
「ああ」
久の小さな手が、俺の手を握る。熱い…体温がかなり高い。「大丈夫か?」思わず尋ねる。
「えへへ、僕…緊張しちゃって、ちょっと熱っぽいかも…」
たしかに発熱しているようだが…違う。久の小さな手に、何か膨大なエネルギーが渦巻いている。
そのエネルギーが繋いだ俺の手にも少しずつ流れてきている。これは、サイオンだ。
膨大な量のサイオンが久の体内に宿っている…これは人間のレベルを超えている!
久は二ヶ月ほど前まで、どこか人里離れた山奥で病気療養をしていたらしい。
これだけの魔法力やサイオンをもつ人物が魔法界に無名でいられるはずはないから、その隔離されたサナトリウムでずっと暮らしていたのだろう。
一般知識にも疎く、天然…いや浮世離れした…
「どうしたの?なにか考え事?僕なにか悪いことしちゃった?」
上目遣いに俺の顔をうかがう久。何だこの無垢で可愛い生き物はっ!!
「いや大丈夫だよ、じゃあ行こうか」
「うん!」
満面の笑みを浮かべる久。ヒールサンダルのためいつものとてとて歩きではなく、おずおずと歩いている。
久の歩幅にあわせて、俺もゆっくり歩く。
端末の選択肢は他の協力者の時と違って無難イベントが多かった。
『一緒にソフトクリームを食べる』
『頬についたクリームをやさしく舐めてあげる』
『ペットショップで子犬とじゃれあい、乱れた裾から太ももの奥が見えるラッキースケベ』
『公園の噴水で水を掛け合いワンピースがわずかに透ける』
『ランチを食べさせ合いっこする』
『お姫様抱っこ中に久の吐息が耳元にかかる、ああいい香り…』
…無難?…おかしい、いつもの俺なら絶対に無難だとは思わないはずだが、前の協力者の一緒に温泉なんて選択肢に比べれば、無難…だ。
それにしても、少し前から気になっているのだが、久の下着はどうなっているのだろう。
どんなに可愛くて愛おしくてたまらず抱きしめたくなっても、久は、男の娘…いや男なのだ。
ワンピースに男物のトランクスはおかしいだろう。
そういえば、さっきのスカートの裾がめくれたときに、白い布地が…いっいや、考えるな。
考えるな、と決めると本当に考えなくなれるのはありがたい…
デートをはじめて、かなり経った。前回までの協力者の時より時間が長いが…
今はショッピングタワーにいる。
隣を歩く久は、さすがに疲れてきたのか、少し足の運びが遅い。俺は歩く速度をさらに落として、
「さすがに疲れたな久、今日はここまでにしよう。それともまだどこか行きたい所はあるか?」
「うーん…そうだ、服が欲しい、僕は学校の制服とパジャマくらいしか持っていなくて、買い物も…その一人だと何を選べばいいかわからなくて」
「端末で買えば簡単なんだが、久は機械音痴だったな、そうだな…」
左腕の端末が反応し、選択肢のディスプレイが表示された。
『パジャマを買う』
『女性用水着を買う』
『女性用下着を買う』
…バカなっ!?パジャマは今持っていると言ったぞ。そもそも服と言っているのに何故水着と下着、しかも女性用!!
この実験用端末は絶対に不具合を起こしている。久を女の子と認識している。ぐぬぅ。
だが、これは実験…モニターの俺としては選択肢に従わねばなるまい。
…本当にそれでいいのか?
水着は試着室で何着か試着して感想を聞かれるだろう。もっこ…りを隠すために全種類パレオにするわけには行かないだろう。
下着は今も女性用を履いている…のか?ならば、選択肢は女性用下着しかないのか?そうなのか?
「そっそうだな、まずは下着から選ぼうか」こう曖昧に言えば、久は男物の売り場に行くに違いない、頼む行ってくれ。
「うん」
久は迷うことなく、女性用下着売り場に入っていった。
深雪っ!!!!やはり、お前は久に女性用を履かせたのか!!なんて事を!
久は色々と下着を見て回っている。どう見ても女の子だ。
男性用売り場に比べて、やたらと広く、選ぶのは時間がかかる。
考えてみれば、兄妹の深雪と違い、他人に下着姿を見せたくは無いだろう。
乙女の恥じらい…があるだろう。乙女ではないが…
深雪は下着姿をよく見せてくるが…深雪は乙女ではなく淑女だ。
「ねっこれ似合うかな」
「ああ、似合うよ」
久は可愛らしいデザインのショーツを俺の顔の前に広げる。
男の冷静さを保ちつつ答える。それを試着するのか…?
その姿を見せないでくれ。たとえ見せようとしても、全力で阻止しよう。
「あっこのブラかわいい」
「まだブラジャーは早い!」
代金は俺が払う。男の娘に女性物の下着を買う…背徳感…違う、ぐぅう。
ショッピングタワーから出る。
久は俺の腕に左腕をからめ、右手にラッピングされた紙袋をさげている。
中には、歳相応(?)やすこし大人びた下着が数枚…いや、考えるのはよそう。
最初の公園に戻ってきた。かなり精神的に疲労したが、夕日が海の見える公園を赤く染めている。デートはこの当たりで終りだろう。
「達也くん、今日は本当に有難う。僕、こんなに楽しかったの生まれて初めてだったよ」
「大げさだな」
「うぅん、おおげさじゃないよ、何だか僕…幸せだよ」
「なら良かった、俺も楽しかったよ」
久は頭を深々とさげ「じゃあ、また明日学校で」と身を翻し、とてとてと走り出した。
涙を見せまいとしたのか?
ん?とてとて?
ヒールサンダルでその走り方は…
「おっおいいきなり走ると…」
予想通り、久は足を滑らせる。片方のサンダルが飛ぶ。
俺は自己加速魔法で久を助けようとするが間に合わず、久は公園の土の地面にころぶ。
「きゃうんっ!」
物凄く可愛い声で尻餅をつき、ぺたんこ座りになる。地に着いた右手の下で紙袋がつぶれていた。
「久っ、怪我はないか?」
俺の顔をぽかんと見あげる久。
「怪我は…ないけど、服破れちゃった…せっかく深雪さんが選んでくれた服なのに…」
久の紫がかった黒い瞳に、うるんっと涙が溜まる。
ぐぅ、壮絶に抱きしめたい…
そこに、ぽつん、ぽつんと雨が降り出した。雨は一気に土砂降りになり、雷鳴がとどろき始めた。
なんだこの謀ったようにベタなタイミングは!やはりトラップか!!
久を助け起こそうと伸ばした左腕の端末から、ディスプレイが開く。
『このまま放置して一人帰る』
『雨に濡れたまま、ふたりで抱き合い温めあう』
『目の前のホテルで休憩していく』
なっなんだと…正解が、ない!
雨のせいで気温が一気に下がり始めた。久の濡れた肩が震える。
「くちゅんっ」
くしゃみまで可愛い…
ええいっ、俺は、びしょぬれで全身の肌が透け始めた久を抱きしめると、目の前のホテルに駆け込んだ!
シャワーの音が聞こえている。
俺は適当にタオルで髪を拭くと、清潔な白いシーツのベッドに腰掛けた。罠だ…策略だ。
今頃、見ないとか言っていたモニターで、あの小悪魔生徒会長はにやにやしながら俺の姿を見ているに違いない。
この実験と言う名の罠は、ここで終りにしなければ、俺が終わる。深雪に殺される。
深雪に殺されるのは構わないが、そうなると深雪も自ら命を絶つだろう…
絶対にここで終わらせる!
「達也…くん」
顔をあげると、
(俺が買った)青いリボンのショーツを履いて、胸と下(どこだ!)を細い腕で隠し、
濡れた黒髪を華奢な肩にふわりとかけ、潤んだ瞳でこちらを見つめる久が立っていた。
どう見ても女の子だ…顔を真っ赤にして、震える足でゆっくりと俺のほうに歩いてくる。
待て!
ぎしりと音をたて、ベッドに上がり、横座りになり俺を見つめてきた。石鹸の香りが鼻腔をくすぐる…
「あっあのさ、ここってそういう事するところなんだよね」
待てっ!
「僕ね、こっ怖いけれど、達也くんなら…いい…かな」
頼むから待ってくれ!
「僕、痛いのは慣れてるけれど…できれば優しくしてくれると…一生の思い出に、できるかな…なんて」
台詞まで壮絶に可愛いが、待ってくれっ!
久のまぶたが静かに閉じられ、あごを軽く俺の方に上げて…
左腕の端末からディスプレイが現れる。よし、中止の指令か!?
『する』
『しないわけにはいかない』
『今夜は寝かせないよ』
待てぇ!!!!!
久の柔らかい身体が、俺の身体にゆっくりと重なる…
すぅ…すぅ…すぅ…
なっ…に?
久は俺の身体にもたれかかったまま、すやすやと寝息を立てていた。
かなり疲れていたのだろう、ゆすってもまったく起きない。
助かった…
助かっ…てない!
俺にはわかる。今、深雪はこちらに向かって来ている。怒りのオーラを感じる。
深雪が久にあんな格好をさせたんだろう!という俺の意見など無駄だろう。
シミュレーションルームの扉がひらく。
ごおおおおおお、氷の女王が光臨していた。
俺は今日二度目の回避不能の攻撃を受けた。
自己修復術式がオートスタートした。
その間、久は幸せそうに眠っていた…
ん?
…誰が久を着替えさせるんだ?
まさか俺か?
久は深雪から借りたキャミソールワンピースで九校戦にでる…(笑)