ここは地球。北の極地のある場所で、グリニア兵の一人が空を見上げると、吹きすさぶ吹雪の奥に、三つの流星が見えた。
流れ星。夜空に流れるそれを見つけ、願いを三回唱えると願いが叶うという幸運の証。だが、度重なるクローニングのせいで劣化してしまった知能に、願いなどというものは存在しない。今あるのは、実行している命令のみ。それは、『警戒して待機』である。
同じ顔、同じ仮面を被ったグリニア兵たちが囲んでいるのは、岩山に空いた大きな洞穴である。
急ごしらえの発着場に、一つのグリニアのスペースシップが降り立った。ハッチが開き、中から出てきたのは、グリニアの学者であり、司令官でもあるCaptain Vor。その腰には、愛銃であるSEER――オロキンとグリニアの科学の融合した逸品――がホルスターに収まっている。Vorの後ろから、ぞろぞろと彼の私兵たちが後に続く。
Vorが現場の様子を探るように周囲を見回していると、
「聞いていなかったのか? これは俺の手柄だぞ!」
そう言って出てきたのは、この場所の責任者であるBorilだ。
Borilが追いやるようにVorの肩を押すと、Vorは後ろによろめいた。だが、瞬時に態勢を戻すと、Borilの腹部を蹴り飛ばし、背面のプラズマスパイクを取り出して、投げつける。見事なコントロールで投げられたそれは、Borilの胸に直撃し、Borilの全身をスパークさせると、その場に崩れ落ちた。
Vorは倒れて動かなくなったBorilを一瞥すると、フン、と鼻を鳴らして洞穴へと進んでいった。
その様子を見ていたグリニア兵たちは特に無関心な様子でそれを見ていた。今のが侵入者ならば大問題だが、そうではない。たとえVorを捕らえるなり殺すなりすれば、悪ければ処刑、良ければ闘技場に送られる。だが、どちらにせよ生き残ることは難しいだろう。執行人たちはかなりの腕利きだと聞いているし、その実力は何度も見たからだ。
そこまで考えての行動かどうかは分からないが、とにかく彼らは今までの命令を続行することにした。ただ責任者が変わっただけのことなのだから。
洞穴をしばらく進んだ先には、きらびやかな金の装飾で縁取られた巨大な部屋があり、その奥には円筒形の物体が壁に埋め込まれていた。この部屋は、かつて太陽系全体を支配していたというオロキンの遺跡である。彼らは何らかの理由で滅びてしまったようだが、彼らが星々に残した遺跡は、今でも残っている。ここもその一つである。
Voidゲートと呼ばれるそれは、この宇宙とVoidと呼ばれる場所をつなぐ架け橋である。だが、今のままではこれは機能しない。
Vorが「持って来い」と指示すると四人のグリニア兵によって巨大な機械がゲートの前に置かれた。トーションビーム発生装置である。Vorが左胸のJanus Keyを取り外し、発生装置に取り付けた。装置から天井のエネルギーソーサに金色のビームが伸びると、ゲートに一瞬宇宙の星々が映り、さらに別の場所が映った。Voidのオロキン・タワーの内部に繋がったようだ。タワー内部はかなり荒らされていて、謎の植物のようなものが至る所に根を張っている。壁面には人一人がちょうど入る大きさのポッドが設置されていた。すると、唐突にそのポッドが開き、中から人型の何かが落下した。白と灰色のWarframe、Excaliburである。
Vorはそれを見て、満足げな表情でゲートを潜り抜けた。グリニア兵たちが先行してExcaliburを囲む。
「Tenno……貴様は私の物だ……捕まえろ」
二人の兵士がExcaliburに近づこうとした、その時である。グリニアの一人が、うめき声を漏らしてその場に崩れ落ちた。頭部には一本の矢が刺さっている。Vorが咄嗟に後ろを振り返ると、三つの影が彼の頭上を飛び越えていった。そしてExcaliburを守るように着地する。
Vorは唸った。
「貴様ら……Lotusの差し金か」
Excaliburの前に降り立った三人の戦士は、右からNyx、Frost、Ashである。Frostが右手のひらを正面に向けると、Freezeを放った。Vorは凍り付きはしなかったものの、その場に倒れると、「奴らを殺せ!」と大声で命じた。
オロキンの遺跡は、一瞬で戦場へと変貌した。三人の戦士たちは各々の武器で交戦し始める。と同時に、Excaliburのシステムが起動し始めていた。シールドシステムが作動し、全身に青いオーラが一瞬駆け巡る。
Ashは全身にエネルギーを漲らせ、三人に分身すると、手当たり次第にグリニア兵たちにテレポート、そののど元を引き裂き、首をはねる。
弓のみで応戦していたNyxはだんだんと敵に囲まれ始めていた。だが、彼女はAbsorbを発動。座禅を組んで宙に浮かぶと、周囲にアブソーブ・フィールドを発生させる。アブソーブ・フィールドが敵の弾丸を吸い込んでいく。そして、エネルギーを解放させると、フィールド内のエネルギーが衝撃波に変換されて周囲のグリニア兵を一掃した。
一階の敵のほとんどを排除したのを確認したFrostは、二階に上って背中に背負った巨大なサイス――REAPER PRIMEだ――でグリニア兵を、一人、二人、そして三人と斬り付け、最後に階段を昇ってくる敵の集団に向かってIce Waveを放って氷漬けにした。
Excaliburのアビリティシステムが再起動し、全てのシステムがオンラインになる。Excaliburは、その二本の足で、地面に立った。始まりの戦士の再来である。
グリニアが劣勢なのは誰の目にも明らかだった。数では圧倒的に上回っていても、銃と剣の達人であるTenno達には、敵わないのだ。Vorが焦ったように周りを見回す。次々と倒れていくクローン兵達……
だが、手ぶらで帰るわけにはいかぬのだ……
Vorは腰から二つのプラズマスパイクを取り出し、Excaliburに投げつけた。彼の判断は的確であった。丸腰で、しかも目覚めたばかりなのだ。避けようがない。だがVorはTennoの力を、少々過小評価していたようだ。
スパイクは投げられる刹那、それに気づいたFrostが持っていた予備の剣、NikanaをExcaliburに投げつける。Excaliburはそれを受け取ると横に一閃、二つのスパイクを切り裂く。切り裂かれたスパイクはオーバーロードを起こしてその場で小さく爆発した。
エネルギーが充填されているのを確認したExcaliburは全身のエネルギーバイパスを通して剣にエネルギーを流し込み、それを地面に突き立てた。エネルギーが分散し、細かい剣の雨となってグリニアを貫く。Radial Javelinだ。
Vorは咄嗟に展開したシールドで何とか防いだが、彼以外のグリニアはすべて地に伏せていた。彼は顔を歪ませ、歯ぎしりすると、左胸から金色に輝くKeyを取り出し、前に掲げる。すると、誰が予想しただろうか、金色のビームがExcaliburに向かって伸びていく。ExcaliburはすんでのところでそれをNikanaで凌ぐ。だが、Keyから発せられる予想外のパワーに少しずつ押され始める。
「これぞ、Voidのパワーだ!」
Vorはそう叫び、さらに腕を押し込むと、光軸の光が増し始めた。だが、彼はほかのことにおろそかになってしまっていた。Keyを持つ腕にNyxの矢が刺さる。痛みに悶えたVorは思わずKeyを落としてしまう。さらにNyxのアビリティが発動、ChaosによってVorの感覚を狂わせる。彼が苦しそうに頭を抱えると、Teleportを発動したAshがVorの背後に回り込み、その両腕を切り落とす。Vorは痛みに叫び、後ろによろめく。
そして、Frostが周囲の空気を冷却し始めた。彼の最強のアビリティ、Avalancheが発動する。寒波の雪崩がVorを飲み込み、全身を氷で覆った。
Nikanaを持ってExcaliburが走る。Vorの前でスライディングして回転、その回転の勢いで彼の体を上下泣き別れにした。
Vorの上半身が地面に落下し、下半身が崩れ落ちる。ExcaliburはNikanaを背中のアタッチメント部分に納める。すると、Frostが彼の肩に手を置いた。
(Tennoよ、The Lotusのために戦うと誓うか?)
Excaliburは頷いて、(誓おう。全てはこの宇宙の均衡のために)と答えた。彼らの間に言葉は存在しない。ソマティック・リンクを介した意思の疎通、それが彼らTennoの結束をより強めている。
Frostも頷くと、彼を含めた三人がゲートを潜り、それに続くようにExcaliburもゲートを潜った。
生き物の気配がいなくなってどれくらい過ぎただろうか。タワーに残されていたのは夥しい量のグリニアの死体のみ。地面が血の海に染まっていく中、Keyが光を放つ。そしてそばに倒れていたVorの遺体にも光が伝播すると、彼の瞳が輝き始めた。
オロキンの亡霊か、はたまた彼の執念か、どちらにせよ、彼は再び立ち上がった。戦いはまだ、始まったばかりなのだ。
地球のEverest、深い森の中で、座禅する人型の影が一つ。銀の外装に木の枝のような装飾、Warframe、Oberonである。
ふと彼が夜空を見上げると、三つの流星が『昇っていく』のが見えた。
(宇宙の均衡を保つ者がまた一人。そして――)
何かがOberonを取り囲む気配。
(――それを脅かすものが訪れたか)
座禅を組んだまま、右手を天高く上げると、その右腕に緑に発光するエネルギーが覆う。そしてその腕を振り下ろすと、隠れていたグリニア兵達が一斉に地面に叩き付けられた。
(均衡を脅かす者には、聖なる炎による断罪が必要だ)
彼はゆっくりと立ち上がる。明りのない森の中に、Oberonの放つエネルギーの光が浮かび上がって、うっそうとした森の中に消えた。
――To be continued
次回はOberonの話になります。どんな活躍を見せてくれるのでしょうか? 今回の内容はゲームのPVをそのまま文に起こしただけなのでアレですが、次回からはオリジナルのストーリーになる予定ですので、楽しみにして下さい!