この馬鹿みたいな転生に悪態を   作:変態転生土方

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もしかしてこれって…話が進んでない!?


このパーティに仕事を(上)

 

 女神アクアとカズマが露店バイトを超速でクビにされた日から約一週間が経過した。

 傍から見れば美人揃いのオレたちパーティはその間効率よくクエストをこなしていき、溜まっていたクエストはあっという間に消化されてしまった。

 のは良かったのだが…。

 

「…暇だ」

 

 ギルドの酒場、その一席でそう呟く。

 オレ一人でクエストを回していた時は時間がかかり過ぎて一つのクエストをこなす頃にはまた一つのクエストが舞い込んでくるといういたちごっこ状態だったが、優秀な前衛とサポート、後衛が揃ってしまった現状では一日に二つのクエストを消化するなど当たり前。

 当然、クエストはなくなり、オレは慣れない休日に戸惑っていた。

 ちらり、とクエストボードを見る。

 すると高速でギルド職員がボード前に立ちふさがり、詳細が見れなくなる。

 初心者向けのクエストは取らないって、ちょっと見るだけ、見るだけだから。

 そんな意図を込めて視線を送るが、職員は首を横に振る。

 

「…暇だ」

「おはようございますエド。珍しいですね、貴方が昼時にここにいるとは」

 

 大きなボタンで目をあしらったウィッチハットに黄色く縁どられた十字架の眼帯。肩まで伸びた黒茶色の髪に、紅く光る瞳。幼さが目立つ顔立ちをした彼女はめぐみんだった。

 

「暇なんだよ、クエストがなくて」

「なるほどなるほど、つまり私と一緒というわけですか」

「お前は組むパーティがいないだけだろ」

 

 そう言うと、めぐみんは「うぐっ」と呻いてテーブルに伏せる。

 効果はばつぐんだ。

 

「この…。天才の私がぁ…」

「天才でも爆裂魔法しか使えないんじゃなぁ…」

 

 爆裂魔法。

 即ちエクスプロージョンである。

 強大な威力、広大な範囲、そして膨大な消費魔力。

 並みのウィザードでは扱えないその魔法は、消費魔力の関係で一日に一発しか撃てない。

 大型のモンスター、一か所に集まったモンスターを駆逐する分には有用だとは思うけれど、閉鎖空間や狭い場所では自爆しかねない危険な魔法だ。

 簡単に言えばネタ魔法なのだ。

 えーありえなーい。爆裂魔法が許されるのは妄想だけだよねー。なんて笑われるほどにネタなのだった。

 

「めぐみんが爆裂魔法をこよなく愛しているのは分かるけどさ。覚えていても、使う場所がなかったら意味ないだろ?」

「いえ、使う場所はあります」

 

 ん?

 

「今朝もアクセル前の平原にぶっ放してきたところです」

「最近やけに平原の地均しの依頼が多いのはお前のせいか…!」

 

 もっともその依頼は断ったが。

 オレの錬金術は零から一を生み出すことはできない。

 凸凹になってしまった平原を平らにするには、どこか別のところから土を持ってくる必要がある。ボコボコになった部分は消し飛んでいるわけだからな。

 そうなってくると、作業の量は膨大だ。

 あっちから持って来ればそこが凹み、その凹みを直すためにまた別のところから土を持ってくる――。そんな永久ループは御免だ。

 

「まあ、だからこそ彼らの職が見つかったのではないですか」

「…」

「す、すいません。反省してます」

 

 女神アクア、そしてカズマ。

 彼らの最終的な職は、土木作業員だった。

 作業内容はめぐみんが開けた平原の穴の埋め立て。多分埋め立てが終わればアクセルを囲む外壁の補修や強化の作業に回されるはずだ。

 体力もつくし、根性も据わる。初めからこうすればよかった。

 

「そういえばゆんゆんは?」

「ああ、ゆんゆんならジャスティス号を洗いに行くとか言ってましたよ。あんな生き生きとしたゆんゆんは久しぶりに見ました」

「あー…」

 

 言うまでもなく一週間のクエスト漬けのせいだろう。悪いことをしたな。

 ジャスティス号、オレの愛馬は現在街の中を駆ける馬車の馬役を務めている。

 パーティを組んでからというもの、あまり一人では出かけなくなってしまったので持て余し気味だったが、いい貰い手が見つかってよかった。

 貰い手、と言っても譲渡したわけじゃないけどな。

 アクセルで馬車の仕事をしたいという女性に貸してあげたのだ。

 

「確かルーシー、でしたか?」

「そうだよ」

「彼女やゆんゆんには頭を下げるのになぜ貴方には頭突きをかますんですかね…」

「照れてるんだろ」

「その割には殺意が見え隠れしてましたけど」

「愛憎って、知ってるか」

「認めましたね。憎まれてるって認めましたねエド!」

 

 馬鹿野郎お前、愛するあまり憎んでるだけだって。

 憎まれていてもそれは愛ゆえなのだ。…だよな?

 オレとめぐみんがそんな会話をしていると、怒声が頭上を飛んで行った。

 

「おうおう、新人のくせに女二人連れてよお! ハーレムじゃねえか、羨ましいなあオイ! 片方くれよ!」

 

 またベッタベタなセリフを吐くやつもいたもんだ。

 チラリ、と声の方に目をやれば、男女の二人組がパーティに絡んでいた。

 

「ちょっとなによあんた!」

「いきなり絡んでくるんじゃないわよこの酔っ払い!」

 

 青年の連れの女性冒険者二人がそう怒鳴る。

 勝気だなぁ…。

 そんなことを思っていると、めぐみんが小さい声で。

 

「エド、エド。どっちが勝ちそうですか」

 

 などと訊いてくる。

 

「お前も見ればいいだろ。面白いぞ」

「巻き込まれるかもしれないじゃないですか」

「オレがいるから大丈夫だろ」

 

 良い意味でも、悪い意味でも有名なオレにわざわざ絡んでくるやつはいないはずだ。

 それにしても、と絡まれている青年を見る。

 整っている顔立ちに高そうなフルプレートメイル。傍らには大剣。新人などと言われているけど、とてもそうは思えない。

 どこぞのボンボンという可能性もあるが…。

 すると絡まれている現場を見ためぐみんが。

 

「あれ、魔剣ですね」

 

 と呟いた。

 

「…マジで?」

「マジです」

 

 見た目はただの大剣なんだけど。

 

「強い魔力を感じます。相当強力な魔剣ですよ」

「へぇ…。そんなもんがあるなんてな」

「私も驚きです。駆け出しの街であんな代物を見れるとは思ってもいませんでした」

 

 小声でやり取りをするオレたちを余所に、向こうはヒートアップしていく。

 

「うっせぇ! 黙ってろリーン! 魔剣だか何だか知らねえが、そんなもんで俺がビビると思うなよ! オラ、ちょっと面貸せや! てめえ、名の知れた冒険者様なんだろ? なら俺に稽古つけてくれよ!」

「…うわあ。あれは瞬殺されるフラグですね」

「五秒にジャイアントトードもも肉のから揚げ定食」

「私は三秒で同条件です」

 

 ギルドを出ていく騒ぎの主たちを見ながら言い合う。

 すると遠くで酔っ払いの叫び声が木霊し、三秒で男が戻ってきた。

 

「…ち、畜生、何なんだあのチート野郎は…。イケメンで、しかも強いってどういうことだよ…。おうコラッ! お前ら何見てやがんだ、見せもんじゃねえぞ!」

 

 なんだよ、五秒も持たないのか。威勢のいい割にだらしがないな。

 視線を戻すと、めぐみんが不敵な笑みを浮かべている。

 

「フフン…。私の勝ちですね、エド」

「…お好きにどーぞ」

「わーい! すいません、ジャイアントトードもも肉のから揚げ定食二つください」

 

 ウエイトレスさんを呼び止めためぐみんをオレはからかう。

 

「太るぞ」

「全部食べるわけじゃありませんよ。一緒に食べましょう。一人だけの食事というのは寂しいものです」

 

 そう言うめぐみんに、オレは面食らった。

 

「あ、ああ…。まあ、いいけど」

「ちなみに代金はエド持ちですよ」

「…だろうな」

 

 

 

 1

 

 

 

 翌日。

 

「―――と、いうわけで例の森に出現する悪魔型モンスターを討伐しようと思う」

「暇だから?」

「暇だからか?」

「暇だからですか?」

 

 やかましい。三人揃って首を傾げるな、可愛いすぎるだろ。

 ごほん、とオレは咳ばらいを一つする。

 

「何か知らないけど、その悪魔型のせいで森の奥に住み着いてたモンスターが街の近くにまで出てきてるらしい。今のところ大したことはないし、むしろ美味しい狩場になってるみたいだけど…」

「人が集まれば集まるほど例の悪魔型と遭遇する確率が上がる、と?」

 

 ダクネスが顎に手を当てていう。

 オレは肯定しつつ、言葉を続けた。

 

「そいつがどんな目的で森をウロチョロしているのかは分からないけど、不安の芽は摘み取るべきだ。今のオレたちなら十分やれると思うんだけど、どうだ?」

「あたしはいいよ! 賞金もかけられてるって話だし」

「私も問題ない。女神エリスの名のもとに、ぶっ殺してやる」

 

 実に頼もしいセリフだったが、笑顔で言われると物凄く怖いぞ。

 オレは息巻くダクネスから目をそらし、隣に座るゆんゆんへと目をやった。

 黒茶色の髪を赤いリボンでおさげにしている彼女の表情は暗い。

 

「ゆんゆんはどうだ?」

「えっ!? あ、はい。大丈夫、です」

「…どうかしたのか?」

「あの、エドワードさん。ちょっといいですか…?」

 

 オレはゆんゆんに引き連れられ、席を立った。

 ある程度席から離れたところで、ゆんゆんは振り向くとおもむろに言う。

 

「エドワードさん。アーネス、って悪魔のことを憶えてますか?」

「アーネス…?」

「私やめぐみんを襲っていた悪魔です。エドワードさんが倒した…」

 

 そこまで言われて思い出す。

 羽の生えた際どい衣装の女性を。悪魔だとは聞いたけど名前は知らなかった。

 

「ああ、憶えてるけど」

「止めは、刺しましたか?」

「…森にいるやつはアーネスかもって言いたいのか?」

「…はい」

 

 アーネスだと楽でいいんだけどなぁ。と、思う。

 実際彼女には貸しがある。見逃した貸しだ。オレが自己満足で、というよりヘタレを発揮して見逃しただけなのだが、交渉のカードとしては使える。

 

「止めは刺してない。見逃した」

「…じゃあ、アーネスの可能性も――」

「ある。けどもそれがどうした? やることに変わりはないぜ」

「…そう、ですね。ごめんなさい、お時間をとらせちゃって」

「いや、いいけど…。どうした、本当に大丈夫か?」

 

 思いつめたような顔をするゆんゆんにそう言う。

 すると、ゆんゆんは意を決した顔で。

 

「エドワードさん。私、上級魔法を覚えたんです」

「そうか。おめでとう」

「あ、ありがとうございます…。じゃなくてあの、それでっ! 森の悪魔を討伐したら、時間をくれませんか? 約束が、あるんです。果たさなきゃいけない約束が…」

 

 いつになく真剣な顔をしている彼女に、オレは頷いた。

 なによりゆんゆんが自分の意見を主張したのは初めてだ。なるべくその意思を尊重したい。

 

「分かったよ。討伐が終わったら、三日くらい休もう。それでいいか?」

「は、はいっ! ありがとうございます!」

「いいって。これからはちょくちょく休みを入れていこう」

 

 頭を下げようとするゆんゆんを制しつつ、オレは言った。

 

「さあ戻ろう。これから準備とかもあるしな」

「はいっ!」

 

 

 

 2

 

 

 

 ところ変わってウィズ魔法具店にオレは一人でいた。言うまでもなく、討伐準備のためだ。

 こじんまりとした店で、人が十人も入れば満杯になりそうなほど狭い。

 棚には色々なアイテムが置かれていて、とても興味深い代物ばかりだ。

 

「なあ店主さん」

「は、はい! なんでしょう?」

 

 オレの声に反応した店主、ウィズさんはウェーブのかかった長い茶髪を揺らして反応する。

 茶色の瞳には緊張が見え、表情は強張っていた。

 

「えー…、と。このポーションって、なに?」

「それは砕けると爆発します」

 

 ポーションを戻す。爆弾に用はないのだ。誤って仲間を吹き飛ばしたりしたら大変だからな。ダクネスはむしろ喜びそうだが…。置いておこう。

 オレは隣の箱型のアイテムを手に取った。

 

「これは?」

「それは開けると爆発します」

 

 戻す。

 手に取る。

 

「…」

「あ、それは水に触れると爆発するんですよ?」

「だろうな」

 

 なんだこの店は、爆発物専用取り扱い店か? オレは商品の裏を見てみる。こういうのには、大抵製作者のサインがあるものだ。

 

「ひょい、ざぶろー…?」

 

 このおかしな名前…紅魔族か? もしかしてめぐみんの父親だったりしてな。めぐみんも爆発大好きだし。

 

「ははは、そんなわけないか」

 

 オレは移動し、別の棚の商品を物色する。

 

「あの、何をお買い求めでしょうか?」

「回復系のポーションみたいの、かな。できれば火傷とかも治せるやつ」

 

 クリス曰く、傷だけじゃなくて火傷やその他を治すポーションは高価で高いらしい。

 火傷を治す薬、裂傷を治す薬と分けて買った方がお得な場合もあるのだとか。

 オレの言葉にウィズさんは近くの棚に案内してくれる。

 

「そうですね…。火傷にはこのクリームが良いと思いますよ」

「クリームね」

 

 手に取り、カゴへと入れる。

 

「あとは…裂傷にはこのポーションがよろしいかと」

「やっぱポーションか」

 

 緑色の液体が揺れる瓶をカゴに入れた。

 

「そして二つの成分が一つになったのがこちらのポーションです」

「あったのかよ」

 

 しかも安い。

 

「あ、はい。あります」

「もっと早く言ってくれ」

「二つの成分がひとちゅになったのが」

「早口じゃねえよ」

 

 舌噛んでるし。大丈夫かよ。

 オレはカゴに入れた商品を元に戻してウィズさんが手に持つポーションを受け取る。

 

「これを買えば火傷と裂傷をカバーできるんだよな?」

「ひょ、ひょうです…」

 

 たった一つを買うのにえらい疲れた。

 ポーションを幾つかカゴに追加しつつも、他にも何かないか探る。すると、瓶詰の薬品っぽいものを見つけた。

 

「これって?」

「それは回復錠です。飲むと傷を癒す効果が得られますよ」

 

 おー、こういうのだよ、オレが探してたのは。元の世界で言う、お徳用みたいなもの。これが欲しかった。戦闘時のポーション、休息時の回復錠と住み分けができるからな。

 手に取ってみるとずっしりしていて、中身も結構ある。持ち運びに難はありそうだけど、これで五万エリスは安いだろう。

 

「これって何錠飲めばいいんだ?」

「二百錠です」

「そんな飲むの!?」

「多い…ですか?」

「多いだろ、二百は…」

 

 首を傾げるウィズさんにそう告げ、オレは瓶を棚に戻した。

 

「それじゃあ二百錠分の成分が一つになったこちらの――」

「あったのかって」

「え、ええ…まあ…」

「だから早く言ってくれよ」

「二百錠分の成分がひとちゅになった――」

「早口じゃねえって」

 

 

 

 3

 

 

 

 さて、どうするか。

 ウィズ魔法具店を背に、オレは考える。

 ダクネスは鎧と剣の点検に、ゆんゆんは道具の購入、クリスはどこか見て回るとか言ってったっけ。

 各々用が済み次第正門前に集合と言ってあるし、今から行っても良いけど…。

 

「お、いたいた」

「…クリス、どうしたんだよ。こんなところで」

 

 路地裏からクリスが顔を出していた。

 

「いやあ、ちょっとエドに会いたいって人がいて」

「オレに?」

 

 また依頼の話か? そう考えつつも、手招きをするクリスに従って路地裏へと足を踏み入れる。

 樽や木のカゴが散乱する路地裏に、箱へ腰かけている一人の男がいた。

 金髪を背中でまとめ、顎に生えた髭は立派で見覚えがある。鳶色の瞳がオレを射抜いていた。

 

「やあ、エドワ――ぶへらぁっ!?」

「ば、バルト様ーっ!?」

 

 オレの右ストレートが唸った。どうだ、貴様のくれた機械の味は。

 

「ここであったが百年目だぜバルトォォォ…!!」

「な、殴るなら好きに殴るがいい! だが私の話を聞くと約束しろ!」

「OK」

 

 右、右、左、右! →↓↘P!

 

「昇○拳!」

「ぐほぁっ!? ま、待って! 待ってくれ! 想像以上に痛いからもうやめてくれ!」

「あたしからもお願い。ちょっと見てられないわ…」

 

 ちっ、クリスに免じて許してやるか。

 オレはバルトを離して立ち上がる。続いてヨロヨロと生まれたての小鹿のように足を震わせるバルトに「で?」と問うた。

 

「ちょっとエドワードさんに頼みたいことがありまして…」

「またか」

「ええまあ、またです。エリス、例の物を」

「はい、バルト様」

 

 バルトの合図で後ろのクリスが一振りの剣をオレの前に差し出す。受け取って…って待て、”エリス”?

 

「エリスって…」

「あれ、知らなかったのか? こいつはエリス。私の後輩の一人だ」

「あはは、ごめんね。隠してて」

 

 つまり…。神様ってことか!?

 

「うん、そう。あたし…。じゃなくて私はエリス。この世界を管理しています」

 

 クリスがパチン、と指を鳴らすと路地裏に光が溢れ、思わず目を瞑る。

 光が収まった頃に目を開けると、白い羽衣を着、長い白銀の髪を揺らす一人の女性が立っていた。

 思わず、見惚れた。

 

「初めまして、エドワードさん。”導きの女神”エリスです」

「こうして私やエリスが現界してるのには理由があってな」

「こ、この剣のことか?」

 

 若干どもりながら受け取った一振りの長剣を見せる。バルトは頷いて言葉を並べた。

 

「それは神器だ。お前にわかりやすく言えば、”特典”だよ。エドワード」

「…マジで」

「大マジだ」

 

 確かにどことなく神聖さを感じる剣ではある。でも、持ち主はどこにいる?

 

「その剣の持ち主は既に亡くなっています。だから私が回収しました」

「なる、ほど…な」

 

 エリスの現界した姿の職業が盗賊であること。

 バルトの頼みたいこと、持ち主のいなくなった神器について説明したこと。

 これらを聞けば、答えは出る。

 

「オレに神器を回収しろってことだろ?」

 

 ニヤリ、とバルトは笑った。こいつの笑みは本当に気に入らない。

 

「回収しろって言われても、オレはどこに神器があるかなんてわからないぜ?」

「そこは問題ない。エリスが探す。場所が分かったら手伝ってやってくれ」

 

 錬金術師が盗賊にジョブチェンジするってわけか…。苦労しそうだ…。

 そんなことを思っていると、バルトは鼻を鳴らす。

 

「なんだよ」

「断らないんだな」

「断ってほしいのか?」

「いやいや、私もこれからは別件で動くことになるからな。エリスの手伝いをしてくれるなら大いに助かる」

 

 そう抜かすバルトに、オレは不快感を覚えた。冗談ではない、不快感だ。

 そんなオレの心中を察したのか、バツが悪そうにバルトは髭をなでる。一息つくと、口を開いた。

 

「エドワード。お前は引き受けすぎる。そこがお前の良いところなのかもしれないが、このまま行けば死ぬぞ」

「死なないよう加減はするさ」

「フッ…。そうか、なら、過労で死なないよう気をつけろよ。私はお前が気に入ってるんだ」

 

 そう言ってバルトは路地の向こう側へと歩き出す。

 …ああ、そうだ。少し気になってたことがあるんだった。

 

「なぁ、バルト」

「ん?」

「あんたはなんの神なんだ? ほら、エリスだったら”導き”とかアクアだったら”癒し”とかあるだろ」

「…全、あるいは一だ」

 

 わかんねーよ。

 近くのエリスに教えてくれと視線を送ってみるが、笑ってはぐらかされてしまった。可愛いから許せる。

 

「ま、時が来たら教えてやる。時が来たらな」

 

 今度こそ去っていくバルトに、オレはボソリと告げた。

 

「紅魔族一の天才があんたに爆裂魔法を撃ちこむって言ってたよ」

「えっ、なにそれ」

「じゃあなー」

「ちょ、エドワード!? 爆裂魔法を撃ちこむってなに!?」

 

 さーて、めぐみんにバルトのことを教えないとな。

 慌てふためくバルトを横目に、オレはそう思った。

 

 

 

 




一体○理の神様なんだ…。
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