多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜 作:ウェステール
本物の雨に混じる砲弾の雨を、望月はーーーー
ーーーー躱さなかった。
標的と定めたタ級に向かって一直線、真っ直ぐに
回避ではない、それは紛れもない突撃だった。
自分に恐れをなして逃げ出すだろうと思っていた獲物が逆に猛スピードで向かって来て、タ級は混乱した。
他の深海棲艦達も、予想外の望月の行動に狼狽える。
望月は波さえも利用して加速し、タ級の懐へーーーー
ガンッ!
つんのめる望月。
足下の主機に、名取達と戦う取り巻きの盲撃ちが当たったのだ。
(チッ、流れ弾かよ!でもまだ行ける!)
態勢を整え、前を向いた望月の目の前に、タ級の主砲が黒々と口を開けていた。
(あ、ヤバ……)
死を意識した望月の脳裏に、色々な思考が駆け巡る。
死ぬ?
こんな所で?
睦月達はどう思うかなぁ。
神通さんは泣いてくれるかなぁ。
司令官……
あのマヌケ面、もう見れないのか……
…………………………
嫌だな……
死にたく、ない、な。
「探照灯!照射!」
望月の思考を切り裂いたのは、一条の光だった。
大光量に眩んだタ級が姿勢を崩し、絶好のチャンスを取り零す。
「あれ?……なんで?……」
望月は己の目を疑った。
死ぬ間際に幻覚を見ているのかと。
探照灯でタ級を照らしているのは、他ならぬ神通だった。
提督に救援部隊として送り出された神通は、天候の変化と名取艦隊の行軍速度などから勘案して、この海域を特定していた。
神通麾下の駆逐艦達が、タ級の取り巻き達を次々と葬り去る中、神通は望月に発破を掛ける。
「立ちなさい。まだ標的は生きてますよ」
タ級は神通に狙いを変えて撃ちまくっていた。
近弾で損傷しながらも、神通は自らは手を下さずに探照灯を照らし続ける。
「ったく、怪我人相手に人使いが荒いよな、神通さんは」
望月は立ち上がると魚雷を手に、タ級に突っ掛けた。
咄嗟に砲を向けるタ級。
だが、望月は身を沈めるとタ級の砲身の下を潜り抜け、その目の前に迫った。
「滅多に出さないあたしの本気、食らいなよ!」
望月がタ級の顔面に魚雷を叩き付ける!
爆発は、戦闘終了を告げる凱歌になった。
結果ーーーー
ゼロ距離で魚雷を撃ってタ級の爆発に巻き込まれた望月は中破。
名取等、艦隊の他の面々は小破にも至らず。
救援部隊の神通はタ級の砲撃に身を晒し続けたせいで中破。
随伴の駆逐艦達は小破にも至らず。
望月は独断行動で、神通は戦闘放棄で提督に呼び出されたが、二人の満足そうな顔を見ると苦笑しただけで下がらせたのであった。
二人揃っての入渠。
並んで湯船に浸かる望月は、隣の神通に疑問をぶつけた。
「神通さん。なんであの時、反撃しなかったのさ?一歩間違えば沈んでたよ?」
神通は黙想しながら答える。
「あれは望月さんの獲物でした。横取りしては成長に繋がりません」
「そんな理由で待ってたの!?」
「あの突撃はお見事でした。あそこまでやれる子なら、キチンと仕留めてくれると信じてましたよ」
神通は湯船から身を乗り出して、望月の頭を撫でる。
その心地良さから、湯船で寝入ってしまう望月であった。
かくして、「
二人に香取と鹿島を加えた『教導艦隊』は、定期的に各鎮守府/泊地を廻り、基礎訓練をみっちりと行う。
その苛烈な訓練には一部艦娘から猛烈な抗議が出たが、その中に望月が居たという記録は、無い。