多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜 作:ウェステール
「……またこの内火艇に乗る羽目になろうとは……」
周囲から隔絶された、あきつ丸装備中の内火艇の中で、僕は独り呟いた。
無論、答える者は無い。
名取や神通が出会ったという深海棲艦の報は、鎮守府を揺るがせた。
艦娘達が警戒したのが『深海棲艦達の裏切り』ではなく、『今後の戦闘における誤射の危険性』だったのは、個人的には喜ぶべき事だったが。
それでも深海棲艦達は活動を自粛した。
各鎮守府/泊地を治める地上型はともかくとして、自由に動ける者達は自主的に“自宅謹慎”して身の証を立てたのだ。
深海棲艦達の態度は素晴らしいのだが、このままでは世界の海を管理するのが難しくなる。
僕は敢えて深海棲艦から選抜した面子を中心に、再度南極を目指す艦隊を組んだ。
僕等の仲間になったのとは別の深海棲艦が居るなら、それが来たのは恐らく南極だろうからだ。
メンバーは、
戦艦棲姫
空母棲姫
水母棲姫
防空棲姫
戦艦レ級
以上の五人に内火艇担当のあきつ丸を加えた一個艦隊だ。
「オ兄チャンハ、れ級ガ護ルカラネ!」
「抜ケガケハ感心シナイナ。援護防御ハ私ノ専売特許ダゾ」
「護ルトイエバ対空ダヨネ!」
「ナラ私ノ艦載機ノ出番ダナ」
「艦載機ヲ出セルノハ、空母ダケデハナイケドネ」
合同授業の“御褒美”の影響か、全員が「僕を護ること」に燃えているのが、意外というか何というか……
“あきつ丸を中心にした深海棲艦の輪形陣”という異様な一行は、危なげなく南極に到着した。
途中何度か遭遇戦があったようだが、実寸大になった内火艇から見回した感じでは特に誰もダメージは負っていないようだ。
深海棲姫が四人に『一人聯合艦隊』たるレ級が居れば、まぁ当然と言えば当然か。
そういえば……
「今更だけど、君達はかつての仲間と戦う事に抵抗はないの?」
五人の深海棲艦は顔を見合わせた。
答えたのは、戦艦棲姫こと『大村さん』だ。
「私達ニハ“仲間”トイウ概念ハ無イゾ。ヨリ正確ニ言ウナラ、『無カッタ』ダガナ」
レ級達が後を継ぐ。
「“敵ジャナイ”ッテダケダッタヨネ〜」
「私ハ敵ト変ワラナカッタヨ。狙ッテタ獲物ヲ横取リサレタリ」
「配下ダッタ者達ハ、一緒ニ鎮守府ニ移ッタワ。ソレ以外ノ個体ノ事ナンカ知ッタコトジャナイワネ」
ありゃ、みんな結構ドライなのね。
まぁ、鎮守府に来て“仲間”の概念を学んだというのなら、それは良かったというものだ。
氷で彫刻した白亜の宮殿は、相変わらずの荘厳さだった。
今回は北方棲姫と徒歩移動ではなく、内火艇に乗ったままで奥まで進軍する。
無論、棲姫達も一緒だ。
以前彼女等が居た広間に入る。
そこには、予想通りの人物が玉座に着いていた。
「ドウヤッテ?……イヤ、オ前達ナラ造作モナイコトカ……」
中枢棲姫はこちらを気怠げに眺めると、半ば自嘲気味に口端を上げた。