多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜 作:ウェステール
「オ前達ガ人間ナドニ与スルトハナ……」
中枢棲姫の目は半ば死に、半ばは憎悪に燃えていた。
その怒りの矛先が向いているのは、裏切ったこちらの棲姫達に対してか、この世界に対してか、はたまた自分を捨てた
「ココノ海ハ、我等ガ求メタ海デハナイ。我等ノ役目ハモウ、終ワッタノダ」
「戦カウヨリ、皆ンナト遊ブ方ガ楽シイモンネ」
「ネー」
レ級と防空棲姫が続く。
「私達ヲ見捨テ廃棄シタ造物主ニ、マダ義理立テスルノカ。酔狂モホドホドニシテオケヨ」
空母棲姫は、むしろ中枢棲姫こそが裏切り者だとでも言うかの様だ。
あれ?
なんか無茶苦茶ケンカ腰じゃね?
みんな中枢棲姫を説得に来たんじゃないの?
「ハ?私達ハ、私達ノ邪魔ヲスル不届者ヲ誅シニ来タダケダケレド?」
水母棲姫の「何を分かりきった事を聞いてるんだ?」という態度に僕とあきつ丸は青ざめた。
まさか……こんなトコで大口径主砲のドンパチ始める気か、コイツ等!?
「転進!であります!」
あきつ丸がすかさず内火艇を反転させる。
真っ先に逃げ出すな陸軍!
「これは提督殿を安全な場所まで移動させる為の転進であって、逃亡ではないのであります!」
全速で後退しつつ、持論を展開するあきつ丸。
えぇい屁理屈を。
僕に中枢棲姫と話す機会を寄越せ!
「もう、というか最初からそんな機会無かったであります!」
むぅ、ハッキリ言ってくれる。
確かに、広間で見た中枢棲姫の顔は、以前ここで見た南方棲戦姫達のそれとは一線を画していた。
……ような気がする。
南方棲戦姫達と違うタイミングでこの世界に飛ばされた事に、何か関係があるのか無いのか。
どうやら、それを確かめる機会は永遠にやっては来ないようだ。
白亜の宮殿を揺るがす大口径主砲の轟音。
ダース単位の撃ち合いには、大量の艦載機も参加しているだろう。
宮殿の外まで退避した僕等の足下が、衝撃に震える。
やがて…………
「ギャアアアァァァァァァァ!」
耳をつんざく断末魔の悲鳴と共に、宮殿が崩壊を始めた。
味方の棲姫達は、まだ脱出して来ない。
まさか……いや!
僕は不安を振り払った。
僕の“嫌な予感”は、よく当たる。
だから予感は感じない、と心に決めた。
彼女達は必ず帰って来る!
宮殿は完全に瓦解して、微細な氷の煙に包まれていた。
僕とあきつ丸は、その煙に目を凝らす。
と、煙の中に人影が……五つ!
中大破してボロボロだが、全員無事だ!
と確認した瞬間、僕はあきつ丸にチョークスリーパーを決められた。
「な……なんで……?」
「これは、余りにも目に毒、なのであります」
五人の深海棲艦達は、ゲーム中では見られなかった『中破グラフィック』な状態だった。
特に空母棲姫は、元々中破グラフィックみたいな容姿が更に過激な事に!
一瞬の記憶を脳裏に焼き付けつつ、僕は意識を失った。
僕が意識を取り戻したのは、『佐世保鎮守府』に戻った後だった。
目を覚まして直ぐに中破していた深海棲艦達を探したが、当然のように全員回復済み。
この時ほど
大村さんの報告によると、広間の天井近くに空間の歪みのような物があったそうだ。
恐らく深海棲艦達は、そこから送り込まれて来たのだろう。
誰が?何のために?
考えた所で解が与えられる物でもない。
しかも広間での戦闘によって、空間の歪みも爆砕してしまったと言うのだから、これはもう解決した事案と判断しても問題ないだろう。
その内北極海もガッツリ探索して、鎮守府が送り込まれて来たポイントとか探さないとかもだな。
執務室でボーッと深海棲艦達の中破姿を思い出しつつ、そんな事を考える僕であった。
深海棲艦にも中破グラが必要だ!
と切に思う私です(笑)