多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜 作:ウェステール
走る。
走る。
鎮守府内に造園された雑木林を、僕は走った。
肉体的なスペックでは艦娘には敵わない。
オープンフィールドで競えば、一分保たないだろう。
だが!
僕の頭には川内が鎮守府内に張り巡らせた抜け道の詳細がインプットされている。
更に!
指輪騒動の後、明石に頼んで鎮守府内の仕掛けを増設してあるのだ。
頼んだ時は心底呆れた顔、されたっけなぁ……
実際作業が始まると、嬉々として没頭してたけど。
マッドサイエンティストの才能があるよな、明石って。
とまぁ林の中の開けたスペースで思いを馳せていると、
「見つけたわよ
“釣れた”のはドイツ艦娘か。
好都合だな。
ビスマルク達は追い詰めた僕を逃がさぬよう、開けたスペースの外縁部を使って包囲してくる。
僕は中央で動かない。
「あら、早々に観念?良いのよ、もっと抵抗しても」
「君等の指揮者を舐めるなよ。この程度の包囲でどうにか出来る程、『提督』は甘くないぞ」
「!?」
「どうした?完全包囲だぞ。ビスマルクともあろう者が、この状況でビビるのかい?」
圧倒的に不利な状況にありながら余裕を崩さない僕に、ビスマルクは功を焦ってしまった。
「全艦、確保ぉ!」
ドイツ艦娘達が一斉に飛び掛かる。
その動きは、しかし想定内なのだよ!
ポチッとな。
僕はポケットに忍ばせた端末から、仕掛けのスイッチを入れた。
ガコンッ!
僕の周囲の地面が消え、雑木林の中のスペースは丸ごと落とし穴と化した。
全員で同時に詰め寄ったドイツ艦娘達は、物の見事に一網打尽と相成る。
穴はちょ〜っと深いけど、底にはウレタンマットも敷き詰めてあるから、安心してくれ。
「ア〜バヨ〜、とっつぁ〜ん♪」
「誰がとっつぁんよ、誰がぁ!」
後で明石に回収してもらうから、暫く大人しくしててね。
罠の成果に浸っている暇はない。
次なる仕掛けを活用すべく、僕は再び走り出した。
次は……
頭上からエンジン音。
雑木林を出れば来ると思っていた。
機動艦隊の艦載機!
鬼ごっこには有利過ぎるからと、ハンデとして最小スロット一つしか使えない様になってるらしいが、やはり艦載機は驚異ーーーー
ーーーーだったのは、この間までだ!
僕は艦娘寮と指揮棟の間に滑り込んだ。
二つの建物の距離は五メートル強程度だが、模型サイズの艦娘艦載機なら飛行に支障は無い。
追って来たな。
背後から迫る艦載機。
全機注ぎ込んで来たか。
それは好都合!
ポチッとな。
今度は、建物の間を埋めるように地面からネットが立ち上がる。
実機同然のスピードでは避けられまい!
艦載機は次々とネットに絡め取られ、行動不能に陥った。
遠くに機動艦隊の面々の悲鳴を聞きながら、僕は艦娘寮に飛び込む。
よし!
今度は逃げ切ってやるぞ!
いつの間にか、誰よりもゲームにハマってる様な気がするが、気にしない事にしておく。