多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜   作:ウェステール

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艦娘達といっしょ〜御褒美争奪戦〜3

「今よ電!」

「なのですっ!」

 

目を瞑っての電のタックルを華麗に回避する。

と、

 

「ゴハァッ!」

 

後ろから近付いていた天龍に誤爆する。

あ、これは中破だわ。

 

「はわわっ!天龍さん、大丈夫ですか!?」

「電……良い……タックルだった……ぜ」ガクッ

「天龍さぁぁぁん!」

 

これが横菅の緋乃本軍を恐怖させた軽巡洋艦かと思うと、感慨深いなぁ。

 

 

艦娘寮に入った僕は、なんとか逃げ延びていた。

 

機動艦隊チームは艦載機に絡み付いたネットを外すのに手間取っているし、ドイツチームは落とし穴だ。

今しがた天龍を同士討ちでリタイヤさせたし、さて次は……

 

「逃がさんぞ提督!」

 

お、凛々しい物言い。

那智か。

飲兵衛チームが相手なら……こっちだ!

近場にトラップルームがあって良かった。

逃げ込んだのは、窓も何も無い空き部屋。

 

「あらら、袋の鼠じゃん提督〜」

 

隼鷹がからかう様に言う。

それがそうでもないんだな。

チーム全員の入室を確認すると、僕は床のスイッチを踏んだ。

 

ゴゴゴ……

 

床下からせり上がる、酒棚、ソファ、カウンター……

一瞬にして、空き部屋はバーに変化した。

那智の目が、酒棚の中の一本に吸い付けられる。

 

「これは……『臥龍』か!?」

 

緋乃本で仕入れた“幻の銘酒”に、那智は釘付けになった。

他の面々も、それぞれ世界中から掻き集めた酒に魅入られている。

 

「んじゃ、ごゆっくり〜」

 

酒盛りを始めた飲兵衛チームを尻目に脱出成功。

さすがは飲兵衛。

『ゲームの景品<酒』なのか。

一抹の寂しさを感じつつ、艦娘寮を走る。

 

 

ふと、どこからか水音が聞こえて来た。

艦娘寮の隣のプールか?

視線を転じて、驚く。

 

なんと、誰か溺れてるぞ!?

でも……艦娘って溺れるのか?

とにかく艦娘寮の窓から飛び出し、プールへ。

 

溺れていたのは、まるゆだった。

なんだか納得。

自主練で潜水訓練でもしてたのか?

とにかく、見物してる場合じゃない!

僕は上衣を脱いでプールに飛び込むと、まるゆを抱えた。

 

「た、隊長……」

「しっかり掴まってろよ」

 

プールサイドに辿り着くと、けたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

『ゲームは終了しました。皆さんグラウンドに集合して下さい』

 

鹿島の声。

あれ?

もう終わり?

まだ昼前だぞ。

何かトラブルでもあったか?

非常事態……なら、放送は大淀からだろうし、グラウンドに集めたりせず出撃用ドックに呼ぶだろう。

 

釈然としないまま、僕はまだグロッキーなまるゆを背負ってグラウンドに向かった。

 

 

 

 

「勝者は、まるゆちゃんで〜す」

 

香取の裁定に、僕は真っ白になった。

 

「なんでそうなるのさ?」

「だって……形はどうあれ、まるゆちゃんは提督を“捕まえた”じゃないですか」

 

そういえば、溺れたまるゆを助けた時、まるゆは僕にしがみ付いていた。

 

「では、提督から勝者への御褒美を」

 

いやいやいや。

相手はまるゆだよ?

マズいでしょ。

条例とか、倫理とか色々と。

 

(頰とか額で良いじゃないですか)

 

懊悩する僕に、香取の耳打ち。

 

…………………………

 

で・す・よ・ね〜!

キスといっても唇に限った話じゃないですよね〜!

知ってた、知ってましたよ!

 

 

 

かくして、誰も想定していなかった形でゲームは終わった。

 

「次に提督を捕まえる必要が出来た時は、目の前で溺れて見せればいいのデ〜スね!」

「勉強になりましたね、お姉様!」

 

味を占められてしまった。

今後は、艦娘に追われる事態になったら絶望しかないんだな。

 

やれやれ。

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