多分それさえも平穏な日々〜オーバー艦これ後日談〜   作:ウェステール

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平時のお仕事1

 

「鎮守府ハ良イナ、提督」

 

呉鎮守府ーーーー

 

鎮守府の長である泊地水鬼こと白水(しらみず)さんは、僕の隣で大きく伸びを打つと微笑みかけてきた。

 

いつぞやの海賊殲滅戦の時は『泊水(はくすい)さん』だったのだが、非公式な命名だったのでビスマルクに任せてみたところ、『白水さん』に決定したそうだ。

人間っぽい名前が付くと、本人も人間に近付いた様な気がするのは、何故だろう。

 

白水さんが僕に寄り添い、僕の腕を取る。

柔らかい感触が、腕から伝わって来た。

 

「“地上型”ト呼バレル深海棲艦ハ土地ニ憑クタメ、ソノ地カラハ動ケナイ。『鎮守府』ナラバ、限定的デハアルガ色々ナ場所ニ行ケル……ソレガ私ニハ嬉シイノダ。提督ニハ感謝シテイルヨ。アノ氷ノ大地カラ連レ出シテクレテ……ナ」

 

僕を見つめる白水さんの目は、艶っぽく濡れていた。

嬉しいけど、昼日中ですよ。

 

「ダッタラドウシタ?」

 

挑発的だなぁ。

 

「執務中は自重して下さいね、お二人とも」

 

背後から妙高の奇襲を受けて、僕は白水さんから跳び離れた。

そう、僕等は執務中なのだ。

 

 

 

 

呉鎮守府は現在、西アフリカ沿岸で中継基地となっている。

欧州の大西洋サイドを航行する船は、ここに立ち寄って荷物検査を受ける事が義務付けられていた。

 

鎮守府の一般船舶接岸用ドックは、貨物船/客船/遠洋漁船でごった返して芋洗いの様相だ。

なんせ、検査が終わっても出て行かない船が混じっている。

 

その連中のお目当てはーーーー

 

 

 

「L・O・V・E、ラブリーふみちゅきぃぃぃぃ!」

 

野太い声の大合唱が、ドックを揺るがす。

船内検査にやって来た駆逐艦に向けられた声援だ。

海賊殲滅戦の折の“決定的瞬間”を激写されて以来、文月人気は衰え知らずというか……悪化している気がする。

地域によっては那珂&中野(軽巡棲鬼)より人気だそうで、その事実を知った時の二人の落ち込みようは酷いものだった。

 

しかしーーーー

 

 

ドォォォン!

 

 

天に向けて放たれた10cm連装高角砲が、歓声を圧倒した。

声援を送られたブレザー姿(ヽヽヽヽヽ)の艦娘は、無言の怒りに打ち震えていた。

 

「テメェら!俺等の若葉たんディスってんじゃねぇぞゴルァ!」

 

別のファングループが、歓声を上げたグループに掴みかかる。

 

懐かしいなぁ。

僕も新任の頃は、『文月』と『若葉』とか『三日月』と『初霜』とか『吹雪』と『磯波』とか、しょっちゅう間違えてたっけなぁ。

 

あの写真(ヽヽヽヽ)で文月ファンになった“大きいお友達”は、にわかが多くて困る。

この前も黒髪の(ヽヽヽ)駆逐艦に騒いで、鉄の花でも咲かせそうな傭兵団を怒らせてたっけ。

 

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