此処は学園長室、目の前には僕の身体が驚愕の表情で居て、そんな僕の瞳に映る姿は木下さんで……。
「なっ、何だコレはぁぁぁっ」
訳が分からず、僕は心の底から叫んだ。
上記の明久の叫びより、約1時間前に戻る。
いつも通り、鉄人から逃げるけど捕まり、雑用をやらされ、終わったので帰ろうとした。そんな時、前を横切って行ったのは、木下さんで段ボールを抱えていた。
「あれっ、木下さん」
「あら、吉井君」
「どうしたの、その段ボール?」
「先生に頼まれたのよ、学園長室に運んで欲しいって」
「そ、そうなんだ…。僕が運ぶよ、それ、観察処分者のしごとだし…」
「大丈夫よ、気にしないで」
大丈夫な訳が無い、こうして話している間も、重いから持ち手を変えているのに…。こうして話していても、渡さないだろうと思った僕は、木下さんから無理矢理段ボールを取り、抱えた。っとと、重いなあ、コレ。
「吉井君っ」
「大丈夫だよ、僕男だし、力有る方だから。学園長室だったよね、行こうか」
「え、ええ……本当に良いの?」
「うん、気にしないで」
学園長室に着くまでの間、木下さんと話していた。霧島さんや工藤さんと違って、普段、滅多に話す機会の無くて、堅い優等生のイメージのある木下さんと話すのは、思ったより楽しくて面白かった。でも、学園長室に着いて用事を済ませたら、木下さんと話す機会の無い生活に戻るんだろう。それがとても残念で堪らなかった。
「吉井君、ありがとう。此処までで良いわ」
「折角だし、持って行くよ」
「そう? それじゃあ、お願いするわね」
「任せて」
だからこそ、今は一緒に居たいんだ。限りある時間なら、その中で次に繋げられるようにしたいんだ。
でも、まさかこの時に、一緒に学園長室に行った事で、あんな事になるなんて思わなかったんだ。
木下さんと一緒に厄介事に巻き込まれる事で、一緒にいられる日々が始まるなんて……。
ガチャッ
「頼まれたものを持ってきましたよ、学園長」
「声を掛けて、返事されてから入るもんだよ、優子」
「何言っているんですか、わざとですよ、わざと」
「……どうやらアンタとは、じっくりと話し合わないといけないみたいだね」
「遠慮しておきます。今はそんな心底どうでもいい事より、本題に入りましょうよ。あっ、吉井君、荷物はそこら辺に……壁際にでも置いといて」
「あ、うん…」
思っていたんだけれど、なあ……。というか、木下さんとババア長って、親しい……いいや、木下さんってババア長舐めきってるのか……?
「まあ、いいさ。丁度良い所に、吉井もいるんだから、ちょっとした実験に協力してもらうよ」
「御断りします」
「因みに、今のアンタに拒否権は無いよ。留年したく無かったらね」
「如何言う事だっ、ババア長」
「ババア長じゃなくて、学園長だよ」
くっ、まさかババア長まで、船越先生みたいに単位を……留年を盾にしてくるとは……。
「吉井君、此処は大人しく受けといた方が良いと思うわよ。じゃないと、本当に留年しちゃうから」
「木下さんまでっ」
まさか、木下さん……ババア長に何か弱みを握られて……。
「無いから安心して。吉井君、観察処分者になった後も、何かしら事件を起こす問題児認定されているから、こういう事で素行の点数を稼いでおいた方が良いわよ」
「問題児、って……」
「因みに、観察処分者には、教師の雑用の手伝いという素行点は入らないから余計にね」
「何ですと……」
「そりゃあそうさ。観察処分者の義務、だからね。雑用の手伝いは」
「ぐぉっ」
くっ、まさかのそんな罠が……。
「何か反論はあるかい?」
「ナイデス」
「それで宜しい。さて、実験なんだけれどね。まず、コレを」
そう言って、ババア長は腕輪を僕たちに見せて、着けるように指示した。
「それは、入れ替わりの腕輪。チェンジ、を合図に互いの装備を入れ替えるのさ」
「成る程、だから僕と木下さんを……って、如何して木下さんは自然に混ざっているのっ」
「? ……ああ、優子……木下は特別待遇者だからね」
「特別待遇者?」
「ええ、その義務の中には、教師の雑用やこういう召喚獣研究の手伝い、何かがあるわね」
「だからこそ、こういう実験には参加義務があるんだよ」
「そう何だ……でも、大丈夫なの? ババア長の実験だよ、身体は何処も悪く無い? ちゃんと、病院に行って検査してもらわないと……」
「………吉井、アンタがアタシを如何思って居るのか、よく分かったよ……」
「大丈夫よ、吉井君が考えている程、悪い扱われ方ではないから」
「なら、良いけど……」
木下さんを見る限り、嘘ではないみたいだ。衝撃の事実、木下さんがババア長に好き勝手されて居る何て。だけど、義務とか言って、木下さんに無理矢理変な事をやらせたりするかも知れない。木下さんは綺麗で僕から見ても、とても魅力的な女性だ。そんな木下さんに対して、あのババア長が変な感情を抱くかも知れない。木下さんをババア長の魔の手から守る為にも、なるべく二人きりにさせないようにしないと……」
「……////// とっ、兎に角チェンジって言えばい良いんですか?」
「あと、素手で、手を繋ぎながら、だねえ」 ニヤニヤ
「ぅっ、分かりました……////」 ニギッ
僕の左手に、何か温かい手が握られて……って、木下さんの手っ。わあ、小さくて何か妙な傷跡が合って、って……まさか、木下さんの素手っ。
「こんな感じですか?」
「ああ、そんな感じだねえ。後は、アタシがカウントするから、二人同時に、チェンジだ」
「分かりました」
「5」
うん、分かってた、分かってたよ、木下さんに他意がない事ぐらい。「4」でもさ、少し位、夢を見ても…感触を感じても良いじゃないか。「3」木下さんみたいな美少女と手を繋ぐ機会なんて、これから先、「2」きっと無いんだから…」
「………///////」
「1」 ニヤニヤ
っぐ、ババア長のニヤニヤ顔が、この上無い位、腹がたってくる。って、カウント残り1、ええと、確か……。
「0」
「「チェンジ」……////」 ピッピィッッッピィィィィィッッ
「これは異常な数値だって、まずいっ」
すると、僕の左手首の腕輪と木下さんの右手首の腕輪から、眩い光が洟たれた。そして、僕達は………意識が遠のいて行った。薄れゆく景色の中、僕は……白髪と虹彩異色を持つ騎士服を纏った女の子の姿が、木下さんの姿とブレて見えていた。