孤独の支配者 ~艦これ転生~   作:shirataki

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お久しぶりです。

艦これ要素はまだあまり無いです...


この話を当初は第一話としていましたが、そっくりそのままプロローグの二話ということにしました。
理由は簡単、本編に入ってなかったから...というか、完全にPrologueの続きでした。


Prologue / 0-2

見えてしまった。

鉈のような物が、自分の首に吸い込まれるように、そして滑るように通り過ぎていくのが。

 

理解してしまった。

急に視点が上がった意味が。

 

あの時の自分は、どうかしていた。

何故、あのような行動を取ったのか。

何故、あの時点で何も疑問が浮かばなかったのか。

いや、確かにあるにはあった。が、それは殆ど関係のない、どうでもいいことばかりであって、もっと大切な浮かぶべき疑問があったはずだ。

 

まず、何故目を合わせたまま、一切離さずにいたのか。

すごく疲れていて、ぼーっとしていたから?同じ境遇なのかもと少し共感してしまったから?

否、そんなちゃちな理由ではない。

離せなかった。そう、まるで縫い付けられたかのように。

そして、そのことについて気付けるような冷静さすら持っていなかった。

最初からおかしかったのだ。一目見た瞬間から、自分の意思は、あるようで存在していない。

 

改めて考えてみても、やはりあの場面はおかしい所だらけだった。

しかし、催眠でもかけられたかのような挙動を己がしていたというのは、俄に信じがたい。

全くと言っていいほど自覚が無かったからだ。

何時、そんなものにかけられたのだろうか?

目を合わせた瞬間からか?それよりももっと前から?

もしかしたら、最初から仕組まれたものだったのかもしれない。

それとも、ただ、ただ運が悪かっただけなのだろうか。

そもそも、あれは全て夢だったのだと思いたい。

 

そうでなければ、思考という行為などできるはずないのだ。

首から上は、というか下も、あの少女のような形をしたバケモノに喰われるのを確かに見たのだから。

 

 

自分は、UFOとか魔法とか催眠術とか、所謂オカルトと呼ばれる物を信じるような純粋な人間ではない。

作り話として聞くのなら普通に楽しめるが、これらを本当にあるのだと本気で信じる人達を見ると、少し可哀想だなぁという気持ちになる。

科学で証明できる事はそこに間違いなく実在するし、証明できない事は、元々そこには存在しないか、永遠の謎として扱うだろう。その謎だって、そのうち科学で証明されるだろうとも考えている。一種の現実主義者か。

 

『転生』という言葉を聞いたことがある。

人や動物が死ぬと、その魂は輪廻の輪に組み込まれ、また新しい命の魂として排出される。という認識で合ってるだろうか。いや、たぶん違うかも。聞いただけだし自信は無い。

とりあえず、宗教の考えはイマイチ理解しがたいが、この話は普通に面白いと思った。

 

人が死んで、次は動物として生まれることがあるのだろうか?

動物が死んで、次は人として生まれることもあるのだろうか?

 

性別は?転生の間に経つ時間は?

 

それを題材にした小説。

オカルトは信じないが、物語は好きだ。

その手の話は割りと多く読んだだろう。また、最近の流行りでもあった。

自分も一度してみたいなと、思ったこともあった。

しかしそれは、想像の中だからである。

 

 

本題に入ろう。実際に転生をするのは、とても気味が悪かった。

 

 

 

時間は少し遡る__

 

 

 

 

 

気が付くと、真っ暗な場所にいた。

目を開けているはずなのに、周りの景色どころか、自分の手すら見えないほどの暗さだ。

さっきの夢の続きか、それともまた違う夢が始まったのだろうか。

さっきの夢とは、言わんでもなくあの悍ましい夢である。

自分が殺される夢だ。

そういえば、今の自分の体勢もおかしい。まだ腕以外動かしていないはずなのに、身体の大部分に当たるはずのベッドの感触はどこにも感じられなかった。

あるのは、つま先にたまに感じる、金属のような硬くて冷たい感触と、身体全体を柔らかく包み込む、水のような液体。

ここで真っ先に想像したのは、よくある悪の組織が研究や実験のために、人間を水槽に入れて薬漬けにしたりするアレだ。

 

夢の中だとはいえ、気分の悪くなるようなショッキングな状況を想像してしまい、寝ぼけていた意識が急速に覚醒する。

変に寝違えたのか、身体全体が鈍い痛みを纏っていた。

 

相変わらず目は見えないが、少し動きまわってみると、やはり自分が箱のようなものに閉じ込められていることが分かった。

表面はとてもヌルヌルしていて、生理的に受け付けがたいタイプの感触がする。

色々な場所を叩いてみたりしてみたものの、返ってくるのは金属の板をプールの中で叩いた時のような、ガンとか、ゴンというような音以外はしなかった。恐らく、中を見るためのガラスなどは無い。

これは水槽ではないようだ。どちらかと言うと、閉じ込めるための檻のようなものか。

どちらにせよ、人間がいていい場所では無いのは確かだ。それにこんな場所に長くは居たくない。

どうにかしてここから出たい。

何故かこの水中で呼吸ができるのは、不幸中の幸いだった。恐らくこの液体は、テレビで見た呼吸ができる液体とかいうやつだろう。

それがあっても体力的には長くは生きられないが。

 

しかし、どう考えても打開案は全く思いつかなかった。壁を叩いて周りに助けを求めるのは、あまり効果は期待出来ない。

なぜなら、例え人がいたとしても、それは自分をここに閉じ込めた人間の可能性が高いからだ。つまり、気付いても放置される可能性が高い。

体力の無駄である。夢の中だから体力という概念があるかどうかはわからないが。

中から壁を壊すのは、人間には無理だ。せめて道具があればまだマシだったが、生憎と救済措置はない。

しかしそれ以外に方法はあるのだろうか?

...お手上げだ。自分はここで目が覚めるまで閉じ込められているしか、道は無いらしい。

 

そう諦めかけた所で、頭のなかに声が木霊した。

 

 

 

__お困りかい?何時も言ってるじゃないか、そんな時は、私達を頼ってくれよな!

 

 

 

「うぇっ...!?」

 

 

 

突然響いた声に、つい驚いて変に高い声が出てしまった。

しかし、そんなことは気にならなかった。

 

こんな場所で声が聞こえてくるのはおかしい。

そう、ここは閉ざされた、隙間のない檻の中。しかも、水で満たされているのだ。

その上で壁の向こうから話しかけてきたにしては、やけにハッキリしている。

水の中では、たとえ壁が無かったとしても、声を言葉として認識するのは困難なはずである。

よほど大きい声を出したのだろうか。いや、違う。

直接心に話しかけるような、自分が感じたことのない違和感があった。

 

声の出処を探っていると突然、小さい二頭身の小人が一匹...いや、一人?淡く光を放ちながら目の前に現れた。

小人は、アニメに出てくる少女を、かなりデフォルメしてそのまま二頭身にしたような容姿で、着ているものはセーラー服のようだ。その小さい身体からは、微かに光が発せられている。

その光に、自分を囲っていた壁が薄く照らしだされる。やはり窓は無く、全面が金属でできているようだ。

 

どこから出てきたのかはわからない。ふと瞬きをすると、そこにいた。

ありえない、と、普段の自分なら考えただろう。現に、理性がそう訴えている。だが、同時にこの小人が自分に話しかけてきたというのを、無意識に理解した。

見たことも無いはずなのに、まるで、家族や親友と数年ぶりに再会した時のような、懐かしさがある。

 

どうやって自分に話しかけてきたのだろうか?

いや、何となくだが、恐らくはこの小人が自分の頭の中に話しかけてきたのだと思う。

そういえば、あれは小人じゃなくて、妖精だったな、と気付く。

 

...小人も妖精も、実物を見たことが無いのに、見ただけで違いが分かる?

妖精という存在は名前だけでしか知らない筈なのに、そういう生物なのだということを知っている?

 

それらの生物が存在していることを前提とした記憶。

いつの間にか、今までには無かった、知らない筈の記憶を持っている。

違和感は無い。無いが、理性がその記憶を拒否する。

ありえない、小人も妖精も、そんな生物は存在しない、と。

しかし、目の前にいる非現実は、確かにそこにいる。

 

__そうだ、そういえば、これは夢じゃないか。何を本気にしていたのだろう。

自分が作った夢のなかなら、確かに小人でも妖精でもなんでも、存在するじゃないか。

そう、半ば思考放棄をするように、無理やり納得する。

現実のような夢だ。違和感の無さに、いつの間にか忘れてしまっていた。

夢の中でなら、知らないことを知っている事として記憶に持つことは、可能なのだろう。

 

まるでさっきの夢と同じように、違和感が無いのだ。

夢だという実感が無い。故にそれを忘れそうになる。

飲まれるな。と、自分に喝を入れる。

 

 

そうやって、若干混乱しつつも考え込んでいると、また、頭の中に直接声が木霊した。

 

 

『むぅ、聞こえてないの?...なんか反応してよぅ』

 

 

連続して声が響く。

カチリ、と、混乱していた思考が、まるで切り替わったかのように元に戻る。

 

しまった。どうやら考え込んでる間にも、色々と話しかけられていたようだ。

やはり慣れていない感覚に少し驚きながらも、ちらりと妖精の表情を伺ってみると、拗ねたように腕を組みながら明後日の方向を向いていた。口は尖っている。

向こうからすれば、ずっと無視をされていると思われてしまっただろう。

とりあえず、返事をすることにした。

 

 

『あぁ、少し驚いただけだよ。それで...君は誰だい?』

 

 

水中で言葉を出せるはずも無いので一瞬どうしようかと考えたが、向こうがやってきたように、こちらも頭に直接語りかけられるかもと、念じるように話しかけてみた。

と言っても頭の中で考えるだけだったので、できる自信は無い。

 

するとちゃんと成功したのか、妖精が驚くような反応をした。

一歩前に出てきて、また頭の中に声が響く。

 

 

『誰だい?って...忘れたの?も、もしかして記憶喪失かい?そういえば口調も変わってるような...。って、今念話で話さなかった!?念話って私達妖精にしかできないものだと思ってたんだけど...。あぁもう、今までそんなことできるなんて一言も言ってなかったのに!そうだ、私を忘れてる事と関係があるのかも...?』

 

 

と、かなりの早口で一度に様々な反応をした後、何やら考えこんで、ぶつぶつと独り言を言いながら自分の世界に入ってしまった。

どうやら、今の返しは妖精的に、突っ込みどころ満載だったらしい。やたらと疑問形が多かった。

 

とりあえず、妖精が言った数少ない内容から推測するに、念話というものは普通、人間にはできない事らしい。

そりゃあそうだ。今までそんなことをできると言っていた人間は、怪しい宗教の人達か、テレビ番組に出てる人達ぐらいしか知らない。

友人にもそんなことを冗談で言う奴はいた。もちろん、実際にできるとは思っていない。

自分が念話をすることができたのは、これが夢の中だからだろう。

 

もう一つ、どうやら自分とこの妖精は、知り合いという設定のようだ。

そういえば最初も、知り合いに話しかけるような言い方をしていた。

これには少し困った。自分はこの妖精について、殆ど何も知らないからだ。

妖精の方は自分の事を知っているようで、このままでは、忘れられたとかなりのショックを受けるだろう。

もしかしたら人違いだったと、どこかへ行ってしまうかもしれない。

彼...彼女?は、ここから出る方法を知っている可能性があるのだ。

今思い出したと、演技をするべきだろうか。

いや、それだと、いつか必ずボロが出るはずだ。いっそ、このまま記憶喪失だということにしてしまうか。

こちらも嘘がばれてしまう可能性はあるが、別に大して問題にはならないだろう。

 

そう決心し、もう一度念じてみる。

 

 

『あぁ、ごめん、俺はどうやら記憶が無いらしくてな...。君と自分がどういった仲だったのかとか、何でこんな所に閉じ込められているのかとか、全然分からないんだ』

 

 

そう、申し訳無さそうに言ってみる。

すると、彼女は考えるのを止めてこちらに向き直ると、少し悲しげな表情をして『やっぱり』と、一言呟いた。

彼女と自分はかなり近しい関係だったらしく、少なからずショックを受けたようだ。

結局どう続けていいのか思いつかず、お互いに沈黙する。

 

しばらく黙りこくっていると 彼女は急に顔を上げ、なにやら提案をしてきた。

もう吹っ切れたのか、先ほどのような暗い表情は、どこにもなかった。

 

 

『それじゃあ、お互いに自己紹介をしよう!』

 

 

自己紹介。彼女のことを知らないので、とても魅力的な提案だった。

しかし、彼女は今、「お互いに」と言っていた。お互いということは、自分もしなければならない。

ついさっき、自分が記憶喪失だということを言ったはずだが、その事をもう忘れているのだろうか?

しかし、確かに、記憶喪失でも自分の名前くらいは覚えてるということも、あり得るのかもしれないか。

それなら名前くらいは憶えてるということにしてもいいか、とぼんやり考える。

 

__名前。

 

ここで、とても重要なことに気が付いてしまった。

 

 

『あ、ごめん!記憶喪失だったね...。名前とかは思い出せないだろうから、私が教えてあげる!そうだねぇ...じゃあ、今私の事をどう思ってるか、でいいよ!』

 

『...え?あ、うん。分かった』

 

『...大丈夫?なんか急に顔色が悪くなった気がするけど』

 

『い、いや、大丈夫だ。気にしないでくれ』

 

『そう?大丈夫ならいいんだけど。そうだ、先にこんな狭苦しい所から出よう?』

 

そう言うと、彼女は壁に手を当てる。

すると唐突に、メリメリ、と、鈍い音を立てて、金属で出来ているはずの壁に、他人に持ってもらった新聞紙を指で突いた時のように、あっさりと穴が空いた。

その穴は、頭から行けば人一人くらいは余裕で通れるくらいの大きさがある。

そのまま妖精に引っ張られて外にでると、そこは暗い海の底のようだった。

 

しかし、そこに感想を抱くほどの余裕は、無い。

 

 

おかしい。

何かがおかしい。

 

 

『じゃあ、私から言うね!私の名前は』

 

 

こんなに意識がハッキリしているのに、夢の中だからといって思い出せないものなのだろうか?

無いはずの知識が頭の中にあるというのは、ありえるのだろうか?

そんな、都合の良いような悪いような、極端すぎる夢は、存在するだろうか?

 

無意識に、手が自分の頬の近くまで伸びる。

 

 

『<伊百六十八型潜水艦の妖精代表>、皆からは<イロハ>って呼ばれてるよ!改めてよろしくね!

それで、君の名前は__』

 

 

伸びた手が、やけに柔らかくてすべすべした頬をつまみ、そのまま抓った。

 

 

『__<伊百六十八>...皆は<イムヤ>って呼んでるよ!...って何してるの?』

 

 

抓った場所は、ジン、とした痛みを放った。

 

 




極力無いようにはしていますが、もし誤字や変な文章があれば、遠慮無く教えてくださると助かります。
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