少し遅くなってしまいました
文を書くのは楽しいのですが、やはり納得いく物はを書くのはなかなか難しいですね...
時間もどんどん消えていきますw
それといきなりですが、前の1話は、Prologueの2話ということにしました。
自己紹介の時の代表妖精についての説明を無かったことにしましたが、それ以外には内容に違いはありません。
Chapter 1 / 1-1
__<伊百六十八>...皆は<イムヤ>って呼んでるよ!
ピチャリ、と、水滴が落ちる。
耳鳴りが聞こえるほどシンとした空間に落ちた雫は、グラスを床に落とした時のように、やけに耳に残る。
海の底にある洞窟の中に、一つの人影があった。
眠っているが、冷たい地面にありながらも、大量の汗を流しながら苦しそうに唸っている。
ふと、洞窟の至る所でぽたぽたと垂れる水滴が、彼の額に落ちた。
水滴は雫となり、つるりとした、健康的な肌色の肌の上を、つーっと転げ落ちる。
すると、眠りが浅かったのか、パチリと目が開き、息を荒くさせながら上半身を起こした。
流れ出た汗によって、長い髪が頬に張り付いている。
流れるようにそれを右手で払うと、深呼吸をして息を整えてから、何やら深く考え込み始めた。
彼の髪の色と同じ緋色の瞳は、薄暗い光を灯している。
夢の中での、3度目の起床__内2回はちゃんとした寝所ではないが。
そろそろ、現実逃避も限度が来たらしい。
もし、痛みで夢が夢であると知覚できるのなら、この夢は夢ではない、ということになる。
もう数十回は痛みを感じているからだ。
それは、自分が殺されたあの夢も、例外ではない。
最後の最期だけは痛みを感じる事はなかったが、それでもあの日は、間違いなく生きていた。
今回だってそうだ。
起きた瞬間から全身に痛みを感じていたし、頬を思い切り抓ると、涙が出そうになるほど痛かった。
あの時、自分は間違いなく殺されて、ここにいる。
あの出来事が現実だと仮定して、では何故こんな場所に居るのだろうか。
死んだはずなのに生きているということは、実は死ぬ瞬間の映像は幻覚で、いつの間にか眠らされてここに運び込まれたか。それとも、人体実験にでも使われて、奇跡的に生き返ったか。
妖精がいるから、案外もっと別の、異世界に転移したのかもしれない。
すべて現実味はないが、それぐらいの事でないと、この状況は説明できない。
否定し続けるのもいい加減に疲れてしまっていた。
そしてたっぷりと時間を掛けて、決心する。
__このまま何もせずに悩んでいるだけなら、いっそのこと、認めてしまって自由に生きるか。
とっくに普通に生きることは出来そうにないからと。
そう考えた瞬間、肩に乗っていた荷が降りたような、蒸し暑い部屋の閉めきった窓を全開にした時のような、開放感のようなものを感じた。
怖くて怖くて、認めようなどと微塵も考えないようにしていたのに、一度認めてしまうと、割とすんなりと諦めがついてしまった。
これが夢ではないことぐらい、とっくに気付いていたのだ。
切り替えのキレの良さは、彼の特技の一つである。
そして、決意する。
取りあえず、これからはこれが現実であるということを前提に行動しよう。
もしこれが夢だったとしても、それが醒めたらそれでラッキー。
むしろ、この状況を楽しむぐらいの余裕を見せるんだ。
そうして自分を鼓舞するように決意を新たにすると、早速あることに気付く。
そうだ、念話とかいうロマン技を使えたよな。
夢の中だからできるものだと思ってたけど、あの方法で良いなら、もっと色々なことができるんじゃないか?よくある魔法みたいに、念じるだけで何かができるのなら、それは想像力と発想の有無で手札はいくらでも増えるはずだ。
と、そう遠くない未来に絶対に役立つかもと意気込んで、色々と試行錯誤してみる。
偶然とはいえ、このロマン技の使い方に気付いてしまった彼は、既にこの世界中の誰よりも世界に順応していた。
これが後に、この世界の妖精という生物の研究に大きく貢献することになるのは、また別の話である。
しばらくうんうんと唸りながら試行錯誤していると、どこかからか声が聞こえてきた。
『やあ、お目覚めかい。気分はどう?』
声の位置で声の主を探そうと思ったが、念話を使ってきているので分からない。
念話は直接心で話すため、距離や方角という概念が無いからだ。
仕方なく首を回して辺りを探しても、隠れているのか姿は見えない。
そこで、先ほど考え付いた技を試してみることにした。
すると、探し回る必要も無く、自分のすぐ後ろに声の主らしき影が見えたので、振り返ってから返事をする。
そこには、微かな光を周囲に放つ、小さな妖精が居た。
念話は、まだ意識をかなり集中させないと出来ないので、普通に話すことにした。
「イロハ。そうだな、もう大丈夫だ」
特に体調に気になるところは無かったので、普通に返す。
ただそれだけでは素っ気ないので、自己紹介をしたのを思い出したので、ついでに名前も呼んでみた。
昨日は声に出さずに会話をしていたからか、少し新鮮に感じた。
すると、意外だったのか、一瞬だけ驚くような顔をした。
しかしすぐに直ったかと思うと、今度は満足そうに顔を綻ばせて、『うんうん』と頷く。
昨日は突然気を失ってしまったので、心配を掛けていたようだ。
自分をこの洞窟に運んだのも彼女だろう。
『んふふ、名前、ちゃんと覚えてくれたんだ。...あれ、今ナチュラルに私の気配を読まなかった?妖精って気配とかは無い筈なんだけど...。偶然?』
さすがは妖精、自分が何かをしたという事に気が付いたようだ。
そう、今使った技は、目を閉じて意識を集中させると、物の気配がよく分かるようになるとい ものだ。
イメージとしては、頭の中に立体の地図が出来る感じ。
これがとても優秀らしく、この洞窟の中身や外側の全体像はおろか、洞窟の外の、かなり遠くの場所にいる魚の動きまで、かなり細かく分かった。
ただし、かなり集中しないと出来ないため、疲れるし、移動しながらじゃそもそも集中できないし、身の回りの音とかは聞こえなくなるしで、実用性は殆どない。拠点から辺りを探索するという使い方なら、結構役に立つと思う。
ただ、反応を見た限りでは妖精は普通、そういう類の物にはかからないらしい。
「フッフッフ、どうかな?」
『む、その自信ありげな顔は、なにやら面白そうなことをしでかしたようだね?気になるな~』
「いやいや、ただロマンを追い求めた結果だよ」
『ろまん?...まぁ、程々にね』
「おうよ」
...ん?
他愛もない会話だったが、ここで違和感に気付く。
自分の声がどうやらおかしいのだ。
約1日ぶりに出した声は上手く出せないのか、変に高かった。
それなのに声として破錠しておらず、とても自然に出ていた。
録音したものを聴いてみれば、全く違和感は感じられないだろう。
例えるなら__そう、それは快活な若い女の子のような声だった。
確かめるために、もう一度「あー」と声に出してみる。
すると、やはり声は高く、自分が頭の中で出している声と実際に出している声の違いに、今更ながら途轍もない違和感を覚えた。
突然の行動にイロハが反応するが、顔を覗き込んでくるだけで、一瞬何かを言おうとして口を開くが、また閉じた。
声をかけようとしたけど少し面白く感じたのか、様子を見ることにしたようだ。
冷や汗が一筋流れる。
ある可能性に思い至り、視線を恐る恐る下げてみる。
そういえば昨日も今日も、やけに水流や風の感触が全身にダイレクトに来るなと、今更ながら、半ば他人事のように思い出す。
何となく自分のへその辺りを見ようとすると、目の前に慎ましやかな丘があった。密かに自慢の、6つに割れた腹筋は、その丘に阻まれて見えない。
茫然としつつも、子供のような小さな手でゆっくりとお腹をさすってみる。
するとそこには、凹凸が少なく、すべすべとしたマシュマロのようで、しかし、ぷにっとする手応えの下に、薄らとしなやかに広がる腹筋があった。
高校時代に鍛え上げ、今まで維持してきていたガッチリと浮き出たシックスパックはどこにも見当たらない。
手をそのまま上に滑らせる。
すべすべとした肌は抵抗が少なく、つなぎ目など無くそのまま丘に当たった。
どうやらこれは、自分の体の一部らしい。
さらにそのまま上に滑らせると、そのまますっぽりと手に収まる。そして、これが何かを理解できず、無意識に軽く揉む。少しだけくすぐったく感じ、声が出そうになる。
瞬間、自分が何をしたのかを頭が理解し、一気に顔が熱くなった。
『あら大胆。イムヤ、急にどうしたの?』
イロハがニヤニヤと何かを言っていたが、内容は殆ど分からなかった。
先程の決意が、あっさりと鈍りそうになる。
__いやいや、いや、待て、慌てるな。落ち着け自分!これは確かに有り得たことだろう!
いや、有り得ないけども!
まさか...、まさか性別が変わっているとは...!
っていうか、なんで服着てないんだよっ!!
面に出さずに、しかし絶叫するように、必死に自分を宥める。
しかし、認めないわけにはいかない。何があってもこの状況を楽しむと、ついさっき決意したばかりじゃないかと。
唐突に、はらりと、細長い糸のようなものが目にかかる。
ほとんど予想はついていたが、念のためと右手の指で摘まみ、左手で出所を探ると、自分の頭に行き着いた。
糸の色は赤の配分が多い赤紫で、気のせいか、光が反射して所々蒼くも見える。
この不思議な色の物体は、どうやら自分の髪の毛らしい。
冷や汗が滝のように流れ出る。
突然青い顔をして固ってしまったので、妖精が心配そうな顔で、声をかけてきた。
『って、すごい汗かいてるし!やっぱり大丈夫じゃなさそうじゃん、もうちょっと寝たら?』
ついさっきまでとは打って変わって本気で心配するその声に、爆発しそうになっていた理性が、少しだけ落ち着いた。
落ち着いた頭で、冷静を装って思考を再開する。
これは、物語で言えば、転生、というやつだろうか。
華奢で小さく細いこの身体が、自分のモノだという実感が沸かない。
生まれ変わるのならまだしも、よりによって、性別が変わってしまっているとは思わなかった。
それなのに、違和感が全くないのがまた怖い。
つい最近読んだことがある状況なだけに、事態の把握だけは上手くいった。
息を大きく吸って、深いため息を吐く。
...まぁ、なってしまったものは仕方がないか。
さっきも決めたことだし。
と、諦めにも似た思いで。
これ以上考えているとまた暴走してしまう可能性があるので、強引に思考を終わらせる。
取りあえず、最初の目的を決めたい。
早く服を着たいけど、自分は持ってないし、妖精はどう見ても手ぶらだ。
となれば、恥ずかしいのを承知でこの格好でしばらくを乗り切るしか無いだろう。
...慣れない内は大変そうだ。
少し考えて、そういえばと、会話が途中だったのを思い出した。
「ごめん、ぼーっとしてた。こ、今度こそもう大丈夫だよ」
『むー、ホントにー?まぁ、確かに顔色は大分良くなってるけど。でも、昨日もそうだったけど、急に黙りこんで青い顔をして考え込むのは悪い癖だからね?こっちが心配になるんだから』
しつこいぐらいに心配する妖精に、一瞬、まるでお母さんみたいだ、と思う。
ただし、行動や見た目がちんちくりんなので、どちらかと言うと背伸びをした子供のようだ。
イロハは身体が小さいからか、たまに言葉にジェスチャーのようなものをつけるのだ。
その小さい身体の全体を使った動きは、どこかペットのような可愛らしさも感じさせる。
不思議な生物だ。...少し、狙ったようなあざとい所があるが。
それにしても、イロハはかなりの心配症らしい。
まぁ、自分がそうなるようなことばかりしてるからだろうけど。
彼女は根っからのいいやつなんだなと改めて思う。
そういえば、自己紹介を途中までしかやっていない。
確か自分は記憶喪失という扱いだから、代わりにイロハに対する印象を言うんだっけ。
ああ、そういえばこれも、配慮が足りなかったとすごく申し訳無さそうにしてたな。
「はは...。そ、それじゃあ、自己紹介の続きをしようか。今のイロハについての印象を言ってなかったし、今発表したいと思う」
『そういえば途中だったね。あの時はイムヤ、名前を教えた瞬間に倒れちゃったもんねぇ~』
と、イロハはクスクスと、人が倒れた事を面白おかしいとでも言いたそうな顔で笑っていた。
そういえばさっきも、同じようにニヤニヤしていた。理由は間違いなくアレだろう。
脳に焼き付いた感触を思い出し、また顔が熱くなる。
さっきのあざとさといい、このイラっとくる顔といい...。うん、頼りになる妖精さん!とでも言おうと思ってたけど、やっぱり変えよう。
「ああ、そうだな。取りあえず今の印象は、《とてもウザい妖精》ってところだよ。よろしく」
『えぇ!酷い言いようだなぁ...』
そう辛辣に述べてやると、今までニヤニヤしていたイロハは慌てて取り繕うように、表情を悲しげなものに変えた。
両手を合わせてもじもじさせている。やはり、根っからのあざとさも持ち合わせているようだ。
久々に心に余裕を持って会話ができたことに、表情が緩む。
決意をつけた後も、今までずっと顔が固くなっていたようで、突然力が抜けたことに自分で少し驚いた。
イロハもそれに気がつくと、またニヤニヤと、悪い笑顔でそれを指摘するのだった。
「さて、これからの予定なんだが」
『んー?予定?』
お互いの自己紹介を終え、しばらく談笑してから、本題に入ることにした。
これからの予定。つまり、これからはどう行動していくかである。
先程の探知術で、この洞窟が海の底にあることは分かっている。どのくらい深いかはわからないが、こんな所で生活するなど、狭苦しくて到底耐えられないだろう。食糧の問題もある。
自分はこの世界を生き延びることにしたのだ。いつまでもこんな所にいる場合ではない。
しかし、何の訓練も受けていない身で、そのままここを出るのは自殺行為だ。
かなりの深さがあるので、水上に出るまで息が続く気はしないし、水圧がどうのこうのとかで内蔵がヤバいという話を聞いたことがある。
そこで、困ったら頼ってくれと言っていた、このイロハを頼ることにしたのだ。
その旨を伝えると、すぐに答えが返ってきた。
『ああ、確かにこんな所にはもう用は無いよね。ここから出る方法は色々あるけど...そうだ、艦娘って分かる?』
「かんむす?」
『んー、その様子だとやっぱり憶えてなさそうだね。大事なことだから今教えるよ。艦娘っていうのはね__』
艦娘。
第二次世界大戦前後の軍艦に残った魂をこの世界にいる妖精達が汲み取り、深海棲艦と呼ばれる生物と戦うために、人間の形に生まれ直させた存在。
深海棲艦という存在については諸説あるが、最もポピュラーな考え方は、海に溜まった怨念の塊であるという説で、それを前提にした推測が数多く議論されている。
有力な説では、深海棲艦が人間と過去に沈んだ船の特徴を、必ずと言っていいほど持っていることから、海の奥深くにある怨念が沈んだ船や人間達の魂を吸収し、それを象った個体が船の残骸などを使って身体を作り、海上に出現するのだとしている。
彼らは人間を敵対視しており、圧倒的な物量と、人間サイズから出てくる戦艦並みの攻撃力によって、為す術も無くあっという間に全世界の海を掌握した。
海上輸送が困難になり物流がほぼ麻痺し、輸入に頼っていた国々は、どんどん疲弊していった。
日本も例外ではなく、人口は大幅に減り、残った街に万が一にも近づかれないようにと、各地の自衛隊の基地や昔軍港として使われていた港町を中心に常に警戒網を敷いて、深海棲艦を見つけ次第すぐに駆逐していたが、それでも限界は近かった。
彼らは、普通に倒すだけでは核になっている怨念は消えず、しばらくすると同じ個体が海底で復活する。
この仕様に気付いた人々は、震え上がったのだそうだ。
もうこれまでかと諦めかけていたとき、完全に倒す方法が見つかった。
それは、特定の国に突然現れた妖精が作り、更に妖精が宿った武器を使って、怨念を深海棲艦ごと消し飛ばすという正気の沙汰とは言えないようなものだ。
しかし日本でも妖精の出現が確認され、本営の胡散臭い発表に疑いの目を向ける者が多かったものの効果はすぐに出て、国の安全がかなり改善され、結局妖精という存在は神のように受け入れられた。
しかし、彼らを完全に撃滅するには、海に出て戦う必要がある。
既に満身創痍だった人々にはそれを成す余裕も、技術も残っていない。
この頃妖精が作っていた武器は、人間サイズの割には重すぎて、殆ど固定砲台と化していた。
そこで、攻勢に出るため、新たに妖精に生み出されたのが、艦娘である。
軍艦を象った彼女らは、人間サイズでも実際の船の艤装と同じ重さがある妖精の装備を自在に操り、頑丈で、大けがを負ってもすぐに治し、海を自由に駆け回る事ができる。
深海棲艦と同等の力を手に入れた人類は、一方的にやられることはなくなる。
こうして人類は深海棲艦と互角に戦えるようになった。
『__以上が艦娘の役割についてだよ。結構長々と話したけど、これでもまだまだ色々と端折っちゃってるんだよね...。まぁどうせあまり役に立たない情報ばかりだし、詳しい説明はまた今度にするね。それで、どう?今ので分かった?』
艦娘についてと言っていたが、どちらかというと深海棲艦についての話に重点が置かれていた。
この世界で生き延びるには、そいつらのことをどうにかする必要があるらしい。
しかし、ここを出るのとは何か関係はあるのだろうか?
取りあえず、先ほどの話を整理するため、要点だけ掻い摘まんで一緒に確認してみる。
「...ああ。まぁ、つまりは、深海棲艦とかいうやつに世界が危機に陥れられてて、それに立ち上がった妖精達がその艦娘っていうのを作って、深海棲艦と戦ってるって事だろう?それがここから出るのとどう関係するんだ?」
『Oh...めちゃくちゃ短く纏めたね。そうだねー、すごぉーく関係があるよ?自分の名前と私の名前をよーく思い出してみてよ』
「名前...?」
名前にヒントがあるらしい。
うーん、今は<イムヤ>っていう名前で、あいつのことは<イロハ>って呼んでて...。
あ、そういえばなんか違う名前も言ってたな。
イロハの方は確か、<伊百六八型潜水艦の妖精代表>とか何とか言ってたような。
潜水艦の妖精代表ってことは、潜水艦の艦長とかそういうやつなのかな?
変な名前だ。名前というよりは、肩書きだという方がしっくりくるし。
それで、俺の名前は確か...<伊百六十八>?
同じ名前__そうか。
「成る程、俺がその艦娘って事か。そして、この体を造ったのが、イロハ」
『その通り、記憶は無いけど相変わらず記憶力と察しが良いね。まぁ正確には、
そういえば最初にあったときも、
さっきの話を聞いた感じでは、もしかしたら艦娘自体にも妖精が宿っているのかもしれない。
「イロハが親ねぇ...。あ、潜水艦っていうことは、潜ることに特化してるのか?」
『何、そのいやそうな顔は...。そうだね、潜水艦の艦娘は、海に長時間潜って行動できるよ。ただ、潜っていられる時間とか深さは、しっかりと限界があるから、そこは注意してね』
中に人間が乗っているわけでもないので息継ぎとかは必要無いかもと思っていたが、そもそも艦娘は人間をベースにしているからか、潜水に特化していると言っても、流石にずっと潜っていられるわけでもないようだ。確かに呼吸は自然にしていた。
その割には、昨日も今日も何も食べていないのに空腹を感じないので、生理現象がどうなっているかはよくわからない。
取りあえず、第二次世界大戦時の潜水艦を象っているのなら、自分が知る現代のもののような長期間の潜水は出来ないだろう。
...あれ、もし昨日あのままあの箱の中から出ることができなかったら、窒息で死ぬところだったのか?
今更ながら、自分の置かれていた状況がどれほどの瀬戸際だったのかを知り、軽く身震いをした。
「あいよ。あれ?でもさっきの話を聞く限りでは、海に出るなら艤装とか装備とかが必要なんじゃないの?」
『あ、一応艦娘は妖精製の艤装が無くても、艦娘には基本装備があるからそのままでも大丈夫だよ。ソナーという道具で索敵したり、魚雷で攻撃したりも一応できる。ただ、それだけだと効果は低いから、やっぱり装備は欲しいところだけどね』
「艦娘は妖精が造った存在だから、別に妖精製の装備を用意する必要があるというわけでも無いといったところか」
『そゆこと』
分かってるじゃんと、イロハが嬉しそうに頷く。
その話が本当なら、自分にも既に基本装備が付いているはずだろう。
それなら生身でも、外に出ることができる。
案外簡単に片づく問題だった。
いざとなれば、危険を承知で、決死の覚悟を持ってここを出るつもりだったが、そこまで気にする必要は無いらしい。
そう安堵していると、イロハが聞き逃せ無い一言を呟く。
『あれ、そういえばイムヤって服着てないけど、もしかして初期装備の展開が出来てないのかな?それだと基本性能とかもちょっと怪しいね』
「は?初期装備?それって」
『あやっぱりなんでm...いえちゃんと教えるのでその拳をしまってください』
「誤魔化さないでくれ、俺は今とても真剣なんだ。もしかして、初期装備がないと艦娘の本領を発揮できないのか?それと...初期装備には服とかも?」
特に最後のものは最重要だと、語気を強める。
これの答えによって、イロハの処遇が決まるのだ。
誤魔化されないように、視線で射殺できるぐらいの気を込めて、イロハの事を睨む。
この時、イムヤの目から、一瞬だけ薄く金色の光が放たれていたことには、当人たちは気付かない。
『アッハイ、服ハ装甲トシテ標準搭載シテイマス』
その後、イロハを絞り出した。
どうやら自分の船を想像するだけで良いらしいということが分かったが、WWⅡの潜水艦などは見たことがない。
どうしようかと思ったが、テレビで見たことのある現代の潜水艦を想像すると、無事に装備を展開する事ができた。
そして期待した通り装甲が出現したが、何故かスク水とサンダルにしか見えなかったので、ついでに服装も想像すると、セーラー服のような物になった。
この時、イロハが『そんな、強引な...!』と珍しく素で驚いていたが、気にしない。
ただ、中にはやはりスク水があった。
こうして、簡単には解決できないと思っていた数々の問題が、あっさりと解決したのであった。
その後、なぜ今まで黙っていたのかを聞くと、曰わく『趣味だと思ったから』だそうだ。
ただ、目が泳ぎまくっていたので、本当は見ていたかっただけなのかもしれない。
露出とか、そんな変態趣味は無い。断じて。決して。
極力無いようにはしていますが、もし誤字や変な文章があれば、遠慮無く教えてくださると助かります。