孤独の支配者 ~艦これ転生~   作:shirataki

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遅くなりました、第二話です。

少し書き方を変えてみました。


Chapter 1 / 1-2

雲一つ無く、一面を青色で塗りつぶされた空。

その中心にある真夏の太陽が、これまた一面を蒼に塗られた海を照りつける。

光が海の表面の波によって不規則に反射し、そこを横切る者に上からも下からもと容赦なく浴びせられる。

煩わしいだけのそれは、しかし3日も経てば慣れてしまうものである。

というか、実際にそうだった。

 

 

「...ねぇ、もう3日も泳いでるけど、島の影すら見てないんだけど。本当にこの方向で合ってるの?」

 

 

 

 

広大な海。周りには空と水平線と海以外はなにも見えない。

こんな所にいる理由。それは遊びに来たわけでも、事故にあって漂流した、というわけでもない。

3日前に洞窟から脱出した俺らは、現在はイロハが知っているという、安定して生活が出来そうな島に向かって泳いでいる所だ。

しかし泳ぎ始めてからかなりの時間が経っているが、目的地に着くどころか、まだ他の島さえ見ていない。

 

途中で流石にこの調子で泳ぐだけでは全く先が見えない事に気付いたので、なにかないかとイロハに聞いてみたりした。

すると、ダイビングで使うような個人用スクリューみたいな物を艤装として出せるとのことで、二日目からはこれを使っている。

これのおかげで、結構なスピードは出せてると思う。水面に顔を出していると、心なしかバランスが取りづらいのが難点だが。

それに第三者から見てみたら、俺の服装がスクール水着ということや、その不自然な状況も合わさって不思議な情景を作り出しているだろう。

 

それでも二日も泳ぎ続ければ、流石に精神的に参ってくるな。

艦娘には体力という概念がなく、燃料さえあれば何十日も活動することができるらしいが、精神的な疲労は普通にあるようだ。

というか、艦娘って船でもあるのに、こんな人間でもできるような移動方法しか無いのかよ。

この身体は便利なのか不便なのかよく分からない。

 

 

「イロハ、俺もう疲れたぞ...。なんかこう、もっと移動が楽になる道具とか無いの?」

 

 

先程の言葉に続けて、イロハに向けて助けを求めるように呟く。

自分以外に周りに人はおらず、かと言って独り言にしては会話をそのまま切り取ったようで、不自然な言葉。

もしこの光景が他の人に見られていたら、変な奴だと思われるだろう。

だが、これは独り言ではない。

今は姿が見えないが、ちゃんと会話をしている相手がいる。

 

 

『えぇ?昨日も同じ事言ってたから艤装の出し方教えてあげたじゃん。それなのにまだ不満があるの?』

 

 

頭の中に声が響く。

呆れるような反応が返ってきたが、その姿はやはりどこにも見えない。

ではどこにその相手がいるのかというと、実は自分にも分からない。

何故なら、彼女は妖精という存在で、その小さい体を隠せるからだ。

と言っても、隠す理由は分からない。

どうせ、姿を見えるようにしている時よりも楽だから、とかそういう大したことのない理由だろう。

 

そんなことを考えていると、唐突に頭の上に少しの重みを感じた。

どうやらイロハが出てきたらしい。

珍しいな。

彼女は引きこもりの素質があるのか、あの洞窟を出てからはスクリューの出し方を聞いた時以外は1度も外に出てこなかった。

何かあったのだろうか?もしかしたら、スクリューよりもいいものが出てくるかもしれない。

それとも、何か悪いことでも起きたのだろうか。

 

少しの期待を寄せていると、一つ間を開けてまた頭の中で声が響く。

 

 

『その調子じゃあ、艦娘としての先が思いやられるよ...。まだまだ燃料には余裕があるし、精神面を鍛えなきゃいけないのが今後の課題かな。とりあえず、予定ではあと2時間後ぐらいには見えてくるはずだから、せめてもうちょっとだけ頑張ってね』

 

 

どうやら情けはもう無いらしく、現状維持ということらしい。

 

 

「えー」

 

『えー、じゃないの!艦娘の、それも潜水艦が3日も泳げなくてどうするの?いざという時にそんなんじゃあ、ここは生きていけないよ!』

 

 

珍しく怒っているのか、少し尖ったことを言って、何も言わなくなってしまった。

頭の上にいるので表情は見えないが、ふくれっ面をして口を尖らせているだろうことが容易に分かる。

ついでに、ピリピリした空気をイロハから感じた。

自分は何かやらかしたのだろうか?

 

その後も、スクリューに代わるものはないかと色々とやんわり質問をしてみたが、遠回しに、『そんなものはねぇよ!いいから黙って泳いでろ!』的なことを真顔で言われてしまったので、これ以上は黙っておくことにした。

とりあえず、後2時間泳げばいいことだけは分かったので、それに専念する。

 

 

 

 

それから2時間、欠伸が出そうになって噛み殺すのを何度か繰り返した後、自分が泳いでいる方向に薄らとではあるが、ついに島の影が見えた。

それもどうやら一つだけではなく、大小様々な島が集まっているようだ。

泳ぎ始めて3日。

そして、この世界に来てから初めて見た緑に、少しだけ感慨深い物がある。

 

しかし、やっとの思いで目的地に着いたことに安堵していると、今まで静かにしていたイロハが、何かに反応した。

 

 

『__っ!...やっぱりいるんだね』

 

 

唐突にそんなことを言うと、今まで頭の上に感じていた重みが無くなる。

どうやら姿を消して隠れたようだ。

 

 

「なにか居たのか?」

 

『うん、深海棲艦がいるみたい』

 

「...もしかして島の近くに?」

 

『その通り』

 

 

どうして分かったのかは分からないが、どうやら深海棲艦がいるらしい。

そして、そいつは自分たちが今向かっている島の近くにいる。ということは、このまま近づけば、そのうちその深海棲艦にもこちらの事がバレてしまうだろう。

この前のイロハの話が本当ならば、彼らは敵対しているので攻撃を仕掛けてくる。

つまり、ほぼ確実に戦闘になるはずだ。

イロハが隠れたのはそれが理由だろう。

 

深海棲艦の目の前で、島に上がるのは自殺行為だということは考えなくても分かる。

見つかれば、何かをするまでもなく攻撃を浴びせられるだろう。海の中にいるよりも万倍危険だ。

じゃあどうすればいいのか?簡単だ、敵を排除すればいい。

それがこの世界の生き方であり、艦娘に与えられた使命でもある。

この3日間、ただ泳いでいただけというわけではない。この世界での生き方を何も知らなかった俺は、イロハから艦娘の戦い方を教えてもらった。

それを活かす時が来たのだ。

 

__あれ。

戦うのは怖いはずなのに。

殺し合いなんて全く縁が無かったからなのか、敵が近くにいるというのに全く緊張感が湧かない。

ただ、これから殺し合いが始まるのだという言葉だけが自分に恐怖のようなものを感じさせる。

上辺だけの認識、言葉だけの理解。

正直言って、まだ実感が足りないようだ。

 

逃げてしまいたい気がするが、艦娘としてこの世界で生きていくことにした手前、この世界のルールから逃げてしまうワケにはいかない。

それに、どうやら俺は、深海棲艦と戦ってみたいとも思っているらしい。

不思議な感覚だ。

艦娘に植え付けられた使命のようなものだろうか。

 

兎にも角にも、逃げるという選択肢は無い。

3日掛けてここまで泳いできたのに、島の近くに深海棲艦がいるから、という理由で帰るわけにはいかない。

というか、帰る場所なんてそもそも無いしな。

取り敢えず、準備をしよう。

 

 

「ついに戦闘ってことか。イロハ、どうすればいい?」

 

『ん?なんか張り切ってるね。そうだねぇ、島に行く前に沈めちゃおう。取り敢えず、ここから影も見えないということは、敵は島の裏にいる筈。今のうちに潜っちゃって』

 

「了解」

 

 

イロハに言われた通りに潜り始める。それと同時にスクリューをリュックのように背負うような形に持ち替え、ついでにそこから魚雷を幾つか取り出す。

艤装の使い方や深海棲艦との戦い方はこの3日で大体聞いていたので、使う物やその場所などは予習済みだ。

と言っても実際に使ったことはないので、これがどういう動きをするのかは分からない。

実践で覚えていくしかないだろう。...そんな余裕があるかどうかは分からないが。

 

そして目線が水面の下に入った瞬間、今までかなり眩しかった太陽の光が水によってかなり緩和された。

海の中はかなり透き通っていて、魚の群れが幾つか見える。

下を見てみると、海底がいつの間にかすぐそこにまで来ていた。

 

 

島を回りこむように旋回し、少しスピードを落として、音をたてないようにする。

気を引き締める。これが初めての戦闘だ。

何の訓練も受けていないが、不思議と戦える自信はある。

いつの間にか魚雷を持つ手に力が入っていたが、緊張しているというよりは武者震いのようだ。

一瞬、自分が殺されたときの光景が脳裏によぎったが、頭を振って追い払う。

下手を打てば自分が死ぬ。...いや、そんなことは考えなくていい。

教わった通りにやるだけだ。

 

そう考えながらある程度回りこんだ頃、水面に何か浮いてるのが見えた。

 

 

『__見えた』

 

『あー、あれはイ級だねぇ。駆逐艦で、深海棲艦の中では一番弱い奴だよ』

 

『...そうなのか』

 

『残念ながらね。何を期待していたのかは知らないけど、敵はそいつ1体だけだから、何事もなければすぐ終わるよ』

 

 

イロハの報告を聞いて、内心軽く舌打ちをする。

こんな奴が相手では、肩慣らしにすらならない。

 

...って、あれ?今何か考えてたっけ。

まあいいや。

それにしてもあの姿は禍々しい。

あのディティールにあの色は、生理的にクる物がある。

それに敵が見えてきたからか、今更ながら緊張してきた。

手も心なしか震えている。

 

 

『あ、そうそう。艤装は私達も動かせるから、何か欲しいものがあったら言ってね』

 

「...」

 

 

そう遅れて、イロハが『テヘペロ』とでも言うように、今更ながらものすごく重要な事を言ってきた。

返事をしようと思ったが、流石に今喋ると敵にも気付かれてしまう可能性があるので、親指を立てて『分かった』と伝える。

 

え、それ今言う?

イロハが艤装を動かせるということは、俺って泳ぐ必要は無かったんじゃ?

__絶対に移動を丸投げされるのを分かって、面倒くさいからって敢えて言わなかったなコイツ!

...取り敢えず今は目の前のことに集中しよう。お仕置きは後だ。

 

敵は深海棲艦の中でも最弱の『イ級』で、その数も1体だけだ。

とは言え、こちらも1人だけで、しかも実戦経験がない分、むしろこっちの方が弱いだろう。

相手が駆逐艦ということに対して、自分は潜水艦という、艦としての相性も悪い。

今は相手が全く警戒していないので余裕を持って行動ができるが、もし気付かれてしまったら、その時は全力で逃げるしか無い。

イロハ曰く『イ級』はとても頭が悪く、さほど脅威では無いらしいが。

それでも油断して良いものでは無いのは確かだ。

 

 

魚雷で十分に狙える距離まで近づく。

一度潜望鏡を出し、敵の位置と進行方向を確認しておく。

イ級はまだ少し遠くにいたが、イロハ曰くこの距離で十分らしい。

深海棲艦特有の黒く禍々しい容姿から、艦娘になってから目が良くなったおかげか細かい模様まで見える。

どうやら目が金色に光っているようで、とても不気味な雰囲気だ。

 

コイツを沈める。

心を落ち着かせて、魚雷を構える。

 

 

『行くぞ』

 

『りょーかい』

 

 

魚雷の扱い方は、とても簡単だ。

標的をよく狙って、念じるようにして放つだけでいいらしい。

後は自分で勝手に進んでいくそうだ。

イメージとしてはチ○ロQのようなものか。

ただ、単純な動きなだけに、距離があると狙い通りに飛ばすのは難しそうだ。

 

冷静によく狙いをつける。

震える手を気合で止めて、魚雷が標的に向かっていくのをイメージしながら、ゆっくりと手を離した。

敵は止まっている。ただのマトだ。

すると今まで全く動く気配の無かった魚雷が、気のせいか一瞬震えたかと思うと同時に、一番後ろに付いている2つの小さいスクリューが回転し、イメージ通りの軌道で進み始めた。

 

 

『お、やるじゃん。こりゃ直撃コースだね』

 

 

...それ言っちゃダメなやつ。

 

極限まで集中し放たれた魚雷は、まっすぐと標的に向かって進んでいった。

自分でも当たると確信し、イロハからのお墨付きも頂いた。

が、しかしそれはフラグと言う。

言いようのない不安を感じるが、それでももうそろそろ魚雷が当たる頃だろう。

このまま何事もなければいいが。

 

そう考えた時。

唐突に、標的の『イ級』が動き出した。

 

 

『『あ』』

 

 

標的は元の場所から移動し、徐々に速度を上げている。

そのまま、こちらから側から反対方向に向かって旋回すると、一気に速度を上げていった。

 

魚雷は確実に外れた。

その事実に、割りとショックを受ける。

 

 

『ま、まぁ。たまにはそんなこともあるよ』

 

『うー、初めての魚雷は当てたかった...』

 

『悔しいのは分かるけどねぇ』

 

 

魚雷が外れて仕留められなかったが、幸いにも敵はこちらには気づかず、そのまま遠くの方へ逃げていくように移動していった。

というか、もしかしたら魚雷にすら気付いてなかっただろう。

試合に勝って勝負に負けたような気分だ。

 

 

『しばらく待って、またアイツが帰ってこなかったら上陸しよう』

 

『うん...』

 

 

子供みたいに返事をする。

よほど悔しかったのか俺は。

まあいいや。

なってしまったものは仕方ない。

やっと目的地に着いたんだ、それを喜ぼう。

うん。

 

 

そんなことを考えていた時。

遠くの方で、何かが爆発したような音が聞こえた。

 

 

『ん?何、今の爆発音』

 

『爆発音?...まさか。イムヤ、さっきのイ級が逃げていった方向を見てみて』

 

『イ級が逃げた方向?...って、あれ。なんか煙上がってるな』

 

 

潜望鏡で辺りを見てみると、水平線の向こうになにやら煙が立ち上っていた。

まさか。

 

 

『魚雷が当たった?』

 

『もしかしたらそうかもしれないね。一応浮上して確認しよう。念の為に警戒はしてね』

 

『了解』

 

 

魚雷が当たったかもしれない。

確かに、方角的にはあり得る話だ。

ただ、自分が狙ったコースからは随分と外れているように見える。

誤差がそんなに大きかったのだろうか。

兎に角、爆発音の正体が何なのかを見極めたいので、浮上することにした。

 

 

少し急ぎ気味で浮上すると、やはり遠くの方で、何かが燃えているのが見えた。

恐らく、爆発したのはあれだろう。

 

 

『さっきと同じ奴かはわからないけど、イ級が炎上してるのが見えるね...』

 

「まさか本当に当たったのか?でも進んでいったコースとは随分と外れてるようだけど」

 

『どうだろう。あり得る話としては、この辺に機雷でもあるのかも。魚雷は普通にはずれて、イ級は結局それに当たったのかもしれないね』

 

「なるほど、機雷か。と言うか、あの魚雷が当たるわけないしな」

 

『そうだね。取り敢えずもう浮上しちゃったことだし、島に上陸しちゃおう』

 

 

まあ、現代の技術なら、魚雷が標的を追尾することぐらいできるだろうけど。

取り敢えず、周辺の安全は(恐らく)確保できたので、さっさと上陸することにした。

 




極力無いようにはしていますが、もし誤字や変な文章があれば、遠慮無く教えてくださると助かります。
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