〜艦これ〜指輪付きの死神   作:高山 蓮

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#1-3 「死神」

 日本国海上自衛隊。日本の海を守る為に存在する軍事組織。自衛隊はその刃を自分から敵へと向ける事はしない。今までもこれから未来永劫、専守防衛を貫く。それが自衛隊である。そう、滝川は考えている。

 深海棲艦討伐に一部の市民団体からは防衛出動反対とか専守防衛を守れと言われているがあくまでも、深海棲艦討伐は自衛隊法八十三条に基づく害獣駆除であり災害出動である。となるとまた他の市民団体は深海棲艦を守れと言ってくるが彼らは日本が置かれている状況と今までの犠牲者の名前を知ってもらってからそう言う主張してもらいたい。と考えている。そんな事は口が裂けても外へは言えないではあるが。

 そう考えてから意識をの目の前の書類へと戻す。ここは日本国海上自衛隊横須賀基地横須賀鎮守府地区。その本舎の中にある遠征や会議、大規模作戦等で訪れる司令達の為に用意されている執務室。予備の部屋とはいえちゃんと調度品も揃えられている部屋である。

 

「自衛官が襲われる事件、、、か。世の中物騒になったもんだな」

 

 どうやらこの所、幹部自衛官が襲われる事件が若干出ているらしく、統幕(統合幕僚監部)から各自衛官へ注意する様にとお達しが回ってきていた。警察等も勿論、捜査しているそうだが逮捕に至れないらしい。とりあえず滝川はそれを頭の片隅に置いときながら出撃書類の決裁を再開する。そう、先程の雪風と木曾の出撃関係の書類である。電子化が進み省力化も進んだとはいえフォースユーザーとフォースプロパイダーを兼任する彼の仕事量は伊達ではない。電子化されてない書類等々もまだ多く存在しそれなりに労力をつかうものである。

 

「こんな時の秘書艦様か」

 

 今の自衛隊には秘書艦制度と言うものがあり、海幕(海上幕僚監部)お墨付きの秘書艦資格を持った艦娘が所属部隊の司令などの事務、庶務時には建造開発の補佐をしてくれる制度のことである。元々は応急的に士官不足を補う為に作られたそうだが、なんやかんやで続いている制度である。

 彼の部隊、呉遊撃水雷戦隊には旗艦の木曾と不知火が持っている。が木曾は出撃したばかりである為休む様に指示した、その時、木曾は食い下がったが司令命令を使い強制的に休ませた。不知火はまだ哨戒任務に着いてる為不可能である。

 

「1人は慣れているが、副官を寄越すように海幕に要請するか」

 

 ポツリと呟く、西日が差して来た執務室にはキーボードのタイプ音に時折滝川愛用の万年筆の筆記音がただ響く。

 窓の外には暇そうに投錨する汎用護衛艦。小型指揮艇が出撃から帰ってきた様で横須賀鎮守府地区へと寄ってくる。後続には6人の女性が海面を滑走しながら続く。港の奥には出港する小型護衛艦も見える。正に軍港街と言える風景が広がっていた。艦娘達との会議前に終わらせなければと考えつつ滝川はデスクワークを進める。

 

 すっかり日は落ち、横須賀は消灯防止灯と灯台の光のを残し夜の闇に沈む。勿論のことだが既に国旗降納している。滝川も残り書類量がやっとこさ半分を切ったところでドアが4回ノックされる。

 

「失礼します。不知火です」

「不知火か入ってくれ」

 

 武人然としたキビキビとしたキレがある動作で不知火が入室する。

 

「司令。作戦が終了しました。敵との接触なし、不知火、島風両艦無事帰投しました。特記事項はありません。」

「わかった、明日で構わないが任務記録の提出を頼む。それと食事後に、ちゃんと新人の事を紹介する。そのつもりでよろしくな。島風にも連絡してくれ。あ、そうだ木曾にこれ渡しといてくれ」

「了解しました、では失礼します」

 

 一切顔色も表情も変えずに不知火はうなづき、滝川から封筒を受け取り、またキビキビとした動作で退出する。

 滝川は相変わらずだなと思いつつ次の書類に取り掛かる。

 

ーーー陽炎型駆逐艦8番艦雪風観察報告書 宛海上幕僚監部

 

 そう書かれたファイルを開き、打ち込んでいく。

 

————————————————————

 

「全員集まってるな? ではブリーディングを始めよう」

 

 その声で雑談を止め4人の艦娘が滝川へと視線を向ける。普段なかなかありつけない間宮料理を夕食で食べれた事でどの顔もホクホクとしていた。ただ1人を除き。

 

「さて、改めて新しい我々の仲間を紹介しよう。陽炎型駆逐艦8番艦雪風だ」

 

 その例外、雪風は立ち上がり壇上へと登る。

 

「陽炎型駆逐艦8番艦、、、雪風です。よろしくお願いします」

 

 相変わらずその眼に輝きはなく掠れかすれの声で挨拶する。すかさず滝川は言い繋ぐ。

 

「雪風は佐世保の第2対深海棲艦隊所属だった。」

「やはり一桁代部隊だったか。」

 

 木曾は今日の出撃で垣間見えた練度の理由に納得し、頷く。

 

「新しい仲間だ、暖かく向かい入れてくれ」

「俺たちとは今日から友だ。お互いに助け合おう。よろしくな、雪風」

「私の妹ですね。姉として最低限責務は果たす為、貴女を守ります」

「私と駆けっこしようね!ね!」

 

 各々が言葉をかける。しかしそんな言葉に対して雪風は首を振る。

 

「雪風は、()()()()()。それに…雪風は()()です。雪風に近づけば…沈んでしまいます。だから…近づかないでください」

 

 そう、力なく自嘲的に呟く彼女に誰もが何も言うことが出来なかった。

 

   ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その言葉の意味を深く理解出来るが故に。

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