マトイに止められ、あと一歩進んでいればキャンプシップを出ていた所で立ち止まる。
疑問符を浮かべながらマトイに目を向ければ、彼女は何やら倉庫?を弄っている様だが・・・。
「そのままの恰好だと、出入り口付近に居る人にバレちゃう!」
そう言って差し出されたのは――。
キャンプシップから出た3人は、
ゲートエリアにてアフィンとリサが話している姿を視界に入れる。
緊張からバクバクと心臓が暴れるのを抑え、その二人の横を通り過ぎる。
「うん・・・、バレてはいないみたい。」
アフィンとリサの姿が遠くに見える位置まで来て、
マトイはウィスパーで二人に話しかける。
マトイのその言葉にまだ完全に安堵とまではいかないが、幾分かは緊張が解れた。
そのままマトイの案内を受けつつ、ユウジのマイルームへと向かう。
画面越しでは分からなかった構造にドキドキしながらも、何とか見つけたユウジの部屋に逃げ込む様に入る。
ここまで来るだけで寿命がどれだけ削られたか・・・。
安心してしまうとタガが外れる物で、
緊張で固まっていた筋肉全てが緩みだす。
ナツキとユウジは、その場にペタリと腰を抜かしお互いの顔を見合わせる。
「ぶっ・・・!!あっはっふwwwww」
『やめろ笑うなぶっ飛ばすぞ。』
ナツキの顔を見るなり、
ユウジはその場で腹を抱えて笑い出した。
それもその筈。
キャンプシップでマトイが二人に手渡した物、それは―――。
「かみぶくろ?」
「うん、皆はユウジの事までは感知してない筈だから。」
でも顔は知られてるから、隠すならそれで十分な筈。
マトイはユウジが紙袋を被ったのを確認して、次にナツキに視線を向ける。
「ナ、ナツキ、ごめんね・・・?」
はて?マトイは何故、ナツキに謝っているのか。
ユウジのその疑問もナツキの手元を見る事によって消えた。
嗚呼、成程。
『・・・。』
「ナ、ナツキ?怒ってる?で、でもね!ナツキは服装とかで気付かれちゃう可能性があって・・・。」
ナツキは無言で自分の手元にある物を見つめる。
絶望にも近い感覚がナツキの視界を一瞬だけ白く染めた。
いや、視界は文字通り白い。
つまり、何が言いたいかと言うと。
『何でよりにもよって!ウェディングドレスなんですかね!?』
「ショップコーナーでくじ引きしてて当たっちゃって・・・。男物の服なんて持ってなかったし・・・。」
『しかもサラブレッドマスク・・・!!』
「それは俺との争奪戦ジャンケンで負けたお前が悪い。」
『ウェディングドレスにサラブレッドマスクって最早ただの変態だよ・・・っ!!』
正直言って、断固拒否したい。
こんなの屈辱以外の何物でもない。
しかし、ごめんね。ごめんね。と謝り続けるマトイの姿を見て、
こんなに必死に自分達を助けようとしてくれているのに、我儘は、言えない・・・のか?
ナツキはグググと服を持つ手に力を入れる。
『マトイ、謝らないで。』
「ナツキ?」
『折角、マトイが僕の事を思って、貸してくれたんだもん。ありがとう。』
着替えるよ。
ナツキは心を殺した笑顔を携え、
蚊の鳴く様な声で、マトイとユウジに後ろを向いててくれと言葉を零した。
あの時のナツキは今世紀最大。人生に絶望していた顔だったと後にユウジが語る。
そんな事が有り。
何とかユウジのマイルームまでナツキ、ユウジ、マトイの3人は辿り着く事が出来た訳である。
被っていたサラブレッドマスクを乱暴に脱いで地面に叩きつける勢いで置けば、
マトイはクスクスと笑みを零しながら、乱れたナツキの髪を手櫛で整える。
そんな姿を見ながら、
これ明らかに贔屓だよなーと思いながらユウジも紙袋を脱ぎ、思う。
可愛い女の子にお世話されるナツキに嫉妬すれば良いのか。
大切な親友に、いとも簡単に触れてしまうマトイに嫉妬すれば良いのか。
軽く溜息を吐いて画面越しに見慣れたマイルームを見渡せば、なんとなく落ち着きが戻ってくる。
これからどうなってしまうのか。
話し合わない事には何も始まらないな。
ユウジは頭を掻きながら、腰に力を入れ立ち上がる。
【親友の笑顔を守る為】
ユウジの主人公臭が・・・。
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