やはり俺が346プロのPになるのはまちがっている。 作:高海0o0
「部屋で待っててくださいと言いましたよね!」
「だって遅いんだもーん、待ってたらポテト食べたくなっちゃって」
「私もシェイク飲みたくなって」
「あたしは二人が手持ちのお金がないからって無理矢理」
結論から言うとアイドル達は戻ってきた。
待機しているはずだった部屋に居なかったので千川さんが電話をするとなんと三人はマ○ドに居たのだ。自由過ぎるだろこの事務所。
「ところでさ、この人がアタシ達のプロデューサー?」
「話を変えないで下さい! まあ、そうです。彼があなた達のプロデューサーの比企谷八幡君です」
「どうも、比企谷八幡です」
千川さんに続いて軽く自己紹介をする。
「ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな……」
「なんでそんな上から目線なんだよ」
初対面の年上の男にむかって上から目線とは図太い性格をしている。いや、こいつだけじゃなくてギャルっぽいやつも図太そうだな。
「ほら、皆さんも自己紹介して下さい」
千川さんがそう言うと三人は改めてこっちを見てくる。
「じゃあまずアタシからいくね。北条加蓮だよ、気軽に加蓮って呼んでね」
「そうか、北条。これからよろしく頼む」
「そこは呼ぼうよ!」
ふっ、俺に女子を下の名前で呼ぶような芸当出来るわけが無いだろう。むしろ男ですら呼んだことがないまである。
「じゃあ次は私かな。私は渋谷凛。よろしく」
あれ、ちょっと待て。こいつは何度かTVで見た事があるぞ。だがその時はこいつらじゃない、違うアイドルと一緒にいたような……。
「渋谷ってもしかして他にもユニットに所属してるか?」
「よく分かったね。《 ニュージェネレーション》ってユニットにも所属してるよ。」
「《 ニュージェネレーション》はうちのプロダクションの中でも特に有名なユニットなんですよ」
「そうだったんですか、渋谷、これからよろしく頼む」
道理で見た事があるはずだ。346プロは決して小さい芸能プロダクションじゃない。むしろ大きい部類に入る。その中でも有名という事はトップアイドルに近いところに居るのだろう。
当然、そうなれば仕事の数が増える。仕事の数が増えればTVに出る回数が増える。そうなれば俺が《 ニュージェネレーション》を何度かTVで見かけても不思議ではない。
「そろそろあたし自己紹介してもいいか?あたしは神谷奈緒だ。これからよろしく」
「ああ、よろしく頼む」
神谷はこの中で一番まともそうな性格で安心できる。多分このユニットのリーダー的存在になるだろうな。
「そういえばこのユニットはなんて名前なんですか?」
「《 トライアドプリムス 》といいます」
《 トライアドプリムス 》意味は……最初の、最高の三人組ってところか。さて、ここで矛盾が生じたぞ。
「千川さん、渋谷は他のユニットに既に所属してるんだから最初の三人組じゃないですよね」
「それでは自己紹介も終わったので早速仕事に行きましょう」
露骨に話題を変えたな
「仕事って何をすればいいんでしょう」
正直なところアイドルをプロデュースする……というのがいまいち分からない。
マネージャーみたいなもんだと思っていたが考えて見るとそれならプロデューサーじゃなくてマネージャーでいいはずだ。
プロデューサーという職業とマネージャーという職業で分かれている以上、この二つの職業に違いがあるはずなのだ。
「あまり考えなくても大丈夫ですよ。やっていれば分かってきます。それにうちのプロダクションではプロデューサーというよりマネージャーに近いかも知れませんし」
……プロデューサーとマネージャーの違いで悩んでいた自分がアホらしくなってくる。
実際は全く違う仕事なのだろうがこのプロダクションの場合人手が足りない分マネージャーも兼業しなければならないのだろう。
「今日は一体何をするんですか?」
「今日は宣材写真を撮ってもらいます。凛ちゃんはともかく加蓮ちゃんと奈緒ちゃんは新人なのでまずイメージ作りをしなければなりません。凛ちゃんは個人の分は撮る必要はありませんがユニットでの写真も撮ることになっています。」
なるほど、イメージ作りか。イメージ作りというのはかなり重要だ。
例えば今回の宣材写真で笑顔を作らず真剣な表情で撮ると周りは勝手にクールな人だと決めつけてしまう。
逆にとびきりの笑顔で撮ると周りは明るい人だと思い込む。
そして一度そういうイメージがついたものを覆す事はなかなか難しいのだ。
「プロデューサーさん、三人の資料です。写真を撮るときの参考にして下さい」
「え、俺がああだこうだ言っていいんですか?」
「ええ、そしてもちろんアイドルに全て任せるのもまたプロデューサーの勝手です。比企谷君が、いえ、比企谷君もアイドル達も納得できるような写真を撮ってください」
これはいよいよ責任重大だな。ここで失敗したら今後の三人のアイドル人生に響く事は間違いないだろう。
「奈緒照れ屋なのに写真だいじょうぶ〜?」
「なっ! 写真くらい楽勝だ! そ、そういう加蓮だって大丈夫なんだろうな!」
「アタシは、ちょっと不安かなぁ。だからプロデューサー、しっかりフォローお願いね。奈緒は楽勝らしいから好きにさせてあげてもいいけど」
「な、加蓮! これが狙いかぁ!」
「あはは、本当奈緒は可愛いね」
「か、可愛いって言うなぁ!」
これは……いいな。女の子同士って最高だよね!
「さぁ、行きますよ。今日の仕事は宣材写真だけなので頑張りましょう!」
写真撮るだけだと?それが終われば帰れるのか、前の会社では絶対に定時に上がれる事なんてなかったのに……これがホワイト企業か!(錯乱)
だが現実はそんなに甘くなかった。
「奈緒ちゃん、もっと自然にしてみようか、リラックスリラックス!」
「は、はい!」
返事をしながらもやはり表情は硬い。おそらく神谷は写真慣れしてないのだろう。
「加蓮ちゃん、すごい良かったよ!初めてとは思えないくらいだ!」
「ありがとうございまーす」
反して北条はすぐに終わった。なにが不安だ、全然平気じゃねぇか。
「プロデューサー、奈緒の調子はどう?」
北条の方を見ていた渋谷がこっちに駆け寄ってくる。
「ダメだな、表情が硬すぎる。もっと自然な感じで撮れればいいんだが」
なにかしてあげたいがさっき初めて会ったばかりの俺に何を言われても多分逆効果になるだろうからな。
「奈緒は写真苦手だからなー」
写真を撮り終えた北条が駆け寄ってくる。
「分かってんなら撮る前にあんな事言うなよ」
「つい、テヘ」
舌を出しながら自分の頭をこつんとする。くっそ、可愛いなおい。
「奈緒、リラックスリラックスー」
「い、言われて出来たらとっくにしてるよ!」
「カメラマンさんはかぼちゃだよ」
「凛! やめろ!」
こんな時でも北条と渋谷と話す時は少し自然体になるんだな。……待てよ。
「カメラマンさん、ちょっといいですか?」
カメラマンさんを呼んで今思い付いた事を伝える。するとカメラマンさんは親指を立て了承してくれた。
「おい、北条、渋谷。どんな話題でもいい、カメラマンさんの後ろに立って神谷と話してくれ。からかってもいい」
「えぇ! いざ話してみようとすると何話していいか分からないよ」
「頼む」
「やってみるだけやってみよう、加蓮」
「分かった」
そう言って二人はカメラマンさんの後ろへ移動する。
「緊張してる奈緒可愛いー」
「う、うるさいな。加蓮、邪魔するな!」
「そう言われて照れてる奈緒可愛いー」
「り、凛まで! お前らやめろよぉ」
三人で話しているとだんだん神谷が自然体になっていく。それから三分くらいが経った頃、神谷は完全に自然体に戻っていた。
カメラマンさんに合図を出し俺もカメラマンさんの後ろに回る。
「今の神谷、うちの妹の次くらいに可愛いぞ」
一瞬顔を赤くしてその後はにかみを見せる。
「なんだよ、それ」
パシャ
「オッケー! いい表情が撮れたよ! プロデューサーさんやるねぇ」
「ありがとうございます」
「奈緒ちゃんも良かったよ! 頑張ったね、お疲れ様!」
「は、はい!ありがとうございますっ!」
ぽかんとしていた神谷もカメラマンさんの言葉で我にかえる。
「じゃあ最後、ユニット撮影いってみようか」
ユニットになると神谷も緊張しないみたいでかなりスムーズに終わった。並んで写真を撮るとやはり渋谷が目立つ。さすが既にデビューしているだけあるな。撮られ方を分かっている。
「じゃあ三人とも、お疲れ様! プロデューサーもおつかれ!」
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
……あれ、声が一つ多かったような。
「って千川さんっ! 居たんですかっ!」
「い、居たんですかとはなんですかっ! 最初にそばにいると言ったじゃないですか!」
やばい、そばにいるって言われたら意味が違うのは分かっていてもドキッとしてしまう。
「すいません。全然発言しないもので」
「比企谷君のためにも黙ってないといけないんです。ところで今回のアイデア、良かったですね」
「ああ、神谷の件ですか。神谷は二人の前だと自然体になれるようだったので二人に注意を引いてもらおうと思ったんです。カメラを意識しないように」
「初めての仕事、大成功ですね!」
そう、これは大成功といえるだろう。なのになぜだろう。神谷が少し不機嫌なのは。
「なんで怒ってるんだよ」
「怒ってない!」
「怒ってるじゃねぇか」
やはり女子というものは分からん。確実に分かることは俺に対して怒っているという事だろう。ならば俺が機嫌を直さないといけない。だがどうすればいいのか分からない。
「全く、プロデューサーはにぶいなぁ」
「北条、分かるのか?」
「そんなのプロデューサーが奈緒に対して可愛いって言ったのが写真を撮るための作戦だったからに決まってるじゃん」
「な、何言ってんだよ! そ、そんな訳ないだろぉ!」
北条に変わって渋谷が答える。なるほど、これは確かに俺のせいだな。女子というものは相手の事が好きかどうかなんて関係なく異性に可愛いって言われたら嬉しいものなのだ。
男だってそうだ。例え相手がどんな女子であってもかっこいいと言われればやはり嬉しい。
そしてそれが嘘だと分かると余計に悲しい。ならば最初からなにも言われない方がマシだ。
だが今回神谷に言ったのはあながち嘘でもない。本当にあの時の神谷は可愛かった。まあ俺からすればアイドルなんて全員可愛いものなのだがそれでもあの時の神谷はなにか……男心をくすぐるものがあったのだ。
だがそれを直接伝えられないのが俺だ。どうしたものかと考えるが一向にいい考えが思い浮かばない。……もう考えながら話すか。
「神谷、どうしてアイドルを夢見てもアイドルになれない子達がいると思う?」
「さぁ、分かんないな」
「答えは単純、可愛くないからだ。可愛ければスカウトされる、オーディションに受かる、当然だろ。その中でお前はアイドルになったんだ」
「け、結局なにが言いたいんだよ!」
「まあ、あれだ。アイドルになった以上、お前は可愛いんじゃねーの?」
今の俺にはこれが精一杯だ。これでなんとか機嫌が直ればいいが。
「か、可愛くねぇよ!」
「はぁ!?」
嘘だろ、こう返されるとは思ってなかった。
「まあまあプロデューサー、奈緒はツンデレだから、素直になれないんだよ。まあプロデューサーもなかなかだけどね」
「ほんと、素直に可愛いって言ってあげればいいのに」
「だーかーらー、ツンデレじゃないって言ってるだろぉ!」
「はいはい、奈緒は可愛いねぇ」
「かーれーんー、お前はそれしか言わないのか!」
結局ジュースを奢って機嫌を直してもらった。一人だけに奢るのもあれなので四人全員に……いや、千川さんはおかしいだろ。
そんなこんなで俺のプロデューサーとしての一日目が終わ
「あ、比企谷君はこの後プロデューサー業についての説明がありますので帰れませんよ」
……った訳では無かった。どうやらプロデューサーという仕事も定時に帰れるような仕事ではないらしい。
社会の厳しさをふたたび思い知りながら、マッ缶を飲み干した。
おかしいところがありましたら指摘お願いします。