そこには帝都警備隊の女性がいた。ポニーテールで可憐な女性がいた。恐らく年は若干上かと思われる。
「帝都警備隊所属、セリュー・ユビキタス!正義の味方です!」
(`・ω・´)ゞビシッと敬礼しながら所属と名前を教えてくれた。
「えっと、自分はシュウと言います。実はお恥ずかしながら迷子になってしまって。取り敢えず大通りに出れば大丈夫なんですが」
「それは大変です!この辺は余り治安が良いとは言えません。さあ、こっちです。はぐれ無いで下さいね!」
そう言ってセリューさんは手を握ってきた。手柔らかいなぁと思っていると、
「キュウ!キュウウー!」
変な鳴き声が聞こえた。声の方へ向くと犬?らしき生き物が居た。うん、犬似た何かだ。
「コロちゃんお腹空いたの?我慢してね」
「あのー、それは一体…」
「あぁ、この子はコロちゃん!帝具ヘカトンケイルです。ご安心下さい。悪以外は無害ですから!」
そうセリューさんは言う。しかし、中々愛嬌のあるね。
「コロちゃん飴とか食べれます?」
何となく聞いてみた。
「大丈夫ですよ!基本何でも食べますから!」
じゃあ早速サイダー味を与えてみる。
「噛まずに舐めるんだよ」ホイッ
「キュウウー」パクッ コロコロ
「キュウウー!キュウウー!キュウウー!」
何か興奮した。
「わっ!コロちゃん嬉しそう!そうなに美味しかったんだね」
「セリューさんもどうぞ。イチゴ味だけど」
「え?良いんですか?ありがとうございます!」
セリューさんも飴を咥える。ついでに俺もオレンジ味を咥える。
何となく飴を食べて和んでると、裏路地の定番とも言える方々がホイホイやって来た。
「おいおいおいおい。お前らここらは俺達『ドラゴンバスターズ』の縄張りだぜ?まあ、有り金全部置いてけば許してやるがな!勿論警備隊も例外じゃねぇぜ?ねーちゃんは体で払えば金は半額にしてやるよ!」
ぎゃはははは!と笑う周りの連中。うーむ、やはり笑いどころは共感出来ない。残念である。
そんな如何でも良い事を考えてると……横から禍々しい気配がして来た。セリューさん?
「そうか…。つまりお前達は悪という訳だな?なら、今この場で正義の名の下に断罪する!!」
「ガルルルルル!!」
セリューさんとコロちゃんの顔が半端なく凶悪になっとるー!これじゃあどっちが悪か分かんねぇなwww
まぁ警備隊のセリューさんが断罪する言ったし、大事にはなら無いか。
「正義しっ「ダダダダダダダダダダダダダダッ」え?」
俺は迷う事なく引き金を引いた。
ドラゴンバスターズの悲鳴と銃声が一番大きい筈なのに……
キン キン キリン カン カン キンキン
空薬莢の音の方が良く聞こえた。
「終わった終わった!さってと大通りの案内お願いします」
リロードしながらそう言った。しかし、弾が直ぐに無くなるのはいかんな。ドラムマガジンにした方が良いかな?そっちの方が楽かな?
「あの、えっと……だ、大丈夫でしたか?」
セリューさんが心配?そうに聞いてきた。
「あっさり引き金を引いたのが意外だった?」
だけど俺は確信を聞いた。
「え!えっと、別にそんな事は」
「俺はね、自分の安全を確保しただけさ。セリューさんに任せても良かったけど、時間掛かりそうだったし。だったら直ぐに終わらせた方が良いやと思ってね。取り敢えず大通りまでの案内お願い出来ますか?」
「は、はい!大丈夫です。さあ!こっちです!」
そう言ったセリューさんは案内してくれた。手は繋いでくれなかったけど。
大通りに着くまでセリューさんは結構色んな人に声を掛けられてた。その殆どは感謝の言葉や労わりの言葉だった。
「さあ!ここから真っ直ぐ行けば大通りに出ますよ!」
お陰でセリューさんも元通りになったかな?
「ありがとうございます。コロちゃんもありがとうな」
「キュウ!キュウ!」
それでは!と言ってセリューさんは走ってパトロール再開しようとしたが、俺は声を掛けた。
「セリューさん。1つだけ忠告したい。良いかな?」
「忠告…ですか?」
セリューさんは不思議そうな顔をして此方に振り返った。
「正義と言う言葉を軽々しく言わ無い方が良いよ」
その瞬間セリューさんから表情が消えた。
「…………それはどう言う意味ですか?」
平坦な声。感情を押し殺してる感じだろう。
「正義なんて見方によって変わるからだよ。例えばちょっと前に南の蛮族が帝国に反旗を翻したのは知ってるよね?何故彼らが反旗したか分かる?」
「悪の事なんて分かる必要なん「そこに正義が有ったからだよ」……え?」
「誰の目から見ても無謀な戦いだ。負ける事は必須だった。なのに何故1万人以上の人間が戦いを選んだのか。簡単に言えばさ仲間を守りたかったのさ。セリューさんが街の皆んなを守りたいのと同じだね」
「同じ?悪が私と……同じ?そんな…そんな事は無い!だって悪なんだよ!逆賊だったんだ!だったら「無抵抗な子供や赤ん坊を殺す事も許されるの?」…!!」
セリューさんの言葉が詰まってしまった。
「セリューさん。俺は貴方の考えを否定はし無い。だって、街の人達は少なくともセリューさんに助けられてるだろう。だけどね、相手の考え……いや、信念と言っても良い。それを理解して何故反抗するのか、何故戦うのか、それを考えて欲しい」
「考える?」
セリューさんの表情は前髪で見え無い。だけど伝える。
「そう、セリューさんは今1つの考えに固定されてると感じたんだ。だからもう少し柔軟に考え、そして対応して欲しい。まぁ、この忠告は道案内の恩返しみたいな物さ」
そう言った俺は大通りに向かう。しかし、
「じゃあ、何故……何故パパは凶賊に殺されたの!?パパは……殺される事なんてして無いのに!!」
泣きながらセリューさんは俺に問う。
「セリューさんのお父さんがどんな凶賊に殺されたのかは分からない。だけどコレだけは言える。似た信念が武力でぶつかれば、最悪何方かは死ぬ事もある。そして、さっき言った南の蛮族達。彼らも皆殺しにされる様な事なんてして無いよ」
それを聞いてセリューさんは座り込んで泣いてしまう。更にコロちゃんがメッチャ唸り声あげてる。怖っ!
「セリューさん、俺は貴方みたいな人は今の帝国に……いや、この国の市民達には必要な存在だ。じゃなかったら、あんなに沢山の人達から声を掛けられる訳無いだろう?考えを改めろとは言わないよ。ただ、考えて欲しい。思考を止めないで欲しい。固定しないで欲しい。じゃないと、死んでしまうからね」
そう言って再び歩き出す。今度は呼び止められなかった。
本作主人公事シュウは基本相手の考えや思想を否定しません。寧ろフォローするぐらいです。
達観する所もありますが、理由は7.8歳の出来事によるものになるかな?