早朝。俺はブラートさんと山頂にいた。何故かと言われたら山頂に来て欲しいと言われた為だ。
「こんな朝早くに一体何のご用ですか?しかもタツミ抜きとは」
そう、タツミ抜きで山頂にいるのだ。
ブラートは此方を向いて口を開く。
「……シュウ、武器を抜け」
剣を抜きながら一言だけいう。その瞬間ブラートの気配が変わる。
「……………マジで?ま、抜けと言われれば抜きますがね」
銃を抜きながら軽く言うシュウ。しかし、油断はして無い。
「……………行くぞ!」
その瞬間ブラートは地を蹴った。
「………………」
MP28を構え躊躇無く射撃をするシュウ。しかし、全弾弾かれ避けられ接近を許す。
「うおおおお!!」
気合一閃。真正面から斬りつけるブラート。だが、身体を捻り避けるシュウ。
ドゴオオオン!!
ブラートの斬撃により地が割れる。だが、シュウは冷静にマグナムをブラートに向ける。しかし、
「ふん!」
一気に最高スピードに乗ったブラートの斬り上げの攻撃にシュウのマグナムが吹き飛ぶ。
「ちっ!」
舌打ちしククリナイフを出しながらMP28をブラートに向けようとするが、
「甘い!」
ブラートの蹴りにより吹き飛ぶMP28。だが、構わずククリナイフで斬りつける。だが、
「予測出来た攻撃に意味は無いぞ!!」「だから何だ!!」
先に予測してたブラートは防ぎ、更に斬撃を追加するシュウ。
互いに攻撃をし剣で受け止め、そして避ける。
「シュウ!お前は大切な仲間を失いながら何も感じないのか!お前に託された思いに気付かないのか!どうなんだ!答えろ!!!!」
一瞬の互角な攻防はブラートの斬撃によりシュウは吹き飛ぶ。吹き飛びながら体勢を整え着地する。
「………何も感じない?………だと?」
ブラートの問いに口を開くシュウ。
「そうだ!お前には軽さしか無い。仲間を大勢失いながら仇も取ろうともしない。そんなお前に俺は聞いているだよ!!!!」
ブラートが叫びながら一瞬で間合いを詰める。そして上段から気合一閃を再び斬り込む。
この時、シュウはファイブブーストを起動していた。だからいつも通り避ける戦法を取る筈だった。何故ならシュウの戦闘スタイルはスピード重視。パワーはマグナムや手榴弾等で補っているからだ。
……だが、
ガキイイイィィィィン!!!
真正面から受け止めたシュウの姿があった。
「……何も感じないと言ったな」
ククリナイフで受け止め、俯きながら聞くシュウ。
「ああ、言ったさ」
ブラートも剣に力を込めながら返事をする。
「何も感じてない訳無いだろうがあああああああ!!!!!」
その瞬間シュウは力を受け流しブラートに斬り掛かる。
ギン!ガギン!シャアアア!
自分の出せる最大のスピードで斬り掛かるシュウ。それを防ぐ事に集中するブラート。
「皆んな死んだ!父さんも母さんも村の皆んなも死んだ!ヌマさん達も南の仲間達もみんなみんな死んだ!!!!だから俺はこの時代が憎いんだよ!この弱肉強食の時代がな!!!!!」
感情を爆発させるシュウ。そして更に斬撃のスピードは増す。
「父さんは危険種に殺された!仇を取ったら母さんと村の皆んなが賊に殺された!……その時分かったんだ!結局今の時代はこんなんだって!旅をして余計に確信したよ!」
勢いは止まらずブラートに傷を付ける。
「帝国が悪い?ああ!そうだよ!悪いよ!憎いよ!何せ帝国によって知り合った人の半分以上は殺されてる!!だけどね、それ以上に誰もこの時代を変えようとし無い事が何よりも憎い!!!!」
「なら、お前が変えれば「千年間一体何をしていた!」…!」
シュウがブラートに問う。
「帝国が出来て千年。未だに文字と計算ぐらいしか地方に広がって無い状況。危険種相手に対する武器も無い村が当たり前。……一体何やってたんだよ!え!それにいきなり変える事何て不可能なんだよ。ゆっくり、時間を掛けてやって行く事が当たり前なんだ。なのに…………なのに…………」
再び拮抗状態になる。
「だから、俺は俺なりのやり方をする。……いずれ帝国は滅びる。その時、俺は間近でその瞬間を見届けてやる!!今まで逃げ続けて来たけど、この時は命を賭けてでも見届ける!例え死んだとしてもな!!!そして、その場面を死んだ皆んなに教えてやるんだよ!!!それぐらいしか俺には出来ないんだ!!!」
回し蹴りをして一旦距離を取る。そしてブラートは口を開く。
「シュウ………お前の想いは……よく分かった。すまなかった。……だがな、命をそんな事に賭けるんじゃねえ!!!」
ボコオォ!
ブラートの拳がシュウの顔に入る。が、
バキッ!
「よ、余計な…お世話じゃ!」
シュウの拳もブラートの顔に入る。それから互いに武器を捨て殴り合う。互いに拳、蹴り更には頭突きをする。そして相手の攻撃を全て避けずに殴り合う2人。
しかし、この瞬間ブラートの勝利となる。スピードに分があるシュウが回避をせず、パワーと耐久力に分があるブラート。
そして…………
ドサ はあ、はあ、はあ。
辺りに呼吸だけが響く。
「痛いな……マジで痛いわ………」
今の状態を口に出すシュウ。
「はあ、はあ………シュウ、駄目元で聞くが、俺達の仲間になら無いか?」
ブラートは期待して無い声で聞いてくる。
「遠慮する。……俺は俺なりにやって行くさ。気持ちは嬉しいけどね」
答えは拒否。しかし、もう言葉に棘は無かった。
「そうか。さて、少し休憩したらタツミの所に戻るか。心配するだろうからな」
「了解。あー、疲れた」
何となしに空を見上げるシュウ。彼の目に何が見えているのか。それは本人のみがみぞ知る事である。
「それからシュウ、後で俺がベースキャンプで手厚く介抱してやるからな!///」
頬を赤く染めるブラート。
「怪我軽いから平気だわ。さてと!早くタツミの所に戻ろう!」
痛いのを我慢して走り出すシュウ。
「おーい、遠慮はしなくても良いんだぜ♂」
追うブラート。語尾に危険な香りを含む。
「嫌じゃー!!!」
身の危険か、はたまた別の危険を感じたのか悲鳴上げつつ全力で走るシュウ。
相変わらず締まりの無いシュウであった。
感情と考えは別物です。