逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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再浮上〜


信念と小鳥

翌朝

シュウはエスデスの抱き枕になりつつ、後頭部に当たる柔らかさを堪能していた。

 

(いや〜、最初は拉致られたからどうなるかと思っていたが中々良い状況ですなー!役得役得!)

 

今の状況にすっかり順応していた。そんな風にエスデスの柔らかさと匂いを堪能していると、窓に小鳥が1匹居たのを見つけた。

何て事無い普通の小鳥だ。しかし……何処かで見た様な…………気がする。しかもこっちガン見してるし。………まっ!思い出さ無いなら大した事じゃ無いさ!今は柔らかさを堪能する!

 

思考を放棄して煩悩を優先するシュウ。そしてエスデスが目覚める。

 

「……んん〜。ん?おはようシュウ。よく眠れたか?」

 

寝起きだが優しく問いかけるエスデス。

 

「あ、おはようございます。しっかり眠れました」

 

「ふふ、良かった。……最初お前を連れて来た時拉致した形になってしまったから、少し不安だったんだ」

 

そう自分の不安を少し話すエスデス。やはり拉致した事は多少負い目があったらしい。

 

「まあ最初は逃げようかな〜と思ってましたが、今はエスデスさんからの戦闘訓練とか受けれるから良いかな?と。後、知り合いも居たから平気だし」

 

どうやらシュウも多少考えてるらしい。流石に役得だからとかは言えんだろうが…。

 

「そうか…。なら、私がキッチリ指南してやるぞ!」ギュウウウ!

 

エスデスは嬉しくなってシュウを強く抱きしめる。

 

「はい!よ、宜しくお願いします!」

(ウヒョ〜!二つの膨らみが当たる当たる!これが「当ててんのよ!」てやつか〜。最高だぜー!)

 

………………やっぱり役得に訂正します。

 

ダラシない顔をするシュウ。そして、そんなシュウをずっと見つめる小鳥。………その目は暗かったりする。

 

 

 

 

朝の素敵な時間を堪能したシュウは朝食を食べる為に先に食堂に向かっていた。流石に女性の着替えの時は出て行きます。紳士ですので(キリッ)

 

先に居たのはクロメとウェイブだった。

 

「よお!昨日は休めたか?」

 

「休めたよ。やっぱり将軍クラスのベッドはフッカフカだからね〜。後は…………俺の理性が何処まで持つかが問題だかな!」

 

何故か胸を張るシュウ。

 

「そ、そうか。まあ頑張れよ。何かあれば相談に乗るぜ!」

 

「そう?じゃあ早速何だけど自分の部屋が欲しいんだけど、どうしたら良いかな?」

 

ウェイブに早速相談するシュウ。

 

「えーと…………うん。頑張れよ」

 

なんか励まされた。

 

「仕方無いか………。ところで、クロメちゃんはお菓子好きなの?」

 

朝からポリポリとクッキーを食べてるクロメに質問するシュウ。

 

「モグモグ……うん、お菓子は好き。だからこのお菓子は上げない!」

 

何故か防御体制を取るクロメ。

 

「おいおい、偶には海産物を口にした方がいいぞ」

 

「そしたらウェイブみたいに磯臭くなる」

 

「えっ!マジ?俺臭う?」

 

クロメの言葉を間に受けるウェイブ。

 

「いや臭わないから。でもクロメちゃんはお菓子好きなんだね。じゃあ、飴をあげよう。因みに味はイチゴな」ポン

 

「ありがとう」コロコロ

 

3人で談笑しているとラン、ボルス、セリュー、スタイリッシュ、そして最後にエスデスがやって来た。

 

 

 

朝食を食べた後にこれからの予定を軽く話す事になる。

 

「諸君も知っているだろうが、最近ギョガン湖に山賊の砦が出来たのは知ってるな?」

 

「勿論です。帝都近郊における悪人達の駆け込み寺……。いつか必ず討伐したいと考えていました」

 

エスデスの言葉にセリューは頷く。

 

「うむ。我々はナイトレイド等の凶賊を倒す事が目的だ。だが居場所が掴めない相手は後回しにして、まずは目に見える賊を潰していく。恐らく今夜辺りに襲撃するだろう。各員準備はしておくようにな」

 

エスデスは顔が若干凶悪な顔になる。そして、ボルスが手を挙げて質問する。

 

「敵が降伏してきたらどうします隊長?」

 

「……降伏は弱者の行為……。そして弱者は淘汰されるのが世の常だ」

 

エスデスは切り捨てる様に命ずる。

 

「…………私は………帝都に居る人達を守りたい。そして、この帝都に居る人達がより安全になるのなら……私はやります!それが私の信念ですから!」

 

自分自身の信念を確立したセリューに迷いは無かった。そして、

 

「………でも隊長。流石に降伏した者は法で裁く必要があると思います。例え、死刑になるのが確定していたとしても……私は法で裁く必要があると考えます」

 

更にエスデスに対し進言する。

 

「……………イェーガーズには現場である程度裁決が出来る特権がある。それでも裁判に掛けるのか?」

 

エスデスはセリューに問いかける。そしてセリューは……

 

「はい。私は人を裁く程偉い人では有りませんので」

 

真っ直ぐに見返したセリューがそこにいた。

 

「…………ふぅ。現場の判断はお前達にある程度は任せている。なら好きにしろ」

 

エスデスは溜息を吐きつつセリューの行動を認めた。恐らくセリューの言葉に迷いが無く説得は無駄と判断したからだろう。

 

「はい!ありがとうございます!」

 

セリューは笑顔で返事をする。その笑顔は自信溢れ、誰もが見惚れる程の美しく眩しい笑顔だった。

そして、そんな笑顔に見惚れるイェーガーズメンバー。更に惚けて見ているシュウ。そんなシュウを目敏く見つけるエスデス。

 

「ゴホン!さて、改めて言うが皆んなには最低でも一人数十人は殺して貰う事になる。これからはこんな仕事ばかりだ。キチンと覚悟は出来ているな?」

 

エスデスは再度全員に問う。

 

「私は軍人です。命令に従うまでです。このお仕事だって……………誰かがやらなくちゃいけない事だから」

 

ボルスの軍人としての決意は固い事が伺える。

 

「同じく……。ただ命令を粛々と実行するのみ。今までもずっとそうだった」

 

クロメもボルス同様迷いは無い。

 

「俺は…大恩人が海軍にいるんです。その人にどうすれば恩返し出来るかって聞いたら、国の為に頑張って働いてくれればそれでいいって。………だから俺やります!勿論命だってかける!」

 

ウェイブは一瞬迷うものの覚悟を決める。

 

「私はとある願いを叶えるために、どんどん出世していきたいんですよ。その為には手柄を立てないといけません。こう見えてやる気は満ち溢れていますよ」

 

ランの気迫は充分。

 

「アタシの行動原理は至ってシンプル。それはスタイリッシュの追求!!お分かりですね?」

 

「いや分からん」

 

Dr.スタイリッシュの行動原理を一言で切り捨てるエスデス。

 

「かつて戦場でエスデス様を見た時に……思いました。あまりに強く…「バッ」余りに残酷…「ババッ」ああ…神は此処に居たのだと!!!「シュパッ!」。そのスタイリッシュさ!是非アタシは勉強したいのです!」

 

STYLISH!!!

 

各人の信念、気合い、覚悟全て揃っていた。そして、我らが主人公シュウはと言えば……

 

(エスデスさんの本気はスタイリッシュ戦法なんだね………俺もエスデスさんの指南を受けたらスタイリッシュになるんかな?………大丈夫かな?)

 

変な所を心配していた。そして……全員がシュウを待っていた。

 

「……?皆さんどうしました?」

 

「いや、どうしましたって。皆んな覚悟を決める為に言ったんだからさ……お前は無いのか?そう言うの」

 

ウェイブが突っ込みを入れてくれた。

 

「え?俺も?うーむ……皆んな程大した覚悟なんて無いよ。俺は今も昔も変わらず生き残る為に戦うだけさ。だってほら、俺軍人じゃ無いし。唯の旅人だし。まあ、今はイェーガーズに所属してるからやる事はキチンとやるよ」

 

覚悟や信念では無く、生存本能を中心にしているシュウ。育った環境が違う者達の差が此処に見えてしまう形となってしまった。

 

「そ、そっか。じゃあしょうがねぇか。まあ気合い入れて行こうぜ!」

 

若干空気が悪くなったのを察したのかウェイブは明るく言う。

 

「なんかゴメンな。目的はあるけど、それを言うつもりは無いんだ。ただ、皆んなの覚悟とかは凄く伝わったよ」

(時代の終焉……つまり帝国崩壊を間近で見るなんて、イェーガーズの皆んなには言えんな)

 

内心ちょっと申し訳ないと思うシュウ。しかし、今更引き下がるつもりは無い。

 

「ふむ、皆迷いが無くて大変結構……そうでなくてはな。良し!夜まで時間はある。よって其れまで自由に行動すると良い」

 

エスデスから自由行動を許される面々。そしてシュウは昨日出汁を取っていた鍋を確認しに行く。

 

「……ズズッ……うん!美味い。厨房に行って薄力粉貰おう!」

 

久々に出汁の効いたうどんを食べれると思い、シュウのテンションはやや高めだ。そして早速厨房に向かい薄力粉、塩、水を貰い作り始める。

最初はちょっと物珍しさから見てた皆だが、結局飽きて自由行動に入っていった。しかし、

 

「シュ、シュウくん……その、今大丈夫?」

 

セリューがシュウに話し掛けた。

 

「うん?大丈夫だよ。でもようやく落ち着いて話が出来そうですね」

 

「そ、そうだね!所でシュウくんは今何作ってるの?」

 

「うどん作ってるんだ。今夜皆に食べて貰おうと思ってね」

 

そう言いながらコネコネする。

 

「へぇー、なら私も手伝おうか?」

 

「いいの?じゃあ一緒にコネコネしよう。コロちゃんもやろうぜ!」

 

「うん!」「キュウウ!」

 

そして、シュウとセリューとコロはうどん作りに入りながら話をする。

 

「でも、シュウくんがイェーガーズに居るなんてビックリしたよ。だってシュウくん旅人なんでしょう?」

 

「そうなんだよね。ほら、前にナイトレイドと戦ったでしょう?で、街で偶々会った時に戦闘状況をエスデスさんに話したら……拉致られたわ。何でやろうな?」

 

改めて言い直して首を傾げるシュウ。

 

「あ、あはは……。でも、あの時のシュウくん凄かったなぁ。私少しだけシュウくんの戦ってる所見たけど、帝具使いに一歩も退かなかったもの。………本当にかっこ良かったなぁ」

 

シュウの戦闘を思い出してちょっぴり顔を赤くするセリュー。

 

「そうかな?結局逃したし最後は情け無いオチだったけどね〜。それに、あの時は勝つよりもセリューさんを逃す事と警備隊が来てくれれば良かったしな」

 

「そうなんだ。やっぱりシュウくん強いんだね。あの状況で其処まで考えてたんだ……。私ももっと頑張らないと!」

 

改めてセリューは自分自身に強くなる事を誓う。

 

「そうだ、さっきエスデスさんに意見した時凄く輝いてたよ。前みたいに切羽詰まった感じが無くて余裕がある感じだったよ」

 

「あ……うん!私ようやく自分自身の信念見つけたの!私、この帝都にいる人達を護りたい。そこに善悪は関係無い。あ、でも悪は後でキッチリ裁いて貰います!」

 

セリューは自分の信念をシュウに伝える。

 

「そっか………イェーガーズに入ってるんだ、これから様々な所で様々な人と信念をぶつけ合う事になるよ。でも、セリューはもう負けないよ。だって自分で見つけた信念なんだ。それに自分に自信が無いとエスデスさんに意見なんて出来ないだろうしね!」

 

「も、もう!アレは仕方ないの!だって……私そこまで偉くないもん…」

 

ちょっといじけるセリュー。そんなセリューに萌えるシュウ。

 

「いやいやいや、中々カッコ良かったよ?流石セリューさんだね!よっ!お姫様!」

 

「クス、何それ?……でもありがとう。シュウくんに会えてなかったら、私きっと色々後悔してたかも。だからシュウくん、改めてありがとう!」

 

セリューは笑顔でシュウに感謝する。その笑顔にときめくシュウ。

 

「……えっと…まぁ、俺そんな大層な事して無いし!そ、それにセリューさんが決めた事だし?うんうん!」

 

なんだかんだとラブコメ展開するセリューとシュウ。コロちゃん?苦々しい顔をしながらうどんに八つ当たりしてます。

 

そして………そんな2人をジッと見つめる小鳥が居たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

うどんを作り終え昼頃になったので昼食を食べに行こうとしたシュウ。しかし、なんと無く視線を感じて其方の方に向く。すると、其処には朝見た小鳥が居た。

 

「あれ?まだ居たのかな?」

 

小鳥に近寄るシュウ。

 

「中々人懐っこい小鳥だね。よしよし〜」ナデナデ

 

人差し指で小鳥を撫でる。しかしシュウは撫でながら考える。

 

「やっぱりどっかで見た小鳥だよなぁ。何処だったかな?………うーむ………………」

 

悩むシュウ。そして飴をなんと無く出して口に含む。

 

「……………………………………あ」

 

もしかしたら………いやいやいやそんな無いよ。でも…………

 

「………も、もしかして………チェルシー………さん?」

 

小鳥に話し掛けるシュウ。すると

 

「………正解!ようやく気づいてくれた!遅いよ!」

 

小鳥…もとい、チェルシーは少し怒りながら言う。

 

「いやー、流石に気付かないよ。でも、チェルシーさんも帝都に来てたんだね。やっぱり偵察ですか?」

 

「それも有るけど、シュウくんの安否を確認しに来たの!エスデス将軍に連れて行かれてすっっっごく心配したんだからね!」

 

「あー、まぁ何とかなってますよ。取り敢えず今はイェーガーズに補欠で入ってます。理由はエスデスさんからの直接戦闘の指南をしてくれるからですね。帝国最強からの戦闘指南だ。こんなチャンス滅多に無いからね。それにある程度したら帝都から抜ける予定ですよ」

(最低でも反乱軍が帝都に来る前には逃げないとな。目的達成する為にはフリーにならないと動き難いからな)

 

目的……いや、執念を達成する為に行動するシュウ。その眼には暗い影が見え隠れする。

 

「そっか。でも、あんまり長居しないでね?じゃ無いと私達殺し合う事になっちゃうから」

 

「チェルシーさんと殺し合うのは勘弁だね〜。ま、何とか隙みて逃げますよ」

 

「うん!気を付けて逃げてよ?」

 

何と無く明るい雰囲気になる。しかし……

 

「……ところでさ、シュウくん今朝は凄くエッチな顔してたよね?何してたのか説明して欲しいな」

 

チェルシーは有無を言わせない言葉で言う。

 

「うえ!べ、別に何もして無いよ?ただ、エッチな夢を見たんじゃね?……ほら!俺思春期だし!」

 

言い訳になって無い言い訳をする。

 

「エスデス将軍の胸大きいもんねー。仕方ないよねー」

 

「そうそう!ギューてやられちゃったからもう堪りませんでした!」

 

「…………………………」

 

「……………………すいませんでした」

 

情け無く土下座するシュウ。

 

(エスデス将軍だけじゃ無く、あのセリューて人とも親しくなってるし!もう!シュウくんのバカ)

 

内心ヤキモチ妬いてるチェルシー。しかし、絶対に表には出さない。

 

「兎に角!シュウくんはエッチ過ぎるんだから絶対に手を出しちゃダメなんだからね!」

 

「………スキンシップは「ダメです」あ、はい」

 

スキンシップすらダメと言われたシュウは落ち込む。

 

「…………!」(俺良い事思い付いた!)

 

しかし、タダでは転ばない。

 

「じゃあ、チェルシーさんとスキンシップはダメですか?」

 

下心満載な顔で質問するシュウ。

 

「え!そ、そんなの無理に決まってるでしょう!///」

 

小鳥なので赤面を伝えれない事が残念です!

 

「えー、ほら僕も男の子だし〜、やっぱり色々ある訳で〜、つまり〜、チェルシーさんに付き合って貰うしか無いという事です!」(ガッツポーズ)

 

勝った。この時シュウの心は勝利を確信していた。

 

「えと、えっと……うー…………す、少し「シュウ君?あ、いたいた。皆食堂にいるから食べに行こう?」……ホッ」

 

どうやらボルスさんはシュウを探しに来てくれてたみたいだ。優しい!

 

「え?…あ、そうですね。分かりました。今行きます」

 

チラッとチェルシーを見る。チェルシーはサッサと逃げ出した。

 

(あー、やっぱり無理かー。残念ですたい)

 

肩を落としつつボルスの元に向かい食堂に行くのであった。

 




チェルシー登場!(小鳥バージョン)

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