その日は朝から濃い雲が立ち込めていた。空気も湿気っていた為いつ雨が降るか分からない状態だった。
「父さん遅いね。如何したんだろう?」
「そうね。今日も狩りに行くと言ってたから。はぁ、税がこんなにも多いから無理しなくちゃいけ無いと言ったけど。心配だわ」
確かに心配だ。悪い事が起きなければ良いんだけど。
ドンドンドン
「あ!帰ってきたわ。今開けるわ!」
だが、何時も親父はノックと同時に声も出していた。しかし今回は声は聞こえ無い。
「あなた、おかえ……えっと、タカノリさん?あの人は?」
タカノリさんの他3人が居た。皆狩り仲間だ。
「奥さん、良く聞いて欲しい。旦那さんは…………一級危険種、土竜に殺された」
「…………え?」
ピシャッ!ゴロゴロ!
遂に雨が降り始めた。そして母親が崩れ落ちた。
「嘘よ。そんなの嘘よ!あの人が死ぬなんて!何かの間違いよ!………探すわ。今から探しに行か無いと」
「奥さん!聞いてくれ!俺だって言いたくは無いよ!だけどな、あいつはオレ達を逃がす為に囮になったんだ。そして家族を頼むと言われた!だから!だから!……クソッ!」
皆嗚咽を漏らす中俺は………心の中が熱くなっていた。頭の中は冷静である。
「タカノリさん、その銃は……父さんの?」
「あぁ、シュウ君のお父さんの銃だよ。お父さんは土竜の目に弾を当てたんだ。凄い名手な人なんだよ」
そう涙ながらに言いいながら俺に銃を渡してくれた。7.62mm弾を使用するボルトアクション式。7歳の子供であれば撃てもし無いしもつのも精一杯だろう。だが、体力が無駄に付いてる自分には問題無かった。
それから狩り仲間の人達は帰って行った。暫くの間俺達の家族の税は払ってくれるらしい。それが父親に対する償いだと考えて。
朝一、俺は準備をしていた。先ず敵を知る事から始めなければならない。父親は土竜に食い殺された。なら、俺が土竜を殺す。それが父親に対する敵討ちだ。
母親はまだ部屋に引きこもってる。なら、そうなった元凶を潰すまでだ。
父親の部屋に入ると銃の整備道具や危険種についての本があった。その全てを覚える。土竜だけじゃ無い他の危険種も気を付けないといけないから。
先ずは銃の整備、そして危険種について。やる事やったら首洗って待ってろよ?土竜。
父親が死んで半年以上が過ぎた。母親はようやく立ち直っては来た。だが、やはり無理はしている感じだ。
俺も親父の狩り仲間にお願いして近接戦闘の訓練を受けていた。まぁ関節部分を狙うとか逃げるコツとか。特別な訓練は特に無かった。ただ、射撃の練習は為になった。
俺はアクセルブースト、そして弾の生成。この2つが自分の最大の長所である。土竜は強い。並の攻撃は意味は無い。なら、関節部分もしくは脆い部分を狙うしか無い。
地の利は向こう、防御力、耐性も勝ち目なし。だが、此方は知性と理性がある。絡め手で仕留めるしか無い。
1ヶ月前に商隊が来た。その時サブマシンガンが売っていた。見た目はMP28対人用だが弾をバラ撒くには適してる。何より片手でも撃てる。だから迷わず購入した。手持ちのお金?7.62mmを大量生成して物々交換です。
日が出る前、俺は父親の写真の前で手を合わせる。土竜を狩る。父親の銃、MP28(名称不明な為)、マチェット、煙幕玉5個、閃光玉5個、火打石、水筒、そして手榴弾5個。まだ子どもの身体だ。だが、やるしか無い。やらなければ村に土竜が来るかも知れない。これ以上好き勝手させるか!
俺はそっと立ち上がり小声で
「行ってきます」
と言った。