逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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稽古と闇

刀の扱いを自分なりに模索してたらシブメンのオッサンが刀術を教えてくれるらしい。

 

「おっと、そういやぁ名乗って無かったなぁ。俺はゲンて言うんだ。お前さんは?」

 

「……自分はシュウです。なら一手お相手お願いします」

 

シュウは名乗りながら刀をゲンに向ける。

 

「おっ?良いね。話が早くて助かるぜ。いつでも良いぜ……来な」

 

ゲンは袖から腕を出しながら言う。しかし、

 

「刀……抜か無いんですか?」

 

そう、ゲンは刀を抜いて無かった。

 

「スゥー……フゥー………抜かせてみな」

 

キセルを吹かしながら挑発した。

 

ピクッ

 

シュウの片眉が動く。

 

(まぁ、俺は大人だし?わざわざ本気出すつもりは無いよ?……だからザンク倒した速度でやるわ)←|ω° )オイッ

 

ファイブブースト

 

一気にゲンに接近して刀を振り下ろす……が、

 

ガシッ! ドシイイィン!!

 

ゲンはシュウの腕を的確に掴み力を受け流し、一気に地面に叩きつけた。

見事な背負い投げである。一本!

 

「う…嘘ん……こん……こんなあっさり…背負い投げされるとか………無手に負けるのか………俺」

 

ショックを受けるシュウ。恐らくセブンブーストを使っても結果が変わら無いと悟ったのだろう。

 

「まぁ、速さは中々だったが真っ直ぐ突っ込んで来りゃあ対処出来るわな。後、刀の間合いが若干ズレてるからそこも修正だな。それと殺気を隠せ」

 

あっさりシュウを倒しただけでなく、問題点も見つけて指摘する。

 

「…………………………師匠!ご指導宜しくお願いします!」(キリッ)

 

キメ顔でお願いするシュウ。未だに倒れてるけど。

 

「おう」フゥー

 

そんなシュウを見ながら了承するゲンであった。

 

 

……

 

………

 

side シュウ

 

師匠…いや、ゲンさんからの指導は苛烈を極めていた。(師匠は柄じゃ無いから名前で呼べと言われた)イェーガーズ…いや、今までやって来た中で1番ハードな内容だ。

 

基本実践方式。次に模擬刀は使わ無い。

木刀使いましょう?と言ったら「ダサいからヤダ」と言われた……。

 

因みにゲンさんも刀を使ってる。黒い刀身の刀だ。名前は無く黒い刀身だから黒刀(コクトウ)と呼んでる。

 

………

 

「グッ!」

 

「だから攻撃する際に強い殺気を出すな。だからバレるんだ」

 

俺の一撃をあっさり防ぎ逆に斬りかかる。いや、これで手加減されてるって……マジかー。

ゲンさんの一撃を避け一旦距離を取る。

 

「さて、そろそろ終わりだ。…そうだな、次の俺の攻撃を防いだらこの黒刀をやろう」

 

ゲンさんはとんでも無い事を言う。しかし、俺はそれに乗った。気合いが補充された。

 

「よし!来いやああああ!!!」

 

「……行くぜ」

 

一瞬呆れた表情をした気がするが気のせいだな!ゲンさんが一気に近づく。しかし、セブンブーストを使ってる俺には見える。

 

(…ふっ、勝ったな)

 

ゲンさんは上段からの攻撃を展開する。しかし見えてる俺には関係はッ!

 

ドカッ!!

 

「グヘッ!」

 

ゲンさんの下段からの蹴りに顎がクリーンヒット。

意識が一瞬飛ぶ…そして、黒刀が突き付けられていた。

 

 

……

 

「か、勝てねぇ」

 

俺は地面に寝転びながら言う。最後の攻撃は見えていた。なのに反応出来なかった……。

 

「それはなシュウ坊、お前さんは殺気で見てるからだ。だから反応出来なかったんだ。見えてはいたんだろ?」

 

殺気……で?俺は無言で頷く。

 

「ま、コツさえ掴めばどうにでもなるさ。それにコイツは中々エグい攻撃だからな。特に強い連中にはかなり効くぜ?」

 

ゲンさんは少し口元をニヤけさせながらキセルを吹かす。そしてそのまま歩き出した。

 

「また明日この時間な」

 

そう言い残しながら去っていった。

 

「半端ねぇな……あの強さは。並の帝具使いなら殺されてるよ」

 

俺はそう呟きながらもう少しだけ寝転んだ。

 

 

 

side out

 

 

side ゲン

 

「いらっしゃい……また、アンタかい。飽きもせずに来るね」

 

「ふん。こんな寂れた居酒屋に来てやってるんだ。感謝して貰いたいもんだ」

 

俺は今居酒屋『オカン』に居る。俺が帝都に来てから世話になってる店だ。

そして、このいけ好か無い女はオカンの女将のミラだ。

 

「余計な御世話よ。…それで、何時ものかい?」

 

「あぁ、何時ものとツマミを適当にな」

 

何時ものやり取りをして席に着く。しかし、この時間は客が居ないな。

 

「アンタが来るのが早過ぎなのよ……で、何か良いことでも有ったのかい?」

 

「ん?…別に……何も」

 

「…そうかい。まあ、話したくなったらいいな」

 

別に良いことでは無いがな。ただ……教えがいのある奴が居ただけさ。

 

「ま、その内な」

 

俺はそう呟いた。

 

 

……

 

飯も食い終わって店を出る。ただまぁ、軽く酔っちまってシュウ坊の事を少し話したのがいけねぇな。お陰で今度連れて来なけりゃ酒は出さねえとか言いやがる……勘弁してくれ。

 

そして俺は雇い主の屋敷に向かう。先代には世話になり、その先代の亡き後を継いだ息子の護衛だ。

だが…俺にはもう何かを守る力は無いんだよ。

 

「お疲れ様です。ゲン様、カーネスキ様が及びです」

 

「おう」

 

俺は門番に一言言いながら向かう。

 

……

 

「待っておったぞ!ゲン」

 

「は、一体何用で?」

 

この雪ダルマみたいな奴が先代の息子のカーネスキだ。全く、何食ったらこうなるか逆に聞きてえもんだ。

 

「うむ。ここ最近小さな金貸し共が悪巧みを企てておる。ここら一帯は我が家の敷地同然だ!にも関わらず好き勝手にするゴミ共が居る!」

 

一体何時からここら一帯がお前の家の敷地になったんだ?まあ、今更か…。

 

「そこで我々は近々ゴミ掃除をする事にする。その時は貴様の武勇を存分に発揮せよ!それが我が父に対する恩返しになるだろう!!」

 

如何やら遂に始まるらしい。何時かはやるだろうと思っていたが……このボンクラは本物のボンクラになっちまったか。

 

「それと……貴様の妻と子の手紙を預かっておる。これだ、受け取れ!」ポイッ

 

カーネスキは俺宛の手紙を投げて寄越した。俺は軽く頭を下げ部屋から出た。

 

side out

 

side カーネスキ

 

「ムッシャムッシャ…おい!酒を持って参れ!肉も忘れるで無いぞ!」

 

「カーネスキ様、1つお聞きしたいのですが宜しいでしょうか?」

 

ワシの席から1番離れてる奴が声を掛ける。ワシは許しを出して近くに来させる。大きい声を出すのは中々に体力を使うからな!

 

「ゲン様の妻と息子は居るのでしょうか?私はまだまだ新参者故に見た事が有りません。もし宜しければご紹介をお願いしたい所存であります」

 

ワシはその台詞を聞き……大爆笑した。

 

「ワッハッハッハッハーーー!!ゲンの妻子に会いたいか?ハッハッハッハッーーー!!これは傑作じゃわい!」

 

他の者もワシに同調して笑う。新参者だけが付いてきてはい無いがな!

 

「えっと……何故笑われるのでしょうか?」

 

「そんなもん最初から居らん。ワシが殺せと命じたからな」

 

元々親父がゲンが帝国軍にやった尻拭いをする為に妻子を安全な場所に避難させ匿っていたが……何故ワシが面倒を見なければならんのだ?くだらん。

 

「さ、左様でしたか…なら、ゲン様はこの事は「知っておったら未だに護衛何ぞやっとらんわ!ワッハッハッハッハ!」…そ、それもそうですね。失礼しました」

 

そう一言言って元の席に戻る。しかし…

 

「未だに偽の手紙を本物と勘違いしているとは、つくづく間抜けな奴だ!ハッハッハッハッーーー!!」

 

ワシは気分良く杯の中の酒を一気に飲んだ。

 

side out

 

 

……

 

………

 

 

屋敷から出たゲンは夜道を歩く。そしてキセルを取り出しながら手紙も出す。

 

マッチに火を付ける。そして……手紙に火を付ける。

まだ封が開いてない手紙が燃える。キチンと燃えたのを確認した後キセルに火を入れる。

 

ゲンの表情に感情は無かった。


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