逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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帝国の切り札とエスデスの奥の手

シュウがエスデス軍に所属してから2週間が経った。

現在革命軍本隊は帝都に向け驚異的な速度で進軍していた。帝国の鈍りきった地方軍では数も士気も勝負出来る相手では無かったのだ。

更に打倒帝国を支持する民衆は、この暗黒時代を終わらせれるならと物資を進んで献上したり志願したりした。内応を取り付けていた太守以外にも無血開城する城が殆どで、抗戦すれば内部の民が暴動を起こすからだ。まさに、身から出た錆であった。

そして遂に要害シスイカンまで迫っていた。しかし、其処にはブドー大将軍率いる近衛兵が守っており鉄壁の要塞と化してした。

よって、シスイカンでの大規模な戦闘は起きる事は誰の目にも明らかだった。

 

ナイトレイドも全員揃いシスイカンを目指していた。ブドー大将軍を討つために。

 

side ナイトレイド

 

タツミとラバックはドラゴン系の危険種に乗りナイトレイドに合流。そのまま革命軍本隊と合流を果たす。

 

「それで、いつ攻めるのだ?」

 

「はい、明日ナイトレイドがシスイカンに進入。その後に内部が混乱し始めたら我々革命軍本隊も攻め込みます。ただ…」

 

「分かっている。ブドーは我々ナイトレイドに任せてくれ」

 

「お願いします。御武運を」

 

ナジェンダと革命軍本隊の指揮官は打ち合わせを終える。

そしてナイトレイド全員に作戦を伝える。

 

「いよいよ明日か」

 

「ああ……厳しい戦いになるだろうな」

 

全員がそれを覚悟していた。

 

「チェルシー……チェルシー!」

 

「…えっ!あ、ゴメン。ぼーっとしてた」

 

チェルシーは心此処に有らずだった。

 

「チェルシー、内偵からの情報だとシュウに関しては何も無かった。つまり、あいつも脱出に成功した可能性が高い。だから今はこの戦いに集中してくれ」

 

「はい……気を付けます」

 

やはりチェルシーはまだシュウの安否が気になるのだろう。内偵からの報告でもシュウに関しては何も無かったのだ。

 

「さて、チェルシー。まず、シスイカンに我々が侵入する。その後に騒ぎに乗じてシスイカンに侵入して貰う。そして、シスイカンの城門を開けてから隙をみて離脱又は遊撃に回れ。タイミングはお前に任せる」

 

「了解です!」

 

直ぐに切り替える辺り、流石暗殺のプロだと言える。

 

「この戦いは厳しい物になる!だが、この戦いは避けられるものでは無い!ブドーを倒しシスイカンを落とせば中立勢力の有力者達も蜂起する!総員!!!この一戦は必ず勝つぞ!!!」

 

「「「「「「おう!!」」」」」

 

ナイトレイド全員が覚悟を決める。この戦いは多数の犠牲が出ると。

しかし、やらねばならないと。

 

 

 

 

今此処に帝国の分岐点の戦いが始まろうとしていた。

誰もが厳しい戦いになると予想出来る。

しかし、その戦いに身を投じて行く戦士達。

暗黒時代を終わらせ平和の世を現実にしようとする者達。

帝国繁栄をさらなる物とし、平定の世を築こうとする者達。

 

だが、何方も想いは同じなのだ……この戦争を終わらせるのだと。

 

 

……

 

………

 

次の日、イェーガーズはブドー大将軍が居ない間は帝都防衛に回っていた。それはエスデス将軍とて変わらず、今回シスイカンに関しては関わる事は無かった。

そして、シュウは現在エスデス将軍と共に王宮の廊下を歩いていた。

 

side シュウ

 

「エスデスさんはブドー大将軍の援護には行かないのですか?」

 

「ん?行ったら行ったで邪険にされるだけだ。奴はプライドが無駄に高い奴だからな。それに、彼奴と近衛兵だけで充分だろう」

 

エスデスさんはそう言いながら廊下を歩く。

因みに俺たちが向かってる場所は……帝国の切り札を見に行く為だ。何故切り札を見に行くのか。理由は俺がこう言ったのだ。

 

「このままだと帝国は負けますね」

 

と。するとエスデスさんは帝国……と言うよりオネスト大臣には切り札があるとか。それで見てみたいと言ったら、アッサリ了承して見に行く訳だ。

 

「でも良いんですか?勝手に見に行っても」

 

「何を言うか。私が許可したのだ、問題あるまい」

 

ドヤ顔のエスデスさん。マジで半端ねえッス!

 

そうこうしてる間に頑丈な扉の前に来た。そして見張りの近衛兵に開けるように指示を出し開けさせた。

 

「さあ、コレが帝国の切り札だ!名前は……確か『シコウテイザー』だったな」

 

エスデスさんは切り札の名前を言う。しかし……

 

「きょ、巨大……人型兵器ですか!!!」

 

その大きさに流石に在り来たりな言葉しか出なかった。今居る場所は['ω']の部分だろう。それだけでもデカイ。更に下を見ると……下が見えねえ………。

 

「まあ、私も奥の手を開発したのだ!最早反乱軍など取るに足らん。寧ろ、帝具戦になるだろうから……楽しみだ」

 

エスデスさんは凶悪な笑みを浮かべる。相変わらずこの笑顔だけは怖いわ。

暫くシコウテイザーを見ていると、頭部の後ろに誰か居た。

 

「ん?なんじゃお主らか。一体何の用じゃ?」

 

まさかのロリっ子が居た。

 

「貴様こそ。此処は関係者以外立ち入り禁止だぞ」

 

「妾は大臣から依頼された事をやってるだけに過ぎんわ」

 

依頼か……。

 

「このシコウテイザー……1000年以上経ってるんですよね。て事は……オーバーホール?」

 

「シュウ、オーバーホールとは何だ?」

 

あれ?伝わらなかったみたいだ。

 

「オーバーホールは徹底的に点検して元の状態に限りなく近い状態にする事です。でも、1人でそれは……無理だよなぁ」

 

「お主の言う通りじゃ。確かに1000年以上経っておるから色々ガタが来とったからメンツナンス止まりじゃがな。ま、後は別の形で改良する事でより強力にしたのじゃ!」

 

ロリっ子が此方に来ながら言う。別の形ねぇ。

 

「まさか、奥の手を取り付けたとかだったりしてね」

 

適当に言ってみる。するとロリっ子の目が見開く。

………マジで?

 

「お主の言う通り、このシコウテイザーに奥の手を取り付けた。コレで此奴はより強固で強力になったのじゃ!さて…妾の仕事は終わりじゃ。後は大臣に報告したらコスミナに食事を与えねば為らんのでな」

 

そう言いながら扉に向かっていった。

 

「………奥の手ねぇ」

 

絶対碌な物では無いだろうな。

 

「シュウ…シコウテイザーが気になるのか?」

 

「そりゃあ、巨大人型兵器……ロマンが有りますからね。近くで見たいのが本音ですね」

 

「なら彼処から行くと良い」

 

そこはさっきまでロリっ子が居た場所だ。しかも此処からだと死角になってる。

 

「良いんですか?触っても?」

 

「無論だ。私も近くで見たり触ったりしたからな!」

 

何故か胸を張るエスデスさん。なら、遠慮無く。

 

「じゃあ見てきます!」

 

俺はシコウテイザーに乗りに行った。

 

「………確かこの辺からロリっ子は来たよな」

 

少しロリっ子が居ただろうと思われる場所に来て周辺を見渡す。すると、首の裏側にハッチ?……いや、蓋かな?それらしい物があるので近く。

しかし、当然ネジで閉まってる訳だが……。

 

「こんな時こそ銃に使う工具が役に立つ筈!」

 

少し時間が掛かったがアッサリ開いた。すると、中にはフラスコに禍々しい液体の入ったのが大量に入っていた。

 

「コレが……切り札?どうする?急がないと怪しまれる……ん?これ導線?」

 

フラスコの1番上に何かしらの装置が繋がってる。多分この装置がフラスコの中身をシコウテイザーに流す役割をしてる……かも知れない。

 

「一か八かの南無三!」

 

そう言いながら導線を切り取りそのまま蓋をしてネジを締め直し元に戻す。

 

「さて、他の場所でも見てみるか」

 

そう言いつつも結構楽しみながらシコウテイザーを堪能した。

途中エスデスさんも来て一緒にロマンについて語ったら以外と食い付いてきて楽しかったです。

 

因みにシコウテイザーの股関節部分に仕掛けをしたのは秘密♡

 

 

……

 

暫くシコウテイザーを堪能して出る。更にエスデスさんの奥の手も見せて貰った……と言うか出して貰った。

 

「氷の……兵士ですか?」

 

「そうだ。対軍仕様だ。今は別の所に大量に作ってる訳だ」

 

この氷硬いからな。半端な攻撃は通じないだろうな。

 

「さあ、他に何かしたい事とかは有るか?」

 

「いや、もう無いですね。強いて言うなら鍛錬「なら私と帝都にパトロールにいくぞ!///」ふぐっ……」

 

だから最後まで言わせて!でもって胸の感触最高!

 

シスイカンではナイトレイドと革命軍が共にブドー大将軍と近衛兵相手に激戦していた事、そして……ブドー大将軍の戦死にシスイカン陥落を俺とエスデスさんはパトロールと言う名のデートを終えてから知ったのだった。

 

………え、いつの間にか最終局面になってませんか?

 


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