相澤side
準備室に暦が来たときは、正直驚いた。
USJで敵に襲撃されたのは既に学校中に広まっている。
だからきっと暦も知っているだろうとは思ったが、この姿を見せるのが嫌だった。
だから今日は会わないようにしていたんだが。
ミッドナイトさんの策略で会うことになっちまった。
じゃなきゃ暦が来る理由がねぇ。第一あの資料は建前みたいなもので、実際はほとんど必要のないものだった。
まあ顔が見れたことは嬉しかったが。
けれどその日の暦は様子がおかしかった。
図書室で話した日からなんとなく変わったような感じはしていたが、今日のははっきりと違っていた。
そしてなにより。
無駄だと言いそうな状況で暦から会話をしだし、俺の怪我を治した。
いや治したとは違う。『拒絶』したんだ。
だが普段ならそんなこともせずにさっさと帰っていただろうし、何よりも、あいつはずっと目を見て話していたのに、今日はこちらを見さえもしなかった。
思案にふけながら、相澤は職員室に向かう。
しかし、先程まで包帯まみれだったのが、帰ってきたら完治しているのだから。当然注目を浴びた。
「おいおいおい!怪我はどうしたイレイザー!?」
「暦が治した」
「マジか!」
相澤の答えにマイクと聞いていた周りが驚く。
「言ったらやってくれたのか!?」
「いいや。気づいたら勝手に個性使ってたな」
「マジかよ!それって結構いい変化じゃねぇか!?」
うるさいマイクを引き剥がし、席につく。すると笑っているミッドナイトが近づいてきた。
「その様子だと会えたみたいね」
「………やっぱりミッドナイトさんの策略でしたか」
「策略なんて、そんな大層なものじゃないわよ。ただあんたがあの子に怪我を見せて心配されたくないっていうから。会ったらいいなーっていう希望的観測のもと!彼女に用事を頼んだだけよ!」
「………まあ。いいですけど」
机に向かって仕事をするが、ミッドナイトは依然としてそこにいる。
「………なんですか」
「べっつに~?」
「………」
ニヤニヤとしているミッドナイトを無視することに決め、黙々と仕事を進める。
すると、先程までの茶化したような雰囲気がなくなった。
「あんたがちゃんとあの子のこと見ててやるのよ」
「………」
「個性とか生い立ちとかでいろいろと達観してるけど、あの子はまだ16歳の子供なんだから。
あんたとの出会いであの子も変わってきてる。
多分。あんたにしか出来ないのよ。
あの子を繋ぎ止めることも。あの子を見ててやれるのも」
真剣な表情で言うミッドナイト。
それに相澤もまっすぐに見つめ返す。
「言われなくても。そのつもりですよ」