暦の実力は、俺の予想をはるかに越えていた。
自分の能力と味方の能力。そして相手の能力を冷静に見極め、乱戦になった状態でもすべてを把握して動く。
個性を使った独断での動きが多かったが、それでも自分の限界をしっかりと把握していて騎馬に戻るタイミングも絶妙。
個性の使いどころと、あの動きを可能にしている身体能力。
すべてを予想のはるか上をいっていた。
あいつらは入学してすぐにヴィランの驚異にさらされた。それを乗り越え、毎日のように訓練をこなしている。
それを嘲笑うかのように、暦は圧倒的なまでな力でねじ伏せていった。
状況把握。冷静な判断力。精神力。そして何より。
戦闘センス。
暦は、すべてにおいてずば抜けている。
「あれで普通科なんだからやべぇよな……」
隣にいるマイクが放送をきってポツリとこぼした。
確かにその通りだ。
暦はこの間ヴィランと遭遇したとはいえ、実践経験など全く無いただの子供のはず。それがここまでの実力を持っていたのだ。
俺を受け入れ、少しは改善されたと思った。
それでもやはり、まだあいつは危うすぎる。
結果は暦の一人勝ち。通過者が一組という異例の事態になった。
教師たちが慌てて話し合うなか、暦はつまらなそうにそれを見ていた。
話し合った末の結論は、やり直し。
暦たちはそのまま通過で、他の三枠をかけてまたやることになった。
まあ、妥当なところだな。
またある程度バラけて、マイクの合図で一斉に始まった。
まあ、一応解説役としてここにいるが、マイクが全部やっていて正直俺がいる意味がわからない。
始まって、少したったとき、放送室の扉が小さくノックされた。
マイクは手が離せないので俺が開ける。するとそこには暦がいた。
「どうした………?」
「いえ、競技がやり直しになったので暇になったので……」
少し俯き、いつもはハキハキと話すのに萎んだような声で話す暦に、自然と頬が緩んだ。
「とりあえず入るか」
「!……はい」
招き入れると表情こそ変わらないものの目をキラキラさせて入ってきた。
心なしか歩き方もふわふわしている。
暦の姿にマイクは驚いたのか目を見開くが、実況の仕事があるので何も言わずに試合を放送していた。
暦は下のやつらから見られることを嫌だったのか、ちょうど見えない場所に座る。俺も隣に座ると少しだけだが頬が緩んだ。
「さっきの試合、よかったぞ」
「!……ありがとうございます」
「だが少々独りよがりが過ぎたな。もう少し騎馬とも協力すればなおよかった」
「…………はい」
「まぁ、それを差し引いても、つい最近まで一般人だったとは思えないほどの動きだったぞ。頑張ったな」
「!はい!」
最初に褒めると嬉しそうに笑い、そのあとに少し改善点をいうと見るからにふさぎこみ、また褒めると今度は背後に花が見えるほど嬉しそうにしていた。
俺の言葉一つ一つに一喜一憂する暦が可愛すぎて、無意識に頭を撫でるがそれさえも暦は目を細めてすり寄ってきて、もう、俺の娘が可愛すぎてつらい。
マイクが妙なものを見るような目でいるが、知ったことか。