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『個人調査表』
狭間暦。
一年C組普通科。個性は「抹消」と「拒絶」。
幼い頃に母親を事故で亡くしており、その後は親戚の家に転々と預けられる。
成績がいいが、あまり協調性がなく、小中と孤立している。かといっていじめられているというわけではなく、むしろ自分から一人になっている様子が見られる。
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誰もいない部屋で、手に持った紙を机に置く。
もう何度も読んだ。目をつぶっていても淀みなく答えられる自信がある。
件の人物の入学する際の個人調査表は、驚くほど情報が少なかった。
相澤は、椅子の背もたれに体重を乗せ、髪をかきあげたままの手で顔をおおう。
目を閉じ、先日職員室でどでかい爆弾を落としていった生徒の顔が浮かんだ。
チラッと机の上の紙をみる。
そこに貼ってある写真には、今脳裏に浮かんだ生徒の名と写真があった。
確かに、よく見てみれば彼女と似ている部分が多々あった。
大きく深呼吸をする。
「…………娘が、いたんだな」
自分に何も言わずに、気づいたら目の前から消えていた彼女。
いくら探しても見つからなかった。
「まさか死んでいたとは」
それでは見つからないわけだ。
彼女は死んだ。けれど、彼女の子供がいた。
彼女と自分の子供。
個性も見事に二つとも受け継いでいた。
話がしたい。
親戚の家に預けられているというのならば、いろいろと肩身の狭い思いもしていただろう。
ならば、血の繋がった自分が引き取るのが道理だ。
いや、そうでなくとも。
個人調査表の貼ってある写真をみる。
彼女に似ている顔で、彼女と正反対の表情。
何も写していない瞳。ニコリともしない顔。
この子を放っておいてはいけない。
この子は、きっと"どちらでもない"
ヒーローでも、敵でも。どちらの可能性も持っている。
少しでも突き放してしまってはきっとすぐにでも敵になるだろう。
そこまで考えて相澤は苦笑した。
「全くもって合理的じゃない」
さっきから自分はこの子を引き取るための正当な理由ばかり考えている。
そうじゃないんだ。
理由なんてなくとも、彼女の子を。自分の子供を。
手元に置きたい。
他の誰でもない。自分の手で守りたいんだ。
出来れば一緒に暮らすのが一番望ましい。
そのためには。
「話をしないとな」
相澤は先日の少女の様子を思い出して、ため息をこぼした。
取りつく間もないほど素早く断られた。
今の今まで会ったことがなかった父親を目の前にしても、一切の動揺などなく淡々としていた。
目の前にいた自分さえ視ていない少女の様子では、先が長そうだ。