少女は何を見る   作:晏佳@12

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ちょっとオリキャラっぽいのが出ます。


四話「あなたという存在に興味がない」

「おい、狭間」

朝、教室で本を読んでいると誰かに呼ばれる。

まぁ誰かなんて知っているが。

本を閉じて顔をあげると、相変わらず隈があり、それに加えていつもより眉間にシワが増えていた。

「なんだ心操」

「なんだじゃねぇよ。何度も呼んだんだけど」

「私は読書していた。その状態で会話をしていても頭には入ってこない。入ってこないからもう一度話すことになる。ならば、区切りのいいところまで読んでしまってから腰を据えて話をした方が合理的だ」

「…………本を優先するのかよ」

「当然だ。これは面白い」

「はいはい。分かりましたよ」

仕方がないなぁ。とでも言うようにため息をはく心操。

「で、なんのようだ」

「先生からの伝言。昼休み職員室に来るように。だとよ」

「そうか。ありがとう」

「なんかしたの?」

「なにもしていない。が、心当たりはある」

「へぇ」

会話が終わると私は読書に戻り、心操は携帯をいじくる。

必要最低限の会話しかしないし、してもほとんどない。

心操は私のことを理解してくれているから、一緒にいてもなんの苦もない。むしろ居心地がいい。

けれど、呼び出しか。理由は十中八九父親か。

正直時間の無駄だが、他の用事の可能性もあるし、行くか。

 

 

 

 

__________________

 

 

「失礼します」

昼休み、職員室にいくと思っていたより先生方がいた。

目的の先生を見つけると、一直線にそちらに向かう。

「お、来たな」

先生は私が来るのを見ると、机の上に紙の束を置いた。

「実は資料整理の手伝いをしてほしくってだな」

「なぜ私が?」

「優秀だからだ!」

「はぁ…………わかりました」

「ああ待て待て」

紙の束を持って出ていこうとすると、先生に引き留められる。

「別の場所でやってまたもってくるってのは、面倒だろ?ここでやって構わないぞ」

そういって示すのは、先生の机の横にある椅子。

「まぁ、そうですね。」

先生の言うことももっともなので、特に何も言わずに座り、早速整理を始める。

その間も何故かやたらと視線を感じた。

周りの先生方はなんともない風に仕事をしていたり、昼食を食べていたりしていたが、どうにも視線が気になる。

黙々とやっていると、影がかかった。

顔をあげてみるとそこには、ボサボサの髪に無精髭を生やした長身の男。

「どうしましたか?相澤先生」

「暦。話がある」

「同じことを言うのは嫌いです。第一、私と貴方は今教師と生徒の関係です。この場でその呼び方は不適合なのではないでしょうか?」

「………少しだけでいい」

「周りに妙な誤解を与えたらどうするんですか?」

「………………だが」

「そもそも、貴方にはあっても私には話すことなどありません。」

その人物を認識しただけですぐに顔を資料に戻し、一切目を向けずに淡々といい放つ。

それにだんだんと言葉がしぼんでいった相澤が、最後にはとうとう押し黙ってしまった。

 

無言で暦を凝視し、それを無視して無言で手を動かしていく。

奇妙な形で黙りこんでいる二人を、ハラハラとした面持ちで見る教師陣。

すると暦が紙を整えて立ち上がる。

「先生、終わりました」

「お、おおう!!ありがとな!」

「それでは失礼します。」

そのまま職員室を出ていく暦。

しかし、それを見送っていた相澤がその姿が消えると同時に追いかけていく。

少しいったところで、歩いている暦の後ろ姿を見つける。

かけていって、右手を掴んで振り向かせる。

暦は動揺した雰囲気もなく、相変わらずの無表情。

「………なんでしょうか」

「話がしたい」

「同じことを言うのは嫌いです」

「少しだけでいい」

先程とは違い、真っ直ぐに目を見て話す。

けれど暦は眉ひとつ動かさずにいた。

誰もいない廊下で、感情の見えない平坦な声が響く。

「あなたと話して何になる?何かが変わるか。はたまた関係が修復されるか。答えは否。何も変わりません。あなたがどういう気持ちだろうと、そもそも私に変わる気がない。それなのに話など、時間の無駄です。」

そう言いきると、スルリと腕を抜き、なんの感情もない瞳で、相澤を見据えた。

 

 

「合理的じゃない。全く持ってあなたの行動は合理的ではありません。たかだか血が繋がっていると言うだけで一体何が変わると言うんでしょうか。今のこの世では、実の子であろうと平気で傷つけて捨てることさえあるというのに。かといえば、血など繋がっていなくともそれ以上に愛することが出来るものもいる。

そんな不確かなもの、一体なんだと言うんでしょうか。

あなたが私と血が繋がっている。ただそれだけで話がしたいと言うのであれば、時間の無駄でしかない。

なにより、私はあなたという存在に興味がない」

 

目を見開いて硬直する相澤を置いて、暦はさっさと歩いていく。

どんどん遠ざかるその背中を、相澤はただ見ていることしか出来なかった。

 

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