セイバー「タクヤ!早く行きましょう!!」
拓哉「少し落ち着けセイバー」
今日拓哉とセイバー、そしてライダーの3人は横浜に来ていた。何故横浜に来ているかというと、セイバーがはぐれ悪魔を討伐しサーゼクスから賞金が出たので、普段から世話になってる拓哉とライダーに昼食をご馳走すると言ってきたからである。
ライダー「何でも、雑誌に載ってる『宝華飯店』に行くそうです」
セイバー「その通りです!値段も手頃で、物凄く美味しいそうです!!」
涎が出そうなセイバーを見て、拓哉とライダーは苦笑いしていた。そして目的の店に到着すると、物凄い行列が出来ていた。
拓哉「行列だな」
ライダー「雑誌に載ってるだけあって、物凄い人気ですね」
セイバー「とにかく並びましょう!!」
そして列に並ぶ。1時間後、ようやく拓哉達の順番がやって来た。
「奥の席ね」
席に案内され、注文をして料理が出てくるまで話してると、別の席からこんな声が聞こえた。
「ちょっと」
「なに?」
「この豚バラ煮込みは出来そこないだ。食べられないよ」
「なんだっテ?」
「や、山岡さん!」
黒いスーツを着た男性が、店員の女性にそう言う。その事に横に座ってる女性は慌てる。
「ちょ、ちょっと止めてよ。また食べさせない気」
「どうして貴方はいつもそうなの」
山岡「まずい物はまずい。俺は本当の事を言ってるだけだ」
拓哉「へ~」
すると厨房から、物凄い形相で店の店主が出てきた。
「出来そこない!何言うカ!!味も分からないクセシテ!!」
しかも包丁を持ちながら。一緒に来てた女性2人は脅えていた。
「ウチの店、新聞も雑誌もいつも褒めてるヨ!有名人のお客さん、沢山来てくれるヨ!!」
山岡「ここに来る有名人は、皆味の分からん連中ばかりのようだな」
「ななな、なに~!!」
そう言いながら、店主は持ってた包丁を振りかぶる。すると、2人の男性が割り込む。
「止めんカ」
拓哉「いくら頭にきても、それはやり過ぎだ」
「周大人…」
そしてふくよかな男が話し始める。
周「私は周・懐徳です。さっきからずっと見ていました。ここは私に免じて事を納めて下さい」
そう言われ、山岡は店主を見る。
「へっ!日本人に中国料理の味分かってたまるカ!」
山岡「客に酷い料理を出しといて威張るとは呆れたものだ。少なくとも、お前よりは遥かに美味い豚バラ肉煮込みを作れるぜ」
「なにを~!日本人の癖に、中国人より美味い物作れるだト!じゃあ作ってみろ!!私の作るのより美味い
山岡「よぅし、作ってみせようじゃないか」
2人の間で話がヒートアップしていく。
周懐徳「まあまあ…これはこのままでは、とても収まりがつきそうにありませんね。本当に東坡肉が作れるのですか?でしたら、私が審判役を務めましょう。貴方も如何ですか?」
すると周懐徳は、拓哉達にも話しかける。
周懐徳「ここで会ったのも何かの縁。ご一緒に如何です?」
拓哉「なら、お邪魔いたします」
周懐徳「それでは決まりですな。これから、私の家にきて作って下さい」
山岡「いいでしょう」
こうして、周懐徳の家で東坡肉勝負が行われるのであった。車で周懐徳の家に向かう。到着すると、大きな家に到着する。玄関では女性が立っていた。
周懐徳「紹介します。家内です」
「ようこそ、いらっしゃいませ」
『お邪魔します』
周懐徳「家内はこれで中々の名コックなんですよ。今日は私と一緒に、審判役をさせようと思います」
そして中に案内され厨房に向かう。厨房に入ると、立派な調理器具などが並べられていた。
拓哉「随分立派な厨房ですね」
「個人の所有物とは思えないわ」
周懐徳「ハハハ。一度に200人のお客さんを招く事もありますからね。これでも小さい位ですよ」
山岡「では、3時間後に」
周懐徳「かしこまりました」
そして周懐徳は厨房を出て行った。そこには拓哉達もいた。
拓哉「どんな風に作るか興味がありましてね。調理工程を見せてもらっていいですか?」
山岡「別に構わないよ」
そして山岡は、買って来た豚バラ肉を取り出す。
「私手伝います」
山岡「ん?」
「仕方がない。私もなんかするわ」
山岡「手伝ってもらう事の程じゃないけど…じゃあ、湯を沸かして中華鍋と蒸し器を用意してもらおうか」
一緒にきてた女性3人が準備する。すると山岡は、剃刀を取り出し豚バラの皮の部分を剃り始めた。
山岡「まず、皮の表面の毛を取り除くために剃刀で剃り、剃り残した毛が無いよう火で炙る。その肉を軽く茹で…表面に醤油と酒を染み込ませる」
拓哉(その通りだ。けどこの人、かなりの料理の知識を持ってるな)
調理工程を見て、自身も料理をするので感心してる拓哉だった。
山岡「次に油で揚げて、色と香りを付ける。その肉を皮を下にして深皿に移し、ショウガ、酒、醤油、スープを入れる。この時、八角を入れるのを忘れずに」
「八角って?」
拓哉「ウイキョウの実を乾燥させた物でスパイスの一種ですよ。如何にも中華料理といった香りを出してくれます」
山岡「その通り。料理の他には薬用にも使われる。そしてその皿ごと蒸し器に入れて、後はこのまま2時間ちょっと待てばいい」
「ええっ!?2時間も!!?」
あまりに長い蒸し時間に、声を出す女性。
「随分手間がかかるんですね」
「でも特に難しい技術はいらないみたいね」
すると、使用人らしき人物がやって来た。
「皆さん、お茶の準備が出来ていますので、よろしければ」
「はぁ…」
山岡「いってきたら?ここは俺一人でいいから」
拓哉「2人もいってこいよ。俺は、山岡さんと話したいから」
ライダー「分かりました」
そして女性陣は、厨房を出て行き山岡と拓哉の2人だけとなった。
山岡「ところで君」
拓哉「なにか?」
山岡「先程の八角の知識…君も料理をするのか?」
拓哉「ええ、趣味の1つですね。ま、ウチの連中は滅多に料理させてくれませんからね」
山岡「へ~」
そんな他愛ない話をして、あっという間に2時間が経過して料理が完成した。
拓哉「それじゃあ、俺は先に行ってますね」
厨房を出て、皆が待ってる部屋に行きテーブルに着席する。
周懐徳「さぁこちらへ。公平を期するために、宝華飯店からはいつも店で客に出すままの物を持って来させました」
セイバー「美味しそうですね」
ライダー「セイバー、涎を拭いてください」
呆れながらライダーが注意する。そして2つの東坡肉が置かれる。
周懐徳「さぁ、味比べです」
そして全員は、まず宝華飯店の東坡肉を食べる。次に山岡が作った東坡肉を食べる。そして…
拓哉「結論は出たみたいですね」
周懐徳「ええ」
「山岡さんの作った物は、本物の東坡肉です。それに比べると、宝華飯店のはただの豚バラ肉煮込み」
「!!?」
その言葉に、店主は驚きを隠せない。
周懐徳「それに煮込みが足らない。ゴリゴリした歯触りだ」
拓哉「それに、宝華飯店の東坡肉は皮もついていない」
ライダー「そうですね。以前拓哉が言ってましたが、東坡肉は皮つきの肉を使うものだと」
セイバー「私も覚えてます。皮があってこその東坡肉です」
それぞれの言葉に、更に店主はショックを受ける。
拓哉「その通りだ。皮の部分がゼラチン状にネットリとした舌触りを与え、その下の脂身がトロリと溶けそして、赤身の部分がシットリとほぐれる。だから、3つの味が見事な和音を奏でるんだ」
「残念だわ。中国人が中華料理で、日本人に負けるなんて」
「山岡さんが、出来そこないと言った理由が分かりました」
周懐徳「誠に残念だ…」
周懐徳と奥さんは、非常に残念そうな表情になる。
ライダー「それに、宝華飯店という店の物はまだ作りかけという感じがします」
山岡「この東坡肉は、この皮付きの豚バラ肉を丁寧に処理して、根気よく蒸しにするだけです。宝華飯店も昔は、ちゃんとした東坡肉を作っていたはずです」
「!!」
山岡の言葉に店主は昔の事を思い出す。
山岡「しかし、マスコミに取り上げられ有名になり客が沢山詰めかける様になると、ついついその手間を惜しむようになった。とても2時間、蒸し器にかけられないということです」
周懐徳「ですが、日本人も悪いんです」
「どういうことですか?」
その言葉に、山岡が説明をする。
山岡「そうだ…誰かが本か何かで褒めるとドッと詰めかける。一度有名になると、自分の舌で判断する事もなく有名店だと言うだけでありがたがる。これじゃ店の人間も、堕落するのは当たり前だ」
拓哉「その通りだ。そんな事を回避するために、ウチの全系列店は取材を断ってるんだよ。自分の舌で判断してもらう為にね」
そして、店主は悔しそうな表情で帰っていったのであった。
周懐徳「お見事です山岡さん」
山岡「どうも」
「ところで…えっと…」
拓哉「そう言えば、まだ名乗ってませんでしたね。私は加藤拓哉といいます。連れのライダーとセイバーです」
名前が分からなかったので自己紹介する。
「私は東西新聞社の栗田ゆう子です」
「同僚の山岡士郎だ」
「田畑絹江です」
「花村典子です」
周懐徳「では、食事をしながら話を続きをしましょう」
すると、次々と料理が運ばれてくる。
栗田「山岡さん、周懐徳さん達に究極のメニューを協力してもらったらどうでしょうか?」
花村「それはいいわ」
田畑「そうね。周懐徳さん達みたいな食通に協力してもらえれば、これ以上にない協力者だわ」
周懐徳「究極のメニューとは?」
山岡「それについてお話ししましょう」
栗田「その前に少しいいですか?」
その話をしようとする前に、栗田は先程拓哉が言った言葉の事が聞きたかった。
栗田「加藤さん、先程の言葉の意味教えてもらってもいいですか?」
拓哉「先程の言葉?」
栗田「はい。『ウチの全系列店には、取材を断らせてる』と言ってましたが」
拓哉「ああ、その事ね。聞けば栗田さん達は東西新聞の記者みたいですね。だったら、今まで噂で聞いた店で取材したくても断られた店があったはずですが?」
山岡「そう言えば、取材となれば行った店はほとんど断られたな」
拓哉「その断られた店はウチの系列店なはずです」
栗田「系列店…」
そして拓哉は、自分の正体を教えた。
拓哉「俺は、加藤家次期当主なんです」
『!!?』
その言葉を聞いて、全員が驚きの表情をする。
栗田「加藤…本当にあの加藤家の」
ライダー「ええ、拓哉は世界の三分の二を占めている加藤家、加藤豪昌の孫であり次期当主です」
周懐徳「な、なんですと!?」
ライダーの言葉に、周懐徳も言葉を失う。
拓哉「ウチの爺ちゃんから、周懐徳さんの事は聞いてますよ。周懐徳のお爺様の代からの付き合いだそうです」
周懐徳「いやはや、まさか加藤家のお孫さんだったとは」
栗田「驚きました。けれど、何故系列店に取材を拒否なさってるのですか?」
拓哉「先程の理由ですよ。取材で取り上げられれば味を落とす。自分の舌で、足で確認してほしいから取材を拒否してるんですよ」
山岡「なるほど…」
その言葉に山岡は感心した。
拓哉「それに、俺の爺ちゃんの時からそうなのをおいそれと方針を変えるつもりもないし、俺自身美味い物を食いたいですからね♪」
栗田「まぁ、加藤さんたら」
拓哉「あ、俺の事は気軽に名前で呼んでください」
栗田「分かりました」
そして楽しい食事会を始めるのであった。