この世界   作:シャト6

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第28話

拓哉「お待たせしました」

 

応接室で待ってた香貫花に話しかける。

 

香貫花「い、いえ…ロベルタさん、その格好は」

 

ロベルタ「私も拓哉様のメイドですので」

 

香貫花「そうですか。佐藤さん、貴方は一体…」

 

拓哉「そうですね、私の正体を教えましょう。ですが、他の皆さんには秘密でお願いしますよ。勿論隊長にも」

 

香貫花「分かりました」

 

秘密にすることを了承する。

 

拓哉「では…佐藤というのは偽名です」

 

香貫花「そうなんですか」

 

リーラ「此方の方は、加藤家の次期当主であられる加藤拓哉様です」

 

香貫花「か、加藤…家!?じ、次期当主…ですか」

 

流石の香貫花も、予想以上の答えが返ってきた事に何時もの冷静な判断が出来ていなかった。

 

拓哉「けど、まだ当主は爺ちゃん…加藤豪昌ですよ」

 

香貫花「あ、あはは…」

 

もう笑うしかなかった香貫花だった。

 

香貫花「で、ですが、何故加藤家次期当主の貴方が、まして特車2課に配属だなんて」

 

拓哉「ああ、それは…」

 

リーラ「拓哉様の気紛れです」

 

拓哉が答えようとする前に、リーラが先に答える。

 

香貫花「気紛れ…ですか」

 

リーラ「はい。拓哉様は数多く方達と交流があります。それで、興味本意で香貫花様が所属している特車二課に潜入して中の事を知りたいと。そして、当然豪昌様とかぐや様は、日本の総理に天皇陛下達にその話をし、経歴を偽って特車2課に配属させたのです」

 

拓哉「いや~♪それほどでも~」

 

『褒めてません!』

 

リーラ達にそう言われる拓哉であった。

 

拓哉「ま、リーラ達が言った通りの理由なんだけどね。警視庁のお荷物と言われてる特車2課。だが、それは現場での事しか見ていない連中が言うことだ。で、爺ちゃんと婆ちゃんに無理言って入隊させてもらったんだよ。場合によっては、特車2課に俺個人的に支援したいと思ってる」

 

香貫花「支援ですか」

 

拓哉「そうだ。まだ1日だが、見た感じかなり改善しなきゃいけない所がある。ってか、まずあんな場所に作った奴を疑うわ」

 

香貫花「はぁ」

 

拓哉「だから悪いけど、俺の正体は黙っててくれないかな?勿論隊長にも」

 

隊長にも黙っててほしいと言われ、香貫花はため息をつきながら頷くのだった。それから特車2課で拓哉の正体を知っているのは香貫花だけであるが、色々と協力してもらっている。数日後、拓哉がいる第2小隊は今日は非番なので、島を探索している。

 

拓哉「今日はこんなもんかな?」

 

リーラ「お疲れ様です拓哉様」

 

するとリーラが、素早く飲み物を渡してくる。

 

拓哉「ありがとな」

 

そして飲み物を受け取り、一口飲むと、拓哉が話し出す。

 

拓哉「けどこの島だが、あちこちに線路が敷かれているな」

 

そう、ヘリで島を一周している拓哉達だが、降りる場所降りる場所、何処にでも線路が敷かれていた。

 

リーラ「そうですね。まるで、島全体に電車が通っていたみたいですね」

 

拓哉「だろうな。山は勿論鎮守府がある海や市街地だった場所。道路の割合の方が少ないくらいだ」

 

大和「私達の鎮守府が出来る前からあったみたいですよ。鎮守府周辺の線路は修理して、トロッコとかを私達は使ってましたが」

 

拓哉「なるほど。もしかすると、この島の何処かに残ってるかもな。時代的に蒸気機関車だろうよ」

 

リーラ「かもしれませんね」

 

拓哉「さて、そんじゃ戻るとするか」

 

拓哉達はヘリに乗り込もうとする。その時だった…

 

『助けて…』

 

拓哉「ん?」

 

リーラ「いかがなさいましたか?拓哉様」

 

拓哉「いや、今声が聞こえた気がしたんだけど」

 

大和「声ですか?」

 

大和達は静かにするが、そんな声は聞こえなかった。

 

リーラ「何も聞こえませんね」

 

拓哉「空耳か?」

 

再びヘリに乗り込もうとすると、また先程の声が聞こえた。

 

『…助けて』

 

拓哉「まただ!」

 

拓哉は、声が聞こえた方向に走り出していった。

 

リーラ「拓哉様!?」

 

大和「どうしたんですか!」

 

拓哉「空耳じゃねぇ!確かに此方から声が聞こえたんだ!!」

 

拓哉はどんどん奥へと進んでいく。暫く進んでいると、1軒の小屋が見つかった。

 

大和「小屋…ですね」

 

リーラ「こんな場所に」

 

拓哉「この中か?」

 

拓哉は小屋に近づき、ゆっくりと扉を開ける。中は真っ暗で何も見えない。拓哉は、ペンライトを取り出して点けた。するとそこには、1台の機関車が置いてあった。

 

拓哉「機関車…だな」

 

リーラ「そうですね」

 

大和「おそらく、この島で使われていた物でしょうね」

 

「…僕の声が聞こえたんだ」

 

「「「!!?」」」

 

突然声がして、3人は驚いた。

 

拓哉「だ、誰だ!!」

 

「ああ、驚かせちゃったね。ごめんなさい」

 

見ると、なんと喋っていたのは見つけた機関車だった。

 

拓哉「おいおい…こいつは驚いたな」

 

リーラ「はい?まさか喋る機関車に会えるとは思いませんでした」

 

拓哉「ま、まぁな」

 

流石の拓哉も、同様を隠せなかった。

 

拓哉「ところで、お前名前とかあんのか?前はなんて呼ばれてたんだ?」

 

「僕の名前はトーマス。前はこの島で働いてた機関車です」

 

拓哉「トーマスか。次の質問だが、何でこんな場所にいたんだ?」

 

トーマス「この島で働いていた時に、トップハムハット卿が鉄道を管理していたんですが、トップハムハット卿が亡くなって、トップハムハット卿の子供が引き継いだんだけど、上手くいかなくて」

 

しょんぼりした顔で、トーマスは話している。

 

トーマス「それで、僕を含めた機関車達は、各々色んな場所に仕舞われたんです」

 

拓哉「って事は、トーマス以外にも機関車がこの島の何処かにいるって訳か」

 

リーラ「ですが、どれ程の数かは不明ですね」

 

大和「それに、仮に見つかったとしても、線路は老朽化してますし、今現在機関車が使える仕事はありません。ここはまだ人もいませんし」

 

拓哉「そうだな。最悪1、2台なら今修理を行ってる港でなんとかなるが、トーマス以外にも機関車がいるとなると、島全体の線路を修理しないといけないからな」

 

他の機関車を探すには、ヘリだけでは難しすぎる。地上からも探さないと効率が悪い。

 

拓哉「とにかく、まずはトーマスを運んで修理してやらないとな。確か以前大和達が修理に使ってた場所は工事終わってたよな?」

 

大和「はい。確かに工廠なら修理できると思いますが、部品やまして機関車なんて修理したことありませんし」

 

拓哉「部品か。そっちはどうにかなると思うが、修理に関しては1度束に頼んでみるか」

 

そうして、ヘリでトーマスを吊り上げ、鎮守府の工廠まで運んでいったのだった。果たして、トーマスは無事修理されるのだろうか。


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