ポケットモンスター ~0 RAdiant Story~ 作:ザパンギ
ミシロタウンといえば自然豊かなホウエン地方のなかでもとりわけの田舎として知られている。
ポケモン研究で知られるオダマキ博士の研究所を除けば他に主だったものはなく、わざわざ訪れる者も少ない。
穏やかに時間が流れる静かな町といえば聞こえがいいだろうか。
そんなミシロにジョウト地方からある一家が引っ越してくるとなれば町の人々が騒ぐのも当然のことといえる。
良くも悪くも平和すぎるこの町に引っ越しの日時や場所が伝わるのにそう時間を要することはなかった。
そしてここにも例に漏れない者たちが。
「母さーん! もう着くかな?」
「もうユウキったら。まだだから5分ごとに聞きにくるのは勘弁してちょうだい」
開幕から母親に追い返された少年、ユウキ。ミシロタウンのポケモントレーナーで何を隠そう件のオダマキ博士の息子である。
「じゃあまた5分待つよ」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどナ」
隣に引っ越してくるのが父の旧友で、しかも自分と同い年の子どもがいるときたらワクワクを隠せないのは当然だろう。
しかも父の研究の手伝いに没頭していたユウキには同世代の友人があまりいない。必死にもなるというものだ。
「ほらほら、鬱陶しいからあっちで体育座りでもしててちょうだい」
「待ち体勢も指定されるの!?」
居間を追い出され2階の自分の部屋に戻ったユウキはボールから相棒を呼び出した。
一瞬の光とともに現れたのはミズゴロウ。ぬまうおポケモンでここホウエン地方の初心者トレーナー用ポケモンでもある。ユウキとの付き合いもそれなりになる。
「ミズゴロウ。引っ越してくるのはどんな子だろうな。おまえも楽しみだろ?」
ユウキの言葉にミズゴロウはエラをはためかせて頷いた。
父(オダマキ博士)とのフィールドワークはもちろん楽しい。しかしトレーナーであるからには対人の勝負をしてみたいと考えていたユウキ。そしてそれはパートナーのミズゴロウも同じなようだ。
ユウキは決して勝負師的性格を持ち合わせているわけではないのだが、どうもそういうところにロマンを感じるのが男子の一般的な特徴らしい。
「たいあたり! いや、アクセントはあ、か」
自分の世界に入ってしまった『おや』を呆れた顔で見守るミズゴロウ。彼も色々と苦労しているのだ。
そして待ちに待った瞬間が訪れた。
「ユウキ、来たわよ!」
いざとなったら母のほうが反応が早かった。彼女もまた出会いに飢えていたのかもしれない。
「来ったぁ!」
窓にすがりついて隣の家の様子を見るユウキとミズゴロウ。
引っ越し屋のトラックから降りてきたのはユウキの母と同じくらいと見られる歳の女性、妙に風格の漂う男性、そして大本命であるユウキと同い年の……
思わずずっこけた。
「女の子じゃん!? 母さーん! お隣さんって女の子だったのか!?」
「あら。お父さんから聞いてなかった?」
ユウキは理解した。父にこのことを言えば『あれ? 母さんから聞いてなかった?』と返ってくるに違いないと。