ポケットモンスター ~0 RAdiant Story~   作:ザパンギ

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初めてのパートナー

ユウキへの挨拶を済ませたミオリはオダマキ博士の研究所へとやって来た。

 そこでホウエン地方の初心者用ポケモンをもらう約束にやっており、晴れてトレーナーとしてデビューできるのだ。

 

 ユウキのところでは若干エネコを被ってしまったと反省したミオリ。父から預かったオダマキへの土産を手にドアを開いた。

「こんにちは!」

 

 中には男女の研究員がわずか二人。オダマキの姿はない。

 

「ああ! ミオリちゃん来ちゃったじゃないか……まったく博士ったら……」

 慌てた様子の研究員。

 

「あの、博士はいらっしゃらないんですか?」

「そうなんだよ。ついさっき101番どうろに行っちゃってね。すぐ戻るとは言ってたんだけど」

 

 大人の『すぐ』ほどあてにならないものはない。ミオリはこれまでの人生でそれを十分に学んでいた。

 

 それなら待っていても仕方がない。

 

「じゃあ私101番どうろに行ってきます」

「いいのかい? 本当は僕たちが行かないといけないところなんだけどちょっと手が離せなくてね」

「大丈夫です。すぐそこですから」

 

 難しいことはよく分からないが研究の邪魔はできないし、そうしないのがミオリだ。

 お土産を研究員に預けて意気揚々と101番どうろに出かけていった。

 

 

「た、助けてくれー!」

 そしてこの状況である。

 

 目の前で白衣の男性がポケモンに追われている。ポケモンは唸り声をあげ、不機嫌さを体全体であらわしている。ミオリはそれがポチエナだと分かった。

 

 見渡しても他に人はいない。彼がオダマキであることは明確だった。

「オダマキ博士ですよね? こんにちは!」

 

 引っ越しの挨拶をしておこうとミオリは頭を下げた。

 

「これはこれはご丁寧に。こんにちは……いやいやいや、挨拶は大事だがそれよりも助けてくれ!」

 

 律儀にノリツッコミをしてから改めて助けを求めるオダマキ。とはいえ、腕っぷしに自信のないミオリは困ってしまった。

 

「助けるといってもどうしたら」

「そこに私のカバンがある! そこにあるボールにポケモンが入ってるんだ!」

 

 オダマキの言うとおり草むらにカバンが無造作に置かれている。ミオリはひとつひとつボールを確かめた。

 

「3つありますけど」

「どれでもいいからフィーリングで選んでくれ! ポチエナの注意を引き付けてくれればそれでいいから!」

 

 3つのボールのうち1つは空だったため必然と二者択一になる。アドバイス通りフィーリングでボールを掴んで投げた。

 

「力を貸して! ……アチャモ!」

 

 光とともに姿を現したのはひよこポケモンのアチャモ。もう1匹はユウキの部屋で見かけたミズゴロウだったのでなんとなく外したのだ。

 

 アチャモの存在に気がついたポチエナはオダマキを追うのをやめ、新たな敵に矛先を向けた。

 

 容赦のないたいあたりが炸裂。アチャモは草むらに突っ込んでいった。

 

「ゲホッ! ア、チャモ、に、技、を!」

 猛ダッシュによって完全に息があがってしまっていたオダマキがかすれ声で叫び、その場にへたり込んだ。

 

「え、えと。かえんほうしゃ!」

 引っ越してくるにあたってホウエン地方の初心者用ポケモンについても調べていたミオリはアチャモのタイプを理解していた。

 

「……かえんほうしゃ! あれ?」

 アチャモはきまりの悪そうな顔でミオリを見上げており、その嘴から火炎が放射されることはなかった。

 もし人間であれば両手でバッテンをつくっているところだろうか。

 

「じゃあフレアドライブ! ん?」

 気まずそうなアチャモ。

 

「かげぶんしん! ひみつのちから! きあいだま!」

 

 その間にもポチエナは容赦なくアチャモにたいあたりを浴びせかける。幸いダメージは大したことがないようだ。

 

 ミオリは呆然とした。

 ほのおタイプの技名は知っていてもポケモンの力量との関連についてはさすがに理解していなかった。

 

 技を出せないアチャモに対し調子づいたポチエナ。さらに攻撃を繰り返す。

 

「ああ、もう!」

 ミオリはこれまで色々と勉強していたことが活かせていない自分に苛立った。

 

「大丈夫、落ち着いて!」

 ここで、追われることがなくなって一呼吸おいたオダマキからありがたいアドバイスがあった。

「今そのアチャモが覚えているのは『ひっかく』と『なきごえ』だよ!」

 

 救いの手の存在はあまりに大きかった。

 

「そうなんですか。ならひっかく!」

 やっと自分に見合った指示をもらったアチャモは突っ込んできたポチエナの後ろに回り込み、足のツメで思い切り引っ掻いた。たいあたりをくらっていたことでカッカときていたようだ。

 

 『ひっかく』は威力が高い技ではなく、本来であればここでの決定打にはならない。しかし今回ばかりは――

 

「きゅうしょにあたった! なんという幸運だ!」

 ミオリの幸運が低確率を引き当てた。さすがのポチエナもこれにはたまらず草むらへ逃げていき、即席コンビは見事勝利を収めた。

 

「か、勝った!」

 喜ぶミオリとアチャモ。

 

 そこへオダマキがポチエナが完全に去ったのを確認して駆け寄ってきた。

 

「いやー助かったよ。ありがとう。君が引っ越してきたミオリちゃんだね。お礼もしたいし研究所に来てくれないかな」

「はい!」

 

 

 研究所に戻ると待っていた助手が二人を迎えた。

 

「改めてミオリちゃん。ありがとう」

「頑張ったのは私よりもアチャモですよ。私一人じゃどうすることもできませんでした」

 

 あれだけ必死に助けを求められたら見捨てられないし、と小さく呟くミオリ。

 

「ははは。その言葉が自然に出てくるということは君はもう立派なトレーナーだよ。さて、約束通り君にポケモンを選んでもらおう。3匹の中から1匹選んでくれるかな」

 

 訝しげなミオリ。

「あれ? さっきカバンのボールには2匹しか」

 

「そう。昨日一人新人トレーナーが来てね。その子が選んでいったんだ。でも大丈夫。研究所にはちゃんと3匹揃ってるから」

 わずかに先輩になる人物がいたようだ。

 

 さて、パートナーは実際に見てから決めようと考えていたミオリだが。

「そうだったんですか。でも答えはもう決まってるんです。さっき一緒に戦ったアチャモをください」

 

「よーし分かった。アチャモをよろしく頼むよ。こいつはむじゃきな性格でね。きっといいパートナーになってくれるよ」

 

 オダマキからアチャモの入ったボールを手渡されたミオリ。さっそくボールからパートナーを呼び出した。

 

「私はミオリ。これからよろしくね」

 やなこった、という反応をされたらどうしようと一瞬ビビったがそんなことはなかった。

 

 アチャモは嬉しそうにすり寄り『おや』ができたことを素直に喜んだ。 

 

 なんとも微笑ましい一コマを見てオダマキが何かを思いついた。

「そうだ。うちのユウキにはもう会ったかい?」

 ミオリが会ったと答えるとオダマキは食い気味に提案した。

 

「今ちょうど103番どうろでフィールドワークをしているんだ。アチャモとの散歩がてらサボっていないか見てやってくれないかな?」

「はい!」

 

 お任せあれと言わんばかりに颯爽と研究所を飛び出したミオリ。

 

 真面目な性格のユウキがサボるはずなどないのだが、そこはオダマキの持つ父と博士という二つの面からの粋な計らいととらえるべきだろう。













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