ポケットモンスター ~0 RAdiant Story~ 作:ザパンギ
研究所に戻ってきた二人を見てオダマキは全てを察した。
「――ってなわけで負けちゃったよ」
「なんと!」
察しきれない部分もあるにはあったが。
「やっぱりミオリちゃんを見込んだ私の目に狂いはなかった。うん、ちょうどいい機会だ。実は二人に頼みたいことがあってね」
そう言ってオダマキは手帳ほどの赤い端末を二人に手渡した。
「博士これはなんですか?」
「計算機か何かか?」
ミオリもユウキも初めて見る物体に戸惑いを隠せない。
「それは『ポケモンずかん』。ハイテクかつグレートなマシンさ」
ずかんといっても分厚い本ではない。そのメカメカしい外見は二人を驚かせるのに充分だった。
「ポケモンずかん? スタンプラリーでもやるんですか?」
「当たらずとも遠からずってかんじかな。ちょっと説明させてもらうよ」
ポカンとする二人を尻目にオダマキはスクリーンにスライドを映し出した。
ある程度予想できたことではあるが、誰もが知っているであろう人物がかなりのアップで現れた。
「ポケモンずかんはポケモン研究の権威、オーキド博士が開発したものなんだ。カントーの人だけど二人とも聞いたことはあると思う」
「まあジョウトに住んでましたし」
「というか知らない人のほうが少ないだろ」
さすがにトレーナーの端くれ。二人とも知っていた。
「うん、そのオーキド博士がかつてポケモンの種類について全部で151種と発表したことがあったんだ。でもその後に続々と新種が見つかってね……」
オダマキは頭をかいた。ポケモンの種類については今現在もはっきりとしていないのだ。ただ、少なくとも800種は超えているということが真しやかに語られていた。
「まあ有名な話だよな。『151のヨロコビ、151のユメ』なんてジャーナルにもネタにされてたし」
今となってはオーキド本人も講演会等でつかみのネタにしているかなりメジャーな笑い話だ。ただオーキドの名誉のために付け加えておくと、それは本人も大変な功績を果たした研究の進展や新種の発見などポジティブな要因である。
「そこで博士はこれを作った。これは捕まえたポケモンを記憶・記録するメカでね、トレーナーたちに渡してデータを収集してもらおうってわけなんだよ。貴重なものなんだけど、この間の学会でお会いした時にホウエン地方用のをいただいたんだ。二人にはホウエンを旅してポケモンをどんどんその図鑑に記録していってほしい」
事情を飲み込みユウキは愕然とした。
「おいおいおい! そんな大事なことオレたちに任せちゃっていいのかよ」
オダマキからするとユウキの反応は想定内。
「まあユウキはファミリー枠ってことで。内定してたんだけどな。ミオリちゃんと協力して頑張ってくれ」
「はい! 任せてください!」
息子に対してそれはあまりにもアレなんじゃないかとユウキはぼやこうとしたが、横で目を輝かせているミオリを見て諦めがついた。
「ミオリ、さっきは不覚をとったけどポケモン捕獲の勝負なら負けないからな。オレがドンドン捕まえてきてやるよ」
「あっそれ助かる」
「いやそこは張り合ってこいよ!」
ユウキはあくまでも平熱系のミオリに呆れてしまった。
「まあいいか。オレはミシロを出てホウエン中をまわるつもりだ。ミオリはどうする?」
「あー、私はママとパパに旅の許可をもらわないと」
一人娘であるミオリが旅に出るには当然踏まなければならないステップだ。
「そうだろうとも。まあ、きっと許してくれると思うけどね」
今回のことは事前にミオリの両親には通達済み。マッハでゴーサインが出るであろうことはオダマキにも分かっていたがあえて黙っていることにした。
「それじゃ、行ってきます!」
研究所を飛び出し自宅へ行くミオリを見送る父子。
「ユウキはどうするんだ?」
もちろんユウキにも両親から旅の許可が出ている。
今まで自分の研究についてきていたユウキがトレーナーとなって自由を得たことでどんな選択をするのか。博士としてではなく親としてオダマキは気になっていた。
ユウキはずかんをしまい、拳を握ってみせた。
「この隙にミオリを突き放す! と言いたいとこだけどさ。まずは104番道路あたりで捕獲がてらミズゴロウを育てるよ。今のままじゃちょっと強いやつが出てきたら捕まえる前にこっちがやられちゃうからな」
「おお、そうか。頑張って行っておいで」
大雑把かつ勢いで動く自分に対して、細かく考えながら計画を立てて行動するユウキ。オダマキは性格は妻に似たことを改めて実感した。