『この女神にメイドが祝福を!「ずっと目覚めなければよかったのに」「やめてよね!?」』   作:ひきがやもとまち

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この女神にメイドが祝福を!「ずっと目覚めなければよかったのに」「やめてよね!?」
プロローグ「ずっとお付き合い願います」


「九条みゆきさん、ようこそ死後の世界へ。

 あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。

 短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

「そうですか」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

「どうされました?」

 

 首を傾げてアホ面を晒す水色の髪の美少女。

 平然と応じる黒髪おかっぱの美少女ーーメイド。

 

 ・・・・・・・・・・・・かなり、異様な状況だった。

 真っ白な部屋の中に事務机と椅子が置かれ、非現実的な話をもちだされた事が些事に思えるほどに、異様な状況だった。

 

 水色の髪の美少女は、確認するようにメイドに向けて問いを投げかけてみる。

 

「・・・・・・えーと・・・・・・、

 あなた、自分が死にましたとか言われて平気なの?

 て言うか、信じるの?」

「嘘だったのですか? それは困りましたね・・・。

 人の生死に関することはたとえ冗談であろうとも軽々しく話題にしてはいけない、と祖母から教え込まれておりまして。

 

 ーー破った場合は、たとえ誰であろうと即刻首を切り落とせ、とも・・・。

 ですので、申し訳ありませんが出会って早々お別れという事に・・・」

「本当です!嘘じゃありません!あなたが死んだのは事実なんです!

 だから、お願い、その馬鹿でかいハサミをしまって!!

 私が死ぬから! 女神死んだらシャレにならないから!

 ーーと言うか、どこから取り出したのよソレっ!?」

「メイドの嗜みです」

 

 一言で片づけてメイドーー九条みゆきは何処に持っていたのか、自身の身長とほぼ同じ大きさの巨大バサミを取り出して自称女神を恐怖のどん底にたたき落とすと、どこかしら満足そうにまた何処かへと仕舞ってしまった。

 

 ーー明らかな超常空間でありながら、それ以上の超常現象だった。

 

 ・・・・・・メイドっていったい・・・・・・

 

 

 機先を制され、やや怯みながらも水色髪の彼女、女神とやらは仕切り直すことにしたようで、改めて椅子に座り直した。

 

 ・・・・・・ちょっぴり腰が引けているのは、この際しょうがないだろう。

 

「・・・コホン・・・。

 改めて初めまして九条みゆきさん。私の名はアクア。日本において、若くして死んだ人間を導く女神よ。

 ・・・・・・さて。死んだあなたには、二つの選択肢があります。

 一つは人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。

 そしてもう一つは、天国的な所でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか」

「生まれ変わりでお願いします」

「・・・・・・早いわね。もう少し悩まくなていいの?」

「私の祖母は、よくこう申しておりました。

『どんなクズになってもいい、犯罪者だろうと独裁者だろうと好きな道を進みなさい。どんな道を行こうとも、お前が私の可愛い孫娘であることは永遠に変わらないから。

 

 ・・・・・・ただ、お前の祖父ちゃんみたいにだけはなっちゃいけないよ。

 アイツと比べたら切り裂きジャックの方を伴侶にしたいと、どんな女でも思うだろうからね』・・・と。

 なので、私としてはお爺ちゃんの様になるのは祖母の言いつけを破ったことになってしまいますので、できればそれは避けたいな、と・・・」

「いやいやいや! お爺ちゃんみたいな暮らしってそういう意味じゃないわよっ!?

 それよりも、あなたのお爺ちゃん何者!? そこまで言われるのって普通じゃありえないんだけど!?」

「聞いた話では、若い頃はナチス親衛隊にいたそうです。

 よく、『諸君、私は戦争が大好きだ』と部下たちに演説していたそうで、映像も残っておりますが・・・・・・ご覧になられますか?」」

「見ないわよっ! ほんとに何者よソイツ!?

 後このネタ、ほんとに大丈夫なんでしょうね!?

 私、まだ殺されたくないんですけど!

 迫撃砲も殲滅戦もゴメンなんですけど!!」

 

 取り乱して叫びまくる自称女神アクア。

 無表情に淡々とクールに語るメイドみゆき。

 

 ・・・・・・・・・・・・シュールだ・・・・・・シュールすぎる・・・・・・・・・・・・

 

「と、とりあえず転生の方でいいのね・・・?

 じ、じゃあ、特典を選んでちょうだい。

 向こうの世界に何か好きなものを一つだけ持たせて送ってあげる」

「好きなもの・・・。

 何でもよろしいのですか?」

「勿論よ!

 とんでもない才能だったり、神器級の武器だったり、強力な特殊能力だったり、もう何でもよ。

 あなたは、異世界とはいえ人生をやり直せるんだもの。

 こんな特典を見過ごす理由はないでしょ?

 さぁ、早く選んでちょうだい。

 この後、他の死者の案内が、まだまだたくさん待ってるんだからね?」

 

 そう言いながらも椅子にふんぞり返りお菓子を食べ始める自称女神。

 神秘的な容貌とは対照的に、俗っぽく下品極まりない。

 

 その様をジーッと静かに見据えていたみゆきは、おもむろに口を開き、

 

「ではーーーー

 

 

 

 アクア様、貴女を特典として所望いたします」

 

 ーーとんでもない爆弾発言をぶちかましやがった!

 

「ーーーへ・・・・・・?」

 

 女神アクアの時が停まった。

 眼が点になり、口も丸く開く。

 まるでハニワだ。美少女台無しである。

 そんな醜態を晒す女神を静かに見つめたまま、無表情を保ち続けるみゆき。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当にシュールだった・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「ーーな、なんでよっ!?」

 

 ようやくフリーズが溶けたアクアがみゆきに詰め寄る。

 だがしかし、氷の無表情には僅かな崩れもない。

 いっさいの揺らぎさえも生じない。

 これもメイドの嗜みなのだろうか。

 

 ーー出来れば笑顔も浮かべてほしいと想うのは贅沢なのかな・・・。

 

「私は見ての通りメイドです。そして真のメイドとは、使えるべき主が居てこそ初めて意味が生まれる存在なのです。

 メイド喫茶などという低俗な場所で働き誰にでも媚びを売る、主を持たないなんちゃってメイドなどとは格が違います」

「そ、そうですか・・・」

 

 なんだか触れてはいけない話題らしいと、話を逸らす方法を考えるアクアは咄嗟に閃いた。

 

「そ、そうよ!

 私なんかが主人だと苦労するわよ!

 なんたって着替えは脱ぎっぱなし、部屋は掃除しない、料理も家事も何も出来ない女子力ゼロの駄女神なんだから!!

 こんな地雷女他にいないわよっ!

 もう、一生喪女確定!みたいなっ!!」

 

 なんだか盛大に自虐を始めた。

 生まれつきプライドの高い彼女が、ここまで自分を貶めたのは生まれてこのかた初めてのことだった。

 それ程までして異世界に行くのが嫌なのだろうか?

 

 ーー否、そうではない。

 

 『みゆきと一緒に』異世界に行くのが嫌なのだ。

 

 なにせ、このメイドーーやばい臭いがプンプンする。

 むしろ、やばい臭いしかしないレベルだ。

 公害と同類である。

 環境庁に連絡したいが、ここは死後の世界。下界に繋がる電話回線などはない。

 なぜ、ATSLとでも契約しておかなかったのか・・・!

 その事をアクアはいま、心底悔やんでいた。

 

 対するみゆきの態度に変化はない。

 表情筋一筋すら動いていない。

 

 ーーサイボーグじゃないだろうなコイツ・・・。

 

「アクア様、昔からこう申しますでしょう?

『駄目な子ほど可愛い』、と。

 メイドにとってもそれは同じ、駄目な主ほど尽くしがいがありーー嬲りがいが有るものですよ」

「なんか言った! いま最後になんか言った! 絶対やばい奴よコイツ!

 ていうか、アンタほんとにメイドなの!?

 魔王って言われても納得しちゃいそうなプレッシャーをビンビン感じるんですけどぉっ!?」

「では参りましょうか、アクア様。

 

 

 お付き合い願いますねーーこの先ずっと・・・・・・」

「い、いやあああああぁぁぁぁぁぁっ!?

 誰か、誰か来て! 攫われる! 私、ヤンデレメイドに拐かされちゃうぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 アクアの悲鳴が聞こえたらしく突如として天使っぽいのが乱入してきたが、この状況を見て訳が分からなくなったのか、ポカーンとした表情で呆然としている。

 そんな天使っぽいのに、みゆきが静かにお願いする。

 

「申し訳ありませんが、早く私達を異世界に送っていただけますか?

 ーーいい加減、卍固めするのも疲れてきましたので」

 

 明らかにお願いではなく命令だったが、無表情に女神を卍固めでホールドし、逃げ出さないように拘束している美少女メイドの視線のプレッシャーをモロに受けた天使っぽいのは即座に了解した。

 

 ーーだって、なんか怖いんだもん、この人・・・・・・。

 

「行ってらっしゃいませアクア様。後の事はお任せを。

 無事魔王を倒された暁には、こちらに帰還するための迎えの者を送ります。

 それまでは、あなた様のお仕事の引き継ぎはこのわたくしにお任せを。

 九条みゆきさん。あなたをこれから、異世界へと送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人として。

 魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう。

 ・・・・・・ですから、それまでは絶対こちらに帰ってこないで下さいね?」

「ちょっと待って!

 いま、あなたも最後になんか付け足したわよねぇ!?

 もしかして、私のこと生け贄にしようとしてない?

 ーーって、視線逸らすな、顔背けるな、こっち向けやこらぁぁぁぁっ!」

「魔王退治ですね。承知いたしました。

 全力で当たらせていただきます。

 

 ーーいつか、気が向いた時にでも遊び半分で・・・・・・」

「やっぱ言った! コイツ、やっぱ最後になんか付け加えたわよ、いま!

 やっぱり嫌、コイツ嫌、ホントに嫌!!

 お願い助けて、何でもするから!

 もう仕事サボらないし、神器を無差別に渡すようなこともしない!

 そうだ! いっその事、あなたに女神の地位を譲ってあげる!

 ーーだから、ね? お願い、私の代わりにコイツと異世界にーー」

「さぁ、勇者よ!

 願わくば、数多の勇者候補たちの中から、あなたが魔王を打ち倒す事を祈っています。

 ・・・・・・さあ、旅立ちなさい!

 ーーですので、今すぐに即刻この場から居なくなって!

 その人はどうでもいいから、もう私達に一生関わらないでっ!!

 二度と此処には戻ってこないで下さい、お願いします!」

「あ、あんたはぁぁぁぁぁっ!!

 女神見捨てておいて、なに天使っぽいこと言ってんのよ!

 こうなったら上司命令よ、コイツを殺しなさい!

 でないと、アンタを窓際部署千年の刑に処すわよ!

 いいの!? 窓際に千年間居続けるのよっ! 嫌でしょ!? だったら、早くコイツをーー」

「バシルーラァァァァァァァッ!!!!」

「い、いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 こうして、女神アクアはメイドと共に異世界に赴くことになった。

 魔王を倒す気もなく、神々からの贈り物にも興味のない勇者候補のメイドに付いて行かされた彼女の未来はどっちだ!?

 

 

 ーーむしろ、彼女に未来なんてあるのか・・・・・・?

 

 

 それは神のみぞ知る・・・・・・って、女神自身のことなんざ誰も解らんわな。

 

 

 

 不幸な女神様に哀悼の意を表し、総員、敬礼!

 

つづく




最後のバシルーラは他に相手をどこかにとばす呪文が思い浮かばなかったからです。
適当に流してください。
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