今回のタイトルはちょっと苦しさが隠しきれませんでした。好きな映画のリスペクト(パクリとは言わない)
顔を歪めながらちびちびとウイスキーを飲む正平にいじわるな笑みを浮かべる秋。
「いやーほんとキツ、うまいっすね!」
つい本音がこぼれる正平から苦笑いがこぼれる。
「飲み慣れないとウイスキーはきついよね。」
ジャックはそっとチェイサーを差し出す。
「大丈夫ですよ!」
水=情けと思った正平は意地を張る。
「そういう飲み方もあるんです。」
横から優しく秋がつぶやく。
「そうなんですか?」
感心した顔で正平は秋を見つめる。
「ウイスキー飲みながら、ちょいちょい水を飲むといいよ。」
ジャックはタバコに火をつけると、話に入る。
「へー。なんかかっこいいっすよね!バーでウイスキー飲むとか。やってみたかったんですよ!」
「映画の見過ぎ!若い子はウイスキーなんて飲まないんじゃない?」
「ハイボールとかなら飲むやついますけどねー!」
「あれでしょ?最近は会社の飲み会でもビール頼まない子とかいるんでしょ?」
「オレはサラリーマンじゃないからわかんないけど、ビール飲めないって子は結構いますねーオレも飲めないし。」
「・・・もったいない。」
秋はカウンターの奥の並んだボトル見ながらぼそっとつぶやく。
「だってにがくてまずいんですもん!」
「それちょっとわかるなー。俺も若い頃何が上手くてこんなの飲むんだって思ってたもん。」
ジャックはうんうんと頷きながら答える。
「でもジャックさんよくビール飲んでますよね。」
「なんかねー突然おいしく感じたんだよね。なんでだったか忘れたけど、凄いおいしく感じたんだよねーそこからかなー、飲み始めたのは」
「そんなもんなんすかねー。」
カチャッ
入り口のドアが開くと3人は入り口の方に顔を向ける。
「あーいらっしゃーい!」
ジャックは笑顔で入り口の方に挨拶する。
そこには男と女が二人、店の雰囲気を探るようにゆっくりと店の中に入る
。
男は40代くらいだろうか。若いというより年相応の雰囲気がある。髭は生えているが丁寧に整えてあり、ブランドものメガネは丸いラウンド型で、面長の顔によく似合っている。
細身のパンツにグレーのジャケットと綺麗な身なりで、このショットバーには少し似つかない見た目である。
女も歳は30校半から40くらいの綺麗な女性であり。綺麗な長く黒い髪が美しさを醸し出している。
肌は透き通る白に近い肌色で。顔はモデル用に整っている。
赤のドレスの上に黒いコートを羽織り、少し酔っているのか男の肩に寄り添っている。
二人とも日本人離れした体格でまるで映画のワンシーンを見ているような錯覚に陥る。
「おや、若いのが集まってるね。お邪魔かな?」
男は柔らかい声でにこっと笑う。
「いやいや!とんでもない!」
正平は必死に答える
「俺は若くないっすからそろそろしんどかったんです。ナイスタイミング!」
ジャックは笑いながらソファー席の方に案内する。
女の方は少しふらっとしながらソファーに近づき、ドスンと座る
「リサさん、コート預かりましょうか?」
ジャックが手を差し伸べると女は少しだるそうに体を起こし、スルッとコートを脱ぎ、ジャックに渡す。
「ありがと。ジャック」
上目で答える彼女はとても美しい。ジャックはやさしく「いえいえ」と答え受け取ったコートを壁にかけているハンガーにかける。
ジャックはすぐにカウンターに戻るとおしぼりを持って二人に渡す。
「シーナさんもリサさんもひさしぶりですね。」
熱々のおしぼりを少し冷まして二人に渡すと、ソファーの前のテーブルに積んでいる丸いコースターを二人の前に差し出す。
「最近まで忙しくてさ、海外と日本を往復したりとね。」
たしかに。住む世界が違いそうだ。正平は遠目で芸能人を見るような関心の目で見ている。
「何飲みます?」
「そうだねぇ・・ラフロ・・いや、ジャックダニエルでも飲もうかな。」
「私も久しぶりに飲みたい!同じの頂こうかな。」
リサは細身のタバコを口にくわえると火をつける。
「お、意外!シーナさんラフロイグしか飲まないとおもってました!飲み方は?」
「僕はロックで」
「私も。あっチェイサーもつけてもらえる?」
「わかりました。少々おまちくださいね!」
ジャックはにこっと笑うとカウンターに戻る。
「ジャックさん、あの人たち常連さんですか?」
正平は小声でジャックに話しかける。
「そうだね。というか、前俺が働いてたバーの常連さんでね。この仕事につきたての頃からよくしてもらってるんだ。」
「二人ともなんていうか、凄いオーラがありますね!」
「かっこいいよねー、あーいう大人にあこがれるよほんと。」
ジャックは話しながらも丁寧に氷を削りだす。
秋は背中の方から聞こえる声に耳を傾ける。盗み聞きするというより、いやでも耳に入ってします感じだ。
「ほんと今日は久しぶりにいいコンサートだったよ」
「貴方はいつも誉めるのね。」
シーナは優しくリサを見つめながら語りかける。リサはそれに答えるように微笑み返す。
「尊敬してるのさ」
「それは私だけかしら?」
シーナの言葉にいたずらな問いかけをするリサ。それをシーナは楽しむように黙って微笑む。
「見た目にぴったりの素敵なやりとり。」
そんな二人のやりとりに秋は自然と笑みが出る。まるで映画のようなやりとりに憧れと羨ましさを感じてしまう。
「秋くんは二人のこと知ってます?」
ロマンチックな気分にずいずいとはいってくる正平に「ん〜・・。」と渋い顔をする秋。
「いえ・・初対面ですね。あまり他のお客さんにあったことが無いんです。」
「たしかに秋くん来るときって他にお客さんいないことおおいね。」
ジャックはドリンクを作りながら答える。
「すいません。疫病神で。」
申し訳なく頭を下げる秋に
「やめてよー。お客さんは神様!」
笑いながら返すジャック。
「うん。」
ジャックは出来た二つのドリンクを少し見つめると納得した反応を見せて、シーナとリサの方に持っていく。
「おまたせでーす。」
ジャックはニコニコと綺麗な丸い氷の入ったウイスキーグラスをわたすと、ふたりは「ありがとう」とつぶやく。
シーナとリサがグラスを持つと「おつかれ様」と互いのグラスを優しく「キンッ」と当てる。
「ハァ・・素敵」
聞こえないような独り言をつぶやく秋。
そこへ急にシーナとリサがカウンターテーブルに座りだした。
「お邪魔していいかい?」
シーナの問いに「もちろんっす!」と元気に答える正平。そんな若々しい正平ににこりとするリサ。
幅広い年齢層の集まりはとても不自然で、カウンターテーブルには4つのロックグラスが並ぶ。
ゆっくりゆっくりと夜は更けていく。