この素晴らしい古竜に祝福を   作:sil

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アクセルの町に降り立つ

「ふむ、ここが駆け出し冒険者の町、アクセルか」 

 

 町の入口に降り立った私。取り敢えずこれからすべき事はすでに決まっている。

 

「さて、ギルドとはどこにあるのだろうか」

 

 表面上は努めて冷静に取り繕ってはいるが、内心ではわくわくとした感情でいっぱいだった。

 正直今すぐにでも走り回りたい、が、見たことがない建物を見て回りたい、が・・・!その気持ちを今はぐっと我慢する。

 

 まずはギルドという場所で色々としなければいけない事がある上に、そんな事をすれば変な印象を抱かれてしまうからだ。

 第一印象が大切という事は紅魔の里にいた時にしっかりと学んでいる。抜かりはない。

 

 それにしてもここは人通りが多いな。

 しかも紅魔の里では見た事が無いような容姿や恰好の者が多くみられるな。

 ん?あの者の頭から出ているあれはなんだろう?もしや角だろうか?それにしては随分と柔らかそうに見えるが・・・見えるが・・・。

 

 ふにっ

 

「ひゃっ!?な、なに!?」

「ん?どうしたんだよ、急に悲鳴なんて上げて」

「い、今誰かに耳を触られた気が・・・」

「? 少なくとも誰も触っているのは見てないぞ?なぁ?」

「うん、私もそんなの見てないよ。気のせいじゃない?」

「そ、そんなはずじゃ。あ、あれ・・・?」

 

 

 い、いかん。つい興味本位で触ってしまった。

 隠蔽魔法を使っていたままだったお蔭で私だとはバレてはいないが、今後は気をつけねば。

 

 それにしてもあれは耳だったのか。よく見れば他にも頭部に耳と思わしきものを持った者がいるな。大きいのや小さいのなど、種類が色々とあるようだ。

 先程の耳はもふもふとしていて柔らかかったな・・・頼めば触らせてもらえるだろうか?

 

 さて、いつまでも姿を隠したままというのもいけないだろう。まずはどこか人目に付かない所で魔法を解かなけr──っ!なんだあれは!水が噴き出しているっ?興味深い!

 

 

 ◇◆◇

 

 

 いかんいかん、つい熱中して見入ってしまった。

 それにしてもあの水の出る装置はなんだったのか。それもギルドで教えてもらえるだろうか?

 

 それにしても、魔法を解いてギルドを探しているのだが一向に見つからない。一体どこにあるのだろうか?

 

「ん?どうした坊主、そんなにきょろきょろと見渡して。迷子か?」

 

 なにやら筋肉質の男性がそう言って私に向かって声をかけてくる。

 目線といい、坊主という単語といい私に話しかけているので間違っていないだろう。

 

「おっ、もしかしてお前さん冒険者になりに来たのか?って事はギルドを探してたのか。なら俺が案内してやるよ、ついて来な」

 

 おぉ、なにも言っていないのに私が考えていた事がわかるとは。しかも案内までしてくれるとはなんと優しい人物なのだろう。

 

「ここだぜ坊主」

 

 男性、名前はボートカスさんが立ち止まったのは大きな建物の前。ここがギルドか、なにやら食べ物に匂いと笑い声が聞こえるな。

 

 ボートカスさんの後に続いて私も扉から中に入ると、鼻の奥に来る独特の香りが充満していた。

 なんだ?この香りを嗅いでいると少し頭がぼぅっとするな・・・。

 

「いらっしゃいませー!お食事なら空いてる席へ、お仕事案内なら奥のカウンターへどうぞ!」

 

 私達に向かって挨拶をしてくれた女性は、食べ物が載せられているお盆を手に持って人が座っているテーブルへと向かっていった。

 他にも多くの人達が食事や飲み物を飲んでいる。もしやここは定食屋なのだろうか?

 

「なんだ?さっき出て行ったと思ったら戻ってきたのか。ん?その坊主はどうした?見かけねぇ顔だな」

 

 一番近くに座っていた男性が声をかけてくる。

 話しぶりからするに、私を案内してくれたボートカスさんと知り合いのようだ。

 この人も見たことがない恰好をしている。上半身は肩以外はほとんど裸だ。お蔭で随分と屈強な体つきをしているのが良く分かる

 

 にしてもこの男性の頭から生えているこれはなんだろうか?耳・・・ではないし。髪?真ん中だけまっすぐにあるが・・・もしや角か?

 

「いや、さっきそこで偶然会ってよ。なんでも冒険者になりに来たらしいからここまで俺が案内したってわけだ」

「ほぅ・・・その年で中々命知らずの坊主じゃねぇか。気に入ったぜ。受付ならあそこだぜ」

 

 ふむ、よくわからないが私はこの男性に気に入られたようだ。出来れば後でゆっくりと話がしたいものだな。

 

 男性が指を指す方に行けば、不思議な穴が開いた所に笑顔を浮かべた金色の髪の女性がいた。

 確か、こういった物を窓口というんだったか?

 

「はい、今日はどうなさいましたか?」

「この坊主の冒険者登録をよろしく頼めるか?」

 

 おぉ、後ろからボートカスさんが親切にも代わりに説明してくれた。

 

「そうですか。ではまず、登録手数料が1000エリスかかりますがよろしいでしょうか?」

「よし坊主、今日会ったのも何かの縁って事で俺が払っといてやるよ」

 

 なんと、そこまでしてくれるとは・・・!

 なにからなにまで申し訳ないな。いずれこの恩は倍にして返させてもらおう。受けた恩と仇は倍にして返すというのが流儀らしいからな。

 

「はい、ちょうどをお預かりします。では、冒険者になりとたいとの事なので承知の事でしょうが、改めて簡単な説明を。

 まず冒険者とは街の外のモンスターや人に害を与えるモノの討伐を請け負う人の事です。

 ですが基本的には何でも屋みたいなものです。冒険者とはそれらを生業とした者の総称の事です。そして冒険者には各職業というものが有ります」

 

 ふむふむ、ここまでは聞いていた事前に聞いていた通りだな。

 すると女性がまっさらな手のひらサイズ程の四角いカードと一枚の紙、それとペンを渡してくれた。

 

「そしてこちらが登録カードになります。まずはこの書類に必要事項をご記入ください」

「坊主、字は書けるか?」

 

 親切からそう言ってくれるが大丈夫だ。ゆんゆんに習って人並みに書けるようになっているから。

 

 ペンを持って書類に文字を書いていく。名前はエンシェント、身長は、155。体重45。歳は・・・見た目から14でいいか。身体的特徴は黒髪、異色目、っと。これでいいだろうか?

 

「はい、結構ですよ。では、次にこの装置に手をかざしてください」

 

 そう言って私の前に置かれたのは、不思議な形をした金属に囲まれるようにしてある水色の丸い球体だった。

 なんだこれは・・・なんだこれは!

 

「あ、あの、そんなにキラキラとした目をしてどうかされましたか?」

「坊主?おーい坊主」

 

 ・・・はっ!いかんいかん、また我を忘れてしまっていたようだ。

 頭を振って正気に戻った私は言われた通りに装置に手をかざす。すると、水晶が淡い光を放ちだし、金属の部分がカチカチと動き出した。

 な、何なのだこの装置は・・・!動く、動くぞ!?

 

「これであなたのステータスが分かりますので、そのステータスに応じた職業の中からなりたい職業をお選びくたさい」

 

 女性の言葉を聞きながらも目の前の出来事に興奮していると、水晶の下の部分にある針から光が出て下に置いてあったカードに文字を描いていっていき、同時に私の興奮は最高潮に達しようとしている。

 出来れば後で一つもらえないだろうか?

 

「はい、ありがとうございます。エンシェントさんですね。えーと、ってはいぃぃぃぃぃぃっ!!?」

 

 光が収まり、カードを手に取った女性がすごい驚いた表情とともに大きな声を上げた。そばにいた私達も驚いた。一体どうしたというのだろう?

 

「ど、どうしたんだ?・・・ってはぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 気になって女性の手にあるカードを覗き込んだボートカスさんも同じように驚愕の声を上げた。だから一体どうしたというんだ。

 大きな声の連続でギルド内にいた者達の視線が私達に集まっている。

 

 それともまさか・・・私が元ドラゴンということがバレたのか・・・!?ど、どうしよう、その事は考えていなかった。

 焦る私の背中を嫌な汗が伝う中、驚愕の表情で止まっていた女性が再び動き出し、言葉を紡ぐ。

 

「こ・・・この潜在能力値は何なんですか!?殆どのステータスが平均値を大幅なんて目じゃないくらい超えていて、特に耐久力、生命力、魔力の保有量がカンスト!というか測定不能!?こ、こんなの今まで見たことがありませんよぉ!?」

 

 な、なんだ、バレた訳じゃないのか。よかった・・・。

 

「ぼ、坊主、オメェさん一体何者なんだ?」

 

 っ!来た!このセリフが来るのを私は待っていた!いつの間にか私達の回りに人が集まっているし、まさに場は整ったぞ!今がその時なんだな!

 

「何者、ですか・・・それは・・・」

 

 ごくり、と皆が息を飲む中、私はバッとローブを翻して左手を前に突き出し、皆に聞こえるように声を張る。

 

「我が名はエンシェント!紅魔族随一の友たちを持ち、未知という光を追い求めし者!」

 

 決まった!練習したかいあって今までで一番の出来だ・・・!

 

『・・・・・』

 

 ん・・・?なぜ皆固まっているのだ?そして何故そんなにも残念な子を見ているような視線を向けて来るのだ・・・?

 

「あぁー・・・あの、な、いいか坊主?良く聞けよ」

 

 疑問符を浮かべている私に向かってなにやら非常に言い辛そうな表情を浮かべ、ボートカスさんがそう切り出した。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「な、なんという事だ・・・」

 

 私は床に四つん這いになり、ガックリと項垂れていた。

 ま、まさかまた常識だと思っていた事が打ち破られることになろうとは・・・。

 

 世間一般全体で見ると、紅魔の里の者達は変わり者だったなんて・・・知りもしなかった。

 まず、初対面の挨拶で先程の様な名乗りは上げないし、カッコいい台詞は実は恥ずかしい台詞だったし、おしゃれと思っていた数々もイタイ設定という名の妄想から来るものだったらしい。

 拝啓、ゆんゆん。君は変じゃなかったよ。

 

「ま、まぁ、そんなに落ち込むな坊主。紅魔の里以外知らなかったなら仕方がねぇって。そ、そうだ!あの紅魔族のとこにいたって事は坊主の親のどっちかがその関係者って事なのか?」

 

 気を遣ってくれたのか、話題を他に移すボートカスさん。やはりこの人はゆんゆん並に優しい人の様だ。絶対にこの恩は忘れない。

 

「いや、そうではないぞ?そもそも、親という者が存在しないし」

『え・・・?』

 

 取り敢えず立ち上がった私は、服についた埃を掃ってボートカスさんの質問に答える事に。

 

 気が付いたらいつの間にかあそこにいた、という感じだからなぁ。少し最初の頃は訳が分からずに色々大変だったが、自分の事や少しの知識があったお蔭でなんとかなった?と言えるか。

 

 それにしてもこの鼻の奥につんと来る香り、なんだかふわふわした感じになるが一体何だ・・・?香りの元は、何人かが手に持っているジョッキからだが。

 

「ぼ、坊主、言いずれぇとは思うがお前さん今までどうして来たんだ?最初から紅魔の里にいたのか?」

「・・・私は生まれてからの殆どを(封印の結界に)閉じ込められて過ごし、紅魔の里ににいたのは本当に最近の事だ」

『っ!?』

「少し前で言えば、頭と手以外を岩で覆われている状態で過ごしていたお蔭で、(トランスの開発中)一部体の感覚を失っていたが、今はもう問題ないな」

 

 手足を軽く振って大丈夫な事を示す。

 

 でも、お蔭で足の方は他に比べて中々元通りには戻ってくれなくて転んでしまう事が多々あったな。

 倒れた振動で岩山がまた崩れ落ちてきたせいで、せっかく描いていた魔法陣が解けてしまった事もあったし。

 特に完成間近だった時になってしまった時は私が崩れ落ちた。あれを絶望、愕然、打ちひしがれたというのだろうか。

 

「そしてつい最近(魔力で造ったドラゴンの姿の偽物を置いて)偽装工作をして(封印から)抜け出し、外の世界に出て来たのだ。それからは紅魔の里で普通の人間らしく生きて行く為に色々学んできたのだが・・・まさかそれが特殊な例だったとは。まだまだ勉強が足りなかったか」

 

 こうなればもう一度常識について一から学ばなくてはな。まずは挨拶からが良いだろうか?

 あー、でも他にもまだこの町を色々と見て回りたいし・・・どちらから先にすべきだろうか?

 

 ・・・あれ?今、私はなにを話した・・・?んんー、にしてもさっきから頭がぼぅっとするな。

 

 ん・・・?気のせいか、周りの者達の様子が変だ?視界も若干ぼやけているが、口元を押えている女性や、天井を見上げている男性など、さまざまだがみんな一様に泣いている様に見えるな。一体どうしたというんだろう?

 

「・・・・・坊主」

 

 ボートカスさんに声を掛けられた。うん、この人も涙を流しているが本当に皆どうしたというんだ。

 

「よく・・・頑張ったな」

「ん・・・」

 

 彼は私の真正面に屈むと、その大きな手で私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。

 すまない、言っている意味がよく分からない。私の理解の範疇を超える出来事が起きている様だ。ゆんゆんヘルプ。

 

 あっ、まだ冒険者登録終わってない

 

 

 かくして、私の初日は頭を撫でられながらギルドにいた全員に泣かれるという異常事態が発生した。

 

 

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