魔法の世界で、砲が轟く   作:spring snow

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第一七話

 譲はグデーリアン隊が危機に陥りかけている時にフィーリア隊の動きを見つめていた。

 

 操縦手から彼女らの舞台の伝説を聞き、彼らの危険性に誰よりも気付いていたからだ。

 譲達は二十一世紀に生きる人間だ。特殊部隊の恐ろしさについても良く気付いている。

 

 最近の話で言えば、アメリカが敵視していた某イスラム系過激派組織の指導者を殺害した者もアメリカ海軍の特殊部隊と言われる。

 また、某朝鮮半島の北のお国の特殊部隊の十数人が韓国の山中に逃げ込んだ際にも、これを撃滅するのに数個師団をと投じたと言われる。

 

 現代においてもこうした特殊部隊の任務は多岐に及び、敵の後方に展開した際には恐るべき効力を発揮する。

 

 こうした存在を敵が抱えていると思うと気が気でならない。

 ましてや、今はグデーリアン隊は攻撃が思うように進んでおらず、戦線は硬直している。この状態で敵が後方から奇襲を掛けてきたら、為す術もなくグデーリアン隊は指揮官を失い、潰される。

 グデーリアンに警告を促すことも可能ではあるが、そのようなことをしても今、グデーリアンは目の前の敵を撃滅することのみを考えているだろうから、余計な雑念を植え付けるだけであろう。

 こういった場面にこそ、譲が動かなくてはならないのだ。

 

 しかし、こうした譲の心配をよそにフィーリア隊は動くことはなかった。

 

 幸いにも救援部隊の到着は間に合い、グデーリアン隊はフィーリア隊の攻撃を受ける前に危機を脱することができた。

 

 譲はほっと一息ついた。

 

 ここでグデーリアン隊がやられてしまえば、間違いなくジーマンは負ける。そうなれば、自分たちはどうなるのか分からない。

 運が良ければ、敵の戦力に加えられるかもしれないが、能力の高さを恐れて、殺される可能性や敵をさんざん苦しめた戦犯として裁かれる可能性も十分にありうる。

 グデーリアン隊が敗れると言うことは、自分たちの命綱が断たれるも同然の事であった。

 

 この時、フィーリア隊の旗が陣の中央から消えていることに譲は気付いていなかった。

 もう一分でも譲が気を抜かずフィーリア隊の動きに注目していればこの先に起こることも避けられたかもしれない。しかし、その決定的な瞬間を譲は逃してしまったのだ。

 

 歴史は回る。 大きな大河に全てを飲み込まれていく。 抗えぬ大きな力に……

 

 

 

 グデーリアンは、ようやく到着した援軍と共に残党の掃討に掛かっていた。

 既に弾薬切れの車両は後方に下がらせている。

 

「これでようやく敵も片づきそうだ」

 

 敵を突破できれば左右にいる味方が動き、敵を包囲殲滅が可能となる。

 

 味方の戦車隊に前進を続けるように指示を出そうとした。

 

 その瞬間のことであった。

 

 何か寒気のような物を感じたのだ。

 まるで、大事な何かを奪われて血の気が引いたときのように……。

 

 グデーリアンは、今までこのような感情に襲われたことは無い。

 しかし、何となく勘づいてはいた。本能的に分かったのだ。

 

 何が起こったのかを……。

 

 どうか外れてほしい。

 

 そう思い、譲のいる戦車がいるであろう方向をゆっくりと向く。

 

 

 

 譲はグデーリアンが攻撃を再開すると考え、一旦、後方に下がろうと考える。

 

(攻撃が再開すれば、グデーリアンは全軍に前進の指示を出すであろう。その時に自分が無線を通じて声を掛ければ、士気も上がるだろう)

 

 そう考えての行動である。

 

 操縦手に後退を指示しようとした瞬間のことである。

 

 何かの衝撃が背中に走る。

 

 背中を軽く車体にぶつけただけであろうと考え、指示を出そうと指揮棒を動かそうとするが、手が動かない。

 

 不思議に思って、手を見ようと視線を下に落とす譲。

 

 その先に見えたのは、胸から飛び出した尖った物であった。

 

 あれ……?

 

 その時初めて焼けるような激痛が背中と胸に走る。

 

 悲鳴を上げる前に何かが喉をせり上がってくる。それは鉄の味がする熱い液体であった。

 

 

 そうか、自分は死ぬんだな……。

 

 

 不思議と分かる。自分の死に場所がここになることを。それは理解すると言うより悟るような感覚であった。

 

 

 まだ死にたくないな……。恩返しすらろくにできていないでは無いか……。

 

 

 そんなことを考えている内に視界がぼやけてくる。

 

 操縦手が何かを叫んでおり、車体が揺れている気がする。

 恐らく射貫かれた自分を助けようと必至に後退しているのであろう。

 

 

 そんなことをしても無駄だから……。

 

 

 譲は言おうとするが声は出ない。出てくるのは赤い液体のみ。

 

 譲は強い眠気を感じ始めている。

 

 

 ごめん、皆。 恩返しは今は無理そうだ。 また今度の機会にね。

 

 

 譲は眠気に身を任せ、まぶたを閉じた。

 

 

 

 司馬懿はこの時、その能力の高さを見込まれ政務を行っていた。

 

 不意に近くの窓が大きな音を立てて開いた。

 

「全く、鍵をかけ忘れたのは誰ですかね……」

 

 ぶつぶつと文句を言いつつ、扉を閉めようと席を立った。

 

 昨夜は凶星が出ており、そのことで気が若干立っているだけに些細なことでも怒りやすくなっているのだ。

 

 部屋の外に誰かの気配を感じ取り、声を掛けた。

 

「戸の前にいるのは誰だい?」

 

 すると、戸が静かに開き譲が入ってきた。

 

「どうされたのです?あなたは戦場の方にいたはずでは……」

 

 譲は静かに微笑んで、言った。

 

「お別れに参りました」

 

「え……」

 

「それではごきげんよう……」

 

 そう言ってきびすを返して戸を出て行こうとする。

 

「待ちなさい。どういうことです?」

 

 しかし、譲は司馬懿の静止も聞かずに出て行った。

 

 唐突の出来事に固まっている司馬懿の耳に何者かがばたばたと足音を立てて駆けて来るのが聞こえる。

 

 その足音は司馬懿の部屋の目の前で止まり、戸をぶち開けて飛び込んできた。

 

「大変です! 仲達様! 譲殿が……、譲殿が!」

 

 その瞬間、聡明な司馬懿は何が起きたのかを悟った。

 

(あなたは最後のお別れに来たのですね……)

 

 譲との関係はあまり長くは無い。

 しかし、命の危機であった逃避時も常に共にあり続けた戦友である。

 やはり、戦友の死という物は辛い物であった。

 

 司馬懿が静かに窓の外を見つめる。

 

 その外は夕焼けが今当に地平線の向こうへと沈もうとしている瞬間であった。

 

 リットンの四号戦車のすぐ近くにまたも魔法が着弾した。

 敵の魔法は着弾すると何かが高速で回転するような異音を立て、爆ぜる。

 敵の攻撃は四号戦車の装甲をそう容易くには貫通しないが、近くに着弾して気持ちの良いものではない。

 

「敵戦車、右正横より数両突っ込んでくる!」

 

 別の戦車からの緊急の無線で、気付いたリットンはすぐに命令を出した。

 

「5、6号車は敵の戦車の牽制及び撃破に当たれ。残りは私と共に敵の突破を計る」

 

 先ほどから敵の攻撃が前後左右からやってくる。

 敵は何らかの手段を使って、兵力をあちらこちらに置いているらしい。

 

 しかしこちらの戦車に効かなければ、ただ単なる兵力の分散という愚策でしか無い。

 初戦こそ敵の攻撃の意外性から手間取ったものの慣れてしまえば簡単だ。

 

「前方に敵の歩兵数十名を確認!敵は塹壕にこもり、こちらの魔法を浴びせてきています」

 

 まっすぐ前に視線を移すと報告の通り、手前が堀になっている塹壕が見える。敵兵数人がそこから定期的に顔を出して魔法を放ってくる。

 

 すぐに他の四号戦車が砲撃を開始した。リットンの車両も砲撃を始める。

 戦車隊は先ほど弾薬の補給を受けており、既に砲撃は可能となっていた。

 

 急激な停車に体を持って行かれそうになり、それを全身の力を不絞って止める。

 すぐに横の砲手が旋回レバーを回し敵に標準をつける。その間に装填手は砲弾に薬莢を取り付け、主砲に装填を行う。

 そして、砲手が引き金を引くと大きく車体が揺れ音速を遙かに超えるスピードで弾が吹っ飛んでいく。

 またエンジンを吹かし、戦車を動かす。ひたすらこれの繰り返しであった。

 

 唐突に後ろから魔法が飛んできて前の地面に着弾する。

 

「後方より敵が十名ほど接近してきています!」

 

 後方にいる戦車の車長から無線が入ってくる。

 案の定敵は後方からも現れた。

 

「各車に伝達。敵はこちらのエンジンを狙ってきている。敵に狙われぬよう蛇行しつつ砲撃を続け、目の前の敵を突破することに専念せよ」

 

 すぐに次の魔法が飛んできて今度は右後方に着弾する。

 さすがに動いている敵を補足できるほど命中率が言い訳では無いらしい。

 

(ならば、敵に狙いをつけさせないように動き回れば良いだけのことだ)

 

 かつてソ連軍と戦車戦をやっていたときも基本的にはこの方法で戦っていた。

 これができない者はどんどん死んでいった。

 

 ここにいる者のほとんどはそれを手足のようにこなせる者ばかりだ。

 故に敵に後れを取るような者は一人もいない。

 

だが、敵も一筋縄ではいかず、うまい者はこちらの未来位置を狙って攻撃を仕掛け命中させてくる。

そのような人間はほんの一握りで、ほとんどは命中させられず、むなしく土柱を上げるだけだ。

 

 ふと目を後ろに移すと敵兵が味方の歩兵隊に殲滅されているところが目に入った。

 敵兵はこちらに夢中になっていたらしく、近くに迫っていた味方の兵士に気づけなかったらしい。不意を突かれた敵兵は為す術もなく朱に染まって倒れていった。

 

 後ろの脅威が去るのと同時に後方の歩兵隊が追いついたのを確認したリットンは、さらなる前線を命じるべくマイクを取ろうとした。

 

 その瞬間、まるで落雷がすぐ近くに落ちたような音が鳴り響き、外が真っ白く光った。

 同時に車体が大地震に見舞われたかのように揺れ、リットンは頭を砲塔に強く打ち付け、しばし、視界が暗くなった。

 

 ようやく立ち直り、周りに目を移すと周囲は特に大きな被害は無いが、戦車隊の先鋒がいたはずの地点に大きなクレーターができており、周囲には何も残っていなかった。

 

 事が起こるまでは確かに数十両の戦車が前進していたのが見えたのに、今となっては何も確認できない。

 

 リットンはあまりの光景に一瞬呆然としたが、すぐに続くであろう司令部からの指示を待った。

 

 

 

 グデーリアンはちょうど、譲の重体の件を聞きそのことに対する対応を考えていた所をリットン達を襲った揺れと光が襲った。

 

 一瞬の出来事には呆然とするもすぐに立ち直り、全軍に命令を出す。

 

「全車に告ぐ!一旦後退して敵の攻撃の要因を探る!」

 

 敵の攻撃方法が分からない以上、前進させて無駄な被害を出すわけには行かない。

 それ故の対処であった。

 

 しかし、すぐにその原因は分かることになる。

 

 敵の陣の中央方面から敵兵らしき人間が数人出てくるのが見えた。

 グデーリアンは彼らの存在に何となく勘づくところがあった。

 その勘はどうか外れて欲しいと思った。もし勘が当たってしまったら信じられないような被害が出ることは間違いない。

 

 彼らからは同じ香りがしたのだ、自分たちの主達と同じ臭いが。

 

 その人物達は途中でふと足を止め、そこで大声をあげた。

 

「ジーマン軍に告ぐ!今すぐ投降せよ!今の惨状を見たであろう!我々を敵に回せば他の者達にも同じ惨劇が降り注ぐことになるぞ!いざすぐ投降すればお前達の罪を許そう!」

 

 ジーマン軍は先ほどの被害の混乱から立ち直っておらず、かなりざわついていた。

 グデーリアン隊はどことなくグデーリアンと同じ感覚を感じており、別の意味でざわついていた。

 

 そこに彼らはたたみかけるかのように言った。最もグデーリアンが聞きたくなかった言葉を。

 

「私たちはコットン国に召喚された勇者である!」

 

 その瞬間、全てのジーマン軍の兵士が凍り付いた。

 噂にはなっていたものの本物の勇者が自分たちの目の前に出てくることを考えもしなかったからだ。

 その実力はおとぎ話にすら出てくるような強力な物である。

 

 敵がその勇者であるとは考えたくもなかった。

 

 しかし、現実には自分たちの強力無比な戦車が数十両も一撃で吹き飛ばされている。

 

 本物であるとしか考えられない。

 

「くっ!このままでは軍の士気は地に落ちるぞ!」

 

 後方で全軍の指揮を執っていたクラウスは地図を載せた大きなテーブルを殴りつけた。

 

 勇者を敵にして軍の士気が高いままとは考えられない。ジーマン軍の兵士が投降するのは時間の問題かに思われた。

 

 しかし、この時グデーリアン隊はある策を実行すべく動き出していた。

 その策はグデーリアン隊の力を遺憾なく発揮できる軍師が提案した物であった。

 時は出撃前にまで遡る。

 

 

「グデーリアン将軍」

 

 出撃前のグデーリアンはある人物から呼び止められた。

 振り返った先にいたのは司馬懿だ。

 

「おお、仲達殿か!どうした?」

 

「将軍。今回の作戦、用心なされ。敵は相当な策士がいると思われます」

 

「何と!どういうことだ?」

 

「敵の参謀にスーザンというものが加わりました。かの者はかつて士官学校を創設以来の成績を収めた人物であります。この者は異例の出世を果たし、次期参謀長候補の最有力候補と見られています」

 

「そんな人物が何故前線に?」

 

「敵が我々の存在に気付いたからでしょう。強力な敵が現れた時、持ちうる最大の戦力を一気に投入するのは兵法の常です」

 

「それでは敵が今後、持たないのでは?」

 

「敵が送り込んだ中で有力な人物は一人。いざとならば一人だけ逃がすことは可能でしょう」

 

 前世において武将達を捉えようとしても逃げられた事は数多ある。

 そう簡単にいかぬ事は分かっている。

 

「さらに敵の本隊はあのトーチカ陣にいる者達ではないと思われます」

 

「何と!」

 

「先日、コットン王国軍が消滅した事件の時、勇者達も行方不明になりました。この事件は間違いなく魔王軍が絡んでいるでしょう。ではその勇者達はどこへ行ったのか?」

 

「まさか……」

 

「おそらく魔王軍が取り込んでいる可能性が高いと思われます。そして敵は恐らく彼らを出してくるでしょう。敵の本隊はそれです」

 

「すぐに真一殿に報告を!」

 

「申してあります。そこで真一殿は私に任せると仰られました」

 

「して策は?」

 

「あります。敵は相当大規模な魔法を使える人間と防御が得意な者、そしてそれら二人を守るどちらも使える人間の三人で来ると思われます。この3人を倒すには敵に油断を誘う必要があるでしょう」

 

「確かに。敵が油断なく大規模な魔法を何発も討ってきたら我々は為す術もなく、敗北します。しかし、敵は今後の占領のことも考えて、あまり大規模な殺戮は行いたくないはず。ならば何をしてくるか。敵はこちらの勇者だと言うことを公言してこちらの士気を下げた後に投降を呼びかけてくるでしょう」

 

「我々はこれを逆手に取ります。敵に投降する者達の中に紛れ込んで一気に敵の後方へ入り込み、敵陣から攻撃を行います」

 

「そのような方法では投降する者を巻き込みながらでも攻撃をするのでは?」

 

「それはないでしょう。勇者達は何でも戦争を数十年の間戦争をしたことがない国から来たそうです。そのような者達に非道な決断を下すことはできないでしょう」

 

「それは甘すぎるのでは?」

 

「大丈夫です。そのためにもう一つ策を授けます」

 

 

 

 

「本当にやるのか……」

 

 グデーリアンは呟いた。

 この策を授けられたとき、グデーリアンは猛反対をした。

 それに対し、司馬懿は抑揚のない声で言った。

 

部下を死なせるのか

 

 と。

 この時、グデーリアンは策を行うことを決意した。

 

「砲兵隊に告ぐ!標準を敵部隊から勇者達の手前に切り替えろ!」

 

 

 

 

 この時、既に各ジーマン軍の部隊から降伏者が出ようとしていた。

 

「やってられるか!勇者が敵なんぞ俺は御免だ!」

 

「おい!待て!」

 

 そんな争いがあちこちで繰り広げられていた。

 

 そして敵に降伏した者達が武器を捨て勇者達の所へ逃げていく。

 ジーマン軍は大混乱をしているためにこの者達に攻撃をしている余裕などない。

 

 そして先鋒が完全に勇者達の後方へ抜けたのを確認し、さらなる降伏者が勇者達の所へ達しようとしたその時、唐突に上空から重砲の砲弾の飛翔音が聞こえだした。

 

 すると今当に降伏をしようとしていた者達の所へ砲弾が着弾を始めたのだ。

 

 

 

「いったい、ジーマン軍は何をしているんだ!」

 

 勇者として出てきていた佐藤昌之は叫んだ。

 

「私が行きますわ!」

 

 そう言って伊集院マリアがすぐにその兵士達を救いに駆けだした。

そして現場に着くと大規模な防御魔法を展開。兵士達を攻撃から守る。

 

しかし、事はそれだけでは済まない。

砲撃が続く中、多数の戦車隊が降伏する兵士達をなぎ倒しながら昌之めがけて突進を開始した。

 

とっさのことに混乱して突っ立っている昌之めがけて砲撃を開始したのだ。

 その戦車は全て四号戦車であり、グデーリアン隊の物であった。

反射的に防御魔法を使い砲撃から身を守る昌之の横を戦車隊は突っ切り、そのまま魔王軍の陣へ突っ込んだ。

魔王軍はとっさのことで対応が遅れる。

その間にも戦車隊は砲撃を落ち着いて行い、次から次へと魔王軍を仕留めていく。

そして、そのうちの一両の戦車から第五,六師団へ突撃のあいずの信号弾が打ち上がった。

 

待ってましたとばかりに両師団は突撃を開始し魔王軍に食らいつく。

最早魔王軍の敗北は勇者を持ってしても覆せないことは目に見えていた。

 

昌之達はどうにかしようとするも砲撃は未だ絶え間なく続いており助ける余裕はない。

 

これこそ、司馬懿がグデーリアンに授けた二つ目の策であった。

 

投降する兵士を巻き込むように砲撃を行え。

そうすれば勇者はその者達を救おうとするだろうからその間に敵に戦車隊で突撃を行えば、敵の近くまでいける。その時、勇者達は広範囲魔法を撃てないから為す術もないと。

 

司馬懿の言ったとおりのことが起きた。

 

「これならば勝てる!」

 

 グデーリアンは思わず叫んだ。

 

 こうして魔王軍とジーマン軍の二回目の対決であるベラリン戦は、収束へと向かうのである。

 

 この戦いにおいて勇者達と第2軍司令部は命からがら逃亡に成功したものの兵力の大半を失い、魔王軍はジーマン国内からの撤退を決意する。

 

 その撤退のさなか、司馬懿が準備を行っていた戦車隊にさらなる追撃を喰らい魔王軍は壊滅した。

 このことで司馬懿の名はジーマン国内で轟くようになり、大きな発言権を持つようになる。

 

 果たしてこの戦争はどうなるのか。

 まだ、誰にも分からない。

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