魔法の世界で、砲が轟く   作:spring snow

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第一八話

ジーマンが大勝したベラリン攻防戦から早2日。

 ジーマン軍は被害の集計や負傷者の手当。さらに戦場の死体の片付けや損傷したトーチカの復旧を行っていた。

 まず、互いの参加兵力について触れたいと思う。

 

ジーマン軍

 第一独立師団

 四号戦車 83両

 重砲(15cm榴弾砲) 40門

総数1万5千人

 

 その他師団(3,4,5,6師団)一つ当たり

 

 Z4戦車 30両

 重砲(7.5cm榴弾砲) 40門

 総数4万人

 

 この他、多数の兵員輸送車や軽機などが加わる。

 

魔王軍おおよそ

 第2軍

 魔法兵 4万2千

 歩兵 2万7千

 弓兵 1万

 騎兵 1万1千

 

なお、これらの兵力の内敵の詳しい武器などは不明だが、防御魔法に特化した者がおよそ1万、その他は攻撃魔法に特化した兵士がほとんどと思われる。

 

 そして互いの損害が下記の物である。

 

ジーマン軍

 戦車 203両内43両撃破(四号戦車17両含む)

 重砲 5両破壊

 兵員 戦死者 1万4327名 負傷者 2万2143名 

 

魔王軍(戦死者のみでおおよその値)

 魔法兵 2万2千

 歩兵 1万5千

 弓兵 2千

 騎兵 3千

 

 この歩兵の損害の割合が大きいのは、戦車や重砲の砲撃をもろに喰らうことが多く、防御魔法などで自分の身を守るすべを持たないからである。

 

 このように戦闘はジーマン軍の圧勝であった。

 

 最後の投降しようとした兵士に対する攻撃の被害は想定よりも少なく、投降した兵士はあまりいなかったようだ。

 

 なおこの件に関しては、後にジーマン軍の軍法会議が開かれ、グデーリアンは士気の都合上やむを得なかったとして大きく罪にはとがめられなかったものの許可なく発砲した点から減俸処分となった。

 この軽くなったのは、降伏した兵士が悪かったこともあるが何より戦車戦のノウハウを持つのがグデーリアンしかいないと言う点が大きい。

 

 以上が今回の戦闘の結果であった。

 しかし、真一達は別の点に大きな衝撃を受けていた。

 

 それは真一達の親友の譲が戦死したことであった。

 今現在もその犯人は見つかっておらず、戦死したのかも生きているのかも分かっていない。

 胸を槍のようなもので突かれた事による失血死であると診断された。

 野戦病院に担ぎ込まれたときには、既に息はなく軍医が手を尽くすも帰らぬ人となった。

 

 そして、今日、その葬式が執り行われることとなっていた。

 真一達の意志から葬式は一部の関係者にしか知らせず、ジーマン軍の戦死者に対する集団葬式と同時に行って、目立たせないようにして行われる。

 

 葬式は、第一独立師団の基地の裏庭にある小さな墓地にて行われた。

 今頃執り行われているであろうジーマン軍での葬式の喧噪はここまで伝わっては来ない。

 ただ静かに爽やかな風が墓地を駆け抜けていた。

 

 ここには名前の書かれた石が並び立つだけで他には何もない。この師団は魔法によって生み出された師団のために死体が残らないのだ。そのためにその死はこの石碑を持ってのみ表されている。その墓地の一角に何人かの人影がいた。

 真一、守、幸一、司馬懿、グデーリアンの5人だ。

 

 彼らの目の先には近藤 譲の名が刻まれた小さな石碑が建つ。その前には小さな1本の花が生けられている。それは彼岸花とよく似た花であった。

 

 こちらの世界ではあまり見かけない花であり、貴重な花であったが司馬懿がどうにか取り寄せてくれた。

 

 この花の名は「wiedersehen」。

 

 再会の日を楽しみに、と言う意である。

 不思議なことに日本の彼岸花と似た意味を持つこの花を真一はどうしても供えたくて司馬懿に無理を言って取り寄せてもらったのだ。

 

「申し訳ありません。私がもう少しお守りしていればこんなことには……」

 

 グデーリアンは普段からは想像できないような静かな口調で言った。

 あの戦闘以来、グデーリアンは今回の責任を自分にあると考え、塞ぎ込んでしまっているのだ。

 

「いえ、止めても彼は聞かなかったでしょう。譲はそんな簡単に意志を変える人間ではありませんから」

 

 真一は絞り出すように言った。まだ4人いた頃のことを回想しているのだろうか。

 涙があふれ出してくる。

 

「「「「「……」」」」」

 

 この中にいた誰もが譲の死を信じられなかった。まさか勇者が死ぬとは誰が想像しただろうか。

 この沈黙は誰もが現実を受け入れられず、悲しみを感じられないのだ。譲はその木陰からひょっこりと顔を出すのではないか。そんな気すらする。

 真一達はそう感じていた。

 

 

 しばらく5人が固まっていると基地の演習場から複数の戦車や重砲が出てきて、一列に並んだ。そしてかつて戦場であったベラリン平原目掛けて、弔砲を打ち始めた。

 

 一発、二発……一九発。

 

 それは戦場に散っていた譲に対して行われた最高指揮官に対する弔砲であった。

 

 その時に出た黒煙は竜のように一本になって空へと挙がっていた。

 

 新庄は真一達から招集を受け、ベラリンへ到着した。

 新庄はコノミやキム爺の存在を真一に知らせており、今後のことを彼らと直接話し合う予定である。

 

「へ~、魔法がない人間はこうやって生活を営んでいるんだね」

 

 コノミは興味深そうにベラリンの町を見渡した。彼女らは魔法があるのが普通の空間で生活していたためにこういった町を見たことが無いのであろう。

 

「我が主と面会するのは1200頃の予定だ。それまでは自由にしていて良いぞ」

 

「新庄のおじちゃんはどうすんの?」

 

「俺は他にやることがあるからついて行けん」

 

「何やるの?」

 

 興味津々にコノミが聞いてくる。

 

「見に来るか?」

 

「うん!」

 

「おい、シム爺はどうする?」

 

「わしもこれと言ってやることはないし、お前らについて行くことにするよ」

 

 そう言って三人はベラリン郊外の第一独立師団基地に向け歩き出した。

 

 

 

「ここは……」

 

 コノミが声を落として尋ねた。

 そこは多くの白い石が立っており、その石には名前が刻まれている。

 

「ここ我が同胞が眠る場所だ」

 

 言葉少なげに語る新庄にそれ以上コノミが声を掛けることはなかった。

 

 新庄がやろうと考えていたのは墓参りだ。

 今までの葬式は新庄はコットン国にいた関係で参加できず、ベラリンに戻ってきて最初にやろうと決めていたことであった。

 

 その墓の中でも端の方の木陰にひっそりと佇む墓があった。そこには一輪の花が添えられている。

 

「……」

 

 黙ってそこまで行き、新庄は持ってきた手桶の水で墓を清める。

 

 ぱしゃっ ぱしゃっ

 

 水を掛ける音だけがそこに響いていた。

 

「誰のものなの?」

 

「我が主の尊き友人であった近藤 譲殿のものだ」

 

 コノミの質問に新庄は静かに答える。

 

 水で清めた後、持ってきた花を別の花入れに刺し手を黙って合わせる。

 

(譲殿、遅ればせながらただいま帰還いたしました。お守りすることができず、申し訳ございません。今後は全力で真一殿達をお支えしていきます。どうか安らかに)

 

 祈りを終え、新庄はコノミ達を引き連れ集団墓地を出た。

 

 

 再び町に戻った新庄達は、待ち合わせ場所である陸軍省の建物に向かった。

 

 現在、真一達が率いる第一独立師団は陸軍と同時に運用されることや作戦の連携の関係上近くにいた方が良いと言うことで、陸軍省の中に司令部がある形となっている。

 

 

 陸軍省の建物に着いた三人は身体検査や身分証の確認を終え、中へと入る。

 

 中は大きな広間が一つあり、天井や周囲の壁には絵画が飾られている。その広間にある柱に司馬懿が立っていた。

 

「これは司馬懿殿、どうも」

 

「これは新庄大佐。お元気そうで何よりです」

 

 簡単な挨拶をしたところで新庄は二人を司馬懿に紹介した。

 

「こちらの少女はコノミ、そしてこちらの方はシム爺です」

 

「これはようこそおいでくださいました。私は司馬懿と申します。どうぞ宜しくお願いいたします」

 

「宜しく!」

 

「宜しくお願いします」

 

 司馬懿は少しの間二人を見つめた後、二人を真一の部屋に案内した。

 

「こちらになります」

 

 一階の廊下にある一室に真一の執務室はある。

 

「司馬懿、入ります」

 

「どうぞ」

 

 案内された部屋を開けると部屋の奥に設置された机で真一が執務をこなしていた。

 入ってきたのが新庄が連れてきた二人だと気付いて、真一は執務を辞めて立ち上がる。

 

「ようこそお越しくださいました。どうぞおかけください」

 

 そう言って三人を部屋のソファーに案内した。

 

「本日は遠路はるばるありがとうございます。私はジーマン国独立第一師団師団長の秋山真一と申します。宜しくお願いします」

 

「わたしはコノミって言います!宜しく!」

 

「わしはシム爺という。宜しく」

 

「さて、今回は我が軍に協力をお願いしたいわけですが、あなた方からはコノミ殿に対する治療でよろしいですか?」

 

「ええ、構いません」

 

「分かりました。ではこの国一の腕を持つ医師に任せますので、どうぞご安心ください」

 

「かたじけない」

 

 そう言ってシム爺は頭を下げた。その顔はようやく緊張から解放されたような顔をしている。

 

「それでは司馬懿、コノミさんを病院へ」

 

「はい。分かりました。ではコノミさんこちらへいらっしゃい」

 

「え、でもシム爺が……」

 

「わしはもう少し話さなければならないことがある。先に行って待っておれ」

 

「うん」

 

 そう言って司馬懿達は出て行った。

 

「さて、いきなりだが、本題に入っていきます。シム爺殿、貴殿は我が軍に協力をしていただけるとのことでしたが、あなたには航空機の研究を行っていただきたい」

 

 真一はいきなり本題へと切り出した。

 

「分かっております」

 

「あなたが所持している航空機については既に我が軍の方で極秘裏に回収を行いました」

 

「ほう、手回しが早いですな」

 

 皮肉交じりにシム爺が言う。

 真一はその皮肉を無視して話を続ける。

 

「この航空機について話していきましょう」

 

 こうして真一達は史上初の軍用機の開発を目指していくための話し合いを始めるのであった。

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