「そうか。四人は大したことのない実力であったか」
コットン王は呟く。
「ええ。やはり、あれだけの人数となるとそのような人間も出てくるかと」
グールは抑揚のない声で話す。
「ならば、始末するか。これが内外に知れ渡れば我が国の面子に関わる」
王がそう言うと
「それはなりません。彼らのスキルは未知数であるとの報告が有ります。下手に手放すと貴重な戦力を失う事になります」
宰相であるツェッペリンが、話した。
彼は30歳の若さで宰相に着いた極めて優秀な人物で、建国以来の名宰相と唄われた人物である。
「しかし、これを放置するのは如何なものか」
コットン王が答えたのに
「我が国の面子と貴重な戦力、どちらが大切かお分かりになるでしょう。ここは面子は捨てるべきです」
「分かった。そうしよう、魔王と戦うときは戦力が多いに越したことはないからな」
「良いのですか、ツェッペリン様に本当の事を言わなくて」
グールが問いかける。
「彼らは優秀すぎるスキルを持っている。しかし、その強大すぎる力はいずれ我が国そして世界を滅ぼすだろう。ツェッペリンは、そこが見えていないし、見えていても感謝して利用すれば大丈夫だとしか考えられんだろう。奴は良くも悪くも信義を重んじ、情に流される人間だ。統治者は時に非情な決断を迫られる時がある。今のような乱世ならば、なおさらだ。再三それを言ったが、奴は直せなかった。今回のような非情な決断を奴は出来んだろう。ましてや、二十歳にも届かぬ子供を手に掛けるなどな」
そう寂しそうに呟くと、王は窓の外を見ながら言った。
「私は地獄に行くことになるだろう。しかし、それでこの国が救えるというなら悪魔にでもその魂を売ろう。あの子達には本当に悪いことをする」
そう涙した。
「その地獄行きに私もお供しましょう」
「いや、ダメだ。これは私が決断し、私自身の手で下さねばならん。」
「しかし…」
「ダメだ!」
今までで、一番の大声を上げた。
「それだけはならん。私が決めたんだ。これは私がやる」
そのあまりの怒気に飲み込まれ、グールは黙って一礼して部屋を出ていった。
その扉をしばらくコットン王は見つめて呟いた。
「お前が出ていった日もこんな感じだったな、リーフィアよ。」
召喚二日目、真一達は早速訓練に入っていた。もちろん、人によって実力に偏りがあることから実力別に4つのランクを設け、佐藤のように100越えの力を持つ者達のランク 90前後の平均的な力を持つ者達のランク 平均よりも下の力を持つ者達のランク それ以下の特別クラスである。これらはランクごとに別の訓練を行った。もう皆様お気づきであろうが、真一達四人は一番下の特別クラスである。当然、このランクに他の人は存在しない。
「さて、私が皆の教官を勤めることとなったキンニク ダイスキーだ。貴様らには、厳しい訓練をするつもりだ。ゆえに心して掛かるよう!以上」
真一達は、美人の教官がつくと思っていたばかりに朝一から士気は、一気に低下した。
「劉備様、呉軍が火計を仕掛けてきました!我が軍の被害、極めて甚大。兵の士気も急激に低下しております」
「な、何!」
「各部隊から撤退を求める伝令が相次いでおります!」
「お前ら、何をやっているんだ?」
キンニクの冷静な突っ込みという名の怒鳴り声に四人はうんざりしながら、訓練を開始した。
「ふぃ~、疲れたぁ。教官、鬼だぜ。いきなり城の周りを十周しろとか何キロあると思ってんだ。しかも、足を止めると貴様はアホだとか言ってくるとは。あいつハ○トマン軍曹かよ。」
幸一がぼやいた。
しかし、彼はまだ良い方である。真一と譲は話す余裕など無く、守に至ってはゴール遥か手前で倒れている。彼の安らかな眠りをお祈りしよう。
そんな彼らをキンニクは一瞥して
「今日は初日だからここまで!だが、明日からはもっと厳しくなるから覚悟するよう」
と述べてそこから去った。
「さて、これからどうする?」
真一が皆に問うと
「「「決まってんだろ、情報の収集だ!」」」
と威勢の良い声が三人分返ってきた。
「俺たちが使う武器で何が有効か、また何が無効なのか。更に弾薬を製造していることがあるかなどを調べる必要がある。そこで、まずは譲は地図を。幸一は魔法に関して。守は武器について。俺は歴史について調べる。些細なことでも良い、何か有れば、すぐ知らせてくれ」
真一はそう言うと早速背表紙の厚い本を手に取り、読み始めた。
「何か分かったことなどは有るか?」
日が暮れた頃に真一が問い掛けた。
「地理に関しては、この国は魔王領との境目に大きな山脈が三つ並んでそこからは平地だ。また、接している国は西に魔王領、北に機械国家ジーマン 東と南は海に囲われていることが分かった」
「続いて魔法に関してだが、特に致命的な物はなかった。ただ、大規模な爆発系の魔法や音を消すもの、幻覚を見せるものなど対策を練らないと厄介になるものはちらほらと。しかし、ここに書いていないヤバいものもあるかもしれないから、油断は出来ん。」
「武器は機械国ジーマンに戦車や戦闘機らしきものがあるようだ。ここは科学に関しては地球に近いものがある。弾薬などを補給するとなるとここだな。」
「最後に歴史だが、この国は昔から周辺国に攻められやすい国のようだ。建国以来、平和だったときのほうが少ない。それ故、周辺国とも仲があまり良くない。災害などは特に記述はなし。」
「となると、今度はこの情報が本当か嘘かを確認せねばな」
真一がそう言い、3人は目を合わせて同時に頷いた。
「何、どのくらい給金が支払われるかだと?」
「はい。将来のためにも今からお金の把握をしておいて損は無いかと」
城の周りを走り終え、休憩に入ったとき真一は聞いた。
「一様、今の段階では月に金貨3枚が支給される。これは庶民の平均年収が金貨6枚だから、かなりの高給取りだな。少なくとも俺にはお前らにそれだけの価値が有るとは思えんが。つまり、それだけ期待されてるのだから働けということだ」
そう言い放つと、更に一周追加という素晴らしいオマケをくれた。
「少なくとも今の時点で召喚できる人数は一人。となると、やはりスパイを召喚して機械国ジーマンを探らせるのが一番か」
「俺も同意見だ」
「異議なし」
「私も」
「では、誰を召喚するかだが良い意見は有るか?俺は、新庄健吉が良いと思うのだが如何かな?」
「誰だ、それ?」
真一の提案に守が聞く。
「米国の国力などを調べていた日本陸軍のスパイで情報分析能力に優れていた」
「今回は調べることも多いし、情報分析能力が高いのは良い。更に同じ日本人だから、考え方も近いから良いんじゃないか?」
「スパイに関しては、よくわからんから文句は言えん」
「同じく」
「よし、では召喚するぞ」
そう言い、召喚を始めた。
と言っても大それたことをするわけでは無く、その人物を思い浮かべながら「出でよ」というだけである。
「出でよ」
すると部屋が青く光り、煙が立ち込めた。
そして
キュン
何かを放ったような音がしてその煙の中から一人の男が現れた。
「大日本帝国陸軍主計大佐 新庄健吉 到着致した。」
それは歴史の大きな転換点になる人物が放った最初の一言であった。