「それで本官の力を借りたいと」
真一は今までの経緯を説明した。
「良いでしょう。どうせ一度は死んだ身、それをもう一度使っていただけるというのなら喜んで協力しましょう」
「ありがとうございます」
「それで本官の任務とは?」
「機械国ジーマンの軍事力などについて、また魔王軍に関しての情報を収集して頂きたい」
真一がそう言うと守が
「一式一号印字機、Fu2出でよ」
と言い、対象が召喚された。
一式一号印字機は、日本帝国陸軍が開発した暗号機械で、1945年8月1日から使用が開始したもの。仮名と数字を打鍵して2数字に暗号化する。
また、Fu2はドイツ軍の無線機で、背負い式のものでモールス信号で16キロ有効に利用できる。
「この一式一号印字機とFu2を使用して3日に一度の間隔で情報を連絡してください。これらの説明書はこちらに。こちらの袋には金貨6枚があります。そのうち必要経費として金貨4枚、残りの金貨2枚はご自由にお使い下さい」
「分かりました。有効に使わせて頂きます。それでは、早速出立させて頂きます。」
「では、3日後にまた」
「これで、情報の問題は一段落した。ただ、本当の戦いはこれからだな」
「うむ。コットン王国は完全に信用できない。ゆえに我々は独自で情報を入手せねばならなかった」
幸一と守がそう話している
「いっそのこと、軽く情報をリークして向こうの出方を見てみるのは?」
と真一が問いかける。
「それは良いかもしれん。だが、どうする?」
「私に策がございます?」
いつの間にか出した羽扇を持ち、某軍師の格好をした真一が臣下の礼を取りながら言った。なかなか、用意周到な人物である。
「能力についてで相談があるだぁ?」
訓練の始まるときに、真一はキンニクに臣下の礼を取りながら、
「私は軍人を守が兵器を召喚することができ能力がございます。故に、軍隊を召喚することも可能であります。ただ、その軍隊の維持、および整備などは能力の範囲外でありますゆえ、そこら辺に関しましては国王陛下の方でお願いしたいのですが」
そうキンニクに具申する。
「つまり、王国の兵力をお前一人で増強できると言うか。ずいぶんと大層な能力だが、軍人とはお前達の世界の者か?」
「はい。ただし、兵に関してはこちらで指揮させていただきます。そちらの軍と混ぜては指揮系統が混乱いたしますので。もちろん作戦目標に関しては、そちらで指示してください。この兵は剣や槍、弓矢などを装備した者たちでございます。必要とあらば、将軍達を呼び寄せることも可能です」
「わかった。これは俺の一存では決められんから国王陛下に伝えておこう」
「何卒、よろしくお願いいたします」
「で、その格好は何だ、真一」
「これは我が世界の有名な軍師が着ていた着物にございます」
「それで訓練にのぞむと申すか、貴様」
「これは気持ちの問題にございます」
「そうか。それは素晴らしい。では…」
「おい、あいつまだ腕立てやっているぜ。しかもなんだあの服」
「教官が良いと言うまでやっていろだとさ。あの服は勝負服らしいよ」
この日彼の部屋に帰る姿を見た者はいない。ただ、次の日彼の部屋から恐ろしいうめき声が聞こえたという。
「真一、お前の意見が通った。城の庭で召喚しろ。兵力は1万、将軍もつけろだと」
「分かりました」
「それでは召喚を始めさせていただきます。将軍は李典という者です」
「武器は騎馬隊2千、盾隊1500、歩兵5千内、槍が2千で剣が3千です。弩隊1500という兵力になっております。弩とは弓を新兵でも使いやすいそうにしたものと考えてください。武器はこちらにございます」
「分かった。では、始めろ」
「李典および、一万の曹操兵よ、出でよ」
すると霧が発生し、中からたくさんの兵士が現れた。
「李典以下1万の軍、ここに参上いたす」
そこで早速事情を説明し、無事協力を取り付けた。
李典
字は曼成 曹操に仕える。文武共に優れ、数々の戦いで功績を挙げても謙虚な姿勢を崩さなかった人物である。
その晩
「策はうまくいったな。後は、王国があの兵力をどう扱うかだ」
「そのためにも軍師を一人呼んでおこう。」
「そうだな。司馬懿はどうだ。三国志一の名軍師だし」
「それが良いな」
真一達は呼ぶ軍師を司馬懿に決定した。
「司馬懿よ、出でよ」
「司馬懿、ここに参上した」
男にしては妙に甲高い声がした。真一達は四人して顔を見合わせ出てきた人物の顔を見た瞬間に驚愕した。
「「「「女ぁ?」」」」
そこにいたのは背の小さい大きめの服を着た黒髪の美少女だった。
司馬仲達。
その名は三國志を語る上で欠くことのできない人物である。三国時代に終わりを訪れさせた。江内群温県考敬里出身で曹操に仕えたが、その能力のあまりの高さから曹操から忌避されている。また、諸葛孔明のライバルとされて五度に及ぶ孔明の北伐を凌ぎきった。その後、幾多の戦いを勝利へと導いた仲達だが、魏内部の政争に巻き込まれ、呆けたふりをして相手を油断させ一瞬の隙を突いて軍事クーデターに成功。魏の全権を握り、後の孫の司馬炎が作る西晋の礎を築いた。
「司馬懿が女だったとは…」
「僕が女だと都合が悪いのか?」
「いや、司馬懿は男の人として描かれているからな。予想外で」
「ああ、曹操が女好きだったからな自分が女だとばれると面倒くさかったから、男装をしていたのだよ」
「なるほど。それを勘違いした人が歴史書を作ったから司馬懿は男として描かれたのか」
「そういうこと。ところで、僕を呼んだのは何でだ?」
「これから確実に戦争が始まる。そのときには軍師が必要なこと。それからこの国が信用できないから、そうした面でも頭脳派が必要だったから」
「分かった。協力しよう。魔法の国とか面白そうだしね」
「なぜ、魔法の国だと分かったんだ?俺はそれに関してはまだ何も言ってないはずじゃ…」
「何、簡単なことだよ。死んだはずの人間を呼び出すのはできない。それができると言うことは技術の進歩か魔法かのどちらか。ただ、この部屋を見る限り、それほど技術的な進歩は見られない、もちろん多少は進歩しているが死んだ人間を呼び寄せられるほどではない。ということは魔法しかないということだ。それにさっきから窓の向こうで魔法らしきものが見えるしね。」
そう言って司馬懿はカラカラと笑った。
真一達が窓の外を見ると確かに佐藤達ハーレム軍団がとんでもない大きさの火の玉を吹っ飛ばしているのが見えた。
とはいえ、さすが司馬懿である。これだけの情報を一瞬で整理し予測を立てるとは。その能力の高さを見せつけられた真一達は改めて驚愕した。
「そろそろ報告の時間だな」
真一がそうつぶやき、守がFu2の前に座った。
「何だい、それは?」
司馬懿は興味津々でFu2を見た。
「これは無線機というもので遠くの人とすぐに連絡を取り合うことのできるものだよ」
「そいつは便利だな。僕の時代にもあればもっと犠牲を減らせたのに」
そう言って司馬懿は暗い顔をした。
そんな司馬懿に声をかけられる人は誰もいなかった。
「来ました!」
鋭い声で守が叫び、内容を書いていく。
しばらくすると、守が鉛筆を置いた。
「どうだった?」
真一が聞くと守がメモした紙を黙って渡した。
「これは……」
その内容に皆が凍り付いた。
そこに書かれていたことは
魔王軍進行せり 目標はコットン王国 追って詳細を連絡す