インフィニット・ライジング 外伝 願い星   作:アドゥラ

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非常に長い間待たせてしまってすいませんでした。
詳しいことはここでは語らず、活動報告の方に書いています。


NEXT EPISODE .01

 思えば後悔ばかりの人生だったんだと思う。

 気が付けば大切だった人と戦っていて、からまわって、自分でも何がしたかったのかわからなくなっていた。

 そもそも、私が欲しかったものは何だったんだろうか。

 一夏が欲しい――いや、正確に言えば私自身の身を預けられる場所が欲しかっただけなのかもしれない。

 心の拠り所と言ってもいい。ならば一夏にこだわる必要はなかったんだろう。だが、私は不器用であったためにずっと固執していた。それが私が道をたがえてしまった原因。

 結局のところ、変わるべきは自分だったのだ……それに気が付いたときはもう遅かったし、後戻りもできない。

 あの戦いから数年が経った。

 ムーでの決戦の影響は世界各地に残っていたし、一時期は文明そのものが後退するのではないかとも言われていたのだが……人間という生き物は思っているよりもタフらしい。すっかり元の生活を取り戻している。いや、ISコアが男性でも運用可能になったり、ロックシード研究の副産物などで更に発展を遂げているのだから呆れてしまうほどだ。特に日本の復興スピードはおかしい。あそこだけ早送りなのではないかと思ってしまった。

 それでも世界各地に問題が残っていないわけではない。インベスはいなくなったわけではなく、いまだに湧いてくる。そう、『湧いて』くるのだ。

 ヘルヘイムとは死後の世界――最初に黄金の果実を使った人物が作り上げた、死者を縛り付けてしまう世界。それを解放したのはいいが澱みのようなものが生まれてしまったためにインベスがこうして湧いてくるようになったのである。もっとも、オーバーロードのような規格外は生まれないし大型インベスも滅多にでてこない。侵食性もなくなっているから以前よりかは対処のしようがある。ISどころか通常兵器でも倒せるというのは大きい。

 それでも人の手が届かないということはある――だからこそ、私はその穴を埋めるために旅を続けているのだが。

 

「ハァアアア!!」

 

 大型インベスも滅多にでてこない――つまり、全くないわけではない。私が今戦っているのは巨大なイノシシの形をしたインベス。突進ぐらいしかしてこない奴だが、野放しにするのも危険だ。

 近くには小さな村があり、そこまで来られると大変なことになる。

 

【ブラッドオレンジスカッシュ!】

 

 刀身に集まるのは血のように赤いエネルギー。出力は以前の黒いオレンジよりかは下がっているが……アレに頼っていたのは私が未熟だったから。

 エネルギーを圧縮させるようにイメージし、一気に肉薄する。

 所詮は武器。使い方次第でその効果はがらりと変わる。切れ味は去年の倍以上。

 インベスは爆発とまでいかなくとも、すぐにこの世界から消えていく。疲れもしないが……正直、そのことで気がめいってしまう。

 

「……技術ばかりが上がっても仕方がないのだ…………心構えを鍛える旅だというのに」

 

 どうしようもなく、私が人をやめた存在であるということを再認識するばかりなのだ。

 ため息をつきたくなってしまっても仕方がないと思いたい。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 地球の未来を賭けた戦いからどのくらいの月日が経ったのだろうか。オーバーロードという名の化け物の領域へ踏み込んだ私はあの時から成長が止まってしまっていた。

 永遠の16歳の体。あの事件から立ち直っていく世界を見るたびに、私の呪いがどれほど恐ろしいものなのかを痛感してしまう。

 ショーウィンドウに映りこんだ私の姿は一夏たちと共に過ごしたときのまま変わらない。彼らはもう学園を卒業したころだというのに……結局、私は何がしたかったのだろうかと考えてしまうのだ。

 

「考えても詮無き事。もう過ぎたことなのに……な」

 

 あの頃はただ、頭の中に響いてきた声に従っていればそれでいいと思っていた。そうすれば余計なことは考えずに、自分の欲しいものが手に入るのだと信じて。

 しかし、それは間違いだったのだ。結局のところ行動を起こしたのは私自身。ならば、今この状況は私の心の弱さが生み出してしまったものなのであろう。だからこそ、私は世界中を回って私自身を鍛え直し、何か答えのようなものを探している。

 しかし、目的地などもあるとは言えず、ただ気の赴くまま世界を見て回る旅……初めのころは国際指名手配されていることもあって気の休まる暇もなかったが、慣れてしまえば周りを見る余裕も出てきた。

 裕福な国を見た。貧困に困っている国を見た。治安が悪く、今だにインベスを使っている者もいた。

 幸いにも私には物理的に解決できるようなことなら大概のことは何とかできる手段があるため、各地のインベスの残りを処理したり、紛争地域で被害を受けている子供たちを助けたりと償いの様な事をしている。

 それでも……私のやったことは許されるのかと言えばそうではないのだろう。私自身は誰も殺していなかったし、罪と言ってもせいぜいが亡国機業に加担した重要参考人程度……と英さんたちは言ってくれたが、私自身の意思で一夏たちと戦ったのもまた事実。それに私は誰も殺していないのではなく、誰も殺せなかったのだ。

 

「結局、どこまで行っても未熟者ということか……」

 

 力も足りなった。心も未熟。結局のところは私の弱さが原因である。それに、国際指名手配されているのは私が半分程度とはいえオーバーロード化しているからであろうに……あの義兄は肝心なところでうっかりする癖がある。

 ふと、視線がいくつか私に向いているのに気が付いた。

 

「…………まったく。人のことは言えないな」

 

 私自身も少々うっかりしていたらしい。

 どうやら、私のことをかぎつけた連中に見つかったようだ。さすがにあちらも町中でことを起こすつもりはないらしい。少し走れば砂漠地帯に出られる。砂漠というよりは岩肌と言うべき場所だが。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 ここならばいいだろうと、走るのをやめて振り返る。目の前に現れたのは武装した男が三人……しかし、あまり特殊な兵装とは思えないが……どういうことだろうか?

 

「へへへ……お嬢ちゃん、君みたいな可愛い子がこんなところにいちゃ危ないよぉ」

「そうそう、おとなしくしていればひどいことはしないからさ」

 

 なるほど……最近、このあたりに出没していると噂の人さらいの類だったか。しかし、気配に気が付いてわざわざこんなだだっ広いところまで逃げるわけもないと思うのだが……いや、観光客狙いか? それともただのバカか。

 ちなみに、オーバーロード化した影響で私はどんな国の言語でも聞き取れるようになっているし、話せもする。

 

「こんな上玉滅多に会えるもんじゃありませんぜ兄貴。売り飛ばす前に味見ぐらいいいっすかねぇ」

「まてまて。そいつはボスが決めることだぜ……もっとも、調教はしなくちゃいけないからどのみちお楽しみの時間はあるけどな」

「お嬢ちゃんおっぱい大きいねぇ……ぐへへ」

 

 なるほど、後者(バカ)か。しかし、こいつらのバックにはなかなか厄介な奴らがいるらしい。腰に下げている錠前が目に入った瞬間、私は自分の腰にあるものを取り付けた。

 

「さーて、なるべくなら怖い思いはさせたくはないんだけでも抵抗されたら困るし……でてきな!」

 

 インベス。そう呼ばれる化け物が空中に出現した穴から飛び出してくる。かつての事件でヘルヘイムそのものは消滅したわけではない。その力は月と太平洋上の新大陸に存在し続けているのだ。

 故に、インベス自体もまだ存在しているし錠前――ロックシードの力で呼び出し、操ることもできる。

 

「さーてお嬢ちゃん、痛い目を見たくなかったら抵抗しないでくれよ」

 

 しかしこいつも白々しい嘘をつくものだ。

 抵抗しないで欲しいというが、顔は抵抗してくれと言わんばかりのいやらしい笑みを浮かべている。こいつは本質的に他者をいたぶることに快楽を見出している手合いだ。しかも、もう救いようのないレベルの。

 まったくため息が出そうになる……自分のことを棚上げするようで嫌だが、私自身だってここまでひどくはなかった。一応、内心罪悪感はあったのだ。

 このままわざと掴まって奴らのアジトに潜入するのもいいかとも思ったが……

 

「ぐへへ……じゅるり」

 

 うむ。問答無用で叩き潰す。もちろん、アジトの場所を吐かせるが。

 私は懐から取り出したロックシードを開錠し、ドライバーへセットする。

 

【ブラッドオレンジ!】

「――なっ!? そ、そいつは!?」

「気づくのが遅すぎだぞバカ者どもが……もっとも、末端のようだし仕方がないことか」

 

 一気にブレードを叩き、ロックシードの力を解放する。

 同時に空中にあいた穴から赤色のオレンジのような塊が降りてきて、私の頭に装着される。体には光と共に深い紺色のスーツが装着されていき、私自身を強化していく。

 

【ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!】

 

 かつて、私が旅立つときに貰ったロックシード。彼が昔使っていた物のレプリカであり、遜色のない性能を発揮している。

 みたところ奴らが呼び出したのはまだ初級から進化したばかりのようなインベス。これなら普通に素手でも勝てたかもしれないが……生身で戦うと誰かに見られたときがマズそうである。この姿なら一応は言い訳が効く。

 奴らは驚いているが――すぐに武器を構えて私に向かって放ってくる。どうやらマシンガンや手榴弾ぐらいしか装備が無いらしいが、その切り替えの早さは認めよう。

 

「くそっ! 仮面ライダーだなんて聞いてねえぞ!!」

「いいから撃てよ! いくら仮面ライダーだって言っても所詮はただの人だし、あのスーツも機械だろ!! ISみたいな絶対防御があるわけじゃな――」

 

 生憎、ただの人ではないのだがな……それに、ドライバーの開発者やその子供にどこかのウサギもその対策を考えていないわけがない。

 お前らが取るべきだった最善のさくは、インベスを突っ込ませて私と戦わせている隙に手榴弾で目くらましをするというのがベストだった。

 切り替えは早いが……おつむの方は足りていないな。

 

【ブラッドオレンジスカッシュ!】

 

 1分、かかったかどうかというぐらいで私はインベスを倒し、三人を制圧してしまった。

 …………物足りないと思ってしまったのは、私が未熟者だからだろうか。

 

 ◇◇◇◇◇

 

ぶびばべんでじだ(すみませんでした)

「これに懲りたら、もう二度とこんなマネしないでまっとうに生きろよ……さもなくばどうなるか、わかっているな下種ども」

「「「へ、へい姐さん!!」」」

 

 誰が姐さんだ誰が……そういうのは某ブリュンヒルデがするべきなのだ。最近色ボケしていると噂のあのブリュンヒルデが…………いや、決して妬ましいとか信じられないとかそういうわけではなく。

 いかん。話がそれた。

 

「それで、お前たちのアジトの場所は本当にあっているんだろうな?」

「へ、へい……ここから南に20キロほど行けば廃墟になっている町があると思うんすけど、その中の青色の建物が俺たちのアジトっす」

「しかし姐さん……そんなこと聞いてどうするんで?」

「決まっているだろう――お前たちみたいな女の敵のアジトなど殲滅する」

「「「……」」」

「お前たちは運が良いな。今後償うというのなら、ここで見逃そう――今は一分一秒も惜しいからな――しかし、またバカな真似をするようなら地獄の底だろうと追いかけて男の尊厳が守られないような場所に放りこむぞ。具体的にはハードなゲ――」

「「「精神誠意心を入れ替えて真面目に取り組む所存であります!!」」」

「ならばいい――ではな」

 

 サクラハリケーンを起動させ、私は目的地に向かって進みだす。

 奴らの話ではすでに何人か捕えられた人がいるらしい。まったく、下種な連中のすることは……

 

「いや、まだ私自身下種な連中と同類のままか」

 

 そう自嘲し、私は目的地へと向かう。

 こんな私でもできることがあるのだから、今はそのできることをするべきなのだから。

 




色々と忙しいのもあり、更新は不定期になると思いますが、一応プロットも納得のいく形になりましたので、次話はなるべく早く投稿します。
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