羽撃け! ヒーローアカデミア!   作:那由多数多

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キャラがやっとご登場!
今回、途中キャラクターの視点が入ります。


第2話:考えずに飛び出しました

 実技試験に受験生達が奮闘しているのと同じ時間、別の場所。巨大なモニターに映されている模擬市街地の光景の中に居るのは、まさしくその奮闘中な生徒達の姿だった。

 

「さて、この巨大敵に対してどう出るか」

「骨のある子はいないかねえ」

「圧倒的脅威ってのはやっぱり本性出すには丁度いい……ん?」

「珍しいな。誰か逃げずに向かって行きましたよ」

「ただの無鉄砲か、もしくは実力あっての行動か……どちらでしょうね」

 

 残り時間は、後わずか。

 脅威にさらされ、浮かび上がるものは果たして何なのか。

 

 

 

 

迫り来る巨体の全貌を把握しようと上空を目指してみたものの、途中で気がついた。

 

『あ、ヤバいわコレ』

「何がヤバいんだ?」

「今手で攻撃されたら避けれない」

 

まだ巨大ロボがこちらに顔部分(かどうかは怪しいが)を向けていないので気がつかれていないのが幸いだが、気付かれてしまえばハエ叩きの如くはたき落されたりしてもおかしくない事に今更気付いてしまった。いくら考えるのは苦手だと自覚していようと手遅れになってはなんにもならない。ぶっちゃけこのままではヤバい。

 

『体制立て直しけってい! アレの死角からちょっと様子見だー!』

「残り時間少ないぞ。多分2分くらいだ」

『うん、だから時間は30秒ね!』

 

 幸いまだ相手の視界に入っていなかった為そのまま半壊したビルの一部分に足を降ろした。勝機は今の所、全くない。

 カシワに替わっている身体は身体能力が数倍近く上がり、対人戦にはとことん強い。が、弱点はあった。

 

 一つは、鳥類をベースに構成されているカシワの身体は、実は人並みに脆い。一般的な鳥類は飛行能力に特化した身体の作りをしていて、故にその骨格は軽く、脆い。もちろん、ヒーロー志望としてケイはしっかり身体を鍛えてはいて、その効果はカシワに替わっても連動し残っている。しかしそれでも人並みの範疇を超えていないのだ。なので明らかにパワーでごり押ししてきそうで、丈夫そうな目の前の巨体とは相性が悪い。一撃でも食らってしまえば三途の川とやらが見える可能性はバリ高である。

 

『夜じゃないのが幸いかな……』

 

 もう一つの弱点は単純だ。鳥目になるので暗闇での戦闘が一気に不利になる。暗視ゴーグルでも使えばまだマシになるのだが、如何せんこの仮想(ヴィラン)相手に暗闇で立ち回る事態は想像したくない。ケイは今が昼間である事に心から安堵していた。

 

「もう時間がないぞ。どうする?」

『ううう、せめて倒せないにしても動けなくしたいけどそれも難しいなあ。機械になんて詳しくないし……』

 

 倒せるパワーはない。もし攻撃を喰らえば後がない。詰んだと言っても可笑しくない状況だ。

 それでも何か、できやしないだろうかとカシワは0P(ポイント)に破壊される模擬市街地の様子を見下ろし……

 

 

 

 目に入った、巨大な瓦礫の落ちる先に向かって、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある受験生side

 

 

 向いてないけれど、ヒーローに憧れてしまった。だからここに来たのだ。

 ほとんど対人にしか効力のない個性である自分ではこの試験に受かるなんて無理だと少年は軽く絶望した。そういった可能性を予想してなかったわけではなかったが、やはり落ち込んでしまう。だから、仕方なく仮想(ヴィラン)のロボットから逃げまくっていたのに……。

 

「(油断とかじゃないけど、やっちまったなあ)」

 

 無駄にすばしっこい1P(ポイント)から逃げまくっっていたところにあの0P(ポイント)が現れた。間の悪いことに、少年が逃げていた進行方向にだ。少年を負ってきていたロボットは巨体が壊したビルの瓦礫に巻き込まれて潰れたから結果オーライと言えるが、そんなことよりもっと危険な状況に追い込まれていた。

 

「脚全滅かよ……」

 

 所々で起こる破壊の衝撃に巻き込まれ身体ごと吹っ飛んんでしまい、しっかりした着地もできずに両の脚がやられてしまったのだ。幸い全く動かせない程ではなかったが、すぐそこに迫る巨体からすぐに逃げる事は不可能だ。

 無茶な試験だと思ってはいたが、少年にとってはそれを通り越して無謀でしかない試験だった。筆記には自信が持てたから、なおさら叩き落とされた気分だった。

 そして今現在、少年は命の危機に落とされている。

 きっと、強化系なんかの個性だったならこんな事にはならないんだろうなんて、今思っても仕方がないかもしれないが。

 

「(ハハっ……来世に期待しろってか?)」

 

 卑屈になってる場合じゃないが、嫌でもそんな考えが浮かんでしまった。

 

 その時だった。

 

 頭上に影が差したと気がつき、少年が上から降ってきていた巨大な瓦礫を目に入れた、数秒後。

 少年は何かに引っ張られ、その場から投げられた。空中で目にしたのは、翼を生やした人間。

 

「なっ、危なっっ!!!」

 

 少年が思わす叫んだ言葉が続く事はなく、その人物が瓦礫に蹴りを入れると同時に少年の身体が地面にぶつかり着地した。地面に打つけた背中に痛みが走る。

 だが、今はそんな痛みにかまっていられない。

 

「おいっ! おいっっ!! 返事しろ!!」

 

 叫んでみるが返事はない。少年は痛む身体に鞭打って地を這って、自身が先ほどまでいた場所へと必死に向かった。

 

「(くそっ! せめて生死だけでもわかれば……!)」

 

 一瞬の出来事だったが、自分があの翼を生やした人物に助けられたのだという事は確かだった。ここにいるという事は同じく受験生なのだろう。つまりは一応ライバルだ。しかし、少年は確かに身動きが困難な状況で、あの瓦礫から救われたのだ。

 相手がどうあれ、いきなり出てきて助けてもらった相手が生死不明だなんてたまったもんじゃない。

 

「おいっ! 死んでないだろうなっ!!? おいっっ!!!」

 

 落下した衝撃で崩れた瓦礫の周りに煙が舞っている中、叫びながらそこに近づく。すると、ようやく望んでいたものが返された。

 

「……無事、か……?」

 

 やっとおさまってきた煙の中から、傷だらけの、それでも生きている人間の姿が現れた。少年はとりあえずその人物が生きていた事に安堵したが、相手の姿を見て表情を歪める。

 

「ソレ、こっちのセリフだよ。つーかあんたの方が重傷だろ」

 

 よく見ないでもそれはわかった。背にある翼はボロボロで、頭部からは血が流れている。少年が言葉を返している間に自力で立ち上がった様子からして、少年とは逆に脚に怪我はないらしい。

 

「無事、か」

 

 そう言って笑った目の前の人物に感謝すべきなのは確かなのだが、自らは血を流しながら言うことがそれかと少し呆れ、同時にこういう奴がヒーローになれるのかなとも少年は思った。

 

 

『『終〜了〜〜〜!!!!』』

 

 響く試験終了の言葉と同時に、今の今まで動いていた0P(ポイント)が動きを止めた。そういえばまだ安全とは程遠い所にずっといたのだと思い出したが、少年の目の前に居た彼はほっと息をついた。

 

「これ、でゆっくり、移動、できる……引きずって、いいか?」

「……あんた、俺を気にして逃げなかったのか?」

 

 ほとんどの生徒が身の安全を考えて撤退していたはずなのに、気が付かれていないとはいえ0P(ポイント)の足元付近にいた少年を助けたと言うことは、あの場所近くにいたと言うことだ。

 

「アイツ、倒せ、ないか、少し見て、たんだ……気付けて、よかった……」

 

 そう言って、地面を這っていた姿勢のままでいた少年に歩み寄ってきた。

 

「遅れて、ごめん、な? 荒っぽく、投げたから……」

「……かっこいいね、あんた。俺が女なら惚れてるかもな……って、ちょっと待て。何しようとしてるんだよ」

 

 まさかと思っていたが、近寄ってきてそのまま少年を背負おうとする恩人に待ったをかける。

 

「……? 運、ぶ」

「頭から血を流しながら運ばれたくないって。多分、人数確認して探しに来てくれるだろうからちょっと待とうよ」

 

 こんな無茶な試験を敢行しているのだ。こういった重傷人が出た場合の対策があってのことだろう。そう考えたことを告げると、納得したように頷き、その場におとなしく座り込んだ。歩けはしたが、やはり辛かったらしい。

 

「……ポイント、不安だ」

「あー……まあ、うん」

 

 独り言だろうか、聞こえた言葉にはなんとも返せない。自身は何の成果もなしで、この恩人は恐らく合格かどうか不安になる程度にポイント自体は取れたという事なのだろう。少年は、何の言葉もかけられない。

 

「ポイント、もらえ、ないかな……」

「……そうだよな。命からがらの重傷、負ったもんな」

 

 こんなにボロボロになったのだから、それに見合う結果が欲しいと思うのは当然のことだ。つい先ほどまで少年自身が感じていた悔しさがぶり返しそうになった。

 そして言葉が続けられた。

 

「未来の、ヒーロー仲間、守ったポイント、ないかなあ……」

 

 恐らく、何気ない一言だった。

 

 

 

 その後、予想通り余裕のあったらしい生徒が探しに来てくれて、そのまま二人をリカバリーガールの所へと運んでくれた。治癒に体力を持って行かれて彼、否、彼女はそのまま眠ってしまった。

 あとはこちらに任せろと帰宅を促され、先に回復した少年は疲労感を身に帰路に着いた。

 

 

 

 

「ヒーロー仲間、ね」

 

 何気ない、それこそ何も考えずにつぶやかれただろう言葉だ。

 けれど、そうか。そういえば、まだ未来はあったっけ。

 

「(……普通科からヒーロー科、移れたよな)」

 

 忘れそうになっていた希望らしき事実を思い出し、少年___心操人使(しんそう ひとし)はなんとなく顔を前に上げてみる。

 次に会えたなら、言いそびれた言葉を言わなければならない。

 

 

 突如現れ、血を流し、ボロボロになった人物。

 とんでもないお人好しで考えなしで、カッコよすぎるやつだった。

 

 

 





彼と呼ばれたカシワについて:ケイの身体は変形してます。


少年について:あの個性でロボット相手じゃ逃げるのも大変だったと思うんだ。
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