あの日、あの時、あの人の短編集   作:鈴木シマエナガ

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お好きな声優、キャラで脳内再生どうぞ。そして、お久しぶりです。


電話彼女 case1『帰省中の地味っ子彼女』

『...あ、もしもし? 私、私だよー? 元気してる? って言っても、こっち来てから半日しか経ってないけどね、えへへ』

 

『ん? そーだねぇ...田舎だからほんとに何にも無いんだ。何にも。車で通るとこ畑、田んぼ、畑、田んぼ...時々家があるくらい。景色が全然変わんなくてね、飽きて寝ちゃったよー。私達の住んでるとこもそんなに都会じゃないって思ってたけど、ここと比べたらどこも都会かもね』

 

『こっちに居るのは3日くらいかなー。お盆になると、いつも親戚皆集まるんだー。皆でお寿司食べたり宴会したり...まぁ私は端っこでちょこちょこ摘まむだけだけど...え? 好きなの? んー...サーモンとかかなぁ。あ、君と一緒に食べたとろサーモン! 美味しかったねぇ』

 

『あとは皆お酒飲んだりしてるよー。子供は結構暇だね。ちっちゃい頃はスマホもゲームもなくて、ひたすらゴロゴロしてたり寝ちゃったりしてたなぁ...今は、君とこうして電話出来るから、暇な時間なんて無いね...あ、迷惑、だった...? ほんと? 良かったぁ』

 

『君とこうして電話出来るなんて、夢にも思って無かったよ...今も、ちょっと夢なんじゃないかなって思うんだ。君の声が、こうして耳元で聞こえるなんて...あの頃の私だったら、鼻血吹いて倒れちゃうよ...今も時々出るけど』

 

『ほんとだよー。君の声が、私の耳元で聞こえるんだよ? 嬉しさと幸せでもうおかしくなりそう...えへ、嘘じゃないってば』

 

『え? 私結構喋る? ...君だからだよ。他の人とは緊張で全然喋れないけど...君とは、いっぱいお話したいから、いっぱい喋るんだ。緊張するし、胸のドキドキ止まんないけど...それ以上に、君とお話したいから...』

 

『え、可愛い? えへ、えへへ...そんな照れちゃうよ...じゃあもっといっぱい喋るね。そーだなー...あ、蝉の声がいっぱい聞こえるね。みーん、みーんて。ここ結構カブトムシも採れてね、虫いっぱい居るんだ。あ、居たら写真撮って送ってあげるね。君、カブトムシとかそういうの好きだったでしょ?』

 

『あー...んーとね、君が友達とムシキ○グの話してるの、聞いちゃってさ...いや、盗み聞きするつもりは無くてね...その、お話したいなーって思ってたんだけど、緊張して声掛けられなくて...えへへ、お恥ずかしながら...』

 

『うん、見つけたら教えるね。後は...んーと...あ、私が昔通ってた小学校があるんだー。私、中学生からそっちに引っ越してね。だから小学生まではこっちで暮らしてて...全然人居なくてさー、多分1クラスしか無かったんじゃないかな。そっち行ったら人多くてびっくりしたんだよー』

 

『多分そこで私の人見知りが発動してね...まぁめでたくぼっちになりましたと。いやぁ懐かしい話ですよ...でも、君が居てくれたんだよね。二年生の時だよね? 初めてクラス一緒になって、隣の席になって...初めは凄く怖かったんだよ? ほんとだよー』

 

『仲の良いグループはクラスの中心だったし、君、明るくてカッコいいから...私とは、住んでる世界が違うんだなーって、ずっと思ってた。君が校庭で友達と遊んでる時、私は図書館で本読んでたんだよ。いつも図書館の窓から君の事眺めてたっけ...』

 

『...あれ、話した事無かったっけ。そうだよー、ずーっと見てたんだよ、君の事。サッカー上手かったよね、ずばずばーって抜いていって、シュート!! かっこ良かったなぁ。汗いっぱいかいてさ...その頃から、好きだったんだよ、君の事』

 

『...君は、いつからなのかな...私の事、す...好きになったの...って...わ、ごめん、恥ずかしい事聞いちゃって...嫌だったら、答えなくても...え、隣になった時? ひ、一目惚れ!? う、嘘でしょ!? だって、私...髪とか全然整えてなかったし、暗かったし...ぼっちだったし...』

 

『...き、綺麗? 私が? ...うー...君は何回私をドキドキさせれば気が済むのさ...こんなんじゃ心臓持たないよ...え、ちょ、駄目! もっと言って! 止めないで! ...そういうの、言われるのは、嬉しい、から...』

 

『よ、欲張り? い、いーじゃん! 私だってか、彼氏さんからそういう事言われたいよ! 私だって女の子なんだもん...恥ずかしいけど...何か、むずむずするっていうか...こそばゆいっていうか...嬉しい、というか...』

 

『...!! 可愛い? 世界で一番? うーーーーー...きょ、今日はお仕舞い!! 今日はもうお腹いっぱい!! だって...そういうの、いっぱい言われたら、慣れちゃうかもしれないでしょ? 慣れちゃったら、もうドキドキしなくなるかもしれないし...そんなの、嫌だから』

 

『君には、いつだってドキドキしてたいの。君と会える事が、お話出来る事が...付き合える事が、私にとっては奇跡みたいな物だから。それに、慣れちゃいけないんだよ。うん...だって...いや、何でもない』

 

『あ、着いたみたい。じゃあ一回電話切るね...また、後でかけてもいい? ...ありがと』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『...あ、もしもし? 五時間ぶりだね。親戚に挨拶しに行ったり、荷物整理とかご飯食べたりしてたら遅くなっちゃった。そっちはもうご飯食べた? 君偏食だから心配だよー。...えへ、彼女ですからね! ...将来的に、そういう事も考えなくちゃかもだし...あ、そうそう。こっちはまたお寿司でね、サーモンいっぱい食べたよー。...え、四個、くらい...?』

 

『あはは、やっぱ少ないよね...雰囲気もあるかもだけどね。ちょっとお酒飲んだテンションの大人には近づきたくないよー...怖いし。今は縁側で星を見ながら電話してるんだ。凄い綺麗なんだよ...そっちじゃ見えない星が、ほんとに明るく見えるんだ。...君にも、見せてあげたいな。あ、写真撮ろっか? ほんとに綺麗なんだよ。』

 

『よいしょ...うん、撮れた。そして送って...どう? 綺麗でしょ? 夏はやっぱりさそり座と夏の大三角形だねー。はくちょう座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイル...この三つが作る三角形を、夏の大三角形って言うの。小学校の頃やったでしょ? ...綺麗だよね、ほんと...』

 

 

 

『...あ、ごめん、見惚れちゃって...私、星が好きでね。よくプラネタリウム行ったり、望遠鏡覗いたりして、星をよく見てた。一人でも静かにたのしめるしね! ...泣きたい...。まぁそれに、怖い映像見ちゃったりして寝れない日とかは、よく星を見て過ごしたんだ。...今は、君がいるから、見る機会も減ったけどね。怖いの見ても、君とこうやって電話してれば怖くないし...ごめんやっぱ怖いかも...』

 

『君は怖いの得意だっけ? 良いなぁ...えーだって血まみれの幽霊とか、怖い顔した幽霊とか...あぁ想像したら怖くなってきた...。都市伝説とかUFOとかUMAは好きなんだ。見てて面白いし、怖くないし...私、宇宙人はいるって思ってるんだ。絶対だよ、絶対。えー、信じてないなー?』

 

『だって考えてみてよ。本当に生命体が存在出来るのが、地球だけだと思う? どんなに遠くても、きっとあるんだよ。地球みたいな星が。...あはは、こんなんだから、友達出来ないんだろうなぁ...君は優しいね、私の話をちゃんと聞いてくれるから。え、面白い? ...ありがと』

 

『君の意見も聞かせて欲しいな。私、こういう話人としたことなくて...すると、絶対楽しいじゃん? こういう話! 宇宙人はいるのか、とか、地球は侵略されるのかーとか! ...いや、侵略は遠慮したいな...もし人類滅亡とかなったら、君と一緒に居られなくなる...あ、君も? 嬉しいなー』

 

『...ふんふん、面白いね君の意見。銀河はいっぱいあって、その何れもが私達のいる銀河と同じような形態をしてるなら、地球みたいな星もある、と。...そう考えると、その星でも、私達みたいにこうして電話してる人もいるかもしれないね』

 

『...でも私、この星に生まれて良かったよ。...だって、君に会えた。君とお話出来た。君を、好きになれた。それだけで、私は生まれてきて良かったって思えるんだ。...私、君が居なくなっちゃったらどうしようね。いや、縛り付けるとかそういうの、君が嫌がるんなら絶対したくないよ? 君に迷惑かけたくないから...え、迷惑じゃないの? むしろ嬉しい? ...ふふ、君も結構変な人だよね、あはは』

 

『でも、やっぱりしないよ。重い女って思われたくないし。いや、君の事好きだよ。大好き。好き好き。でも、君が嫌がったり、めんどくさいって思われるのは、凄く嫌。私と、君を繋ぐ物って...ほんとに細くて、壊れやすい物だと思うからさ。だからさっきもね、そういうのはあんまりって』

 

『君にいっぱい言ってもらえるのは、凄く嬉しいんだ。でも...それが普通になっちゃうのが、凄く怖いの。君に好きだって言ってもらえる事は、ほんとに奇跡なんだから。だから...そんな奇跡をいつも言われちゃったら、それが普通になっちゃうかもしれないでしょ? 奇跡なんだって、思わなくなっちゃうの。そんなの、嫌だから』

 

『...え"、めんどくさい!? ご、ごめ...あの、えっと...き、嫌いになった!? ごめん、ごめんなさい...え、違うの? ...ほんと? めんどくさい、よね。こんなの...え、嬉しい? ちゃんと、考えてくれてるから...? ...うん、君の事だから、いっぱい考えたの。どうしたら、いつもドキドキしていられるんだろうって。...まぁ、どんなに一緒にいたって、ドキドキが収まる事は無いと思うけどね』

 

『電話越しでもドキドキしてるんだ。君の声が聞こえるから。胸がとくんとくんって。...痛くなくて、とても心地いいの。あぁ、君の事が好きなんだなって、分かるから。...君は、そんなんでも無さそうだね。いっつも飄々としてて、余裕持ってて...むぅ、何か不服だよ。私はこんなにドキドキしてるのに...』

 

『...え、キッ...む、無理無理無理!! 無理だよそんな...だって、君の顔が、君の唇が...でも、君はそれで、ドキドキするんだ...ね? 分かった。私、頑張る。頑張って、君とキス...する』

 

 

 

 

 

 

『...ねぇ、一緒に展望台行こ? 夜ならほとんど誰も居ないから...うん、帰ったら、一緒に行く。一緒に星を見て、いっぱいお話して...キス、しよ? じゃ、バイバイ。また明日、電話するね』




明日の電話は、あなたのご想像のままに。

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