あの日、あの時、あの人の短編集   作:鈴木シマエナガ

17 / 23
小説コンクールとか学校の課題とかリア充とかパリピとかやってたら全く執筆出来ませんでした。僕の心はいくら光に当たっても光合成しないくそ雑魚陰キャなんで大人しく日陰に帰りますね。

ただいま、僕は木陰で日向を見つめているのが似合ってるようです。


短編集の短編集。[マッチ売りの少女]

short.1[マッチ売りの少女]

 

 

寒い。今年も雪が降ってきた。暗い暗い街道を仄かに灯すガス灯に照らされて、黒に染まった街には不釣り合いな白い雪が降り注ぐ。最初は、あ、雪だ。くらいの降雪量だったが、今となっては深く被った帽子の鍔に積もってしまうくらいの量だ。降っては溶けるを繰り返していた道の雪も、段々と白く薄く積もっていく。このままだと、明日明後日には完全に積もってしまうだろう。あぁ嫌だ嫌だ。

 

大枚を叩いて買った黒いコートをよりいっそう強く抱き、巻いたマフラーに口元を埋める。家に帰れば温かいスープを飲める。蝋燭に火を灯し、薪をストーブに放り込めばすぐに身体は温まる。

...まぁそれを耐えられず途中の屋台で売られていたコンソメスープに口をつける。値は張るが具材やスープの量は山盛りで、思わずほぅ、と白い息が漏れでる。ジャガイモや玉ねぎ、更には薄くスライスされたベーコンと、寒い日にはぴったりな具合のスパイス。堪らない。

 

 

「...ませんか」

 

びく、と身体がこわばる。いつもなら、きっと気のせいだと見逃していた筈の小さな声。しかし、雪が降り人通りの少なくなった街道だからこそ聞こえた、か細く小さな声。

 

 

 

「マッチ、買いませんか?」

 

ぼろぼろになった小さな羽織、継ぎ接ぎだらけの安物の服。そして、震えて震えて止まらない細く真っ白な手。その手に握られた、シワだらけになった真っ赤なマッチ。

 

そこに立っていたのは、とても綺麗な金髪をした、小さな少女だった。

 

「あ...」

 

何をいいかけた。家にならマッチはある。このご時世無駄な金は使っていられない。近代化が進むこの国で、マッチなんていうのはじきに廃れる。こんな可哀想な子は他にいくらでもいる。この子だけに手を差しのべるのは、ただのエゴだ。

 

「え...と。無理して買わなくても大丈夫ですよ、ほんとです。はい」

 

少女は、少し無理をしたような弱々しい笑顔を浮かべる。

 

「売り切らないと困っちゃうんですけど、ね...あはは...」

 

「...すまんな。今手持ちがないんだ」

 

「そう...ですか...大丈夫ですよ、お気をつけて...」

 

マッチを籠に戻して、緩い羽織を優しく引っ張る。強く引き絞れば破れてしまいそうで...今ここを離れて立ち去れば、彼女は寒さに凍えて、ここで...ずっと...。

 

「...だから、これと交換してくれないか」

 

「え?」

 

持っていたスープの器を少女の手に持たせる。小さな手がびくっと震え、そして...収まっていく。手の先はだんだんと赤くなり、温かさが戻る。目はきらきら輝き、頬は紅潮していく。

 

「そ、そんな! こんな美味しそうな...私には...」

 

「いいんだ。その代わり...そうだな、6個貰おうか」

 

籠に残っていたマッチは、残り6個。その全てを引き取り、その内の一つを少女に渡す。

 

「そしてこれは君が使え。僕が買った物だから、遠慮せず使うといい」

 

「そ、そんな...何と、言ったらいいか...あ、ありがとうございます」

 

「...次はちゃんと手持ちを持ってくる。今日はそれで我慢してくれ」

 

そう言って被っていた帽子の雪を払い彼女の頭に被せる。中身は羽毛で出来てるし、少しは寒さを和らいでくれるだろう。ぽんぽんと叩き、その場を離れる。

...何をしているんだ僕は。馬鹿か。何で帽子被せたんだよそれはいらないだろうが。...マッチ使いきれるかな...。

 

少し心は温かく、歩く足取りは少し軽く。

 

手には仄かな温かさが宿っていた。

 




こんな感じで、定期的にちょこちょこ書けたらいいなぁと。

シリーズ化ですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。