僕等の旅路は幻想郷へ   作:kine.

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 5000字程度。
 サイトの使い方も要練習。


001:遭遇

 現在の時刻は23時27分、場所は長野県にある山・・・たぶん。辺りは木々が多い茂り、人工物は僕たちが立つアスファルト位だ。

 

 僕は隣を何ともなしに見てみる。友人第一号が歩いている・・・が、疲れたのか屍のようだ。とりあえず何か話しかけようとしたが、全身から「もぅマヂ無理」オーラを出している姿に口をつぐむ。

 反対側に目を移すと友人第二号が―「夜はなんて最ッ高にハイにさせてくれるんだろォなぁ!!!」―あぁ何か元気そうだしいいや。

 

 今日は2015年8月17日、前々から計画していた聖地巡礼の目的地―諏訪大社―に到着した日だ。そして友則という名の屍人と、逆螺という名の歩くハイテンションと、僕の3人は朝から楽しく過ごしていた。午前7時に長野県下諏訪駅に到着、取り敢えず観光ついでに日本有数の湖沼「諏訪湖」を意味もなく一周した。全周およそ15kmを歩いたところで本命の諏訪大社に向かうことに。僕らはそこで御柱と呼ばれる、一般的にミシャグジの依代を指してガンキャノンなどと言い爆笑したり、何故か祈願のために使われる絵馬に帽子をかぶった女の子を書いてみたりと素晴らしい青春の一時を過ごした。

 

 時計が昼を過ぎた頃、若さと黒歴史を満喫した僕らは友則に連れられ近くの山に向かった。何でもそこには、先日友則がゲームで苦戦していた妖精が出てくる滝に似た場所があるらしい。意外と予定が早く済んだこともあり、僕らはその滝も見ていくことに。そしてバスで揺られること20分、たどり着いた滝は思っていたよりも迫力があり、それが聖地なのかイマイチ分からなかったが雄大な自然を感じることができたのは収穫だったと思う。因みに逆螺は「マイナスイオンが20000個フォー!!」といつも通りで、友則は「妖怪の山・・・風神録道中・・・椛・・・フフッ」と怪しい笑みを浮かべていた。

 

 問題が起こったのはここからである。はじめはこの滝に到着するのが遅くなる予定だったのだが、思っていたより早く着いたため時間がかなり余ってしまったのだ。そして我らが友則大先生がこんなことを宣った。

 

「まだ15時か・・・なんかここら辺って遊歩道になってんだな。良し、探検してみよーぜw」

 

 僕らは友則のスウィートプランに乗せられ2時間程かけこの山の頂上まで行ったのだが、その時点でトワイライトゾーンに突入していた事に気付いた僕らは慌てて戻ることに。さぁ、そろそろ状況が分かったのではないだろうか。僕らはその後迷いに迷って迷い猫。結果現在時刻23時35分まで彷徨い続けているのであった。斯くて時は整合する。

 

「ねぇこれ警察とかに電話した方が良いんじゃない?」

「ほぉう、それはいい考えだな透! 俺たちの携帯が圏外でなければな!!」

「・・・」

「あぁヤバいね・・・飲み物は水と、食べ物はチョコだけか。しかもなんか地面にアスファルトすらなくなってない?」

「ヤバいと言えば俺たちずっと歩き倒してるよな! 湖回って神社行ってハイキングして12時間ぐらい動いてんじゃね? さすがそこに痺れる憧れるぅ(セルフ」

「・・・」

 

 変態(逆螺)はともかく友則はかなり辛そうで、さっきから一言も口を開いてはいない。僕も正直しんどくなってきた。いつのまにか獣道と化した道の隅に、誰とはなしに三人は座り込んだ。周囲は木々が多い茂り鬱蒼とした闇が広がっている。ふと上を見上げてみると、頭上にだけぽっかりとした穴が空いておりそこから月明りが差し込んでいる。その何とも言えない雰囲気に充てられたか僕らはしゃがみ込んだまま一言もしゃべらなくなった。そういえば、このような隙間を林冠ギャップというのだったか・・・などとぼんやり考えていると、隣の友則が声をかけてきた。

 

「・・・なぁ、俺たち帰れるかな」

「久しぶりの会話がそれ? いや、まぁそうだねぇ・・・多分そんなに高い山じゃないから帰れるとは思うけど」

「まっこの程度なら問題ないだろォ! その為に寝袋も持ってきたしな!」

「いや、流石に山で使うのは想定外だからね」

「フッ、甘いぜ透ゥ。この程度のイレギュラーは踏み倒してこそ男―――ん? 何だこの音?」

「はいはい中二病乙。能力に覚醒したなら取り敢えずテレポートで家に帰ろうか」

「・・・はは、何かお前らの話を聞いてたら少し胸のつかえが取れた気がする。マジでお前ら居てくれて助かるわ、あざす」

「そうかな? まぁどういたしまして」

「お、おう。まぁ存分にこの私に感謝するが良いッ?」

 

 友則はこの状況に責任感を抱いていたらしいが、僕と逆螺の馬鹿話を聞いてるうちに少し元気が出てきたようだ。こんな特異な状況だからか妙に連帯感が生まれた気がする。まぁ確かに予想外な状況だけど、逆に考えれば山に野宿なんて割とすごいことをやっているのではないだろうか。マウス的なテーマパークでメルヘンナイトよりもずっと記憶に残る夜になる事は間違いないな。色々な意味で。それに山と言ってもここは高原らしいし、危険な冬とは違い今は夏だ。寝袋や食料、水や寒そうだと思い込んで持ってきた上着に様々なツールを持ってきていることを考えれば最悪の事態(例えば行方不明になって山の一部になるとか)を避けることは容易だろう。僕は二人と前向きな話でもしようと隣を見―――

 

 

 

 

オオオオォオォオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!

 

 

 

 

 ―――唐突に怖気だつような音が周りに響いた。それは重低音から成る金属音とでもいうべきか。言葉では表現しきれない、人の根底を揺さぶる何か(・・)。心臓に深く響くようなその音は辺りを取り囲むように襲い掛かり、そして始まりと同じように唐突に止んだ。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 辺りには不自然なほどの静寂が広がっている。逆螺と友則の声も聞こえない。努力して首を捻じ曲げると、僕のように硬直している二人が目に入った。息が苦しい。良く見ると友則も息苦しそうな表情をしている。

 

「・・・ねぇ、今の何―――」

 

 呼吸を整え二人に話しかけようとした直後。またしても先ほどの音が聞こえてきた。しかも、さっきよりも大きい。例えるなら、そう、とても巨大な生き物の咆哮に(・・・・・・・・・・・・・)エコーをかけたらこんな音になるのではないか?

 

「ッ!! だぁッなんだこの音! なんかヤバそうだぞ!! 逆螺、透、どうする!?」

「あ゛ぁっ!? 日付変わったっていう時報じゃねぇの!? 報時業務お疲れさまでした!!」

「こんな近所迷惑なサイレンがあるわけないでしょ!!! 取り敢えず山を下りよう!!」

「ほォう、それはいい案だな! 全く思いつかなかったぜ!! 友則、行くぞ!」

「勿論だ!!」

 

 今もなお轟いてくる音に負けじと大声で会話をする僕ら。すぐに荷物を背負い、出発をする。とはいえやっていることは先ほどから変わらない。ただ前に、前にと進むだけだ。疲労でストライキを起こしていた足も、緊急事態である事を悟ったのか速足で動く。そんな余力有ったのか、まるで気付かなかったよ。

 素敵なBGMが響き渡る中、二人の背を追いかけて進む僕に異変が生じたのは出発してものの数秒後だった。いや、或いはその直後だったのかもしれない。急に地面が揺れた(・・・)

 

「あれ・・・ッ?」

 

 気がつくと地面が目の前にあった。慌てて手を突こうとしたが、体が動かせない。先ほどの咆哮は煩さを増している。倒れたんだなと頭で自覚はしたが、「おい、透? どうした!? しっかりしろ!!」痛みは感じなかった。同時に視界が「友則ッ、どうした? 透? ッこれは・・・痙攣、急に何故・・・おい、友則?」急速に黄色に染まっていく。遠くで友則と逆螺の叫ぶ声が聞こえる。すぐに立ち上がろう「うあ・・・気分が急に悪く―――」とするが、やはり体は動かない。疲労の「空間が歪んでる(・・・・・・・)・・・だと?」せいだろうかなんて考えていたが音が大きくなって「うぇ・・・クッソが! 何だよこれ!? 体が粒になって(・・・・・・・)―――」バキバキと何重にも重ねた固いプラスチックが「透、友則ッ! これは・・・いや、この光景は昔にッ!?」割れるような音が響いて音がバキバキと何の音だろう「System satisfy the conditions-」目の前は土だったはずで光が歪曲していく光景は「-main system check starting...in good order-」幻想的な風景で家族にも見せてあげたいでも「-the operation rate 40%-」辺りは波が波紋のようにここは黒い場所で目の前にあるのは巨大で莫大な大きな光の束が沢山沢山沢山沢山タクサン沢山沢山沢山沢山たくさん沢山沢山沢山沢山たくさん沢山沢山沢山沢山タクサン沢山沢山たくさん

 

 

「-OK, "Deus ex machina" standby ready.」

 

 

 

その、中心に有ったのは―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突だが朝起きた時に、手に力が入らないという経験をしたことがあるだろうか。感覚はあるのだが、物をつかもうとすると上手く力が入らずにもどかしさを感じるあれだ。映画的に言うなら数百年冷凍されてた人間が、体を上手く動かせないシーンだろうか。そう考えると僕の状況は映画的だろう、仰向けになっているのは分かるがそれだけなのだから。目の前にはポッカリとした林間ギャップが見える。そういえばさっきもそんなことを考えていた気がする・・・あれ? さっきとはいつの事だったか。暫く目の前の間隙から星空を観察していた時に、違和感を覚えた。そういえば何で自分は外にいるんだっけ。確か僕は友則と逆螺の三人で―――

 

「・・・っ!!! そうだ、二人は!?」

 

 直前に遭った出来事を思い出し、慌てて体を起こそう・・・として失敗する。思うように体が動かせない。

 何とか体を横向きにすると見覚えのある背中がうつ伏せに横たわっている。あれは友則か。

 

「友則、友則っ! 大丈夫!?」

 

 まさかとは思うが死んでたりは・・・嫌な妄想が頭をよぎる。濃く深い暗闇と、キリキリとした肌寒さがそんな考えを掻き立てるのだろうか。逸る気持ちを押さえつけ友則のもとへと這っていく。

 

「うぅ・・・うえっ、なん・・・だ、気分悪・・・」

「友則ッ!」

「あぅ・・・透・・・? ってか、何か体が怠い・・・ここは? 逆螺は?」

 

 どうやら彼は天に召されてはいなかったようだ。ひとまず安堵のため息をつく。僕は先ほどからすると少しは動くようになった体を使って、未だ辛そうな面持ちの友則の体を仰向けにする。

 

「あーしんどぉ・・・何かフルマラソン完走した時と同じ気怠さだ・・・で、逆螺はどこなん・・・?」

「分からない。僕も気が付いたらそこで倒れててさ。多分近くに居るとは思うんだけど」

「Aha・・・色々と確認したいことはあるけど、ちょっと休ませてくれ」

「分かった、僕も少し休もう」

 

 取り敢えず友人一号が無事であったことに落ち着きを取り戻す。二号の方も探さなければならないが、少なくとも周囲を見渡す限りそれらしき影は見当たらない。というより周りが暗すぎて周囲の様子が掴み辛い。あれか、ビタミンA・・・いや、Cだったかが不足しているのか。

 そんな頭の悪いことを考えて居ると、体の調子が戻ったか友則がゆるゆると立ち上がった。

 

「はぁ、何とか調子が戻ったか。透は大丈夫か?」

「うん、僕も大丈夫・・・それで逆螺はどこかな」

「そこらへんで倒れては居ないか。っつか暗くて良く分からないな。えーとライトライト・・・」

「あっ僕の携帯があるよ」

 

 ポケットに入っていた携帯を取り出し画面を点灯させる。先ほどより周囲の様子がはっきりと見えるようになった。しかし、あの変態の姿は見えない。その代わりに三人分のリュックサックが落ちているのが目に入る。

 

「逆螺の荷物もあるってことは近くに居るって事だろ。 少し辺りを探してみよう」

「了解。あ、その荷物は僕が持つよ・・・って重っ!? 逆螺何持ってきてんだろ・・・」

 

 取り敢えずは逆螺を探すことにする二人。友則も自分の携帯を取り出し画面を点灯させる。電子機器の明かりをライト代わりに、なんて何だかホラーゲームの主人公みたいなことをやってるな。いや待て待てそんなことを考えたらいけない怖いじゃないか。というか、目を覚ます直前に感じた妙な感覚が体にまとわりついている気がする。それに、周囲の事が妙に気になる。なんというか、周りの景色に違和感を感じるのだ。例えるなら、そう。まるで―――

 

 

「わーまさかこの季節のこの時間に人間がいるなんて。今日の私はついてるかも」

 

 

 途端、背筋に氷を差し込まれたような怖気が奔った。

 慌てて声がした方に携帯の画面を向ける。ぼんやりとした明かりの先に、少女と形容できるほどのヒト(・・)が立っていた。いや、人なのだろうか? 目鼻立ちはかなり整っている。西洋風の顔立ち、金紗に揺れる髪、紅いリボン、同じくらい紅い眼と小さな唇、漆黒の洋服とスカート。まるで人形をそのままニンゲンにしたらあの子のようになるのではないだろうか。

 出来の悪い心霊動画のような異物感をあたりにまき散らしながら、少女の言葉は続く。

 

「でも、これはらっきーって奴ね。最近は生の人間が食べられる機会も少なくなったし、配給された肉はマズくて食べられたものじゃないし。偶にはここまで来てみるものね」

 

 なんだろう、先程から震えが止まらない。これは、アレは・・・同じ人間だろうか? 話してる内容が全く持って理解できない。出来ないが・・・圧倒的な現実感が僕を押しつぶそうとしているかのような感覚を覚える。文字通り周囲の温度がいくらか下がったかのようだ。

 隣の友則も明かりを女の子に向けたまま固まっている。

 

 いや、何かに驚愕している・・・?

 

「な・・・は・・・? いや、いやいや。そんな、コスプレ? だって、それは架空の・・・でも、まさか本当に(・・・)?」

「アハッ、久しぶりの新鮮な恐怖(・・)、食べがいありそうね。じゃあ、お二人さん」

 

 紅い口が三日月を形作り、うれしそうに。本当にうれしそうに、言葉を紡ぐ。

 

 

 

―――あなたたちは食べても良い人類?

 

 

 

「あああああああぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 その言葉を聞いた直後、僕は全力で後ろに駆け出した。




Tips:「アトランティス 8月号 No.444 」
<コラム:怪奇! 終末の音の謎に迫る!!>
 皆さんは「終末の音」をご存じだろうか。またの名を「アポカリプティックサウンド」と呼ばれる現象は、世界各地で報告が相次ぐ謎の現象である。

 その冥府から響くような重低音に、それを聞いた人々は「世界の終焉を知らせるサインだ」と眠れぬ夜を過ごしている。

 この音の正体であるが、一部では新約聖書のヨハネの黙示録に由来するのではないかともいわれている。このヨハネの黙示録では“最後の審判”が始まる時に天使がラッパを吹き鳴らすと書かれている。これこそが終末の音の正体ではないかと言うのだ。同書ではこのラッパは7回吹き鳴らされ、1回鳴るごとに地上に天変地異が起き、7回目のラッパが鳴ったとき世界は最後の審判を迎えるという。現実に、ここ数年異常気象や災害が多発している。最近では、あの羽生蛇村で起こった土石流災害発生が記憶に新しい。もしかすると、この異常な現象は、これから起こる「何か」の序章に過ぎないのかもしれない。

 筆者はこの終末の音が二ホンでも観測されたとの情報を入手した。場所は××県にある夜見島である。ここでは29年前にも不思議な事件が起こっており、今回の件と無関係とは思えない。次回はその調査結果を報告する。(著・MMR)
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