ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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第37話 『終宴』

 

 

「うぐぐぐ……」

 

 ハッチを開き、(うめ)きながら這い出てきたのはアンチョビだった。

 その顔は所々(すす)けてはいるが、怪我らしい怪我がまるで見えないのは流石はカーボンコーティングである。

 

「ま、まさか……アストラッドがこうもあっさりと……」

 

 撃たれた上部装甲からはまだ煙が上がり、被弾箇所は黒く焦げている。

 敗北を意味する白煙の向こうには、同じく敗北を意味する白旗がそよ風に揺れていた。

 大洗隊長機のパープルベアーに、その僚機の偽ブルーティッシュドッグの姿は既に近くにない。

 こちらの撃破を確認すると即座に踵を返し、麓へと一直線に走り去ってしまったのだ。

 

「……ペパロニ、カルパッチョ、みんな。頑張ってくれ。まだ勝機は十分にある……じゃなかった絶対勝てる!」

 

 しかしアンチョビはまだ諦めてはいなかった。

 期待していた戦果を挙げる前にアストラッドが撃破されたのは心底残念だが、だが所詮はそれだけのことだ。試合は未だ続行中であり、こっちのフラッグは健在な上に味方は相手フラッグに猛然と攻めかかっている。混戦極まる現状においては最早作戦も糞もない。重要なのは是が非でも相手をやってけようとする戦意と熱意だ。それこそ、ノリと勢いのアンツィの独壇場ではないか!

 

「お前たちは弱くない! いや強い! 絶対に強い! 絶対に絶対に強い!」

 

 ――これはアンチョビの偽らざる気持ちだった。

 確かに彼女たちはまだまだ未熟だし猪武者揃いだし考えなしだし勝ち気よりも食い気が勝っているしだが、素直で元気で何よりバイタリティに溢れている。その野性的なパワーをうまい具合に試合に向けさせるのが隊長たる自分の役割だ。一旦こっちのペースにさえ乗せてしまえば、あとはノリと勢いだ。そしてアストラッドが落ちてもまだアンツィオのノリと勢いは(つい)えてなどいない!

 

Forza(フォルツァ)! Forza! Forza!」

 

 イタリア語で頑張れと三唱し、アンチョビはアストラッドの上に立ち、指揮鞭を何度も振った。

 気づけば車中の他4人もハッチから這い出してきて、すぐさまアンチョビの声援へと加わった。

 

「「「「「 Forza! Forza! Forza! 」」」」」

 

 右の拳を天へと突き上げながら叫ぶ。

 声は届かなくても、想いはきっと届くはずだ。

 そう信じて、彼女たちは奮闘しているであろう戦友たちへとエールを送るのだった。

 

「「「「ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!」」」」

「……いや、この場合それは違うだろ!」

 

 どこか締まらないのもアンツィオ流だった。

 

 

 

 

 

 

 

   第37話『終宴』

 

 

 

 

 

 

『おわぁぁぁぁっ!?』

 

 絶叫と共に火を吹きふっ飛んだのは、河嶋桃駆るダイビングビートルだった。

 取り回しを優先した小型のハンディソリッドシューターとて、威力だけならば通常型となんら変わらない。ATの中では比較的装甲の厚いダイビングビートルも、ソリッドシューターの直撃弾にはどうしようもない。撃破判定は即座に下り、頭頂部からは白旗が揚がる。

 盾持ちのライアットドッグを駆るヒバリさんの2人、そど子とパゾ美はほんの数秒前に撃破されている。

 まだ経験の浅い彼女らは敵の動きに翻弄されてしまったからであり、さらにフラッグの貴重な壁役だったヒバリさんの全滅に動揺した桃が、止まったところを撃ち落とされた格好だった。 

 

「おりょう! フラッグ右側に回れ! 何としてもフラッグだけは守り切るぞ!」

『合点承知ぜよ!』

「くそう、この得物じゃあたらん! 左衛門佐! 射角左30でヘビィマシンガン斉射だ!」

『心得た! 喰らえ大狭間筒!』

「こんなことならHitlersäge(ヒトラーの電動ノコ)でも持ってくればよかったぞ!」

『そんなのウチには無いぜよ!』

 

 追い詰められつつもいつものノリを忘れず、歴女チームは奮戦していた。

 混戦のさなか、運悪くはぐれたカエサル機を除くエルヴィンら三機は、身を挺して杏のスタンディングトータスを守っている。おりょうは撃破こそされていないが右腕は吹き飛んで得物は左手のシールドだけ。文字通り盾役となって相手の射線に割り込んでいる。左衛門佐は肩アーマーやロールバーが吹き飛ばされているが一応は健在、大狭間筒――でもなんでもない普通のヘビィマシンガンで弾幕を張っている。

 一方、カエサルの代わりに分隊長を務めるエルヴィンはいまいち冴えない。左手のシールドはフラッグ機を守るのに大助かりだが、得物のシュトゥルムゲベールの連射能力が低いために、高速で動き回るアンツィオのツヴァークを捕捉できないのだ。相手が巧みに地面の凹凸を活かしているのもあるが、こんなに当たらないのならおとなしくマシンガン系の武器を持ってきていれば良かったと思う程だ。

 

 

『あゆみ、右3度修正、撃て!』

『えい! ……凄い当たった!』

『梓、西住隊長みたい~』

 

 一方、ウサギさん分隊はと言うと大いに冴えている。

 最初に謎の砲撃で桂利奈とあやの2人が脱落したにも拘らず、紗希が一機撃破したのを切っ掛けに見違えるように動きが良くなったのだ。特に活躍が目覚ましいのは分隊長の梓だ。梓を司令塔に、紗希や優季が射撃で相手をあゆみの銃口のもとへと誘いこむという戦法だ。ひとりひとりは決してまだ技量が高いとは言えないウサギさんチームだが、しかしメンバーの連携力はかなり高い。それが日々の練習で一層強化されている様子だった。

 

『あ~う~』

『ってああ! 調子乗ってる所を優季がやられちゃった!?』

 

 とは言え、相手も十分に練習を積んできたのは同じだったようだ。

 一機落として油断した隙を逃さず、ソリッドシューターの一発でまた一機大洗側のATが沈む。

 これでこの場の残存戦力は7機。フラッグの杏と半壊したおりょうを除けば実質5機だ。

 対するアンツィオ残存戦力は倍近い。しかし相手も機動戦の連続に疲労が溜まってきている筈。 

 もう少し、もう少しの踏ん張りだ。

 

『みんな! あとちょっとで西住ちゃんも来てくれるし、最後までがんばろーよ!』

 

 軽い調子に確固たる意志を滲ませて、杏はようやく得物のトリッガーを引く。

 柚子に桃と続けて撃破されて、流石の怠け者もようやく働く気になったらしい。 

 一旦働き出した会長の動きは俊敏だ。その姿に、エルヴィンはちょっとホッとした。

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

「行くぞDクイック!」

『はいっ!』

 

 キャプテン典子の指示にあけびは即応し、ツヴァークの一機にグレネード弾を直撃させる。

 横っ腹に一撃もらったツヴァークは衝撃にごろりと横倒しになって白旗を揚げる。

 バレー用語を交えた彼女らの通信は傍から聞いてると意味不明だが、しかし分隊の中では普通に通信するよりもずっと指示の通りが良いのだ。恐らくは普段から使い慣れた言葉であるからだろう。彼女らの反応速度は常人離れして素早い上に、交信能力(?)においても常人を隔絶している。

 

「河西、バックアタックだ! 合わせろ!」

『はいキャプテンッ!』

 

 典子機の背後へと忍機が回りこみ、そのまま我らがキャプテン駆るファッティーの背中目掛けて全力のブーストダッシュだ。このままだと衝突する――というギリギリの段になって、典子は自機を降着させた。

 典子機と相対するツヴァークは彼女の意図が読めず一瞬動きが止まる。その隙を、キャプテンの降着で正面への射線が開けた忍の銃撃が突く。典子の頭上を越えて飛んで行く銃弾を、流石はアンツィオ、僅かに機体を左右に揺らすことで避け、当たっても掠めるに損害を抑える。しかしキャプテンも忍も、そういう場合は既に織り込み済みだった。

 

「殺人スパイク作戦!」

『そーれ!』

 

 降着して体育座りの格好になっている典子のファッティー。その背中を踏み台に、忍のATは宙へと跳び上がる。

 これには相手も今度こそ本当に仰天した。反応する間もなく、振りかぶった忍のアイアンクローの一撃に横っ面を引っ叩かれて吹っ飛び、パシュッと音を立てて白旗を生やす。

 

「スパイク成功!」

『よし次!』

 

 忍はさらに、手近なツヴァークへと一発お見舞いすべくアイアンクローを振りかぶる。

 相手の左脇を駆け抜けつつ、一発ぶちこみウエスタンラリアットの体勢だ。これでもう1ポイント追加だ!

 

「待て河西! ツヴァークの手の部分は――!」

 

 キャプテンの警告は残念ながら間に合わない。

 相手ツヴァーク左手のマニピュレーターが“折れた”かと思えば、手首に内蔵された三連装の11mm機銃が顔を出す。避ける暇などあるわけもなく、至近からの直撃弾に忍はあっさりと撃破された。

 

『きゃあっ!?』

「くそう! 近藤までやられたか!」

 

 相手は手持ちの得物を投げ捨て、両手首を展開。三連装が2門で計6門の11mm機銃の斉射で妙子を撃破したらしい。そしてそのまま両手の銃口を典子達にも向けてくる。残った相方も同様に腕部機銃を展開しての攻撃だ。一気に勝負を決めるつもりらしい。横殴りの銃弾の雨をなんとか凌ぎながら、典子は叫ぶ。

 

「これで2対2だ。根性だ佐々木!」

『はいキャプテン!』

 

 機銃には機銃で対抗だ。典子はガトリングガンで弾幕を張り、あけびがその陰でグレネードの一撃を狙う。

 一方相手は――残っているのは隊長機と僚機が一機だ――役割分担も何もなく、弾が切れるまでトリッガーを引きっぱなしにするつもりらしい。

 

「私がトスで繋ぐ。佐々木がアタックだ! いつもとポジションが違うが、いけるな!」

『はい! それこそ根性で行きます!』

 

 典子が正面に出ることで敵の攻撃を集中させる。

 11mm機銃はATの装備の中では比較的小口径だが、それでもいわゆる『重機関銃』なみの大きさだ。それが6門、否、相手は二機だから12門。銃弾は容赦なく注ぎ、装甲を削り、振動にコックピットは揺れる。急所への直撃は防いでいるが、このままだとダメージの蓄積で撃破判定が出かねない。

 

「おおおおおおおっ!」

 

 分隊長機らしい相手のツヴァークへとブーストを最大まで()かして肉薄する。

 ペダルを目一杯踏み込み、フルスロットルで加速した所で、典子のファッティーからは白旗が揚がった。

 しかし一旦付いた慣性は早々には失われない。白旗を掲げたまま、典子のATは分隊長らしいツヴァークへと正面からぶつかった。その衝撃に相手のATは体勢を崩し、もつれ合うように地面を転がる。

 僚機のツヴァークが気を取られて動きを止めた所に、あけびのグレネード弾が直撃する。

 あけびが倒れた敵分隊長機――ペパロニの駆るツヴァークへと照準を向けるのと、ペパロニが典子のファッティーから得物をもぎ取りつつ身を起こすのはほぼ同時だった。

 銃声と砲声。異なる音色が重なり合った時、あけびとペパロニのATの両方から白旗が揚がった。

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 もう何度目になっただろう。

 ぶつかり合う槍身と槍身。鳴り響く金属音。

 必殺のパイルバンカーが装甲を掠め、塗装を、表皮をえぐり取って行く。

 砂色に塗られたカルパッチョのベルゼルガはその黒い地金を所々で晒し、カエサルのプレトリオは猛獣に組み付かれ引っ掻かれでもしたような有様だ。

 

「たあっ!」

 

 ベルゼルガDTの両足のかかとの部分には、サンドトリッパーユニットと呼ばれる砂漠を走るための無限軌道パーツが取り付けてある。それをフルに回転させて加速し、カルパッチョは思い切りプレトリオの横腹を狙って蹴りを放った。プレトリオはローラーダッシュで後退し避けるが、これで均衡を保っていた2人のせめぎ合いは、攻守の両面へと分かたれた。言うまでもなくカルパッチョが攻め、カエサルが守りだ。

 

「てやっ!」

 

 白兵戦は気合の勝負だ。一度の後退は果てしない後退へと繋がる。そして行く行くは追い詰められ、勝利を相手にもぎ取られるのだ。

 だが、カエサルとてそんなことは知っている筈だ。

 

「っ!」

 

 やはりというかカエサルは退いた勢いを攻めへと転じ、攻めかけてきたのだ。

 機体の重心を右に寄らせつつ、左のグライディングホイールのみを回転させる。

 右足が重みでターンピックの代わりを果たし、後退の動きは回転軌道へと転回される。

 同時に上半身のみを回転させ膝裏をカルパッチョへと向けながら、しかし上体と騎士然とした輝く機械の三つ目顔で彼女を見据えたのだ。人の形をしていてもATは機械だ。だからこそ可能な動きもある。

 カルパッチョは自分の方へと突き出されたパイルバンカーの穂先を、とっさの降着機動で回避する。そして相手の膝蹴りがセンサーへと叩き込まれる前に、降着状態のままローラーダッシュタックルを喰らわせたのだ。未だ上半身と下半身がそれぞれ逆方向を向いていたカエサルのベルゼルガプレトリオにとっては、ちょうど膝裏の窪みに蹴りを入れられたのと同じような格好になった。腹を殴られた訳でもないのに、くの字を描くカエサル機は、今度こそ完全にバランスを失って倒れる。カルパッチョ機は疾走を続けながら降着状態を解いた。膝の動きでターンを描いて、立ち上がってもまだ戦える状態ではないプレトリオへと人機槍一体となって突進する。

 

「もらった!」

 

 カエサルはまだこちらへと槍の穂先も向け終えていない。

 回避運動をとる余裕もない。

 

「勝ったよたかちゃ――んっ!?」

 

 否。そうではない。

 カエサルは敢えてパイルバンカー槍を地面へと向けていたのだ。

 試合場は荒野。当然硬い岩盤が剥き出しな地形も所々にある。

 その岩盤目掛け、あからさまに貫通しない角度でカエサルはパイルバンカーを放った。

 鉄杭の穂先は岩の表面を叩き、その反作用でプレトリオの機体は押し出される。

 車輪を用いるローラーダッシュでは出せない瞬間加速。

 カルパッチョの狙いを飛び越える形で、カエサルのプレトリオは懐へと飛び込んでくる。

 

「――」

 

 石突き部分をコチラへと叩きつけんとするカエサルを迎え撃つ為に、敢えてカルパッチョは得物を手放した。

 手放した掌を迫る石突きへとかざし――激突。衝撃に右のマニピュレーターは粉砕されるが、問題はない。

 空いた左拳は、殆ど密着した状態にあったカエサルのプレトリオの、その脇腹目掛けて放たれた。

 アームパンチ! それも一発ではない。二発、三発、四発の連撃だ!

 空薬莢が跳ねまわり、鋼と鋼が打突し合う音は鼓膜を突き破らんばかり。

 左腕部のアームパンチ用のカートリッジが尽きた時、頑丈を以って知られるプレトリオも流石にダウンした。

 膝からがっくりと崩れ落ち、白旗が鶏冠飾りの中から飛び出した。

 

『ひなちゃん、私の負けだ』

「たかちゃん、私の勝ちね」

 

 カルパッチョは勝負に勝った。

 しかし――試合には敗れた。

 

「ッ!?」

 

 衝撃を感じた時には手遅れ。

 殿(しんがり)のカルパッチョ分隊僚機三機を撃破し、突破してきた沙織と華。

 共に満身創痍ではあったが、最後の一撃を叩き込む得物は残っていた。

 

『有効! アンツィオ高校フラッグ機撃破! よって……大洗女子学園の勝利ッ!』

 

 そう高らかに、審判は告げたのだった。

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

「勝ったね……なんとか」

「ですね」

 

 沙織と華は愛機から降りて、だらしなく地面に腰を下ろしていた。

 はしたないとは我ながら思うことだが、しかし疲労困憊でもう格好を気にしている余裕もない。

 

「……ほんと。よくやったもんだよね、私ら」

 

 沙織が見上げるレッドショルダーカスタムの姿は酷いの一言で、右手は吹き飛んでいるし、左手も肝心のソリッドシューターが直撃弾で半壊している有様。ミサイルもロケットも弾切れで、頼みは僅かに残った腰のガトリングガンだけ。華の方はと言えばAT自体は綺麗なものだが得物が残弾なしであり、沙織のガトリングガンの不意討ちで何とかなっていたが、相手が万全の態勢だったらどうなっていただろう。

 

「てか、目の前のことに手一杯で気づいてなかったけど、結構ぎりぎりだったんだね私ら」

 

 戦力を映し出している巨大スクリーンに表示されているのは、フラッグ機まであと一歩という所まで追い詰められている味方の姿だった。アストラッドを倒してなお健在だったみほや麻子が全力で麓へと下っていても、タッチの差でこちらのフラッグ機が撃破されて大洗の敗北だったかもしれない。

 たまたま自分たちが間に合った。ただそれ故の勝利だった。

 

「沙織さーん! 華さーん!」

 

 声がするほうを向けば、優花里や麻子と連れ立ってこちらへと駆け寄ってくるみほの姿がそこにある。

 だが沙織にとって意外なのは、みほに連れ合いの中にアンツィオの隊長の姿があるということだ。

 

「なるほど……お前たちがうちのカルパッチョを撃破したのか。今年こそはいけると思ったけど、してやられたよ」

 

 アンチョビは敗者の身にあってなお不敵に微笑むと、沙織へと掌を差し出した。

 沙織はそれを握り返し、アンチョビに引っ張られながら立ち上がる。

 アンチョビはそのままぶんぶんと力強く握手した後、沙織へと熱いハグをかけてきた。

 呆気にとられた沙織は小さく「やだもー」とつぶやきながら照れて赤くなった。

 華はと言うとノリノリでハグをし合っていたのが好対照だった。

 

「さて――それでは諸君!」

 

 アンチョビはいつのまにやら集まっていたアンツィオ選手たちへと向けて指揮鞭をかざし号令した。

 

「湯を沸かせ! 釜を炊け! 宴の準備だーっ!」

 

 試合が終われば敵も味方もない。

 勝利も敗北も分かち合い、大いに労い合って飲み食い騒ぎ、歌い踊り楽しむ。

 それがアンツィオの流儀というやつだった。

 

 

 

 こうして全国高校装甲騎兵道大会2回戦第4試合、大洗女子学園対アンツィオ高校の戦いは、大洗の勝利に終わった。予期せぬ事態に驚いたり驚かされたりもしたが、終わってみれば実に後味の良い幕切れであった。

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 宴が終わって数日後、大洗にひとつの知らせがもたらされた。

 トーナメントを勝ち上がり、準決勝に駒を進めた学校、すなわち次の大洗の対戦相手はどこか。

 それは、プラウダ高校。昨年、黒森峰を破り優勝を勝ち取った強豪。

 そして、みほにとっては忌まわしい過去の象徴とも言える相手だった。

 

 





 勝利とは所詮、次の戦いのためのプレリュードに過ぎない
 強敵を突破した先に待つのは、立ちはだかる更なる強敵
 敗北するか優勝するか。その二択のどちらかを選ぶまで、連綿と続く戦い
 その最中、ある者は悩み、ある者は傷つき、ある者は決断する
 そしてまた新たに誰かが呟く。たまには火薬の臭いを嗅ぐのも悪くない

 次回「思惑」。思い惑い、それでも進む 

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