ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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第54話 『分析』

 

 

 

「……盗んだんですか?」

 

 言ってから、みほはアッと口を手のひらで押さえたが、時既に遅しだ。

 覆水盆に返らず。『こぼれたミルクを嘆いてもしょうがない』とダージリンならば英国のことわざを引用だろう。

 幸いなことに、アキもミッコも「またか」といった様子でかすかに眉をひそめたのみで、然程気に障った感はない。

 ミカはと言えば、曖昧な表情のままカンテレをポロンポロン弾いているばかりで、何を考えているのかがまるで解らない。取り敢えず、怒ってはいないらしい。

 みほは内心でホッと胸を撫で下ろした。せっかく掴んだ伝手をもし自分がダメにしたとなったら色々とお先真っ暗だ。

 ――しかしみほが思わず失礼なことを言ってしまったのも無理からぬこと。

 何せ継続高校には色々と妙な噂が多い。

 曰くプラウダから定期的にATをかっぱらってくる、試合場に迂闊にモノを置いておくと持って行かれてしまう、などなど……。ちなみにプラウダ云々に関しては双方合意の上での一種の賭け試合、『鹵獲 ルール』に基いての正式な取引であるために問題はない。ただし問題の試合でプラウダ側が継続高校が不正をしたと主張しているので実際問題にはなっていたりもするが、まぁそれは些事(さじ)だろう。

 

「酷いなぁ! 流石に人のものを盗ったりはしないよ、ねぇアキ!」

「うんうん! 『落ちてるモノ』を拾ってくることはあっても、盗んだりなんてしないよ!」

 

 ……落ちているものを無断で拾ってくることを、一般的には盗みと言うのでは?

 アキとミッコが言うのに、みほはそんなことを思ったが、今度は口に出さずにおいた。

 

「スコープドッグさんがね、囁くんだ。僕たちは戦える、僕達を使ってって、ね」

 

 だがミカがこんなことをのたまうのには、流石に突っ込まずにはいられなかった。

 

「……それを世間一般では盗むって言うんじゃあ」

「違うさ。ただ私たちは、微かな声に耳を傾け、その意に沿うように手助けしているだけさ」

 

 そのツッコミも風のように流されてしまったので、みほは重ねて問うのを止めた。

 

「ええい! どこから持ってこようが盗んでこようが構わん! 重要なのは、そっちが持ってきたのがちゃんと使えるATなのかどうかだ!」

 

 桃が進まぬ話に苛立ち、ドンと机を叩いた。

 それに対しては怒ってはダメだとばかりにミカがカンテレの優しい音色を奏でるが、それはむしろ桃に怒りに火を注ぐだけだった。

 

「……一応言っておくならば、私達が今回持ってきたのは正真正銘、法を犯すこと無く手に入れた元黒森峰のスコープドッグにバーグラリードッグだよ。何なら、当の黒森峰に問い合わせてみると良い」

 

 ミカがアキのほうをちらりと見た。

 アキはすかさず手元のかばんからホチキス留された紙束を取り出し、桃へと手渡した。

 みほも横から覗いてみたが、どうやら今回、継続高校が大洗に売り渡す予定のAT他各種装備品のリストだった。

 

「うわぁスゴっ! こんだけのATを中古で捨てちゃうとか!」

「流石は強豪校ですね。お金持ちなんでしょうか」

「すごいです。STTCタイプがこんなに……DDタイプも従来型じゃなくて後期型ですよ!」

「ATをこんだけとっかえひっかえできるとは羨ましい限りだな」

 

 気づけば沙織、華、優花里、麻子と他のあんこう分隊のメンバーも集まってきており、さらにその背後からはカエサル、典子、梓と各分隊の隊長勢に、エルヴィン、忍、遠巻きに見ていた装甲騎兵道メンバー達が押し合い圧し合いしながら覗き込んでいる。

 皆も、どんなATがやって来るのかが気になっているのだ。

 

「ええい! 後で見せるから散れ! 散れ!」

 

 桃がギャラリーを手で追い払えば、沙織などはブーと不満そうな顔ながらも退散した。

 そして桃が背後に気を取られた隙に、杏の手が横からニュッと伸びてきて、桃の手の中からリストを掻っ攫う。

 

「……ふぅん」

 

 リストに素早く眼を通した杏は、何か考えるようなしぐさをした後、ミカ達のほうをジッと見た。

 ダージリンやミカも十分に胡散臭いが、我らが会長殿も胡散臭さでは負けてはいない。

 ニヤニヤと笑う杏の姿に、不可思議な圧迫感でも覚えたか、アキとミッコはちょっとだけ表情を固くする。ミカはと言えば相変わらずの何処吹く風な様子なのは流石だ。

 

「随分と数が多いよねぇ。しかもどのATも悪いATじゃない。ウチのATと比べたら、例え中古でもこっちの方がスペックでも状態でも上だしさ。……これ、どういう経緯でソッチに来た訳?」

 

 杏が聞くのに、ミカはちらりとダージリンの方を見た。

 彼女はと言えば華が差し出したお茶のお代わりを口にしていたが、湯のみを静かに置いて言った。

 

「『古き革袋に新しき酒を入れることなかれ』」

「……はぁ?」

 

 ダージリンが言い出した突拍子もない台詞に、桃は面食らったが、しかしオレンジペコは違う。

 当意即妙。即座に、ダージリンのした引用の続きを述べた。

 

「『さすれば革袋は破れ、酒は地に流れ、共に失うこととなろう』。新約聖書、マタイによる福音書ですね」

 

 ダージリンは満足気に頷くと、杏のほうを見て曰く。

 

「その疑問につきましては、こちらの映像をご覧になればたちまち氷解することでしょう」

 

 ダージリンが取り出したので、一枚のデータディスクであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第54話『分析』

 

 

 

 

 

 

 

 

 灼熱の太陽に、荒野は灼け、陽炎があちこちに立ち上っている。

 くすぶる大地に風は淀んで、辺りの空気はまるで火に焼べた鉄釜の底のようになっていた。

 見渡すかぎりの砂、礫、土、時折の岩、そして擱座した陸上戦艦の残骸。

 ――ここは試合場。第63回装甲騎兵道全国高校生大会が準決勝戦、聖グロリアーナ女学院VS黒森峰女学園の試合場にほかならない。

 相対するのは、砂色と黒色の二色に塗り分けられた二大陣営。

 双方ともにエントリー限界数の七十五機での参戦である。決して狭くはない筈の試合場も、総勢一五〇機のATを擁すればたちまち砲火と硝煙に破裂寸前の大動脈瘤と化す。

 

『敵、三個分隊接近! 一〇時の方向!』

「迎撃しなさい!」

 

 アッサムの号令一下、砂蜘蛛の群れたちは地を這うように体勢を低くしながら戦列を組み、弾幕を張る。

 砂色に塗られたエルドスピーネは一度周囲の景色に溶け込めば、発見は容易ではない。

 迫り来る黒い戦列に、岩を盾にし、砂を壁とし、巧みに隠れながらの銃撃を浴びせる。

 ――だが止まらない!

 

(……このままでは五分以内に防御線が突破される可能性が七五%!)

 

 データ装甲騎兵道に定評のあるアッサムの愛機には、わざわざ持ち込んだ外付けのコンピューターが備わっており、装甲騎兵道の試合に関する様々なデーターや、各種演算プログラムが入っている。プログラムがはじき出した冷徹なる数字は、現状、聖グロリアーナが圧されているという現実をまざまざと突きつける。

 もしもこの試合場を空から見たならば、褐色の塊へと四方より攻め寄せる、黒く彩られた鉄の背中の群れが見えただろう。

 どこまでも続く黒い背中。吐き出される砲弾は横殴りの驟雨(しゅうう)のごとく。それらは容赦なく降り注ぎ、装甲までも溶かさんとする。

 主力兵装のGAT-45RSC『ブラッディライフル』はヘビーマシンガンの強力なニューモデルであり、その銃撃は強烈で盾にしている岩をも容赦なく削り砕いていく。

 そこにすかさずミサイルの砲撃。左肩に負った12連装のミサイルランチャーだ。

 圧倒的火力。圧倒的機動性。

 聖グロリアーナ主力のエルドスピーネもかなりの高性能ATの筈だが、圧倒的な黒い攻勢にはその事実すら忘れてしまいそうだった。

 ――X・ATH-P-ST ブラッドサッカー。

 かつてあのレッドショルダー部隊が最後の乗機として使ったと言われる高性能H級ATだ。

 原型機との違いは肩が赤く塗装されておらず、全身が黒く塗られているという点と、ミッションパックが換装されてミサイルランチャーが装備されているという二点のみ。

 かつてのレッドショルダー部隊よろしく、怒涛の攻勢をしかけてきている。

 

 去年まではスコープドッグのカスタム機がチームの九割を占めていた黒森峰であったが、去年のプラウダ戦敗北の衝撃が余程大きかった為か、驚くほど大胆な機種転換を行っていたのだ。

 

 ――ブラッドサッカーの主力機導入である。

 

 今や黒森峰のATは一部を除いて全てブラッドサッカーへと置き換えられている。

 高性能のH級ATとなればコストも馬鹿にならない筈だが、しかしそこは天下の黒森峰。

 

(侵攻速度は想定の115%。流石は西住流……)

 

 聖グロリアーナが得意とするのは強襲浸透戦術。

 つまる所が行進間射撃しつつの積極攻勢戦法だ。

 試合場中央の陸上戦艦残骸をいち早く確保し、ここを拠点に迫る黒森峰部隊に先制攻撃をしかけ、黒森峰の攻勢を留めている間に別働隊が斜め後方より奇襲をしかけるというのがダージリンが当初立てた作戦だった。

 アッサムが集めた膨大な黒森峰の試合データによれば、いかに速攻がお家芸の黒森峰であったとしても、不整地での機動戦に関しては聖グロリアーナに分があるとの分析結果が出た。それを踏まえての作戦ではあったのだが、恐るべきは西住流の進撃速度だ。

 

(まさかドッグキャリアーを準決勝から出し惜しみ無しで使ってくるなんて!)

 

 ドッグキャリアーとはAT用のジェットソリとでも言うべき装備で、降着モードのATを一機、ないし二機を載せることができる。二機のジェットエンジンが付いており、その力で急速前進する。値段は安くはないにも関わらず基本的には使い捨ての装備なので、装甲騎兵道では大会の決勝戦など限られた状況でしかまず使われない装備だった。だが黒森峰は準決勝からそれを使った。それを使って得たスピードで先鋒をこちらに先駆けて送り込み、橋頭堡を築くのに成功したのだ。

 

(さらにこの砲撃!)

 

 その進撃を後押しするのが後方からの援護砲撃だ。

 おそらくはバーグラリードッグ部隊による砲撃だろう。総数こそ減らされこそすれ、数少ない去年からの残存ATであり、ブラッドサッカー隊の攻勢を見事に支えている。

 

「このままではジリ貧ね……」

『その通りだと思うわ、アッサム』

「ダージリン」

 

 アッサムのひとりごとに答えたのは、別の戦線で陣頭指揮をとっているダージリンであった。

 無線越しに砲撃音や銃声が響いてまことに喧しい。

 

『だからここらで反転攻勢に出ようかと思うの』

「この砲撃の中で、ですか?」

『ええ』

 

 ダージリンの側でも攻め立てられているのは変わらないはずであるのに、しかしダージリンの声には余裕があった。

 

『わが人生の成功のことごとくは、いかなる場合にもかならず15分前に到着したおかげである』

『ネルソン提督ですね。でもダージリンさま。現在進行形で敵に先手をとられてる真っ最中のような気がするのですが』

 

 格言をいつも通りに引用するダージリンに対し、いつもの様に合いの手入れるオレンジペコの声にもまた余裕が感じられた。アッサムは怪訝になった。あらゆるデーターは聖グロリアーナの劣勢を示しているにも関わらず、指揮官はそうはみていないのだ。単なる脳天気や楽天主義ではない。ダージリンは変わり者だが、こと戦術戦略に関しては怜悧(れいり)冷徹な灰色の脳みその持ち主であることは、これまでの実績が証明している。

 

『そうねペコ。だから今度はこっちが相手の先手を取る番よ』

 

 彼女がそう言ったのがトリッガーになったように、不意に、遠距離からの砲撃が止んだ。

 

『ローズヒップ、よくやったわね』

 

 言ったダージリンへの返事は即座であった。

 

『お 褒 め に あ ず か り 光 栄 で す わ ー ! ダ ー ジ リ ン さ ま ー !』

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 

 黒森峰の使用するバーグラリードッグは特注製であった。

 不整地踏破装備であるトランプルリガーの形状も、普及型のそれとは見た目も構造も違う。

 ミッションパック等も同様で、より値段は張るが、より高性能なものを使用していた。

 そして中でも一際目を引く仕様が、頭部アンテナの独特の構造だろう。

 通常のドッグタイプのアンテナは二本の細いワイヤーアンテナが真っ直ぐに伸びているが、黒森峰の使うバーグラリードッグの頭部アンテナは折りたたみ式のブレードタイプであった。横から見ると『稲妻』を思わせるユニークな形状で、これは黒森峰女学園バーグラリードッグ部隊のシンボルともなっており、この装備のATを任されることを部隊員は誇りにしていた。

 ――だが。

 

「チョイヤァァァァですわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 誇り高きシンボルマークを掲げた頭部を、鋼鉄の爪ががっしりと掴み、ギチギチと締め上げる。

 エクルビスを連想させる三本爪のアイアンクローは特大で、ドッグタイプのAT用オプションとしては破格の大きさだ。

 

「ごめん――」

 

 必死に逃れんと藻掻くバーグラリードッグを左手のアイアンクローでがっちりとホールドしつつ、胸元目掛け空いた右手を思い切り叩きつける。右手には小型のパイルバンカーが取り付けてあるが、それを使うまでもないとまるでナイフのように尖った鉄杭でそのまま殴り抜いた。

 

「――あそばせ!」

 

 その一発で十分。一発でバーグラリードッグからは白旗が上がった。

 

「次は――っと!」

 

 頭部を回し、ターレットレンズを回せば、敵部隊唯一の残存機が一目散に逃げ出す所であった。

 僚機がその背に狙いをつけるが、ローズヒップは鋼の手で制す。

 

「逃しは――いたしませんことよぉっ!」

 

 右手のパイルバンカーを逃げるバーグラリードッグへ擬《ぎ》し、トリッガーを弾く。

 ワイヤーウィンチへと接続された鉄杭は火薬の力で撃ち出され、逃げるバーグラリーの背部ミッションパックへと突き刺さった。機体本体はカーボンで厳重にコーティングされているが、装備品はそうではない。撃ちだされたワイヤー・パイルバンカー内臓の『かえし』が起動、ガッチリと逃亡ATを捕え離さない。

 ワイヤーを巻き上げれば、足掻くバーグラリーが釣り上げられる魚のように引っ張られ、十分引き寄せた所でローズヒップのアイアンクローが炸裂、撃破判定を引き出した。

 

「一丁上がり! ですわ!」

 

 ローズヒップはATでガッツポーズをした。

 彼女の赤毛によく似合う、赤く染められたそのATは極めて特異な見目形をしている。

 ドッグタイプがベースであることは解るが、全身隈なくカスタマイズが施され、スコープドッグなどとは殆ど別機種と化している。四連ターレットにアイアンクロー、ワイヤーウィンチ付きパイルバンカーに強化通信アンテナと、装備もかなり特殊なモノを搭載していた。

 実の所、これらは全て乗り手であるローズヒップのためにと用意されたモノなのだ。

 ――ATM-09-STC ローズヒップスペシャル。

 アッサムが設計、ダージリンが監修、そしてローズヒップ自らが整備科の生徒たちと共同で組み上げた特注ATだ。原型はデボラ・グレンというボトムズ乗りが使っていたという専用のカスタム機だが、ローズヒップスペシャルはデボラ機を原型としつつも主に内部にアレンジを加えているので見た目以外は実質別機体と言っていい。

 スピード狂の彼女の眼鏡にかなうよう、ローラーダッシュ機構にはコアレスモーターが追加され、その加速は彼女以外には乗りこなせぬじゃじゃ馬となっている。

 

「バニラ、クランベリー、行きますわよ! 次の狙いは敵フラッグ機ですわ!」

 

 僚機に呼びかけた時にはもう既に彼女は走り出していた。

 僚機のピンクに塗られたエルドスピーネは脚部を強化した特別機なのだが、それでもローズヒップの俊足には付いて行くのがやっとの様子だった。

 ローズヒップ率いる分隊こそが、当初の作戦では黒森峰の背後よりの奇襲の先鋒を担当していた部隊であったのだ。他方面からはルクリリやニルギリ率いる分隊が突入の為に行動している。

 作戦は一部変更にはなったが、しかしローズヒップ達のやるべきことは変わってはいない。

 立ち塞がる敵を蹴散らし、王手をかける。駿足の切り込み隊長、ローズヒップには自他共認める似合いの仕事であった。

 

『ローズヒップさま、前方にてきえ――きゃぁ!?』

「バニラ!?」

『うわぁっ!?』

「クランベリー!」

 

 しかしそう易易と背後をとらせる黒森峰であれば、優勝九連覇の偉業など果たせる訳もない。

 一直線に猛進するローズヒップ達の前に、立ち塞がる黒い影四機。

 

「でましたわね!」

 

 自分を狙ったミサイルの一撃を躱しながら、ローズヒップが獰猛な笑みを作った。

 僚機を瞬殺した相手は、黒森峰が背後の守りを任せるのも当然な精鋭部隊であったからだ。

 入念にカスタマイズされたスタンディングトータス三機を率いるのは、ブラッドサッカーに似たシルエットを持ちながらも、明らかに一回り大きい体躯を持った特機であった。

 ――黒く塗られたストライクドッグ。

 黒森峰の影のエース、逸見エリカの愛機に他ならない。

 

「ストライクドッグ、いざ尋常に勝負ですわ!」

 

 立ちふさがった黒い巨躯に、ローズヒップはそう啖呵を切った。

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 

「ぎ ゃ ぁ 負 け ま し た わ ー ! ぐ や ぢ い で づ わ ー !」

 

 自らが撃破されるシーンを改めて見たためにローズヒップは涙目で絶叫した。

 ハンカチを噛む彼女を、アッサムがどうどうと真っ赤になりながら宥めている。

 プロジェクターを使ってスクリーンに上映されているのは、さきの準決勝の試合のダイジェストであった。

 結局、奮戦むなしく聖グロリアーナは黒森峰に敗北するのであるが、こうして見ると聖グロリアーナの奮戦っぷりと黒森峰の怒涛の攻勢が実に目覚ましい。

 特に黒森峰の攻勢の凄まじさは、単に選手達が頑張っているというだけでなく、使用するATの質や装備の良さ、つまり掛かっている資金量の凄まじさでもある。それだけ黒森峰女学園という学校組織が、さらにはそれを後援する卒業生達のバックアップが厚いということだ。

 今年の大会にかける、黒森峰の気合の凄まじさが試合の様子からは伝わってくる。

 それを浴びせられた大洗一同は皆、沈んだ顔色になっていた。

 ――こんな連中を、これから相手するのだ。

 

「ねぇ、みほさんはどう思うかしら?」

 

 出し抜けにダージリンが問うのに、みほは彼女の方を見た。

 まるでチェシャ猫のようなイタズラっぽい微笑みを浮かべた彼女は、言外にこう問ういていた。

 

 ――あなたにはわかるかしら? 圧倒的な強さの陰に隠れた真実を。

 

 問われた以上、答えなければなるまい。

 みほは慎重に言葉を選びながら言った。

 

「……誤解を恐れず敢えて言うならば――黒森峰は去年より弱くなっています」

 





 この胸にくすぶるのは、愛か憎悪か
 目を瞑れば見える、懐かしきその姿
 友か、宿敵か、あるいは仲間か
 己の心に問いかけても、答えが出てくることはない
 ならば問う他はない。戦場で対峙することで

 次回『追想』。己が拳に、答えを託す







【ブラッドサッカー】
:メルキアの自機主力機と目されながらも、それを逃した悲劇の傑作AT
:そしてレッドショルダー部隊の最後の乗機
:だがその実態はボトムズ史上最も格好いい雑魚キャラ
:ザ・ラスト・レッドショルダーではイプシロン搭乗機以外良いとこなし
:デザインは最高に格好いいので人気は高い。てか好きですこのAT
:『戦場の哲学者』にも再登場。でもやっぱり扱いは……

【黒森峰仕様バーグラリードッグ】
:稲妻型のブレードアンテナが目印の黒いバーグラリードッグ
:元ネタは『孤影再び』の黒い稲妻旅団仕様のバーグラリードッグ
:折りたたみ式のブレードアンテナが展開するギミックが格好いい

【ローズヒップスペシャル】
:スコープドッグベースのカスタム機
:武装はアイアンクロー、ワイヤーウィンチ付きパイルバンカー、隠し武器のミサイルランチャー他多数
:あらゆる面でハイスペックさを発揮するまさにスペシャル機
:元ネタはパチスロボトムズの『デボラ・グレン専用機(デボラスペシャル)』
:デボラ・グレンはマーティアルのボトムズ乗りで、キリコを狙うネクスタント(テイタニアのプロトタイプ?)






あけましておめでとうございます

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