ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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stage14 『ブラッディ・セッター』

 

 視界を覆う激しい光に、みほは思わず目を瞑った。

 遮光ゴーグルをしてくれば良かったと心底後悔する。瞼の裏側には炎が焼き付いて、赤い影のように暗い視界をチラつく。そんな揺らめく影が消えた頃に瞼を開けば、とうの昔に光は消えて、一隻の宇宙艇が鎮座していた。

 LCH-05-AT宇宙揚陸艇。ギルガメスが用いる一般的なAT用宇宙艇だった。10機前後のATを搭載可能な突撃艇であるが、今回積んでいるのはたった一機のATであるらしい。ベルトコンベアーが稼働すれば、大型のコンテナーを2つばかり、みほ達の目の前へと下ろされれば、宇宙艇は再び宙へと舞い上がってどこかへと姿を消した。

 コンテナを前にするのは勢揃いしたあんこう分隊の面々に、エリカ、絹代、ローズヒップに杏、そして紫煙を燻らせるキーク・キャラダイン。

 

「メルキア政府直々のプレゼントだ。気に入ってもらえると良いんだがね」

 

 そんな軽口が合図にでもなったか、コンテナが自動で展開され、その中身を露わにする。

 

「うわぁ~」

「M級か……の割には大きく見えるな」

 

 明らかになったその姿に、沙織が驚嘆の声をあげ、麻子が淡々と分析し呟いた。

 

「赤い……それも不吉な赤です。まるで彼岸花のような」

 

 華が機体を彩るその真紅の色合いに、若干の畏れを込めて評する。

 

「……すごい。すごい! すごいです!」

 

 対照的に目を輝かせ、興奮した様子で叫ぶのは秋山優花里だった。

 

「そんなに凄いATなのですか、秋山さん?」

「わたくし、どっかでこのAT見たことありますですわ」

「そりゃそうでしょ。だってストライクドッグそっくりじゃないの」

 

 絹代は優花里に問い、ローズヒップは首を傾げ、エリカはつまらなそうに言った。

 しかし優花里の興奮は収まることなく、絹代へと熱の篭った声で答える。

 

「恥ずかしながら、わたくしも写真ですらお目にかかったことがありません。ですが、伝え聞いた特徴から判断するに『あのAT』で間違いありません! 断片的な情報や何枚かの再現図で存在自体は知られていましたが、誰も本物をみたことがない……まさに幻のATですぅ!」

「おおそうなのですか!」

「なんだか凄い気がしてきましたですわ!」

 

 優花里の興奮が伝わったのか、絹代までキラキラした瞳で赤いATを見上げ、さらにそれにつられてローズヒップまでもが同じように瞳を輝かせた。

 

「……で、なんていうのよ、このATは」

 

 独り冷静なエリカが問えば、優花里は嬉しそうにその名を告げた。

 

「X・ATM-09-ST『ブラッディセッター』です。形式番号からするとスコープドッグの系列機に見えますが、実は全くの新造ATで、従来機を凌駕する性能を備えた新鋭機です。等級こそM級ですが、そのスペックはむしろH級のストライクドッグやラビドリードッグに近く、マッスルシリンダーの改良の結果、最大で160時間を超えて連続稼動が可能と言われています。戦闘用コンピューターも新型のものが搭載された他、武装に関しても従来の流通品は使用可能なのは言うまでもなく、聞く所によるとバララント製の装備、それも機体にアタッチメントするタイプのものすらそのまま使用可能という驚くべき仕様と聞いています!」

 

 優花里は一気に喋り終えるとキークの方を見て、今の説明であってましたか?と視線で問いかけた。

 キークは苦笑ひとつすると、紫煙を吐き出しながら言った。

 

「まぁ良く調べてるとは感心するね。このATは普通に市場に出回ってたタイプじゃないから、詳細を知っているのは限られた人間だけだ。それをそこまで知っているなら大したもんさ」

 

 ホッとする優花里の姿にキークはふたつめの苦笑を浮かべ、詳細な説明を付け加えた。

 

「マッスルシリンダーは『2P-MJ-S4』にPR液は『DT-MS-P』。どちらもまだ市場じゃ余り出回ってないニューモデルで品質は言うまでもなし。制御コンピューターにはブラッドサッカーのものを改良した新型を、さらに火器管制コンピューターは『MCA-707』を使ってる」

「『MCA-707』!? それ本当なんですか!?」

 

 優花里は頭から湯気が出てきそうな勢いの興奮ぶりだ。

 傍で見ていた沙織はみほにこっそりと耳元で問う。

 

「ねぇみぽりん。その…えむしーなんとかってそんな凄いものなの?」

「うん。今流通してる最新版が『MCA-628』で、『MCA-707』はそれをさらに改良したものらしいんだけど……実は私もまだ使ったことがないから」

「みぽりんですら使ったことないないんだ。……よくわかんないけど、凄いことだけはわかったよ」

 

 みほ達がそんな囁き話をしている横では、さらにヒートアップした優花里がキークを質問攻めにし、メルキアの情報将校は得意顔でそれに答えていた。

 

「……」

 

 その様子を横目に見ながら、改めてみほはブラッディセッターへと向き合った。

 血の赤に塗られた装甲板。ストライクドッグを連想させる、上下二連のレンズと左右を固める2つのセンサーからなるカメラアイ。そして左肩のショルダーアーマーから伸びる白い二枚のブレードアンテナ。

 スコープドッグと類似しながら、それとは一線を画するシルエットに、みほのふたつの掌は無意識の内に固く握り締められていた。

 実の所、みほにはこの手の特注機を操縦した経験は殆ど無い。いかなるときも勝負から逃げないのが西住の流儀……それ故にみほもまほも、カスタマイズこそ施されているとはいえ、基本的には一般普及機であるドッグ系ATを愛機として戦ってきた。パープルベアー、Mk.Ⅳスペシャル、そしてボコ・ザ・ダーク……どのATも、飽くまでドッグ系カスタム機の域を出ていない。

 ――だが、ブラッディセッターは違う。

 ラビドリードッグ同様に、スコープドッグの次の世代を担うべく作り出された新世代ATなのだ。

 それを自分は乗りこなさねばならない。メルキアからの贈り物を、使いこなさねばならないのだ。

 最大の敵、島田愛里寿が駆るであろう、バララントからの贈り物に立ち向かうためには。

 

「どう、西住ちゃん。気に入った?」

 

 振り向けば、気配もなく歩み寄っていた杏の姿がそこにある。

 その問いかけに、みほは決意を込めた不敵な笑みを添えて返した。

 

「はい! でも色を塗り替えたら、もっと好きになれそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――stage14

 『ブラッディ・セッター』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃校の是非を賭けた決戦、『高大連携エキシビションマッチ』開幕はいよいよ明日へと迫った。

 大洗の乙女たちは、ようやく出揃った愛機達の最終確認に取り掛かっていた。広い倉庫には明日試合に臨むAT達が分隊ごとに並べられ、各分隊員達が自らの手でラストチェックする。

 

「西住殿、これでどうですか!」

「すごいゆかりん、上手!」

「どこからどうみても立派なボコさんです!」

「よかったな、西住さん」

「うん!ありがとう、優花里さん。わたし、美術はちょっと苦手だから」

 

 機体色を薄めのブラウンに塗り直されたブラッディセッターの右肩にはあんこうのエンブレムが、そして左肩にはボコのイラストが綺麗に描かれている。いずれも優花里の筆になるもので、伊達にATマニア兼モデラーとしての経験値を積んでいない。この手の仕事は彼女のお手の物だ。

 

「これで準備は万端だな」

「はい! 明日と言わず、今日今からでも試合に臨めるぐらいです!」

「でもこうして見ると随分と様変わりしたよねぇ」

 

 沙織が言うように、あんこう分隊の構成は全国大会の時とは大きく異なっていた。

 黒森峰との決勝戦を終えた時、ATの損傷が最もひどかったのがあんこう分隊だった。故に大会直後の時点で優花里や華は別のATに乗り換えていたのだが、メルキア提供の大量のATストックがあることもあって、沙織も合わせて新しい機体に乗り換えていた。麻子だけは黒森峰仕様のタイプ20を気に入っていたこともあり、そこに彼女なりのカスタマイズを施して継続使用している。

 現在のあんこう分隊の構成を列記すれば以下のようになる。

 

 

 

【あんこう分隊】

みほ:ブラッディセッター・ボコカスタム

沙織:デスメッセンジャー

華:スコープドッグGGG(メルキアカラー)

優花里:スタンディングトータス

麻子:スコープドッグ・ターボカスタム

 

 

 

 まずリーダ機のみほが駆るのは「ボコ仕様」にカスタマイズされたブラッディセッターだ。他に特別な改造は施してはいない。みほ的にはステレオスコープに換装したかったのだが、高性能センサーを取り外すことのデメリットなどを考えて泣く泣くそのままの仕様となっていた。武装も、もう一つのコンテナで運んできたものをマウント済みだ。

 

 次いで沙織が乗るのはいわゆる『デスメッセンジャー』タイプのカスタムスコープドッグで、脚部はやや爪先が長く尖ったものへと換装され、ミッションパックは通信機能やデータ処理能力を向上させ、よりサポート力を発揮するように改造されている。左肩には六連装のミサイルランチャー、右手のメインウェポンはソリッドシューター付ガトリングガンを装備している。そして左手にはAT用の大型チェーンソーをマウントしてある。今回の試合はリアルバトル方式であり、それ故に普段は許されないような装備も可能なのだ。そして相変わらず赤いのは左肩だった。

 

 華のATは相変わらずのメルキアカラーに塗ったスコープドッグだが、その装備が今までと大きく異なっている。何よりも人目を引くのは特徴的な大型ミッションパックに接続された右手の得物だ。その得物の銃口はレンズ状になっており、他のいかなるAT用装備とも似ていない。『GAT-TP-101』の形式番号を持ったこの武器は、ATには極めて珍しいレーザー兵器であった。このフォトンシューター装備のスコープドッグは、ドッグ系カスタムタイプでも最も新しい仕様のひとつで、ATM-09-GGGの名を与えられていた。強力ながら取り回しの不便さとマウントできる弾数に限りのあるアンチ・マテリアル・キャノンに代わる、華の新たな武器であった。

 

 優花里は思い切った機種転換を行った結果、今はスタンディングトータスに乗り換えている。陸戦型ファッティーを思わせる大型グライディングホイールを装備して足回りを強化し、カメラアイ部分にロールバーを追加した以外はそこまで大掛かりなカスタマイズは行ってはいない。しかしその機体色は、エリカの影響でも受けたのかスナッピングタートル風の青色ベースに塗り替えられていた。また左肩には彼女独自のアレンジか、スコープドッグ風のボコのエンブレムも描かれていた。(あとでせがまれてみほのATのスカート部にも同じエンブレムを描き足した)

 

 麻子も機体色を赤ベースに塗り替えてはいるが、ATそのものは全国大会決勝戦以来のタイプ20を継続して用いている。しかしその右手は鉤爪突きの固定重火器の7連装ガトリングガンへと換装しており、その見た目は元々の麻子の愛機であったブルーティッシュドッグに近くなっていた。彼女なりに、先代ATへの愛着があったらしい。背部ミッションパックもPRSPパックへと換装され、従来機を大きく凌ぐ稼働時間の獲得にも成功していた。

 

 では、他の分隊はどのような構成になっているのか。列記すれば以下のようになる。

 

 

【カエルさん分隊】

典子:スコープドッグ・ターボカスタム

忍:スコープドッグ・ターボカスタム

妙子:スコープドッグ・ターボカスタム

あけび:スコープドッグ・ターボカスタム

 

 

 カエルさん分隊の面々は、隊名の由来になったファッティーではなく、全国大会決勝戦以来の黒森峰仕様のタイプ20を継続して用いている。しかし古いパーツは新しいものに取り替えるばかりではなく、カラーリングは薄めのカーキ色に塗り直され、さらに各所にバレーボールのエンブレムが描かれたり、バレー部復活と力強い文字で書き殴られていて、彼女たちの戦意の旺盛さが姿に現れていた。

 

 

【カメさん分隊】

杏:バーグラリードッグ(稲妻アンテナ)

柚子:バーグラリードッグ(稲妻アンテナ)

桃:バーグラリードッグ(稲妻アンテナ)

 

 

 生徒会一同もバレー部一同と同様、決勝戦からの同じATの継続使用だが、やはり色はデザートイエローに塗り直されている。また決勝戦では砲弾運搬役を担っていた桃にも、その僅かながらの成長を認められてかドロッパーズフォールディングガンが再装備されていた。

 

 

【ウサギさん分隊】

梓:スタンディントータスMk.2

あゆみ:スタンディントータスMk.2

紗希:スタンディントータスMk.2

桂利奈:スタンディントータスMk.2

優季:スタンディントータスMk.2

あや:スタンディントータスMk.2

 

 

 一見すると何も変わっていないように見えて、実は全機別機種に乗り換えたのがウサギさん分隊の一年生達である。本来は宇宙用のスタンディングトータスMk.2の脚部にローラーダッシュ機構を全機増設し、地上戦にも対応させてある。バーニアからのジェット噴射で飛行――まではいかないにしてもATながらハイジャンプが大気圏内でも可能な筈だ。知波単学園直伝の突撃戦法に加えて、彼女らならではの奇想天外な戦法にも役立つに違いない。

 

 

【ニワトリさん分隊】

カエサル:ベルゼルガ・プレトリオ

エルヴィン:スコープドッグ・フォックススペシャル

左衛門佐:タイプ20(真田仕様)

おりょう:タイプ20(新撰組カラー)

 

 

 ある意味一番やりたい放題なのが歴女の面々だった。カエサルのベルゼルガ・プレトリオは両手に「黒いギロチン」とも呼ばれる厚さ200mmはある大型シールドを装着し、その内側にはパイルバンカーらしきものまで取り付けられている。流石に飛び道具が無いのは問題かと思ったのか、両肩には無理やり機関砲がマウントしてあった。

 エルヴィンは乗機をスコープドッグに換えていたが、彼女の駆るスコープドッグが普通のものであるはずもない。第2次大戦中のドイツ・アフリカ軍団使用の砂漠塗装に塗られたこのATは、右腕が奇妙に肥大化した特別仕様で、また左腕にはアームシールドが装備され、その裏側にはやはりというかリニア式のパイルバンカーが納められている。原型機はギャルビン・フォックスというバトリング選手が用いたとされるカスタム機だが、半ばエルヴィンオリジナルカスタムとなっていた。

 左衛門佐とおりょうは決勝戦からのタイプ20継続であるが、しかしやはり彼女らも彼女らならではのカスタマイズは施している。左衛門佐は頭部アンテナを鹿の角状のものに換装して色は真田の赤備えで、ヘビィマシンガンには長槍のようなパイルバンカー銃剣を装着している。おりょうは機体色を新撰組カラーにするという比較的おとなしい改造だが、腰には日本刀の代わりかAT用スタンバトンをマウントしてあった。

 

 

【ヒバリさん分隊】

そど子:バウンティドッグ(電撃鞭装備)

パゾ美:バウンティドッグ(電撃鞭装備)

ゴモヨ:バウンティドッグ(電撃鞭装備)

 

 

 風紀委員一同は怒りの余り風紀を投げ捨てたらしい。彼女らのバウンティドッグの背部には大型の発電機が搭載され、それはザイルスパイド部へと連結されている。そして本来はハプーネがあるべき部分には、棘が無数に生えた鋏が備わっていた。「バイオレット・ヴァイパー」というリングネームのバトリング選手のATを真似た装備品で、この棘付き鋏を飛ばして相手を捉え、絶縁処理が施されていない内部機構に直接電撃を叩き込むという恐るべき装備だ。カーボンコーティング故にパイロットは無傷だがATの内部はずたずたになる。ある意味、一番リアルバトル方式というルールに忠実なのがそど子達かもしれない。

 

 

【ウワバミさん分隊】

ナカジマ:ストロングバッカス改ver.2.0

スズキ:ストロングバッカス改ver.2.0

ホシノ:ストロングバッカス改ver.2.0

ツチヤ:ストロングバッカス改ver.2.0

 

 

 見た目だけならばまるで変わっていないように見えるのが自動車部謹製のストロングバッカス達の姿だ。しかしこのAT達のつくり手が大洗きってのモンスターチームである自動車部・ウワバミ分隊であることを忘れてはならない。中身は更新されて、全てVer.2.0にバージョンアップしている。いかなる隠し玉を秘めているかは、それは試合までのお楽しみとしておこう。ちなみに彼女たちは同じくストロングバックスを愛機としたバトリング選手『ダーク・オックス』を参考にしたらしいが、果たして。

 

 

【アリクイさん分隊】

ねこにゃー:レイジング プリンス

ももがー:ヘルミッショネル

ぴよたん:トロピカル サルタン

 

 

 アリクイさん分隊のATは元々がカスタム機だけあって、部品交換と整備を済ませただけで機体自体は何の変化もない。しかし一番変わったのはその乗り手だ。ゲームの禄に出来ない虜囚生活の無聊を慰めるべく、鍛え上げられた彼女たちの身体……ある意味では最高のカスタマイズ、ボトムズ乗りの強化という点では彼女たちが一番目覚ましい成長を上げていた。後は全国大会の汚名返上をするのみだった。

 

 ――以上32機。

 これが大洗の今の戦力だった。

 

「絹代さん」

 

 新たなる愛機、ブラッドセッターのラストチェックを済ませたみほは、歩み寄ってきていた絹代達へと振り返った。

 あんこう分隊の皆も、みほの後に続く。

 

「ローズヒップさん、ミカさん、アキさん、ミッコさん、エリカさん」

 

 一人一人の顔を見つめた後、みほは静かに頭を下げた。

 

「今まで、ご協力ありがとうございました。この御恩は決して忘れません」

 

 そう、彼女らの協力を得られるのもここまでの話。

 ここからは大洗女子学園装甲騎兵道チームと大学選抜チームの問題になる。

 こちらの戦力は32機。対する大学選抜は150機を繰り出してくるという。戦力比は1対5。まともな勝負になるはずもない戦力差だが、みほ達はやるしかないのだ。

 そんな悲壮な決意を秘めたみほの一礼に対し、絹代達は顔を見合わせた後、一斉にその懐から一枚の紙片をそれぞれ取り出した。

 

「大洗女子学園、西絹代!」

「同じくローズヒップ!」

「えーと、私達三人も加えて」

「計6名、短期転校で試合参加、って訳ね」

 

 絹代とローズヒップが高らかに声を張り上げ、アキがその勢いに押されながら付け加え、エリカが最後に冷静にまとめて言った。

 

「みなさん!」

「試合でも協力してくれるの!?」

 

 優花里が感極まって涙ぐめば、沙織が喜色満面に問う。

 そして沙織の問に答えたのは、予期せぬ、しかし聞き知った静かな声であった。

 

「あら、彼女たちだけではなくってよ」

 

 みほは、皆は、一斉にその声のする方を向いた。

 影に隠れて見えぬその人物は、スポットライトの下にその姿を現した。

 綺麗に整えられた金髪に、白い肌に青い瞳。上品そうなその姿を包むのは、彼女が着れば斬新な大洗の制服だ。

 紅茶燻らせ現れた、その淑女の名をみほは大きく呼んだ。

 

「ダージリンさん!?」

 

 ダージリンは、みほへと微笑みながら言った。

 

「ごきげんよう、みほさん。こうして直接顔を合わせるのは久しぶりじゃないかしら」

 

 

 

 

 







  ――予告

「どうやら来るべき時がやって来たみたいだ。いよいよ大詰めも近しってところだね、みほ。 でも、お相手は頭のてっぺんから足の先まで鋼の鎧に身を固めた、数でも優るタフなボトムズ乗りだ。さぁ、戦士たちは集った。後は君の手並みをゆっくりと拝見させてもらうとするよ。無論、手助けくらいはするけどね」

 次回『バトルフィールド 』

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