張り子の虎
弱いくせに虚勢を張っている人のたとえ
さて、誰の事でしょうかねぇ……
「どこにも白式の反応が無い……恐らくいっくんはもうこの世界にいないよ、ちーちゃん……」
「馬鹿な……」
一夏が消えた。
授業時間になったというのに姿を現さない一夏を探すべく全教師が動員され、捜索が行われた。
理由は簡単。
世界に二人しかいない男性ISパイロットが行方不明やら誘拐されたとなれば学園の管理問題は勿論の事、IS研究への支障が出るからだ。
織斑一夏捜索の陣頭指揮を執ったのは姉である千冬。
しかし、教師達による捜索で一夏が見つからない事を悟った千冬は切り札を使う事にした。
その切り札こそが、幼馴染であり、世界を混迷の渦に叩き落とした元凶である『篠ノ乃束』であった。
『彼女ならば一夏を見つけられる』
千冬はそう考えていた。
だが、結果は千冬の予想とは真逆のものだった。
「こんな事はあり得ない、でも事実。反応が無い、私に見つけられないISは存在しない。私が作ったコアは全部で500個。“世界”に渡したのが467個、32個は私が、1個は
「…………」
「今“世界”に存在するコアは全部で500個、内1個は私が作った覚えのないコア。そして、そのコアを持つのは……あの二人目」
束の語った真実は千冬を黙らせるだけの威力があった。
この世で最もISに詳しい彼女が言うのだから、間違いがないのだろう。
「ちーちゃん、ごめん……力になれなくて……」
6月中旬、織斑一夏消失事件を端に発した騒動は、日本政府によって事実上の死亡認定がなされた事で終結した。
当然だ、篠ノ乃束が死亡したと判断した以上、生存は絶望的と考えるのは当然の事だからだ。
クラスでは臨海学校の事で盛り上がっており、一夏の事については殆どのクラスメイトが『あぁ、いたよね。そんな奴』といった感じで、誰も触れようとしなかった。
彼にとって幸いなのは、極僅か……心の中で心配していたクラスメイト達がかつて使っていた机に花瓶を置き、花を活け代えていた事だろうか。
何故このような環境になったのか、それは大半のクラスメイトがアキラの活躍に心奪われ、味方についた事で『アキラ正義、一夏は悪』と謂わんばかりの風潮になってしまい、一夏に味方する者が出るに出れなかった為である。
(ゴメンね、織斑君、助けられなくて……)
一夏の事を心配していたクラスメイトの一人『相川清香』は花を取り換えながら心の中でソラの向こう側に飛んで往ってしまった彼に謝罪していた。
一夏死亡認定翌日、篠ノ乃束によってIS学園に特大の爆弾が落とされた。
「という訳で箒ちゃんの要望通り、ISを持ってきたよ」
(馬鹿な!?原作では臨海学校で貰うはずだろ、どうして今なんだ!?!?)
正史に置いて7月の臨海学校で受領するはずだった第4世代IS『紅椿』、それが今渡される。
(どういう事だ。一夏がいなくなった事と関係あるのか!?)
そんな彼の混乱を余所に、束は紅椿のフォーマットとフィッティングを終わらせると、さっさと帰ってしまった。
「あぁ、そうそう、私が箒ちゃんにしてあげるのはここまで。私はもう干渉しないし、関わる心算もないから」
箒に対する決別の言葉を残して……。
一夏の消失、早すぎる紅椿の到来。
想定外の事が続くIS学園。
そして、更なる想定外な事態が、IS学園を襲った。
「きょ……教官……何故……」
(どうして……こうなった……)
紅椿到来の次の日、織斑千冬が自殺したのだ。
朝のHRになっても姿を見せない千冬に疑問を抱いた一年一組副担任の『山田真耶』が彼女の部屋を訪れたのだ。
ノックをしても反応なし、しかし鍵は掛かっていなかった。
意を決して部屋の中に入ると、首を吊った状態の千冬がそこにいた。
既に息は無く、蘇生も不可能であった。
死亡推定時刻は深夜零時。
遺書が残されており、そこには……
-私は教師としても、姉としても失格だった
-家族一人救えず、教え子を正しい道に導けなくてにして何がブリュンヒルデだ
-白騎士として、ISを広めるきっかけを作ったのがそもそもの間違いだった
-一夏、お前の元に逝く
-遺産は全て指定したNGO団体に寄付してくれ
後悔と懺悔が刻まれた遺書。
彼女を最も信頼し尊敬したラウラは泣き喚き、アキラは愕然とし、多くの生徒達が彼女の死を慎んだ。
「どうして織斑先生が慣れない手つきで部屋の掃除をしていたのか、その理由を知るべきだったんですよ、私は……」
山田先生はそう語る。
言葉通り、部屋は綺麗に片づけられていた。
彼女の懺悔は、混乱の中に消えていった……
「来栖アキラに気を付けろ、弟の幼馴染の妹とお前達は狙われている。ですか……確かに、あの男は色々と不自然な所があったわね。それに、簪ちゃんを見る目も……。『五反田蘭』に関しては虚を護衛に付けましょう」
密かに託されたもう一つの遺書が、新たなる可能性を紡ぎだす……
遠い遠いソラの果てのとある場所。
森の中に建てられたシンプルな建物、その一室で如何にも高級そうな椅子に座った一人の女性が虚空を見つめていた。
「…………」
「「どうしたの(ですか)、大佐?」」
『大佐』と呼ばれたその女性が声のした方を向くと、そこには先端が銀色に染まった赤紫色のショートカットの少女と黒髪ショートカットの女性がいた。
「あぁ、ノーラにキュールか……一つ聞いていいか?」
「「何(何でしょうか)」」
「……私は、どこか変わったか?」
「そうですね、特に変わったところは無いかと」
「ううん、いつもの大佐だよ」
ノーラと呼ばれた少女とキュールと呼ばれた少女が、そう答える。
「そうか……先ほど感じたんだ。私のどこかで、どこか中で、重い枷がはずれるのを……不思議だな。元より、私のどこにも、枷など無かったというのにな」
そう言い、少しだけ微笑む『大佐』。
「そうだ、もうすぐ軍曹が帰ってくる。他の奴らも一緒らしい、勿論軍曹が大好きなあの男もな。至急出迎えの準備をしろ」
「「Ja!」」
大佐……一体何者なんだ……(棒)
束が箒を見限った理由
本作の束はズバリ、
(本来スターゲイザーとは『星を見つめる者』という意味なのですが、本作では宇宙を目指す者としての意味合いを持たせてます)
その為、ISを作り人々の宇宙進出を図ろうとしていました
しかし、世界中の人々はISを宇宙進出の為の道具ではなく戦争の道具として使い始めました
それだけではなく、彼女に私利私欲の為にISコアの生産を要求するようになりました
その為、束はISコアの供給を467個で止め、俗世界から離れるようになりました
月日は流れ、一夏がIS学園に入学
一夏の学園生活は『来栖アキラ』によって凄惨な物となってしまい、束はアキラ討滅の為、策を練りますが、その全てが彼の名声を高める結果に終わってしまいます
そして、箒は負け続ける一夏を『軟弱物』等と責め立てます
束は、自身もまたアキラに勝てないくせにそのことを棚に上げて一夏を責める箒に、かつて自身達の私利私欲の為にISコアの生産を要求した世界を重ね合わせ、嫌悪感を抱き、結果として見限ったのです
束はせめてもの情けとして、箒の要望通り彼女の為のオンリーワンな専用機『紅椿』を作り上げましたが、正史と違いその性能は第4世代機でありながら第3世代機と同等、もしくはそれ以下という物になっています
アキラが強すぎるので誰も気づきませんでしたが……
Next Mission 『想いの果てに/BE HUMAN』