ストラトスフィアの戦団   作:コクマルガラス

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タイトル元ネタはエースコンバット3より『レイニー岬の交錯/SCYLLA AND CHARYBDIS』から

まずはこの話で第1部は完となります


SCYLLA AND CHARYBDIS
要は『前門の虎、後門の狼』である


Mission-5 太平洋沖の交錯/SCYLLA AND CHARYBDIS

「もうすぐ福音と会敵する、皆準備はいいか?」

 

アキラの問いに対して返ってきた返事は、肯定の意であった。

福音奪還作戦。

テロリストに強奪された『銀の福音』を取り戻すだけのモノ。

だが、アキラの心には不安が燻っていた。

 

(やはり、一夏がいない事が関係しているのか)

 

正史であれば、福音は有人機もしくは無人機。

どちらのパターンも篠ノ之束に暴走させられた形だ。

しかし、今回は違う。

何者かに盗まれ、そしてこちらに向かっている。

これも、一夏が、千冬がいない事による影響なのかと考えるアキラ。

正史との差異、しかし今回ばかりはほぼ正史と同じであった。

彼は知らない。

これから戦う福音が『意図的に』暴走させられた物であるという事に。

篠ノ之束ではない、彼の存在が意図せず招き寄せてしまった第三者による『仕組まれた』暴走であることに……

 

 

 

福音はいた。

点在する島の浜辺に、立っていた。

形状は背中の羽根がない事を除けばほぼ同一、しかし装甲の色は紫色に染まっていた。

そんな奇妙な光景に訝しむアキラ達。

ハイパーセンサーを使い、観察した彼らが見た物は、余りにも衝撃的すぎた。

 

「なっ……!?」

 

福音が『第9りゅうおう丸』の乗員と思われる男の頭を右手で掴み、持ち上げていた。

持ち上げられた男性は必死に拘束を解こうとするが、全く意味を成さない。

そして……

 

「や、やめろーー!!」

 

福音の左手が男の心臓を引き抜き、握り潰したのだ……

同時に右手で男の頭を潰し、物言わぬ骸となった肉塊は砂浜へと落ちた。

よく見ると、福音の周りには嬲り殺しにされたのか、多くの遺体が転がっていた。

 

「まさか、アイツ……みんな殺したのかよ……」

 

現在別働隊が捜索している『第9りゅうおう丸』の乗員が既に皆殺しにされているという事実に、ショックを受けるアキラ達。

そして、福音がこちらを見つめた。

まるで新しい獲物が来たと言わんばかりに……

 

「ギ……ギギギ…………」

 

福音の背中から展開される5対10枚の紅く輝く光の翼。

 

「セカンド……シフト……」

 

呆然とした表情で呟くアキラ。

この瞬間、彼は理解した。

原作知識がアテにならないという事に。

 

「みんな、逃げるよ……」

 

相手は紛うことなき化物。

本能が告げている『コイツは危険だ』と……

全員の気持ちが一致した事を理解すると、踵を返して一気に加速する。

アキラが、彼に思いを寄せる五人の乙女が、猛スピードで戦闘領域を離脱を開始する。

それを追いかける福音。

かくして彼らの地獄の一日が始まった……

 

 

 

「自衛隊との連絡は取れんのか!!」

「駄目です、通信繋がりません!!」

 

『嵌められた』と旅館の宴会会場を丸々使った臨時の作戦指令室でアーリィが思う。

彼等IS部隊が出撃してから程無く発生した大規模ジャミング。

そのジャミングによって出撃したIS部隊との連絡が取れなくなったのだ。

幸い偵察衛星とのリンクが繋がっているお陰で、戦闘領域を見ることが可能なものの、何時ジャミングで妨害されるかわかったものではない。

そして、現れた紫色の『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』。

アキラ達攻撃部隊が撤退を選んでくれたのはアーリィにとって幸いであった。

福音は攻撃部隊を追いかけ回しているが、何者かによる砲撃によって距離が離されつつある。

だが、問題はまだある。

簪達捜索部隊が紫色のロボット達に包囲されて脱出が出来ないのだ。

『マズイ』とアーリィは思う。

捜索部隊は機体に慣れているとは言い難い。

そのせいか、彼女達の被弾は増えつつある。

こちらから救出に向かおうにも、何故かISが起動できず、向かう事が出来ない。

 

(生き残ってくれ……)

 

アーリィ達教師陣が出来るのは、祈ることだけだった……

 

 

 

彼方から行われる砲撃。

それは、福音に着々とダメージを与えていた。

 

「アキラ、今なら奴を!」

「駄目だ、奴は危険すぎる!今は逃げる事に専念するんだ!!」

 

箒の提案を一蹴するアキラ。

実際の所、撤退中にも攻撃を仕掛けていたのだが、全く効果が無かったのでアキラの判断は正しかったといえよう。

 

(糞っ……俺の知るISは何処に消えた……!)

 

自身の介入が全てを変えたことに気付かない哀れな男。

世界は、ただ一人の思い通りにはならないのだ。

 

 

 

ダメージを受けたせいか、福音はいつの間にか姿を消していた。

アキラ達は何とか旅館まで帰ってくる事が出来た。

だが……

 

「あの……捜索隊の皆様は……?」

「…………」

 

教師全員が、目を背ける。

意を決したのか、山田先生が口を開く。

 

「捜索隊は……拉致されました……」

「そんな……」

 

教師達は語る。

簪の指揮の元、彼女達は敵の攻撃に抗っていた。

だが、敵が放ったネットに絡み取られ、拉致され……

 

「こちらのISが起動できず、更に使用していた偵察衛星も破壊され追跡も出来ませんでした。」

 

最早、言うまでもない。

IS学園の、完全敗北だった……

 

 

 

その後、福音は東京都内に侵入した所を、高高度から放たれた砲撃によって撃墜。

東京駅へと墜落した。

現地で機体を解体した所、パイロット『ナターシャ・ファイルス』はまるでミイラの如く干乾びて死亡しており、コアも破損していたという……

 

 

 

「…………ねぇ、ゴーちゃん。私、どっか変わった?」

「何言ってんだ、ミーア。どこも変わってないぞ?」

 

 

 

「どうした、アクイーア。考え事か?」

「いや、何かを失った……否、解放されたような気がしてな」

「?」




次回からCBサイドの話となります。

Next Mission 『エレクトロスフィア/ELECTROSPHERE』
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